ヤミヤミの実で宵闇の妖怪   作:にゃもし。

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5話 隠れ家の小さな主

 

 

 かつて地上ではジャヤ島と呼ばれていた神の島(アッパーヤード)では、時にエネルの部下である「神隊」が船を手に入れてその地から逃げ出すことがある。

 

 シャンディアの戦士達はそんな彼らの事情等お構い無しに逃げる彼らを排除しようとする。元々スカイピアの神であり彼らの上司でもあった「空の騎士」を自称するガン・フォールはそんな元部下達を他の空島へ無事に逃がしてやるために傭兵稼業をやっていた。

 

 時折、麦わらの一味のように空島とは関係のない地上の人間──青海人をシャンディアの戦士達が攻撃するのは彼らを「神隊」と間違えるからだ。

 

 

 そんなことなど露知らずに白海を航海する一隻の無名の船。無情にもシャンディアの戦士達と遭遇。ワイパーの持つバズーカで船体に穴を開けられ、火の手が上がる。さらに船員達のほとんどがワイパーとの戦闘で負傷、動けるのはごく少数……という、まさに四面楚歌の状態にその船と船員達は陥っていた。

 

 

「近くの島雲まで引っ張ってやろーかー?」  

 

 

 炎上しながら沈むだけの船に現れたのは両手を横に広げて宙に浮遊する少女。彼らは藁にも縋る思いで彼女にお願いした。

 

 島雲まで移動した所で彼らはスカイピアの現状をルーミアから聞かされた。自然(ロギア)系ゴロゴロの実の能力者であるエネルの恐怖政治。青海人の末路。唯一の出口もエネルが見張っている状態。おまけに自分達の船は火事を消し止めるためにルーミアが闇で開けた穴で船体が穴だらけになっていて使い物にならない始末。そんな状況の彼らには空を飛べるルーミアだけが唯一の希望であり頼りだった。そんな彼らにルーミアは尋ねた。

 

 

「──今後、ここを通る船に警告を促してくれるなら物資とか持ってくるけど、どうする?」

 

 

 明日を生き延びるのも危うい彼らには断る理由がなかった。

 

 

 幸い彼らにはお金があったのでルーミアはそのお金で入国証明書を入手して普通に入国。ちなみに移動する時は小舟を使用して、あたかも能力者ではないように誤魔化していた。

 

 エンジェル島に到着後。住人に好奇の目で見られていたが何食わぬ顔でスカイピアを観光。繁華街「ラブリー通り」で買い物を済ませ、ついでに空島特有の生き物である雲ギツネを捕獲。

 

 帰りは人の気配がないのを確認してから雲ギツネを小脇に抱えつつ巨大な風呂敷を背負い、さらに片手で小舟を引きずりながらモグラのように闇で島雲を削って進みながら彼らの下に戻った。

 

 

 

 

 その後ルーミアはシャンディアと話をつけるために上層の白々海に移動。雲隠れの村を捜索している時にワイパー達と出くわした。得体の知れない人間を集落に近付けさせたくないという思いもあるだろうが好戦的といっても過言ではないワイパーが先頭を切っている部隊、戦闘へと流れるのは自然といえよう。

 

 

 もっとも

 

 

 姿形こそ少女に変わったものの、黒ひげことマーシャル・D・ティーチは四皇の一人「白ひげ海賊団」に20年以上も在籍し、その間に赤髪のシャンクスの顔面に傷を負わせ、さらに自然(ロギア)系の悪魔の実を食べた人物。そんな経歴を持つ者が弱い筈もなく。

 

 

「──共にエネルを倒さないか?」

 

 

 傷つき、倒れ伏せたシャンディアの戦士達にルーミアは口と目を弧に描いてそう声をかけた。

 

   

 

 

 それからルーミアは空島と地上を行き交うことを繰り返し、最後に麦わらの一味を連れて来た。

 

 

【上空7,000㍍──白海 とある隠れ家】

 

 

 上空10,000㍍にある白々海。そこへと通じる巨大な門の周辺には人が乗っても沈まない雲──島雲が無数、存在している。その内の一つに内部をくり貫いてドーム状に加工した物があり、そこには幾つもの大小様々な形のテントが乱雑に張られていて人々が生活していた。その中でも一際大きなテントがある。ルーミアが空島で活動する際に拠点にしている場所だ。麦わらの一味と別れた後、彼女はここにやって来たのである。

 

 

「ルーミア様! 例のビルカ捜索の件ですが、全く忌々しいことにエネルの奴めは徹底的に! 念入りに! 完全無欠に! 破壊したようでして影も形も見当たりません!! 人がいた痕跡すらも皆無です!!」

 

「……ルーミアちゃん。気球についてだけど、……実験的に作った小さなものなら問題ないの。でもそれ以上、人が乗れるような大きな物となると、どうしても材料が足りなくなるの。布とか、布とか、布とか……あ、あと糸とか……」

 

「ルーミア嬢、(ダイヤル)と雲の加工だが、さすがに本職のようにはいかねぇぜ。もう少し時間が必要だ。俺としては上にいる専門の技術者から習うべきだと思うぜ」

 

 

 そのテントの中で島雲を切って作ったふかふかのイスに身を半ばうずめて座っているルーミアは数人の男女から上記の報告を受けていた。ついでに空島で育ったカボチャにストローを突き刺して中身を啜りながら雲ギツネを膝に乗せて撫でくり回している。

 

 

「ウィハハハ! お嬢、雲隠れの村からシャンディアだかシャンドラだか知らねェが客が来たぜ。メガネと帽子だ!」

 

「ブラハムだ。そっちのメガネはカマキリ。食料とか持ってきたからブツと交換してくれ。ワイパーが短気を起こす前に頼む」

 

 

 そこに二人のシャンディアの戦士を連れたバージェスが加わる。ルーミアの命令の下、二人の前に箱詰めにされた物資──地上の武器や弾薬、鉄等が山積みにされていく。

 

 

「喜べ者共、朗報だ」

 

 

 積まれていく木箱を眺めていたルーミア。雲ギツネを小脇に抱えたかと思えば突然すくっとイスから立ち上がり、黒塗りの木製のテーブルの上に懐から取り出した一枚の手配書を置く。それはルフィが初めて賞金首になった時の3,000万ベリーのものだ。

 

 

モンキー・D・ルフィがここに来た!!

 

 

 テント内に激震が走る。誰もが動きを止めて硬直し、彼女の次の言葉を待つ。

 

 

待ちに待った神殺しの時間だ!!!

 

 

 ルーミアの呑気な笑い声「わははー」がテント内に響き、次いでバージェスの大声がそれに合わさる。テント内にいた数人の男女は戦々恐々し、シャンディアの戦士達は感情の籠らない冷めた目で二人を見つめていた。

 

     




( ´・ω・)にゃもし。

●ルーミアは38歳。

●白ひげ海賊団のとこに20年以上もいたら覇気の一つや二つ習得するだろ、というのが私の考えよ。

●思ったよりも話が進まない……

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