ヤミヤミの実で宵闇の妖怪   作:にゃもし。

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9話 大きなヘビ

 

 

 真夜中の神の島(アッパーヤード)にて──

 

 島の淵にほど近い開けた場所に、麦わらの一味を含む大勢の見物人が見ている目の前で「方舟マクシム」が着陸した。

 

 それから程なくして、愛馬に乗っているドクQごと馬を左肩に担ぎ上げ、右腕でルーミアを小脇に抱えた格好のバージェスが舟の甲板から飛び降り、ルフィ達の前に姿を現す。

 

 彼ら三人が現れたことで集まっていた人々の間にどよめきが起こるが、当の本人達は一瞥するだけでさして気にも留めず、人だかりの先頭にいるルフィ達を見つけると彼らに声をかける。

 

  

運がいいな、お前ら。……自然(ロギア)系を相手に一人も欠けないなんてな……

 

「ウィ~~~ハッハッハッハ!! お嬢の知識があるとはいえ、正直、半信半疑だったがな!」

 

「わははははー。お前達のおかげでエネルから「舟」と「能力」を手に入れた。改めて礼を言おう」

 

 

 バージェスの手で地面にそっと下ろされるルーミア。彼女はスカートの両端を指で摘まんで、スカートを軽く持ち上げ、ルフィ達に会釈してみせる。

 

 

「それでエネルはどうなった? それに何でお前(ルーミア)がエネルの「舟」と「能力」を持っていやがる?」

 

 

 不躾にルーミアに尋ねるゾロ。彼と同じことを思っていたのか他の面子も頷き、あるいは似たような質問をするが……

 

 

説明するのが面倒だから明日で

 

「「 おいっ!!!! 」」

 

 

 答えになっていない返答を返すと、さっさとドクQとバージェスの二人を連れて神の島(アッパーヤード)の奥、遺跡がある場所へと向かってしまう。

 

 

「──『実』の能力者が死ぬと世界のどこかにその能力を秘めた『悪魔の実』が復活する。──そのことから、エネルが死んで復活した『ゴロゴロの実』を彼女(ルーミア)が口にした。……と考えていいんじゃないかしら?」

 

 

 納得しかねる面々に意見を述べるのはニコ・ロビン。

 

 

「……もっとも何で彼女が『悪魔の実』を二つ食べても平気なのか、どうやってエネルを倒して『ゴロゴロの実』を手に入れたのかは分からないけど……」

 

 

 そのことを人に見られないためにエネルが空島から離れるのを待っていたのでは? ……と憶測を立てるロビンにワイパーは「なんだっていい」と口を挟み、

 

 

「エネルは死んだ。それだけ分かれば十分だ」

 

 

 死体こそ無いものの、エネルの死を判断できる材料がある。その場にいた人達は大いに戸惑い困惑し、あちこちで話し合う姿が見られる。

 

 

「ほんじゃあ、宴に戻っても問題ないんだよな?」

 

 

 その時、今まで黙ってたルフィが突然そんなことを宣う。彼の発言に一同あきれつつも同じ麦わらの一味の乗組員が彼を窘める。

 

 

「ここであれこれ考えたら問題が解決するのか? だったら戻って宴の続きをした方が俺はいい。ルーミアがエネルを倒したなら、もうエネルについて悩む必要はないだろ?」

 

 

 それだけ言うと元来た道へと引き返していき、ついでゾロも「違いねぇ。こっちは酒を飲み直すとするか……」とルフィの後を追う。残った麦わらの一味のメンバーも戻っていく。

 

 

「ワイパー、いろいろと思うところがあるだろうが、とりあえず皆に「エネルは死んだ」って伝えた方がいいだろう」

 

「……ああ、そうだな」

 

 

 同じシャンディアの戦士であるカマキリの提案にワイパーは賛同し、遺跡のある広場へ、エネルの死を伝えるために森の奥へと入っていく。

 

 そしてエネルの死を伝えた時に沸いた歓声を見て、彼らは複雑な表情をしたという。

 

 だがそう思ったのも束の間、数刻前の「方舟マクシム」の出来事なんぞ忘れたかのように彼らは宴会の場へ自ら入っていって大騒ぎをする。

 

 

 

 

 連日に続く国を上げた喜びの宴もいつの間にか終わりを迎え、誰もが寝静まった頃、麦わらの一味がこそこそと動き始める。空の主の体内にある黄金を回収するためだ。

 

 

「こうして見てると普通の女の子にしか見えないわね」

 

 

 移動する傍ら、近くを通る際に見たルーミアの寝顔を見てナミがそう漏らす。彼女は今、雲キツネを両腕で抱きつつすぴすぴと小さな寝息を立てながら寝入っていた。その近くには豪快ないびきをかきながら大の字で寝ているバージェスと「……はぁ、はぁ」と苦しそうなドクQの姿もある。

 

 

「それよりもコイツらが起きると厄介だ。早く行ってくれ、俺は連中の気を引く」

 

 

 ウソップが仲間を急かし、ウソップとロビンを除くメンバーが巨大なヘビの下へと向かい、そこで彼らは遭遇した。ルーミアの指示で来ていたであろう人間達の一団と、

 

 

「「 あ、どーも 」」

 

 

 予想外の先客に思わず言葉を交わし、一礼をする麦わらの一味。しかし、すぐさま気を取り直して先客達の格好を観察すると、彼らが背負っている袋やリュックには黄金が詰まれているのが分かる。

 

 

「「 あ────────っ!!!! 」」

 

 

 黄金が入っているのが分かった瞬間、大声を上げる麦わらの一味達。男達は叫ぶ彼らに慌てふためき、静かにさせようと宥めさせるが、時すでに遅し、ヘビが起き上がってしまう。

 

 

「「 …………………………っっっっ!!!? 」」

 

 

 寝惚け眼で起き上がったヘビに声にならない悲鳴を上げる両者。特にヘビが暴れまわる姿を知っている者は戦々恐々で事の成り行きを見守っている。

 

 ……が、ヘビは暴れるような素振りは一切見せず、大きなあくびを一つした後、そのまま横になって再び深い眠りに入った。

 

 しばらくヘビを観察するも起きる気配がないことに安心したのか一人の男がルフィ達に話しかける。

 

 

「まずは黄金の回収、分配はその後で、ヘビが暴れて困るのはお互い様だろ?」

 

 

 代表格の人間らしき男がしている口の前に人差し指を立てる仕草で押し黙るルフィ達。

 

 

「積もる話は後だ。おたくらだって手ぶらで地上には戻りたくないだろ?」

 

 

 こうして黄金の回収は静かに共同で行われた。

 

 

 

 




( ´・ω・)にゃもし。


■毎度、金曜日に追い込み執筆してます。
 ここまで読んでくれて、ありがとうございます。

■誤字脱字おかしな表現ございましたら報告をお願いします。

■執筆速度、上げたい。
 「なろう」で毎日更新してる人達って、いつ執筆してるんだろう……

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