ヤミヤミの実で宵闇の妖怪   作:にゃもし。

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7話 方舟マクシム

 

 

 エネルとその配下である神官達が習得している心網(マントラ)

 

 彼らはその心網(マントラ)の「人間が体から発する声を聞く力」を相手の居場所を探るレーダーのようなものに暫し用いる。

 

 特にエネルの心網(マントラ)は空島スカイピア全土の隅々にまで行き渡ると云われており、その上ゴロゴロの実で得た雷の体で電波を読み取ることで人々の会話を聞くことも可能である。

 

 エネルが神の島(アッパーヤード)にある社にいながら法を犯した犯罪者に対して正確に裁きの雷を落とすことができるのはそのためである。

 

 それ故、ルーミアは事を起こすまではエネルがいる白々海には可能な限り出向かないようにしていた。いくら体が前世と比べて遥かに頑丈になったとはいえ生身で雷は受けたくないからだ。

 

 

 

 

【白海──島雲内部】

 

 

 焦った表情をした男女数名で構成された一団がテント内に突入、人だかりを押し退けながらテントの奥にいるルーミアの下へ一目散に駆け寄る。

 

 麦わらの一味が白海にある天国の門をくぐったと同時に情報収集のためにルーミアが白々海のあちこちに送った者達だ。

 

 

「麦わらの船が超特急エビに運ばれました! 乗っていたのは『海賊狩りのゾロ』『ニコ・ロビン』『タヌキ』に『航海士の姉ちゃん』の4名です!!」

 

「エンジェル島で落雷です! エネルの裁きです!! 寸での所で『空の騎士』が娘を助けました!!」

 

「船長『麦わらのルフィ』と船員二人『ぐるまゆ』『長鼻』の計3人がボートで神の島(アッパーヤード)に行きました!! 神官達の試練です!!」

 

「武装したシャンディアの戦士の一団が雲隠れの村から出陣! 神の島(アッパーヤード)で爆発を確認! 神官達と交戦した模様です! その後、北東の離島に撤退したのを目撃したとのこと!!」

 

 

 テント内でバカ騒ぎして飲み食いしている一同に交じっているルーミアの下に次々とここより上層にある白々海で起きた出来事の報告が次々と寄せられる。

 

 そして、シャンディアの戦士達が撤退した報告を最後に漸く報せが終わる。

 

 

「……シャンディアの戦士達は北東の離島で待機。麦わらの一味とガン・フォールは神の島(アッパーヤード)のどこかで野営。ってとこかなー? わはははー」

 

「ウィハハハッ! 明日は神官神兵総出でお出迎えだったな! お嬢、俺がいくらか減らしておこうか? 体が鈍って仕方がねェ!! ウィハハハッ!!」

 

……船長の持つ()()は頼りにしない方がいいだろう。()()というイレギュラーがここにいるせいで船長の知る()()がすでに変わっていても、おかしくはない……

 

「どっちみちエネルがいなくなれば騒動は落ち着くんだ。お前ら、麦わらの一味がヘマしないようにサポートしてやれ」

 

「「 アイアイサー!!!! 」」

 

 

 ルーミアの号令とともにテント内がさらに騒がしくなるが、時間が経つにつれて夜が更けていくと、彼らの喧しい声も少なく小さくなっていき、最後には静けさに包まれた。

 

 

 

 

【白々海──神の島(アッパーヤード)

 

 

 夜が明けて翌日。

 

 神の島──アッパーヤードを舞台に空の者と青海人が入り乱れての生き残りを賭けたサバイバルが静かに始まり、島の各所で激しい戦いが繰り広げられた。

 

 神官の一人であるシュラを皮切りに脱落者が増えていき、時間の経過とともに同じ数だけの負傷者が増えていく。

 

 やがてサバイバルが終盤に差し掛かった頃なのだろう、エネルが放ったと思われる雷の光を島の外から目にするようになった。

 

 一方でエンジェル島では島の住人である少女コニスが、エネルがこれからやろうとしている「スカイピアの消滅」を伝えたのか、スカイピアの法の番人であるホワイトベレー部隊の誘導の下に続々と荷物を持った人々が船に乗って島から出ていく。

 

 誘導している人間の中には青海人──ルーミアの隠れ家にいる人達も交じっていて住人達を急き立てており、シャンディアがいる雲隠れの村にも同じように青海人の一団がいて集落の人間達に避難を要請している。

 

 その間にも神の島(アッパーヤード)の地下から地面を突き破って船体の上部を出した「方舟マクシム」から黒い雲が立ち昇っていき、白々海の白い空を黒に塗り替えていく。

 

 

 

 

『──お嬢。エネルの野郎、俺達を倒した後「航海士の姉ちゃん」連れてどこかへ行きやがったみたいだ!! たぶん「方舟」だ!! 他のやつらはここにいるぜ!!』

 

──船長。……治療したぐるまゆ長鼻なんだが、方舟へ行くと言って出ていったんだが……

 

「わははは、重傷の身でよくやるなー。まあ、いいや。『麦わらの船』と『麦わらの一味』それに負傷者は他のやつらに任せて、お前ら二人は電伝虫をそっちに置いてこっちに来い。そろそろ()()()()()()()準備を始めるぞ」

 

『『 ──アイアイサー…… 』』

 

 

 神の島(アッパーヤード)を一望できる小さな島雲の一つに大小の木箱を机とイスの代わりにしているルーミア。彼女はそこでスカイピアで起こっている状況を電伝虫を通して逐一に聞いていた。

 

 やがて神の島(アッパーヤード)の地下から「方舟マクシム」が完全に浮上、その全貌が人々の目につくとほぼ同時に白々海の空を覆い尽くした雷雲から無差別に雷が落ち始める。

 

 さらに今も尚、逃げ惑う人でごった返しているエンジェル島の真上の雷雲が島ほどの巨大な球状になっていき、そのまま島に落下、直後に黒い雷雲が弾けて強い閃光を放つ。

 

 そして光が収まり、煙が風で煽られて消えた後、そこに現れたのは…… 海雲ごとぽっかりと空いた底が見えない暗く黒い大きな穴だけであり、島は跡形もなく消滅していた。

 

 

「……うん、悪くないな」

 

 

 破壊を撒き散らし続ける雷とそれを生み出した「方舟マクシム」を見てルーミアは口を弧にしてそう呟き、

 

 

「分類上、あれが兵器──武器のカテゴリーに一応入るとしたら、動物(ゾオン)系の()()()()()()()()()、……B・W(バロックワークス)に出てきた犬の銃、スパンダム長官が持っている象の剣みたいになるのかなー?」

 

 

 暗い笑みを浮かべながら、その空飛ぶ舟を見続けていた。

 

  




( ´・ω・)にゃもし。

●勘のいい人なら分かってしまうんじゃないかな、と思っている今日この頃。ここまで読んでくれて、ありがとうございます。

●ここ最近、金曜日になってから書き上げる日々。「なろう」で毎日更新してる人スゴすぎ。
 

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