ヤミヤミの実で宵闇の妖怪   作:にゃもし。

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52話 マングローブで、雲の上で、海の中で、

 

 

 2年前のシャボンディ諸島の近辺にあるマリンフォードには海軍本部が置かれており、非常事態等がひとたび起これば海兵たちがすぐに駆けつけるようになっていた。そのため偉大なる航路(グランドライン)、前半の海を航海する海賊たちが集結する地ながら「海軍本部」という海賊にとっての脅威のおかげで海賊たちは大人しく、無法地帯を除けば、さほど治安は悪くはなかった。

 

 

 しかし頂上決戦以後、「クザン」が新たな元帥として任命されたのを機に海軍はマリンフォードにあった「海軍本部」を赤い土の大陸(レッドライン)を挟んで対にある支部「G1」と場所を入れ替えた。

 

 

“「海軍本部」が移動したら海賊にとっての抑止力がなくなって無法地帯が増えるのではないか?”

 

 

 ……と、島の住人は戦々恐々していたが、そこに現れたのは新たに七武海に任命したルーミアであった。

 

 

 当初、島の住人は映像電伝虫が映した戦争の映像から彼女の持つ力の一部を知ってはいたが、彼女の見た目もあって懐疑的であった。……だが、彼女の背後には「宵闇ノ海賊団」を始めとしたマルコ率いる「白ひげ海賊団」、バギーを座長とした「バギーズ・デリバリー」、さらに組織の頭がボン・クレーに変わったものの、元七武海のサー・クロコダイルが立ち上げた「B・W(バロック・ワークス)」がいることもあって、彼女ではなく彼女の持つ戦力を海軍に代わる力として密かに期待していた。

 

 

 マリンフォードで起こった戦争の映像を見ても彼女の実力に対して半信半疑の人はいる。……では新聞でしか彼女のことを知らない人物、例えば海賊や犯罪者等が彼女と対面した場合はどうなるだろうか? そういった連中の中には彼女が島にいるにも関わらず平然と犯罪行動を起こす者たちが少なからず存在していた。

 

 

 

 

───────────────

 

 

 

 

 その日、シャボンディ諸島には多くの海賊たちが来訪していた。偉大なる航路(グランドライン)、四つの海から出発して前半の海を乗り越えた海賊たちが集結していた日。ルーミアは天竜人であるミョスガルドが行う海賊討伐、その彼の護衛を名目にわざと各組織の幹部たちを島から遠ざけさせ、さらにそのことを外部に漏らした。

 

 

「ヒャッハ────っ!!!!」

「幹部どもが軒並み出払っている今がチャンスだぜ!!!!」

「汚物は消毒だ~!!」

 

 

 情報をわざと流していることを知らずに情報を掴んだと勘違いした少々、露出の激しいモヒカン頭の集団がシャボンディ諸島に上陸。目につく建物を手当たり次第に破壊し、逃げ遅れた住民たちに襲いかかる。

 

 

 モヒカンの集団を目にした男──逆立った髪にM字型に剥げた額をした──は思わず「もうダメだ。おしまいだぁ」と弱音を吐いてしまう。

 

 

 島の住人が見ている前で暴れまくるモヒカンの集団。だがそのうちの一人がどこからか飛来してきた拳大ほどの石が股間に強打。堪らずその場で股間を両手でおさえて踞る。残ったモヒカンたちは犠牲になった彼に同情しつつ、石が飛んできた方向に目を向ける。

 

 

「──ようこそ、ワルガキども」

 

 

 そこにはいつもの格好をしたルーミアが地面から僅かに浮かびながら両腕を左右に広げた格好で宙に浮いていた。

 

 

 そこからはモヒカンたちにとって悪夢の出来事だった。

 

 

 当初、モヒカンたちは自分たちの身長の半分にも満たない少女──ルーミアのことを侮っていた。どうせ、お飾りの船長なのだろう、と……

 

 

 そう言って不用意に近づきルーミアのおでこを軽く小突いて彼女を小馬鹿にしていたモヒカンの一人が間を置かずに吹っ飛ばされたのを皮切りに次々と倒されるモヒカンたち。その光景を目の当たりにした彼らはルーミアを舐めてかかる相手ではないと考えを改めて本気で応戦を始める。

 

 

 しかし、モヒカンたちはルーミアの体格が小さいために自分たちの攻撃は当たりにくく、たとえ命中したとしても腕一本であっさりと防がれてしまう。対してルーミアはモヒカンたちの体が自分よりも大きいために攻撃を当てやすく、さらに一撃で相手を戦闘不能に陥らせるほどの腕力を彼女は有していた。

 

 

 その結果、海賊団の船長を含めた全てのモヒカンが地に伏す光景がそこに出来上がった。

 

 

“生き恥と死に恥、選ぶならどっちがいい?”

 

 

 うつ伏せで倒れ伏すモヒカンを率いる男にそう尋ねるルーミア。周囲に散らばって燃え盛る船の残骸のせいでほんのり赤く染まる彼女を前にして船長は「生き恥」を選んだ。

 

 

 なお、このやり取りを一部始終見ていたM字ハゲの男は「お前がナンバーワンだ」と偉そうに腕を組みつつ手のひらを返したそうな。

 

 

 そしてその襲撃以降、シャボンディ諸島内にて彼女の力を疑う者は目に見えてわかるほどに減ったという。

 

 

 もっとも目的の一つは、ルーミア自身を囮にしてインペルダウンの脱獄囚「海賊連合」たちを島に誘き寄せ、集まったところを出払っていた艦隊で一網打尽するつもりだったのだが…… それゆえルーミアは残念がっていた。

 

 

 

 

───────────────

 

 

 

 

 B・Wの本社付近にはB・Wの幹部たちがよく集まる「スパイダーズカフェ」なる建物が存在する。そこに久方ぶりに現在のB・Wに在籍している幹部たちが集まって近況報告等をしていた。

 

 

「……と、いうわけで、今のあたしは以前のあたしよりも一回りも二回りも違うってわけよぉ~~~っ!!!! わかるぅ~~~っ!?」

 

 

 貸切状態にしているらしく幹部以外は人の姿が見えない店内。そのカウンター席に大柄のオカマ──ボン・クレーが座っており、テーブルをばんばん叩きながら大声で喋っていた。彼の対応をしていた女店主ポーラ──本名ザラは「はいはい」と軽く聞き流し、ミキータは「キャハハハ」とおかしく笑う。

 

 

「お前らの笑い声は腰に響くんだよ!! このバッども!! このバッ!!」

 

 

 二人の笑い声が気に障ったのか、腰を痛めてソファーに寝そべっていた状態から非常に短い言葉を連発して叱咤するミス・メリークリスマスことドロフィー。その彼女の腰を甲斐甲斐しく「ご~め~ん~」と叩くMr.4と呼ばれていたベーブ。その近くには動物(ゾオン)系の悪魔の実「イヌイヌの実」モデル、ダックスフントを食べた銃、ラッスーが床に寝そべっている。そんな彼らの会話を耳にしながらMr.5、爆弾人間と恐れられていたジェムが店内の修復作業を行なっていた。

 

 

「全員、揃っているようだガネ?」

 

 

 そこへミス・ゴールデンウィーク──マリアンヌを連れたMr.3が店内に入ってきた。

 

 

 

 

 一応、電伝虫による連絡のやり取りはあったものの、ボン・クレーがカマバッカ王国に滞在していたため、一堂に会する機会がなかなか恵まれなかったB・Wの面々。此度、ボン・クレーがカマバッカ王国での修行を終え、シャボンディ諸島にやって来たことで定期報告も兼ねてMr.3が彼らに呼び掛けた。

 

 

「ボスが“天竜人を洗脳する”っていうから、てっきり全員やるのかと思ってたのよね。今のところは一部の偉そうなやつだけだし、色白の鳥の人も手伝ってくれるから楽だよ」

 

 

 そう告げるとせんべいを齧っては茶を啜るマリアンヌ。彼女はルーミアと出会った時のことを思い浮かべる。

 

 

“──10人のグループがいたとしよう。その中で一番、力のあるやつを洗脳する。そうすれば、しぶしぶだろうけど他のやつは従うと思う。……これなら、わざわざ全員を洗脳する必要がなくなるんじゃないかなー? それとも「聖地マリージョア」にいる天竜人全員を洗脳してみるかー?”

 

 

 Mr.3に誘われ、ルーミアから能力を買われ、彼女からその仕事を言い渡されたマリアンヌ。以降、シャボンディ諸島の「ヒューマン・ショップ」に訪れる天竜人を相手に入れ墨を施し、ラフィットとともに彼らに暗示をかけるようになった。洗脳や暗示もそれほど難しいことを要求されているわけでもなく、ただ……

 

 

“私たちと友達になって、

 友達である私たちのお願いを聞き入れる”

 

 

 ──といった複雑ではないのもルーミアからの勧誘を引き受けた理由の一つといえよう。そして事あるごと問題を起こす天竜人たちに()()()()()「上に立つ者としてみっともない」と彼らを嗜めていた。

 

 

「未遂で終わったとはいえ、七武海がアラバスタ乗っ取りを企て、……まあ我々が起こした事件のことだガネ。それとドレスローザに至ってはドフラミンゴが乗っ取った。ルーミア提督はただでさえ危うい七武海の制度にこれらの事件の影響で“七武海制度の撤廃”が後押しされるのを懸念している。そこで提督は……」

 

 

 メンバーの前で長々と話すMr.3。要は七武海が起こした事件を同じ七武海が解決するということである。

 

 

「……もっとも、それをやったとこで印象が多少良くなるだけの話だガネ。それにやられた連中の恨みが消えるわけじゃないし、廃止の話がなくなるとは思えん。そこで“七武海”そのものを天竜人の「ミョスガルド聖」の私兵団にしてしまおう。……というのが提督の考えだ」

 

 

 「天竜人の私兵団」と聞かされた彼らは訝しんたり、さまざまな反応を見せる。総じて「本当にそれは可能なのか?」と首を傾げていた。そんな彼らの態度にMr.3は告げる。

 

 

「やらなきゃ“七武海制度”の廃止とともに海軍が敵になる」

 

 

 

 

───────────────

 

 

 

 

 スパイダーズカフェにて幹部たちが集まって話し合ってる頃、ルーミアの下に「シャーロット・リンリン」通称「ビッグ・マム」の名で知られている四皇の一人、その使者としてミンク族のペコムズと足長族のタマゴ男爵が訪れていた。

 

 

「だから~、結婚しろとも、婚約しろとも、言ってねぇ! ジェルマの三男坊とシャーロット家の三十五女である「シャーロット・プリン」様の結婚式に出るだけでいいんだ! ガオ!!」

 

 

 ビッグ・マムはルーミアに自分の息子との「見合い話」と、自分の娘の「結婚式の招待」を伝えるためにわざわざペコムズとタマゴ男爵を寄越したのである。さすがのルーミアもこの話に面を食らったものの、正史ではジェルマ国王を騙していたことを知っていることもあり、あの女なら、自分たちにも不意討ち騙し討ちをやりかねないと内心、納得した。

 

 

「いいだろう。その結婚式とやらの招待を受けよう……」

 

 

 しぶしぶ彼らの要請を受けるルーミア。「君は実に良い判断をしたでソワール」別れ際にタマゴ男爵がそう言い残して立ち去るのを見届けてからルーミアは今は元帥になっているクザンへ電伝虫で連絡を取る。

 

 

『──あららら、別にいいんじゃないの? へたに刺激して戦争を起こすよりはマシだろ。こっちは当分、面倒事など回避したいからなぁ……』

 

 

 現七武海の一人が四皇の一人と対面する。……だという話なのになんとも暢気な回答をするクザンにルーミアは呆れつつ、さっさと本題に入ることにした。

 

 

「ビッグ・マムの傘下にいる「カポネ・ベッジ」がビッグ・マムの暗殺を企てている──と言ったらどうする?」

 

 

 ルーミアは受話器の向こうでクザンが息を呑む音を確かに聞いた。

 

 

 

 

【空島──スカイピア】

 

 

 遥か上空に浮かぶ巨大な積乱雲。その雲の中に空島スカイピアがある。以前と比べると青海との交流が増えたせいか、それに伴いトラブルも増えた。例えば青海でノーランドの物語を知った人間が彼の黄金を狙ったり、青海では10倍から100倍もの値がつけられる空島特有の生き物を密漁、及び密猟などと事件を起こす者が後を絶たなかった。そのたびにワイパーたちシャンドラの戦士や警察の役目を果たすホワイトベレー隊が犯罪者たちを取り締まっており、彼らに交じって「アヴドゥル」という偽名を使い変装しているエースがそこにいた。

 

 

 そのエースの下にスカイピアに滞在しているルーミアの配下の一人が報せを持ってやって来た。何事かと尋ねるワイパーにエースはまるで自分の自慢話でもするかのように答えた。

 

 

「おれの弟が修行を終えて出航したから来いってさ」

 

 

 

 

【魚人島──リュウグウ王国】

 

 

「人間のっ!! それもひ弱な天竜人ごときにっ!!」

 

 

 そう言ってミョスガルドと相対するのは「新魚人海賊団」を率いるホオジロザメの魚人である「ホーディー・ジョーンズ」。激闘を繰り広げたせいか、満身創痍のぼろぼろの格好をしていた。

 

 

 さらに周囲には麦わらの一味たちが倒した魚人や戦闘奴隷として無理矢理、連れてこられた人間たちが気を失っており、ところどころに幹部たちの姿が見える。

 

 

 B・Wが魚人島への出航を中止にしたため人間の奴隷が減ったものの、それでも総勢7万人もの兵力がジョーンズにはあったが、それも軒並み壊滅、残すは船長であるジョーンズのみとなった。

 

 

「王妃オトヒメは、お前のようなヤツにやられたというのか……」

 

 

 ジョーンズに対してどこかもの悲しい雰囲気を醸し出すミョスガルド。

 

 

 棒立ちのミョスガルドに罵声を浴びせながら襲いかかるジョーンズ。その彼の顔面にミョスガルドの右拳が突き刺さり、めり込み、そして拳を突き刺したままジョーンズの頭ごと後頭部から地面へと叩きつけた。

 

 




( ´・ω・)
にゃもし。


「必殺“にゃもし。”砲」


▪️ほぼ勢いで書いた。

▪️朝の5時だ。

▪️よし寝よう。

▪️誤字脱字、おかしな表現、矛盾点等ありましたら報告をお願いします。

ルーミアの懸賞金、どれくらいが妥当? ちなみに私は15億にしようかと思っている。

  • ルフィがエニエス脱出した時の4億
  • ルフィが新世界突入した時5億
  • ルフィがカタクリ吹っ飛ばして15億
  • 黒ひげがつけられたのは22億4,760万

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