61話 あちこちに宵闇ノ……
食堂として使われている王宮の一室にて
細長いテーブルの上にはさまざまな料理が置かれており、そのテーブルを挟んでルフィとルーミアが向かい合う形で座っていた。テーブルの上に置かれている料理を次々に口の中に放り込んで豪快に貪っているルフィに対し、ルーミアはちびちびとナイフとフォークで小さく切り分けながら口許に持っていく。その二人の周囲には両陣営の人間たちが寛いでいた。もっとも中には麦わらの一味のゾロのように油断なく視線を巡らす者もいたが……
そんな状況になる前
いくら呼んでもやって来ないルフィに業を煮やしたルーミアはルフィがいるであろう場所に自ら赴いた。そこで彼女が目撃したのは──寝ながら食事をする……というルフィの姿であった。そしていくら呼んでも起きないルフィに対してルーミアは彼の脛に覇気を込めたローキックを叩き込んで起こして現在に至る。
「──ゾウがいる海域に待機していたうちの船員がお前たちんとこのクルーと接触した。お前んとこのぐる眉たちだなー」
ルーミアが食事を摂る傍らそんな報告を寄越す。
途端、それを聞いたルフィが口の中に食べ物を詰めたまま「ホントか!?」とルーミアに向かって喋り、同時に口の中に含んでいた食べ物を吹き出す。当然、ルフィの前にいたルーミアに降りかかるが、すんでのところで左手から生み出した雷で消し炭に変える。ついでにテーブルの上に置かれているものも一瞬で真っ黒な炭へと変貌する。それを見たルフィが「もったいねえ!」と叫ぶがルーミアは構わず話を続ける。
ルーミアがルフィだけでなく麦わらの一味に向けて語ったのはロジャー海賊団に乗っていたワノ国の人間であり、白ひげ海賊団の元船員でもあった「光月おでん」のことであった。
「──今となっては親父がどんな思いをしていたのかを確かめる術はない。自分の弟分を信じず笑うような国は助ける価値はないと思ったのか、あるいはカイドウとぶつかればただではすまないと考え、さらにカイドウとぶつかった後に漁夫の利を狙った第三勢力を考えて見送っていた可能性もある。真実は誰にも分からずだなー」
そう静かに語るルーミアにその場にいた一同は静かに聞き入れる。
「それでも親父は気にはしていたんだろーなー。ときどきワノ国がある方角を向いているときがあった。それを見たエースが『ワノ国』に行くと言い出したのがある意味、全ての始まりだったなー」
エースに関する話となったせいだろう、ルフィは食事する手を止めて、至極真面目な表情で先を続けろと言わんばかりにルーミアをじっと見据えていた。
ルーミアの話によると
ワノ国の様子を窺うためにエースたちスペード海賊団が向かった。……とはいえ彼の国は四皇の一人「カイドウ」の支配下に置かれている地。大人数でぞろぞろと足を踏み入れ、そのことが原因で争う羽目になったら目も当てられない。そこでワノ国にはエース一人で入ることになり、他の船員は一つ前の島で待機することとなった。
そしてエースがワノ国に滞在している間、彼が船にいない時を見計らって手下を引き連れたドフラミンゴとゲッコー・モリアが襲った。
その後、ワノ国のあまりにも酷い現状を知ったエースが電伝虫で報告をしたものの、やはり直接、白ひげにそのことを伝えた方がいいだろう、と自分の船に帰還。そこで彼が目にしたのはもぬけの殻と化した船と船体の横にペンキででかでかと描かれたドフラミンゴ・ファミリーを示すマークに、マストの下に置かれているメッセージを書きなぐった一枚のメモ。そこには……
“一人で来い”
……とだけ書かれており、重しとしてメモの上には「バナロ島」を指す
その結果、エースは捕縛され、マリンフォードで行われた頂上戦争の引き金となった。
「──ワノ国の解放、開国は親父の弟分である「光月おでん」の悲願であり、エースや親父の願いでもあると私は考えている。できることなら叶えてやりたいと思うし、そこに戦力を集中したいのが本音だなー」
だが「革命軍」と「ビッグ・マム」、さらに「インペルダウン」の脱獄囚のこともあり、迂闊に兵を送るわけにはいかない、とルーミアは言った。
「……まあ、その前に海軍大将のイッショウがいるドレスローザを脱出できるかどうかがお前たちの問題だなー。安心しろ、私はお前たちを捕縛する気はないし、お前たちが捕まるならお前たちの代わりに私がカイドウを討ち取ってやる。わはははー」
笑いながらそう宣告するルーミアにルフィは「おれがブッ飛ばすからいい」とむすっとした表情で返す。そんな反応を見せるルフィをルーミアは心底、愉しそうに笑う。
やがて十分に堪能したのかルーミアはルフィに「そろそろ本題に入ろうかなー?」と会話を切り上げて、次の話題に進む。
「念のために聞くが、革命軍にいる“サボ”はお前の兄なのか?」
先ほどのふざけた態度とは打って変わって抑揚のない声でそう問うルーミア。その問いにルフィは短く「ああ、そうだ」と告げると、彼の返答を聞いたルーミアは諦めがついたかのような溜め息を漏らした。
その後の麦わらの一味の行動はルーミアの概ね知る通りであり、彼女はその様子をゴロゴロの実の能力を応用して盗み聞きをしていた。
麦わらの一味はドレスローザから脱出する際に海軍大将イッショウと戦闘に入るものの、サボが彼らの戦闘に割って入り、ルフィたちと、同じくドレスローザでドフラミンゴ・ファミリー相手にルフィたちと共闘をした海賊たちを船へと逃がす。
……がイッショウは彼らを逃すまいとドレスローザに存在する瓦礫を彼らの頭上に漂わせる。海上で彼らの上から降らせて潰すためである。
しかし、それを察したドレスローザの住民たちが海賊たちを追う振りをして彼らを庇う。自分たちがいれば海賊たちに手を出さないだろう、と……
かくして彼らの目論見は功を奏し、ルフィたちは無事にドレスローザからの脱出を果たし、サンジたちがいるであろうゾウへと向かう。
そして、そのゾウでは……
【ゾウ】
時は遡って麦わらの一味──サンジたちがいるサニー号がドレスローザ付近の海域にてシーザーを奪還するためにやって来たビッグ・マムの一味に追われた後の話である。彼らはビッグ・マムの追手を撒いた後、ゾウに辿り着いたのだが、彼らの後を追うようにして黒地に白の十字架をあしらったシンボルマーク──宵闇ノ海賊団が現れた。
「……運がいいな、お前ら…… ビッグ・マムから逃れるなんてな……」
「クズどもにしては上出来だな」
その船に乗っていたのはドクQとシリュウの二人だった。明確にルーミアたちとは敵対しているというわけではないが、海賊たちと敵対している──政府の犬と評される七武海の配下なだけに警戒を露にするサンジたち。
「安心しろ。俺たちの目的はお前たち麦わらの一味じゃない」
「……ああ、うちの提督はカイドウの部下の能力を欲しがっているのさ……」
能力を欲している。その言葉を聞いた麦わらの一味は露骨に眉をひそめた。
【とある島】
「キャハハハ! お久しぶりね!」
ゲッコー・モリアが根城にしているその島に部下を引き連れたミス・バレンタインことミキータが訪れた。そして顔見知りであるペローナを見つけると親しそうに声をかける。
「早速だけど、あんたとこの親玉に会わせてくれない? うちのお姫様が話をしたいみたいなのよ。カイドウと麦わらについてね?」
相手が自分たちの船長たちと同じ七武海の一員を務める海賊なだけにミキータたちを無下に扱うわけにはいかず、ペローナはしぶしぶモリアの下へと向かう。
【ヨンタマリア号──甲板】
ドレスローザから無事に脱出を果たしたルフィたちはオオロンブスを提督とした彼が所有している船の上で彼と同じくドレスローザでオモチャにされた者たちと一緒にルフィの了承なしに傘下に入ると宣言し、杯を飲んだ。その中には巨人たちの姿がなく、代わりにスペード海賊団の姿があった。さらにはサボの姿も確認できる。ルフィとサボは互いの無事を喜び、今までの経緯を語り合う。
そこへ石仮面を外したエースが現れて、ルフィとサボ、エースと面識のある麦わらの一味、その場にいた一同を大いに驚かせた。
「聖地マリージョアへの攻撃を中止にすることはできないか?」
死んだと思われていたエース。矢継ぎ早に質問をぶつける彼らをおさえてエースはサボに向かってそう尋ねるも、サボは首を横に振って……
「ドンキホーテ・ミョスガルド聖やルーミアのおかげで多少、改善されていることは認めるが、だからといって彼らが行なった過去の所業が消えることはないし、それで長年、練っていた計画を今さら変更するわけにはいかない──それが革命軍の決定だ。それにおれの一存で変えることはできない」
そうキッパリとエースに言い放つサボ。ルフィも懇願するがサボは首を横に振る。いつまでも平行線をたどる三人の話し合いに埒が明かないと感じたのか、ゾロが口を挟む。「ルーミアは何か言っていなかったのか……?」と。
【ドレスローザ──王宮】
「──“努力はするが、期待はするな”……だったかよい」
ルーミアの関係者が一堂に集まっている一室。その中心には大きな丸いテーブルが置かれており、その上には大まかな海図と各勢力のリーダーと主要人物を象ったフィギュアが置かれていた。
先ほどのセリフはルフィがいるグループにエースのフィギュアを置いたルーミアに対してマルコが口にしたものである。
「お前さんがエースを遠ざけさせたのは聖地マリージョアで兄弟同士で争わないよう……という配慮かよい?」
「それもあるが、味方の足を引っ張る可能性があるからなー、それに海軍や世界政府に正体を知られたら面倒だからだなー」
そう答えると「違いない」とマルコは大きく頷いてみせる。
「……とりあえず今はビッグ・マムのお茶会の参加、その準備をしないとだなー、わはははー」
にこやかに笑みを浮かべながら海図の上、ビッグ・マムのフィギュアが置かれているその近くに新巨人海賊団の船長を務める「ハイルディン」を始めとして、「カポネ・ベッジ」「ジェルマ王国」の一族、あるいはビッグ・マムに恨みを持つ人物たちのフィギュアなどを配置していく。さらにその外側に自分たちの旗を示す黒地に白の十字架のシンボルマークと腕を組んだ「ジンベエ」を置いた。
「なにもビッグ・マムを無理に倒す必要はない。ビッグ・マムの怒りが麦わらに向けば、それで十分。“ゾウ”の件が終わり次第、向かうとしようか? わはははー」
【革命軍──船内】
「ウィ~~~ハッハッハァ──!! ドアドアの実ほど侵入に適した悪魔の実はねえなァ? お前もそう思うだろう? クラハドール?」
革命軍が所有する船の中、食糧等が貯蔵している一室にて木箱や冷蔵庫に扉を作っては中におさめられていた食料を物色していたバージェスが「クラハドール」と呼ばれている執事姿の男に声をかける。声をかけられたクラハドールはさも迷惑そうに眉をひそめて手首でメガネを押し上げる。
「私の知る限りこれは執事のする仕事ではない気がするのですが……?」
「お嬢がナギナギの実がどれくらい使えるのか試してみたかったんだろ? おっと、それよりも人が来たぜ?」
そういって何もない空間に扉を作って出来上がった異空間に入る二人。直後、数人の革命軍の人間が部屋に入るも、当然、消えた二人を見つけることは叶わず、そのまま部屋を出ていく。
「よし、行ったな? お嬢への定時連絡だ。見張りと音消しを頼むぜ?」
クラハドールにそう頼むとバージェスはバッグから電伝虫を取り出しダイヤルを回していく。やがて、ルーミアとの通信が繋がり、彼女の声が流れてくる。
『────────』
「ウィ~~~ハッハッハァ───っ!!!! 海軍の手柄にするのか? ああ、わかったぜ。任せてくれ」
通信を終えるといそいそとバッグの中に電伝虫をしまいこみ……
「せっかく革命軍の船に来てるんだ。お嬢の役に立ちそうな情報を盗んでいこうか?」
そうクラハドールに告げると文字通り音もなく部屋を出ていった。
ざわ…( ´・ω・)にゃもし。ざわ…
信者
「PS VITAの背面タッチパッドは何のためについているんですか?」
神
「ギャルゲーのためじゃ」
▪️気合いを入れてやる気を無理矢理、出して捻り出したのが今回の話でございます。
▪️キャプテン・クロ、クラハドールはなんとなく出したかったの、あとオリキャラ考えるの、面倒だったので…
▪️毎度、誤字脱字等の報告ありがとうございます。
▪️失踪しないようにほどほどガンバる。
▪️「なろう」で女幼馴染み、ざまぁ作品、増えてるね。
▪️キャベツだけじゃなくサルフィも消えていたのか…
▪️削除した作品を復活してほしいが無理だろなあ…
▪️そう思うと過去に削除した作品を書きたくなってきた。
▪️でもやる気が起きない。
▪️コロナでイベント中止。全私が泣いた。
▪️次回は「ゾウ」をさくっとやりたいね。
あとビッグ・マム書けるかなー。
▪️ONE PIECE×東方project もっと増えてもいいと思う。
※7/17(日)
▪️ルフィたちとドフラミンゴで共闘
の部分が、ドフラミンゴさん仲良しさんなってる感じなので下記に書き直しました。
▪️麦わらの一味はドレスローザから脱出する際に海軍大将イッショウと戦闘に入るものの、サボが彼らの戦闘に割って入り、ルフィたちと、同じくドレスローザでドフラミンゴ・ファミリー相手にルフィたちと共闘をした海賊たちを船へと逃がす。
ルーミアの懸賞金、どれくらいが妥当? ちなみに私は15億にしようかと思っている。
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ルフィがエニエス脱出した時の4億
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ルフィが新世界突入した時5億
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ルフィがカタクリ吹っ飛ばして15億
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黒ひげがつけられたのは22億4,760万