ヤミヤミの実で宵闇の妖怪   作:にゃもし。

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48話 シャボンディ諸島へ

 

 

「アンタみたいな 38歳 がいてたまるかっ!!!!」

 

 

 ルーミアが自ら実年齢を嘘偽りなく公表したが、バッキンは頭から嘘と決めつけて全く信じず、それどころか「構わん! やっちまいな!」とウィーブルをけしかける。

 

 

「え? でも母ーたん。このしと、おれの姉ーたん……」

 

「──んなわけあるかいっ!! こいつは白ひげの娘を騙るニセモノだよ! やっちまっていいよ!!」

 

 

 最初は自分の身内かもしれない人間だけに気乗りしなかったウィーブルだったが、バッキンからニセモノだと教えられた途端に顔を真っ赤にして激昂「よくも騙したなー!!」と薙刀をブンブン振り回して威嚇する。

 

 

「さらばだ愚弟よ。地獄で姉を敬え」

 

 

 対してルーミアはバッキンの性格からして二人の説得と和解は無理と瞬時に判断。物騒なことを口走りつつ即座に左右の腕にそれぞれ別々の悪魔の実の能力──“雷”と“闇”を纏わせて迎撃する態勢を整える。白ひげ海賊団と宵闇ノ海賊団の船員もまたルーミアと同様にいつでもルーミアに加勢できるように臨戦態勢を取り、構えを見せる。

 

 

「待ぁぁぁてェ~~~い! てめェら、こんなところで暴れるんじゃねェ───っ!!」

 

 

 そんな両者の間に挟まれる位置に割って入る影が一つ、文字通り空から落下する勢いで舞い降りる。バギーである。彼はルーミアの実年齢はともかく「白ひげの娘」というのは信じていいとウィーブルに話しかける。

 

 

「あの“白ひげ”がわざわざ自分の娘と宣伝したんだぞ!? お前は“白ひげ”の言葉を疑う気か!?」

 

 

 言われて思い出したのか、しどろもどろになるウィーブル。なおも諭すようにバギーはウィーブルに語っていく。もっともバギーとしては……

 

 

(──ふっざけんな!! よりによって港で暴れるか!? 普通!? ここを万が一、潰されでもされたら、しばらくの間、身動きが取れなくなるだろ~~~がっ!!)

 

 

 島の玄関口でもある港を破壊され、一時的にでも封鎖されようものなら物流等が滞る可能性がある。バギーは自分の懐が少なくなることを恐れて割って入ったのである。

 

 

「よく聞けウィーブル、“白ひげ”という男はだな……」

 

 

 赤く染まる海に沈んでいく夕陽を背景にバギーはウィーブルに静かに涙を流しながら語っていく。

 

 

 

 

「おろろろ~~~ん!! おでが、おでが間違っていたどォォォ───っっっ!!!!」

 

 

 はたして一体どんな魔法をバギーは使ったのか、気がつけばウィーブルは両膝と両の手のひらを地面に着けた格好で大粒の涙を流しながらバギーに対して頭を下げていた。バッキンもまたバギーからここにいる連中全員を相手に暴れるよりは一旦ルーミアの海賊団に入ってから遺産を探した方が効率がいいだろうと助言を受けて、しぶしぶと大人しく引き下がる。そのバギーの手腕に白ひげ海賊団は「実力はないのに」と思いつつも感心し、バギーズデリバリーの社員はウィーブルとバギーにつられてもらい泣きをする。

 

 

「それじゃあ、ウィーブルはバギーが責任持って面倒を見るんだな?」

 

 

 二人のやり取りを見ていたルーミアが唐突にそんなことを言い、バギーは思わず「え?」と呆けた顔を見せる。バギーズデリバリーの社員は暴れようとしたウィーブルすらも広い心で受け止める度量をバギーは持っていると彼を持ち上げ、煽てられて調子に乗ったバギーは快くウィーブルを受け入れてしまう。

そして「今夜は宴だ!」と、バギーを筆頭にどんちゃん騒ぎを始める。そんなバギーたちを尻目にルーミアはマルコにバッキンについて問うが得られた情報は彼女の持っている知識と大差がなかった。

 

 

「……放っておけばと傘下の海賊団や親父のシマを荒らしていた可能性があるよい。ある意味、これでよかったのかもしれないよい」

 

 

 さまざまな人間を“息子”として迎え入れた白ひげを見ていたルーミア。ふと彼女はその過去を振り返り、つい「親父は偉大だったんだなー」と口にする。それを聞いたマルコは茶化すように「今ごろ気づいたかよい?」と笑いながら言い、他のメンバーを宴に誘い、その列に加わる。ルーミアもまた宵闇ノ海賊団の船員たちに促されてしぶしぶ参加する。

 

 

 

 

 そして月日は流れていく。

 

 

 

   

───────────────
 

 

 

 

 

【前半の海にある、とある非加盟国の島】

 

 

 世界には天竜人に納める献上金である「天上金」を納められず非加盟国扱いになっている国が少なからず存在している。そのような国は政府からの庇護や支援を受けられず、ましてや国軍等の武力がなければ、海賊や犯罪者たちの標的になりやすく、そのような輩から襲撃され、島を支配されることも珍しくはない。

 

 

「船長!! 大変だ!! よその海賊団からの襲撃です!!」

 

 

 そして海賊団が海賊団を襲うことも珍しくはない。もっとも支配されている人間側からしてみれば、支配層の人間が替わるだけで自分たちの境遇がさして変わることはないので島の人間たちにとってはどうでもいいと思っているのがざらである。

 

 

「黒地に十字架の旗──“宵闇ノ海賊団”がやって来ました!! 今、交戦中ですぜ!!」

 

 

 だがその日、襲撃をかけてきたのは“王下七武海”の称号を得ている人間の一団。島の住人たちは僅かにだが希望を持てた。

 

 

 昼間から酒場を陣取って占領していた海賊団、その船長にその報告が届けられた。「船を指揮しているのは誰だ?」と尋ねる船長に部下は答えた。

 

 

「──天竜人の“ミョスガルド聖”です……」

 

 

 緊張からか、冷や汗を垂らしながら答える部下に船長は応えた。

 

 

「“ミョスガルド”を生きたまま捕らえろ。そいつを人質にすれば七武海といえど手を出せないはずだ。そいつを盾にして島を脱出するぞ」

 

 

 そう部下に命令を下した後、船長もまた捕縛のために動き出す。

 

 

「物好きな天竜人が正義の海賊ごっこをしている」

 

 

 いつからか、そのような話がまことしやかに噂されるようになっていた。船長がその噂を初めて聞いた時、権力にものを言わせて七武海を従わせているのだろう、と考えていた。現にこの近海で宵闇ノ海賊団を従わせているミョスガルドが暴れていることを知っていた。

 

 

「天竜人を誘拐すれば金がたんまり入る。周りにいる人間が強くとも本人自身は強くはないだろう。煙幕か何かで視界を塞いだ後、かっさらえばいい」

 

 

 船長が頭の中で計画を練りながら広場に赴くとそこには彼が思い描いていた光景とは全く違う光景が広がっていた。

 

 

 筋骨隆々、なおかつ均整の取れた体つきをした上半身裸の男がトゲ付きのこん棒で自分の部下たちを一掃する光景がそこにあった。あまりの光景に思わず絶句する船長と側近たち。やがて最後の一人が頭上からの一撃で叩きのめされて地に伏すとその男は彼らに顔を向けて言い放つ。

 

 

「私は天竜人の“ミョスガルド”というものだ。島の人間たちが迷惑しているので、すまないが出ていってくれないか?」

 

 

 そう船長に言い放つミョスガルド。しかし島を占領していた船長はミョスガルドに対して大声で「ふざけるな」と怒鳴る。

 

 

「お前みたいな“天竜人”がいてたまるか!!」

 

 

 計画のことなどすっかり忘れて敵意剥き出しで幅の広い片刃の刀を右手に手下ともどもミョスガルドに襲いかかる。相手が船長と側近ということもあって一緒にいた船員が助太刀を申し出るがミョスガルドはやんわりと断り、一人で迎え撃ち、迫ってくる敵を一人ずつ、こん棒の一撃で倒していき、ものの数分もしないうちにその海賊団を壊滅させた。

 

 

「ここの島に巣くっていた海賊団はここにおわす天竜人である“ミョスガルド聖”が退治なさってくれた!」

 

 

 山積みに積み上げられた海賊たちの頂に立つミョスガルドを手のひらで示しながら言う船員に島民たちは感謝の言葉を述べながらもどこかぎこちない。彼らの知る天竜人が自分たちのために戦うとは露ほども思っておらず、考えてもいなかったからだ。おまけに一人で海賊団を壊滅させるほどの戦闘力を持っている。いつその力が自分たちに向けられるのかと島民たちはミョスガルドを恐れていた。

 

 

 やがて島の港に宵闇ノ海賊団を示す黒地に十字架の海賊らしからぬ“海賊旗”を掲げた後、ミョスガルドたちは出港した。彼らはここ数ヶ月、非加盟国に出向いては一定の条件の下に“海賊旗”を貸していた。それは、万が一、宵闇ノ海賊団が壊滅しても自分たちの国を守れるだけの「武力」を手に入れることと、非加盟国同士による結びつき──同盟を彼らに課していた。もっとも宵闇ノ海賊団の力をもってしても前半の海が限界であり、ましてや四皇などの強者がシマにしている島は問題がありすぎて半ば放置にせざるを得なかった。

 

 

「ミョスガルド聖、そろそろシャボンディ諸島です」

 

 

 彼らの向かう先、その前方には巨大なマングローブが密集して出来上がった島が見える。

 

 

「予想以上に天竜人のイメージというのは悪いものなのだな」

 

 

 甲板の上にてそんなことを呟くミョスガルドに船員は苦笑いで「それでも以前よりはマシになってますよ」と応える。

 

 

「……だとよいのだが……」

 

 

 疲れた口調でミョスガルドはそう言う。船はやがてシャボンディ諸島に到着する。

 

 

 

 

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 巨大な黄金船「グランテゾーロ」

 

 

 黄金帝と呼ばれている“ギルド・テゾーロ”が所有している船である。本来ならば後半の海を航海しているその船はルーミアの能力で前半の海に移動しており、今現在その船は今や“ソウルキング”として名高くなったブルックによる世界ツアーを行うための移動手段とステージのために使われていた。

 

 

 無論、ブルックによる音楽だけでなく、ブルックのマネージャーでもあるサンクリンが抱えている他の音楽家による演奏、所属している俳優や女優を使っての劇場、舞台等の催しが連日連夜、行われていて船を賑やかせている。

 

 

 そしてその巨大な船は今ジャヤ島の港に停泊していた。そのジャヤ島の上空には小さな空島「ウェザリア」と人の手によって作られた計二つの空島がぷかぷかと浮かんでいた。

 

 

 その空島を下から見上げる者たちがいる。ギルド・テゾーロと側近たち、サンクリンやブルック、ナミとウェザリアの人間たち。彼らはその空島を満足そうに眺めていた。

 

 

 

 

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【クライガナ島──シッケアール王国跡地】

 

 

 今は亡き王国の跡地があるクライガナ島。その島から宵闇ノ海賊団の旗印を掲げた船が出港していく。その船には麦わらの一味であるゾロはもとよりゲッコー・モリアの配下の一人である少女ペローナ。さらにB・W(バロック・ワークス)の幹部であるミス・バレンタインことミキータが乗り合わせていた。甲板の上でゾロがペローナとミキータの二人から苦言を言い渡されて終始、渋い表情をしていた。

 

 

 ちなみにミキータがゾロとペローナと一緒にいるのはルーミアがゾロに手紙を届けるのに依頼したからである。元々「運び屋ミキータ」という二つ名が彼女につけられていたのでそれもあってルーミアはミキータに依頼した。ミキータもまた過去に自分を痛めつけた相手がミホークにやられている姿を見られるということもあって二つ返事で彼女は引き受け、それ以降たびたびゾロの様子を見に行くようになったのである。

 

 

「……ああ、うぜぇ」

 

 

 ゾロは二人に聞こえないようにぼそっとぼやいた。

 

 

 そしてほぼ同時期に他の麦わらの一味もまたシャボンディ諸島を目指す。

 

 

 

 

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【シャボンディ諸島】

 

 

 シャボンディ諸島は今や宵闇ノ海賊団のシマの一つといっても過言ではないほどにルーミアの支配下に置かれていた。その島にあるホテルの最上階の部屋に居座るルーミア。その彼女の下に報せが人の手によって届けられる。内容は麦わらの一味に関する報告であり、彼らがこのシャボンディ諸島に向かっている、とのことだった。

 

 

 報告の束を見終えてから、しばらく思案に耽るルーミア。その彼女の足下を九本の尻尾を持った金色の体毛の狐が体を擦り付けて甘えてくる。やがて、結論が出たのかルーミアは配下の男に命ずる。

 

 

「今、このシャボンディ諸島にいるニセモノを潰したいやつに潰させろ──とMr.3に伝えろ。私も久々に連中と話がしたいからなー、わはははははー」

 

 

 狐を抱き上げて毛皮と尻尾の感触を存分に堪能しながらルーミアは笑い声を上げる。

 

 




( ´・ω・)にゃもし。
***「おお、にゃもし。よ。死んでしまうとは情けない。
転生先を選ばせてやろう。

1)雪男
2)イエティ
3)ビッグフット

にゃもし。「違いがわからないニャー。


▪️日曜日になってしまった。

▪️なんとか週一投稿続いている。やったネ。

▪️すまねぇ。寝るおー。

ルーミアの懸賞金、どれくらいが妥当? ちなみに私は15億にしようかと思っている。

  • ルフィがエニエス脱出した時の4億
  • ルフィが新世界突入した時5億
  • ルフィがカタクリ吹っ飛ばして15億
  • 黒ひげがつけられたのは22億4,760万

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