ヤミヤミの実で宵闇の妖怪   作:にゃもし。

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8話 神の左手、悪魔の右手

 

 

【白々海】

 

 

 雷雲で覆われたスカイピアの上空に浮かぶ「方舟マクシム」。舟から吐き出された黒い煙が雷雲となってスカイピアの各地に雷を落としては空島を破壊していく。

 

 その空飛ぶ舟の甲板ではスカイピアの命運を分ける──(ゴッド)・エネルと麦わらの一味達による──激闘が繰り広げられていた。

 

 最後はルフィが身の丈ほどの黄金の塊が付いた右手でエネルを黄金の鐘に叩きつけ、気絶したエネルは「方舟マクシム」とともに海雲へ頭から落下、そのまま浮上することなく沈んでいった。

 

 こうしてスカイピアでの一連の騒動は()()()()()()()

 

 

 

 

【白海】

 

 

 白々海の海雲へ消えていったエネルと方舟マクシム。その落ちた先は白海にある島雲の一つだった。

 

 そこで気絶から回復したエネルはすぐさま心網(マントラ)を展開させ、周囲を探りつつ警戒態勢を取り、次に舟が破損していないか船内をくまなく調べた。

 

 そして飛行するのに問題がないと確認するや否や舟を再起動させ、いざこれから飛び立とう──という時に突然エネルの心網(マントラ)が一つの気配を捉える。それもすぐ近く、舟の甲板からだ。

 

 何の前触れもなく現れたその気配に不思議に思いながらも警戒を強めつつ急いでその場に駆け付けるエネル。そこで彼が見たものは……舟の手すりに腰掛けた金髪の少女──ルーミアであった。

 

 サバイバル中、エネルはスカイピア全土に心網(マントラ)を張り巡らせ、さらに悪魔の実の能力を応用して人々の会話を盗み聞きしていた。当然、その中にはルーミアの指示で動いていた青海人も含まれている。

 

 ……とはいえ、それで「聞く」ことはできても「見る」ことまではできない。それゆえに試練を受けさせる入国者の姿を天国の門で映像貝(ビジョンダイアル)を使って写真を撮っていた。

 

 そのこともあってか、エネルは少女の姿に見覚えがあった。そして思い出す。一人でエンジェル島にやって来て到底一人では食いきれないであろうの量の買い物をした後、シャンディアの集落に赴いて戦士達全員を一人でなおかつ体術のみで倒した少女のことを……

 

 その時は大の大人でも到達が困難な空島に少女が一人でやって来たということもあってエネルも興味を引いていたが、シャンディアの事件以降は姿を見せることがなく、時が経つにつれて関心が薄れていった。

 

 

「ヤハハハハハ! 青海人に指示を出していたのがキサマのような小娘だとはな! ゴム人間をこの空島に手引きしたのもキサマの仕業だな?」

 

 

 能力を使って盗聴した青海人の会話と過去に見た映像貝(ビジョンダイアル)から目の前の少女が青海人を束ねる存在である「ルーミア」だと判断、黄金の棍棒の先端を三又の矛に変えて切っ先を彼女に向ける。

 

 

 

 

 時折、シャンディアの戦士達が生活物資を詰めた荷物を持って白海に下りては、空島では手に入りにくい青海の物とおぼしき品が入った木箱を持って戻ってくることがある。

 

 部下からの報告にもあったが、エネルは「取るに足らぬ」と捨て置き、まともに取り合わなかった。

 

 

「シャンディアの戦士がいくら青海の武器防具を手に入れたところで、雷の体を傷付けることも、雷を防ぐことなどもできはしない。ヤハハハハハ!」……と得意気に語ったのだ。

 

 

 もっともその認識は今回の出来事ではからずも変えざるを得なかったが……

 

 それゆえにエネルは一連の出来事の裏で暗躍していた人物がわざわざ目の前に現れた……ということは「海楼石」で能力を封じる。あるいは「青海のゴム人間」のように自分の体を触れるうえに傷付けるような手段を持っているのだろう、と考える。

 

 その一方でエネルは彼女が何を目的に近づいたのか気になったのか、「目的は何だ?」と尋ねると、ルーミアは左手で懐から切れ味の鋭そうな大振りのナイフを取り出し逆手で構えた後に答える。

 

 

「んー、略奪かなー?」

 

「ヤハハハハハハ! 神を相手にか? 巫山戯(ふざけ)たことを抜かす不届き者めが。黄金なら上で探せばよかろう。巨大な黄金の鐘があったはずだぞ?」

 

「盗みをしない盗人がいるとでも? でも、お前が相手でも『罰当たりな行為』になるのかなー? もしそうなるなら『天罰』とかどうなると思う?」

 

「いろいろと喋る娘だな。試せばよかろう。もっとも私の場合だと文字通り天から罰が下るがな」

 

 

 エネルの身体中を紫電が駆け巡り、両手で持った黄金の三又の矛は熱で赤みを帯びる。ルーミアもまた手すりから降りると体から闇を発生させ纏わせ、足下からも闇を生み出しては徐々に広げて侵蝕させていく。

 

 

 

 

神の島(アッパーヤード)

 

 

 ルフィがエネルを倒した後、神の島(アッパーヤード)のシャンドラの遺跡がある場所で宴が催された。そこでは青海人、エンジェル島の住人、シャンディア、分け隔てることなく一緒になって炎を中心にして騒いでいた。

 

 

 そこへ突然、悲報が舞い込む。数人の男が必死の形相で伝えに来たのだ。

 

 

(ゴッド)・エネルの舟がやって来た!」──と、

 

 

 慌てて駆け付ける麦わらの一味。彼らが島の淵まで足を運ばせるとそこには伝えに来た男達の言う通りに「方舟マクシム」が海雲の上を漂いながらこちらに向かって来るのが見えた。

 

 

「エネルが言ってたわ。あの舟は『雷』を動力にしているって……」

 

 

 ナミの言葉に麦わらの一味達は察知して苦い顔を作り、遅れてやって来たシャンディアの戦士やスカイピアの神兵、神隊も空飛ぶ舟を見て絶句する。

 

 そんな悲壮感が漂う空気の中、ただ一人、双眼鏡を覗いて見ていたゾロだけは不思議そうに尋ねる。

 

 

「あの舟が『雷』で動くんなら、何で『エネル』じゃなくて『ルーミア』が()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 

 近づいてくる「方舟マクシム」。その舟の甲板にはエネルの姿はどこにもなく、代わりにあるのは…… バージェスとドクQの大男二人と、二人に挟まれるような立ち位置に立つ、右手に闇を纏わせ、左手からは電気を迸らせるルーミアの姿だった。

 

 




( ´・ω・)にゃもし。

●ここまで読んでくれて、ありがとうございます。
 ようやっとゴロゴロの実を入手。待たせてゴメン。

●誤字脱字、おかしな表現あれば報告お願いします。

●毎度、金曜日に書き上げてます。
 執筆速度を上げたい。社会人ツラい。

闇水(くろうず)→グサッ じゃあ、あんまりなのでカットです。時間もなかったので……

●原作でも何で悪魔の実の能力を二つ手に入れても無事なのか分からないのでそこら辺は不明のまま話を進ませます。

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