ヤミヤミの実で宵闇の妖怪   作:にゃもし。

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45話 “アラバスタ”のちに“ハチノス”

 

 

【サンディ島──アラバスタ王国】

 

 

 古代のエジプトを思わせる砂の王国アラバスタ。その王国の首都であるアルバーナには首都と同じ名を冠した「アルバーナ宮殿」という建物があり、そこには「ネフェルタリ家」を始めとした王族の他に政府や国王軍の関係者等が住んでいる。

 

 

 今その宮殿にルーミア一行が招かれており、その宮殿内にて晩餐会が催されていた。

 

 

 アラバスタ王国側の人間からしてみれば、先日、王国転覆を謀った元七武海のクロコダイルの件があっただけに同じ七武海であるルーミアに対して複雑な心境がある。

 

 

 もっとも、その晩餐会にはルーミア本人を始めとして白ひげ海賊団船長代理のマルコにB・W(バロック・ワークス)の元幹部といった戦闘能力の高い者たちが軒並みに揃っており、さらに黄金帝ギルド・テゾーロや天竜人であるミョスガルド聖もその晩餐会に出席している。

 

 

 そのため王国側としても彼ら相手に無下にはできず、まるで腫れ物にでも触れるかのように慎重に接していた。

 

 

 厳重な警備が敷かれた宮殿の中、来賓客を招くためにある部屋の一つ、入口から入って向かってテーブルの右側には王国側、左側にはルーミア側、と分かれて席についている双方から物々しい雰囲気が放たれてる中、厨房から運ばれてきた料理が食卓の上にキレイに並べられていく。そのどれもが空島の素材を使用した一品であり、ルーミアが無理を言って厨房を借り、彼女が連れてきた料理人たちに命じて作らせたものだ。

 

 

「そこにある料理は空島でしか採れない物で作った品だ。冷めないうちに存分に召し上がるといい、わはははー!」

 

 

 肩の開いた黒のドレスを着込んだルーミアが重苦しい場の空気など何処吹く風と言わんばかりに能天気な声で乾杯の音頭を取ると、一同が料理に手をつけていく。そして一口、料理を口に含んだ瞬間、地上の海や山では味わえない味覚に誰しもが驚き、絶賛した。

 

 

「盗聴しようとした輩はあらかじめ無力化しておいたから盗み聞きされることはないけど…… それでも万が一のことを考えて場所を変えようかな?」

 

 

 ルーミアの足下を中心に“闇”が蠢きながら広がり、部屋の隅々まで行き渡る。ルーミア側の人間たちは事前に知らされてはいたが、それでも足下に蠢く“闇”を見てびくつく者、眉をひそめる者、興味深く観察する者……等さまざまな反応を見せる中……事情を知らない王国の兵士たちがルーミア側の襲撃と勘違いし、コブラ王を避難させるべく急いで駆けつけるもコブラ王が片手で彼らを制止する。

 

 

「コブラ王。貴方から見て、口が堅く、信用できる……そういった人物を同行することを許可しよう」

 

 

 ほどなくしてコブラ王の命令で数名の人間──護衛隊の主要人物等を除いて兵士たちが口惜しそうに部屋から出ていき、あとに残った人間たちが部屋中を敷き詰める“闇”の中へとテーブルごと沈んでいく。まもなくしてその部屋から誰もいなくなった。

 

 

 ルーミアの“闇”の中に沈んだ彼らだが、今、彼らがいる場所は木造の建物とおぼしき場所の室内だった。室内には光源として光を放つ灯貝(ランプダイアル)が壁に設置されており、部屋の中は昼間のような明るさを保っている。

 

 

 その“闇”の中とは思えない場所にざわめく一同。次第に声はひそまり、自然とそれを行なったルーミアに視線が向けられるが、彼女はその視線に応えることなくコブラ王に淡々とした声音で尋ねる。

 

 

 

 

「次の世界会議(レヴェリー)で世界政府に何を問う?」

 

 

 

 

 先ほどまでのふざけた態度とは打って変わって至極真面目なルーミアの態度にコブラ王はやや気後れするものの、コブラ王もまた王族らしく毅然とした態度で応えた。

 

 

 

 

「…………について、世界政府に問うてみたいと思っている」

 

 

 

 

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【港町ナノハナ】

 

 

 明けて翌日、アラバスタの玄関口である港町ナノハナからルーミア一行を乗せた船が数隻、港から出航していった。港にはサンクリン事務所に所属している俳優や歌手のファンと思われる人だかりができていて名残惜しそうに彼らを見送っている。その人だかりから離れた場所にはコブラ王と彼を護衛する兵士たちがいた。コブラ王は去っていく船を眺めながら今回の会談について振り返る。

 

 

 ルーミア一行との密談ではコブラ王は当たり障りのない、近況に関する返信を返し、ルーミアたちには王国転覆に関する出来事、“空白の100年”には一切、触れなかった。

 

 

 もっとも、ルーミアはそれを見越していたのだろう、彼女はコブラ王の返答の後に“空白の100年”を秘密裏に調べていたオハラが滅んだ経緯と、その後のニコ・ロビンの行動を大まかに教え、王国側の人間を大いに驚かせた。

 

 

 そして最後に「法を犯せば“オハラ”の二の舞になる可能性が高い」と言い残して彼女との会話は終わった。無論、コブラ王とて可能な限りルーミアから彼女の目的、及び情報等を得ようと試みてはいた。

 

 

「天竜人の改心」

 

 

 コブラ王の予想とは裏腹にルーミアは素直に答えたが、返ってきたその言葉に天竜人のことを知っている王国の人間たちは絶句した。天竜人が、あの傍若無人を絵に書いたような連中が改心するとは露ほども思っていないからだろう。王国側からは否定的な意見が多い。ルーミア自身もそれを否定はしなかった。

 

 

 一応、同席していたミョスガルド聖からかつて自分はリュウグウ王国にいた王妃オトヒメに説得された過去があり、天竜人の改心は不可能ではない、と意見を述べるものの、王国側からは彼が天竜人の一人ということもあってか、言葉を濁すばかりで良い返事は聞かない。ルーミアもまたオトヒメ王妃と同じやり方では無理だろう、と認めていた。

 

 

「残念だが私にはリュウグウ王国にいた王妃オトヒメみたいな聖人君子の真似事はできない。だから……」

 

 

 左腕で頬杖をつきつつ、空いた右手の人差し指で空中にくるくると何度も円を描きながらルーミアは言い、再度、コブラ王たちを唖然とさせた。

 

 

 

 

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 去っていくルーミアたちの船を見送りながらコブラ王は昨日ルーミアが言ったことについて頭を悩ませる。彼女の言う手段というものが“洗脳”と“催眠術”だったからだ。その後、会談は荒れに荒れたが、ルーミアが意見を曲げることはついぞなかった。彼女の言い分もある程度、理解できてしまうだけにコブラ王も強気には出られなかったのだ。

 

 

「文字通り天竜人を釣るための“エサ”というわけか……」

 

 

 昨日、口にした料理を思い浮かべてそんなことを漏らすコブラ王。側近たちも同じことを思っているのか王の言葉に深く頷いてみせる。

 

 

「しかし、これは些か高い気がするのだが……」

 

 

 メニューを手に取ったコブラ王が片眉を吊り上げて唸る。ルーミアが宣伝用に置いていったメニューには相場の倍以上の値段が書かれていた。安いものでも10倍。高額なものになると100倍以上の値段がつけられていたのだ。

 

 

 

 

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 アラバスタを発ったルーミア一行はシャボンディ諸島に向けて航海していた。先頭を進む船に主要メンバーが乗っており、船内の一室にて此度の会談について話し合っていた。

 

 

「意見が違えば、オレたちにも“洗脳”や“催眠術”を施すつもりか?」

 

 

 先の件で出てきた“天竜人の洗脳”に不安が募ったのか、ついそんなことを口走った者が現れたからだ。

 

 

「そんなものにかかるマヌケを乗せた覚えはないな」

 

 

 暗に身内に対して使うつもりはないとルーミアは遠回しに言ったがそれでも納得しない輩には彼女は黙秘することを条件にこの件から下りること提示した。

 

 

「天竜人を変えれば、世界中に歌と音楽と文化を広めれば、世界は少しは幾分マシになる。私とともに世界を少しでも変えたいヤツは残れ」

 

 

 当事者たちにそう問うルーミア。幸か不幸か船を降りる者は一人もおらず、マルコはルーミアを監視をするために、サンクリンは金のために、テゾーロやミョスガルドは彼女の行動に興味を持ち、さまざまな理由で彼らは船に残った。

 

 

「降りる者はいないようでなによりだなー。わはははー」

 

 

 誰も降りないことに上機嫌になるルーミア。腰に手を当てて一頻りに笑った後、明後日の方向に人差し指を指しつつ告げる。

 

 

「これより海賊島(かいぞくじま)“ハチノス”を襲撃する!!」

 

 

 ルーミアの命令で船内は慌ただしくなる。

 

 

 それから、しばらくして船はルーミアの“闇”に呑み込まれて収納され、青白い炎を纏った鳥と化したマルコとともにルーミアは“ハチノス”を目指して空を飛ぶ。

 

 

 

 

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海賊島(かいぞくじま)ハチノス】

 

 

 ドクロを模した巨大な岩が目立つ“新世界”にある島。そこにはインペルダウンのLEVEL-6に収監された犯罪者たちが集まってできた集団“海賊連合”が拠点にしている島である。ルーミアたちはこの集団とたびたび小競り合いを行なっていた。

 

 

 そして今回、元帥クザンから命もあり、ルーミアたちによる大規模な掃討作戦が行われることとなった。

 

 

 しかしルーミアはその命を受けた直後に偉大なる航海(グランドライン)の前半の海を漫遊、海軍から強い反発を受けることとなったが彼女は無視。クザンもまた「日時さえ守ればそれまで好きにしていいよ」と半ば放置。

 

 

 海賊連合もまたルーミア抜きで掃討作戦は行わないだろうと高を括っていたが、ハチノスの沖合いに島を取り囲むように突然現れたルーミアの軍勢に海賊連合は蜂の巣をつついたかのように騒ぐ。

 

 

 

 

「私が直接、動くのもいいが、それでは味気ないというものだなー。一番槍はくれてやろう。名乗りを上げろ。名声をくれてやろう。安心しろ、私は他人の功績を奪い取るような盗人の真似はせん。わはははー」

 

 

 ハチノスのドクロ岩が見える船の甲板にて黒のドレス姿のルーミアがこれまた彼女用に作られた豪奢な椅子に腰かけて、尊大な態度でそんなことを宣う。

 

 

「「 バギー座長、行きましょうぜ!! 」」

 

「いや待て、お前ら!?」

 

 

 ルーミアの言葉に真っ先に反応したのはバギーの取り巻きたち、彼らは手に持った武器を高く掲げて雄叫びを上げる。バギーが慌てて止めるも聞き入られず、逆に好戦的だと思われる始末。彼らはバギーを神輿のように担ぐと意気揚々と自分たちの船に戻っていく。

 

 

「随分とやる気じゃないのよう!! あちしたちも負けてられないわねい!!」

 

「いや、ちょっと待つだガネ。何も社長自ら戦場に赴く必要はないと思わないガネ?」

 

 

 次いでB・W(バロック・ワークス)の元幹部たち。やる気のある社長ボン・クレーをMr.3がどうにかして宥めようとするも全く聞き入れてもらえず、腕を引っ張られて無理矢理、連れていかれ、バギーたちのあとを追う。

 

 

「マルコたちはどうする?」

 

 

 あとに残った白ひげ海賊団にそう尋ねるルーミア。彼らは名乗りには上がらず「守りは必要だよい」とその場に残った。他にもテゾーロやミョスガルド、ついでにサンクリン事務所の面々の姿もある。ルーミアは安全のために他の島に降ろすことを提案していたが、彼らはルーミアに同行することを望んだ。

 

 

「親父のシマに手を出せばどうなるのか、白ひげ海賊団が大人しく見過ごすはずがないぐらい分かりそうだと思うけどなー? どう思う?」

 

「あの連中の中には昔、親父にやられてインペルダウンにぶちこまれたやつもいるからなあ、私怨で動いても不思議じゃないよい」

 

 

 海賊連合のシマへの襲撃を不思議に思ったルーミアが傍らにいるマルコに尋ねると、そんな回答が返ってきた。

 

 

「親父が生きている間に恩を返したかったが、それがもはやできない以上、シマを守ることで恩を返す。“敗北者”というレッテルを取り払う。親父の功績と名を未来永劫に残す」

 

 

 ハチノスに上陸したバギーの部隊とボン・クレーの部隊が港のあちこちで早速ハデに暴れまわっていた。その中でも巨人の集団が一際目立つ。 

 

 

「提督の命令なら仕方ないよい。……だが親父へ恩返ししたかったのは何もお前だけじゃないよい」

 

 

 そう言うとマルコが白ひげ海賊団を率いて動き出す。

 

 

「恩を返したい人物が必ずしも生きているとは限らない。人生とはままならないものだな……」

 

 

 そのテゾーロの言葉に深く共感したのか、ミョスガルドは深く頷く。テゾーロの言葉にぎょっとしたルーミアが冷や汗をかいたが、彼女はそれを振り払うかのように戦場にいる部隊に指示とは言えない指示を送る。

 

 

 

 

「あの世にいる親父に届くぐらいハデに騒げ!!」

 

 

 

 




 
( ´・ω・)にゃもし。


 にゃもし。は逃げ出した! 


■朝の6時45分だわ。
 あとは活動報告に書くおー。
 寝るおー。お休みなさい。

ルーミアの懸賞金、どれくらいが妥当? ちなみに私は15億にしようかと思っている。

  • ルフィがエニエス脱出した時の4億
  • ルフィが新世界突入した時5億
  • ルフィがカタクリ吹っ飛ばして15億
  • 黒ひげがつけられたのは22億4,760万

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