ファイアーエムブレム ヒーローズ ~異聞の『炎の紋章』~ 作:femania
紫電を纏う謎の雷神刀に似た刀、その光は本物の雷神刀にはない妖気を帯びている。
エクラはその刀の正体を探るべく、自身の戦略眼でリョウマ見た。
武器 テュール 攻撃+10 速さ+5
奥義を発動しやすい。このユニットの戦闘時、相手の追撃無効の効果を受けない。
このような効果は実際に戦うアルフォンス達には実感はないだろうが、エクラから見れば実際にその効果は発揮されている。
例えば『切り返し3』のスキルを持つ敵にアルフォンスが戦いを挑むと、最初の攻撃こそうまく入るものの、その後の追撃をするまでの間に相手が凄まじい速さで攻撃の手数を稼ぎ、襲い掛かったアルフォンスに手痛い攻撃を食らわせる。
スキルとは、結局その英雄が持っている技だ。鍛えれば他人も技でも身につくものもあれば、その英雄が生涯においてたどり着いた境地、もしくは手に入れた物や祝福などは他人にはまねできない。
対して武器や聖印についているのは、その武器自体が、戦闘に与える影響力である。目の前のリョウマが持つ刀の場合、受け手が追撃を不可能にする構えをとっても、その刀の攻撃は、その構えを解き、追撃を可能にする。これは、個人の気合や体調、その場の環境など関係なく、必ずそうなってしまうのだ。
「はあ!」
飛び出しざまに繰り出したアルフォンスの一撃は躱された。
そしてリョウマらしき侍の反撃が来る。アルフォンスは速い相手に弱い。侍から放たれる、連続の太刀を何とかしのぐアルフォンス。
一撃。
間も無くもう一撃。
その間隔は異常に短く、アルフォンスの防御を徐々に崩していく。
鋭い突きが放たれる。フォルクヴァングの防御を崩した。
さらに繰り出される剣戟。アルフォンスの防御は間に合わないだろう。狙いは足、片足を切断することで、動きを止める目的だ。
「はっ!」
割って入ったシャロンがその斬撃を受け止め、はじき返す。
「助かった」
シャロンに言葉を返している余裕はない。リョウマの太刀筋は想定よりもずれ、そこに隙が生まれる。
シャロンはリョウマに、最短で攻撃できるぶつけ方で、槍を押し出した。ショウマはそれをもろにくらい、バランスを崩す。
シャロンの攻撃。神器フェンサリルによる渾身の突き。しかし、崩れたはずの歩調を器用に直したリョウマは、矛先を刀で逸らす。
スキル『守備の城塞3』の力でシャロンは防御の構えに戻りやすくなっている。故に、すぐさま繰り出されるリョウマの攻撃を再び槍で受けることができる。
瞬間。あまりに速い二撃。エクラには捉えられない太刀。
シャロンは防ぎ切った。しかし、かろうじてだ。刃が深く肉に刻まれることはなかったが、確実に刀の刃はシャロンの体を捉えていた。
「う……!」
電撃がシャロンの体に走る。そもそも、帯びている雷が放つ力場だけで、常にアルフォンスとシャロンには痺れるような感覚が走っている。そこにさらに電気を追加されれば、それはまるで人を釘で刺すような痛みに変わるのだ。
それでも倒れることはない。これまでの戦いがシャロンを強くしている。彼女も今や一人前の戦士だ。
「はぁあ!」
渾身のリョウマの攻撃を受けきったシャロンの裏からアルフォンスが飛び出した。斬り上げによる渾身の奥義『竜穿』。刀で受けることはかなわない。その奥義のときに限り、剣の重さは威力と共に倍増しているのだから。
「……!」
リョウマは飛び退いた。当然アルフォンスの攻撃は当たらない。
しかし、アルフォンスの計画通りだった。すでにリョウマが飛んだ方向にシャロンは走り出している。カタナが届かない距離から、長いリーチを活用した刺突。
着地をしたばかりのショウマは動きに乱れが生じ、その刺突を致命傷にならない程度にしか逸らせない。故にシャロンの槍は確かに、侍の鎧を裂き、肉体まで浅くだが届いた。
お互いが距離をとって小休止。
エクラはアイテムを用意しつつ、戦う2人の様子を見た。
アルフォンス HP17 シャロン HP18
2人とも傷を負っている。対して、
リョウマ HP234
まだまだ元気そうだ。このままでは2人が負けるのは必須だ。加えて、浅い傷を受けるだけでここまでHPが減らされては、もし攻撃がもろに当たったとき、アルフォンスもシャロンも致命傷になることも分かる。
エクラは特効薬を2人に使い、体力を回復させる。しかし、頭ではどうリョウマを突破するかを必死に考えた。
次回 5節 終末世界の英雄(3)