69話 その報せは瞬く間に広がって……
その報せは瞬く間に全世界に広まった。
四皇ビッグ・マム!!
『シャーロット・リンリン』討ち死に!!
太字で横にそう大きく書かれた見出しと紙面のおおよそ半分を占める己を見る者に対して睨み返すような凶悪な面構えをしたビッグ・マムの顔写真が一面を飾る新聞がニュース・クー(新聞を配っているカモメたち)によって世界のあらゆる場所の隅々にまで届けられた。
その記事を読んだ多くの人間は様々な反応を示したが、大抵は同じ四皇の一人だった「白ひげ」こと「エドワード・ニューゲート」……彼が亡くなった後に起こった──シマの奪い合いによる抗争が再び起こることを危惧していた。
しかし彼ら一般市民の心配を余所にそういった争いはほとんど起こらず、たとえあったとしてもすぐさまルーミアの配下や協力者たちの手の者、はたまた海軍らがすぐに駆けつけ、瞬く間に鎮圧、彼らの助力もあってさして被害は出さずに済んだという。
それはひとえにルーミアがビッグ・マムを殺害した後、万国(トットランド)を己の支配下に置いたことを大々的に触れ回ったという要因もあるが、それ以前にルーミアが己のシマを荒らす者に対して容赦せず、制裁を加えていたというのも大きいだろう。そのためルーミアを知る者は今回の件に対し静観を決め、彼女が支配するシマに手を出さず──それゆえに被害は小さく済んだ……と人々は考えた。
そうして、さまざまな戦術、戦略を用いたとはいえルーミアが四皇の一角を崩したという事実に、かつて白ひげが存命時、彼の庇護下にあった人々は白ひげに代わる強力な統治者の台頭に期待を込め、逆に彼と敵対していた者は日増しに強く強大になっていく彼女と彼女が保有する戦力を苦々しく思い、あるいは強敵の出現に不敵な笑みを浮かべ、海軍の人間は厄介な悩みの種が一つ増えたと複雑な表情を作った。
そしてルーミアが長い間、誰も成し遂げ得なかったビッグ・マムの殺害は世界に波紋を呼ぶこととなる。
【
……が、見るからに堅牢なその砦は今は見る影もなく無惨な瓦礫の山へと変わり果てていた。
破壊されてから時間がさほど経っていないこともあってか、所々に小さな火の手が上がり、そこから煙が立ち上っているのがそこかしこに見られる。地面に近い場所は未だ熱を帯びているのか、白い煙の湯気がゆらゆらと陽炎のように揺らめいている。
「ウィ~~~ハッハッハァー!!!!」
大小さまざまな岩石を積み上げてできた瓦礫の山の頂上に鍛え上げられた上半身に対し小さな下半身をした体躯の覆面の大男が曲げた両腕を頭上に掲げながら大声で笑い声を上げている。その近くにはやや不機嫌そうな顔をした執事姿の男の姿も見られる。革命軍の拠点に侵入していたバージェスとクラハドール(キャプテン・クロ)である。
「……いつまでバカみたいに笑ってる? さっさとここから離れるぞ。──あの盲目野郎、俺たちごとここを潰すつもりだ」
「なんだと!?」
クラハドールが腕時計のように身に付けていた小型の盗聴用の電伝虫。そこから流れてくる海軍の会話を盗み聞きしていた彼は手のひらでメガネを押し上げ、呆れた口調でバージェスにそう伝えると……。
「こうしちゃいられねぇ! お嬢が懸念していた『グラグラの実』の対抗策の実験にもろもろの用事は済んだんだ! とっとと、ずらかろうぜ!!」
そう言って
その直後、瓦礫の山よりも遥かに巨大な、それこそ小さな山ほどの隕石が二人が去った後に空から落ちて瓦礫ともども地面を押し潰して地中に深くめり込み、やがて辺りに熱気を帯びた底の見えない巨大な穴を作った。
島に巨大な隕石が落ちるその光景を島から遠く離れた沖合で浮かんでいる船の甲板から眺めているものたちがいる。そのうちの一人が顔に入れ墨らしき模様を施し、只ならぬ気配を放つ男に声をかける。
「──ドラゴンさん、このまま『カマバッカ王国』へ向かいますか?」
声をかけられたドラゴンは島に視線を向けつつ答えた。
「……いや、別の拠点へ向かう。行き先はこれだ。それと、ルーミアの配下の魚人に後をつけられないように気をつけてくれ」
懐からエターナルポースを取り出して、ぶっきらぼうにそう答えたドラゴンに周りにいた船員たちは驚きつつもどこか納得した様子を見せた。カマバッカ王国にはルーミアの配下の一人である『ボン・クレー』が滞在していた時期があったからだ。彼の手足として動いているバロック・ワークスの社員が密かに活動してもおかしくはない。彼らはそう考えていた。
彼らはドラゴンが下す指示の下、エターナルポースが指し示す目的の島へと向かう。
ドラゴンが率いる革命軍とは別に島の様子を見ていたものたちがいる。帆に青いカモメと英文字が記された軍艦が数隻、海軍である。彼らは軍艦の砲撃で革命軍の拠点を潰した後も海上にて停泊して、そこから革命軍の出方を窺っていた。そのうちの一隻には海軍の最高戦力である大将の一人、藤虎こと『イッショウ』が乗り合わせていた。先ほどの隕石も彼の能力によるものであった。彼らはバージェスのビブルカードを持つ魚人の案内の下、革命軍の拠点を襲撃したのである。
「……イッショウさん、あの島には七武海の……ルーミアの手下がいたんですが、奴らごと撃ってしまって良かったんですか?」
「──やっこさんも敵の本部には手練れを送っていることでございやしょう。あっしらが気にかける必要はございやせん。
……いろいろ言いてえこと聞きてえこと山ほどございましょうが、『二兎追うものは一兎も得ず』と、先人のありがたい言葉にもありますように今は革命軍を叩くことだけを考えるよう、お願いしやす」
そう語るイッショウの両目は僅かに開いていた。
【カライ・バリ島】
「喜べ野郎共!! 朗報だ!!!!」
ステージ中央に立つバギーが観客席にいる部下や客人たちに向かってそう叫ぶと観客席にいる人間たちは静まり返る。そしてバギーは観客席が静かになったのを確認するともったいぶるかのように両腕を横に広げてから朗々たる声で彼らに語りかけた。
「我らが盟主エドワード・ルーミアが!!
そう高々と宣告すると同時に「おー!」と歓声が上がるが、彼らは事前に新聞などの情報媒体から仕入れたことにより知っていたこともあってか、いささか小さく感じられる。
だがバギーが次に発した言葉でテント内は歓声で埋め尽くされた。
「次に取るのはカイドウの首だ!!!!」
そうバギーが言葉を発した直後、待っていましたと言わんばかりに鼓膜を突き破るほどの大勢の人間の大声がテント内を埋め尽くした。そのあまりの声量はけしかけたバギーが思わず「うおっ!?」と怯むほどであった。
しかし、それも本の束の間、彼らの反応に気を良くしたバギーはすっと片手を上に上げ彼らを落ち着かせて静かにさせた後、カイドウを討ち取るための、これから実行していく作戦の具体的な内容の話に触れていく。
「ビッグ・マムを殺ったとはいえ、さすがのルーミアでも休みなしで立て続けに戦うのは無謀ってもんだ。それが四皇なら尚更だ。そこでだ──」
するとバギーの背後に映像を映すための銀幕が下りて、そこへ映像が映し出された。中央にはスクリーンの半分を埋める麦わら帽子を被った笑顔のルフィ。その周りにはドレスローザの件で彼と盃を交わした海賊や賞金首たちの手配書が映されていた。
「こいつらをカイドウにぶつけさせて時間を稼がせる。
なあ~に心配することはねえ。
ありがてえことに俺たちが焚き付けることなく『麦わらの一味』は勝手に『ワノ国』に行ってくれる。
親分がカイドウぶちのめしに行くんだ。
せっかく盃を交わした子分にも知らせてやらねえとなあ? ギャハハハ!!!!」
バギーがそう言って人の悪そうな笑みを浮かべて品のない笑い声を上げると観客席にいる人間たちも彼につられて、そこかしこで人を小バカにしたような態度で笑い始めた。
──だが、一緒に笑っているその中の一人は開封口が少し開いたバッグを足下に置いており、それをよく見るとそのバッグの中には一匹の電伝虫が入っていて、じっとバギーがいるステージの方に視線を向けていた。
【グラン・テゾーロ】
学校の教室ほどの広さがある薄暗い部屋の壁には映写機から投影された映像が映し出されており、そこには笑い声を上げるバギーの姿が映されていて鳴り止まないバギー・コールが部屋に響いていた。
やがて音声が途絶え映像が途切れて真っ黒になると同時に部屋が明るくなり、その場にいた面子の姿が露になる。
彼らはそこで補給と船の補強のためにグラン・テゾーロに船を停泊させ、その傍らにこれから向かう『ワノ国』に関係する情報を収集していた。その一つとしてテゾーロがバギーズ・デリバリーに潜り込ませていたスパイが手に入れた映像をルフィたちに見せていた。
その件に関してルーミアの知己であるエースがその場にいることもあって一緒に見せてもいいのか……? ──という意見がナミから出たが、テゾーロはそのルーミアから許可を貰っているので問題ないと告げるとナミたちは驚いて、ここにはいないルーミアに疑惑を抱くもテゾーロが次に説明したその内容を聞いて双方を争わせて途中で横槍を入れる漁夫の利を好む彼女らしいと半ば呆れる形で一応の納得を見せた。
そしてルーミアたちが立てた戦略が、自分たちよりも有効な手の一つだということも理解した。その上で彼らは話し合う。
「──スクリーンに映っていた彼、バギーは言っていなかったけど、彼らの計画では君たち以外にもカイドウに因縁のある七武海の『ゲッコー・モリア』や『モコモ公国』、他にも個人や組織で恨みのある人間にも声をかけてぶつけるつもりらしい。
そうして君たちにある程度、露払いさせたそのあとに『宵闇』を率いたルーミアを筆頭に『バギーズデリバリー』と『バロックワークス』『白ひげ海賊団』の一部に先の戦争で傘下に下った『ビッグ・マム海賊団』の残党、そこに『海軍』を加わえた戦力で一気に壊滅させるつもりのようだ」
部屋の中央に備えられていた机に集まる一同。机の上には簡略化された『ワノ国』の地図が描かれており、その中心には『カイドウ』の手配書が無造作に置かれていた。
そして『カイドウ』を取り囲むようにテゾーロが挙げていたそれぞれの組織の顔とでも呼べる人物の手配書や似顔絵が置かれている。
「そうそうたる顔ぶれだな。ルーミアちゃんは本気で殺るつもりみたいだが……ビッグ・マムといいカイドウといい二人を殺る理由はいったい何なんだ?」
タバコを咥えながら手配書の一つにあった『ボン・クレー』のを手に取って疑問を口にするのはサンジ。
「おでんの敵討ち」
サンジに疑問に答えたのは沈黙を保っていたエース。ぼそっと呟くように言ったエースに一同の視線が集まる。
「俺の前にいた2番隊隊長が『おでん』だったんだ。そのおでんを殺ったのが『カイドウ』で『ビッグ・マム』はカイドウと組まれる可能性があったから今回の騒動で倒す必要があった……っていうのがルーミアの言い分だ。実際、カイドウとビッグ・マムはその昔、一緒の船に乗っていったらしい」
そう説明するエースにおのおの納得したような態度を示す彼らだが、一人ルフィは「ルーミア」の名を聞いて突然、思い出したかのように「そうだ!」と叫び、次いでエースに話しかけてきた。
「なあエース、あのチビ女、ルーミアと連絡を取れねえか? オレ、あいつにどうしても言いたいことあるんだよ」
エースはぐいぐいと詰め寄るルフィに若干引き気味になりつつも「お、おう」と応え、周りにいる人間もルフィに賛同するのも手伝ってか、懐から電伝虫を取り出すとルーミアに繋がるとおぼしき番号をかけていく。
ほどなくして、しばらく『ぷるぷるぷる…』と鳴いた後、通話が繋がったことを知らせる『ガチャ』と共に少女の、ルーミアの声が流れてくる。
『──エー、じゃなくて「アヴドゥル」だったなー。お前がかけてくるってことは無事に着いたんだなー?』
そうかかってくると同時にルフィがエースから受話器を半ば奪うように取り、エースが止める間もなく捲し立てるように一気に話す。
「オレだ! ルフィだ!
仲間を助けるのに手伝ってくれて、ありがとな!
だけどよお、ビッグ・マムはオレがぶっ飛ばすつもりだったのに勝手に倒すなよな!
それとジンベエをオレの仲間にするから!」
満面の笑顔、眉間に皺を寄せた不機嫌そうな仏頂面、普段は見せない真剣な顔つき……コロコロと表情を変えながら手にした受話器で向こうにいる相手に対して一方的に話しかけてくる。
『──お前たちを助けたのはカイドウにぶつけるため。
ビッグ・マムの件はお前たちがマヌケだった。それだけの話だなー。ジンベエは本人の意思次第……』
淡々と答えていくルーミア、そこにルフィが口を挟んでくる。
「カイドウは俺が倒す。
だから、お前はこっちに来るな」
凄味を効かせた面構えと低い声で手にした受話器に話しかけるルフィ。……すると、彼が手にしている受話器の向こう側から何がおかしいのかルーミアの『わははははー』という笑い声が聞こえてき、静かになった部屋に響く。一頻り笑うと……
『──安心しろ。
先ほどテゾーロが言っていた作戦ではルーミアが行くことになっている。……にも関わらず彼女本人は否定を口にした。そのことに受話器の向こうにいるルーミアを除いた一同が、どういうことなのか…? と、怪訝な表情を伝電虫に向ける。
『──ん? ……今「モリア」が港で暴れてるって通報が来たからなー。悪いけど、ここで切らせてもらう。あとはそこにいる「アヴドゥル」に聞けばいい……』
『それじゃあなー』そう言い残すとルフィたちの「「おい!」」という非難めいた制止を無視して「ガチャッ」と通話が途切れ、しばらくの間は何とも言えない空気が場を支配した。
「俺が知っている限りのことを話す」
そんな中、エースが口を開いて……
「そのあとはルフィ……。
俺はお前たちとはここで別れる」
ルフィたちを目の前にしてそう告げた。
ざわ…(´ ・ω・)にゃもし。ざわ…
▪️ここまで読んでくれて、ありがとうございます
▪️ものすごい遅くなってスイマセン
▪️感想の返信してないけど読んでます
ありがとうございます
▪️そう言えば原作キャラ何人か救っているけど、それ以上に原作キャラ何人か殺っているなー
ルーミアの懸賞金、どれくらいが妥当? ちなみに私は15億にしようかと思っている。
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ルフィがエニエス脱出した時の4億
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ルフィが新世界突入した時5億
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ルフィがカタクリ吹っ飛ばして15億
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黒ひげがつけられたのは22億4,760万