ファイアーエムブレム ヒーローズ ~異聞の『炎の紋章』~   作:femania

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序章 5節 終末世界の英雄(3)

激闘の中、エクラは正直に言えば今の戦況に感動すら覚えていた。

 

確かにアイテムによる支援をしているにはしているが、出会った頃に比べてアルフォンスもシャロンも強くなっていることが一目瞭然である。

 

しかし、それでもあの2人が押されているのは,おそらく相手が強すぎるが故なのだ。

 

そもそも見た目は、白夜王リョウマの見た目をしている。持っている武器が雷神刀でなく、その剣の振り方も清流のような華麗さではなくすべて飲み込む濁流のような激しさを感じさせるものであったとしても、それでもあのリョウマだというのなら強敵であることに変わりはない。

 

ものすごい勢いで減っていく特効薬をはじめとするアイテムの数々。

 

戦いは既に15分を越え、それでも何とか生きている。

 

エクラは実は何度もブレイザブリクの引き金を引いていた。誰でもいいから援軍が来てほしいと願って。

 

しかし、何度オーブを装填しても、誰も来ない。神器は何の反応も示さない。

 

「アルフォンス……シャロン」

 

戦いは激しさを増していく。

 

「はああ!」

 

フォルクヴァングの斬撃。それを受け止め、反撃は二の太刀となって襲い掛かる。

 

「く……」

 

刃が首の3ミリ先を勢いよく通っていく。アルフォンスはその場で踏みとどまり再び斬りかかるが、それを難なく躱すリョウマ。

 

そこにシャロンが渾身の一撃を籠めた槍の刺突を見舞った。刀よりもはるかに重いその一撃をリョウマは自らの得物で捌き切ると、

 

「……フ」

 

勝機を見た笑みを一瞬浮かべ、刃をシャロンへ向けて滑らせる。その斬撃を紙一重で躱したシャロンだったが、隙を見極めたようで、間髪入れずに足蹴りを見舞わせる。

 

「ぐ……ん……!」

 

シャロンが攻撃を受けて吹っ飛ばされる。

 

「シャロ」

 

「アルフォンス、任せて、敵から目を離したらダメだ!」

 

エクラがシャロンに近づき、打撃を受けた箇所を押さえているシャロンに再び特効薬を使用する。

 

アルフォンスは使うスキルを変更する。『金剛の構え3』、攻撃を受ける際に自らの防御力を上げる構えである。

 

アルフォンスやシャロン、この場にいないフィヨルムは歴戦の英雄と肩を並べるために多くのスキルを他の英雄を参考に身に着けている。そして最近ではこのように、戦闘中でも上手に使用スキルを変えることができる。

 

ただしこれに関してはまだ完全な技術ではない。変えられるスキルには限りがある。

 

「……!」

 

リョウマの斬撃。それを構えによって受け止めるアルフォンス。しかし、金剛の構えを持ってなお、神器の攻撃はとてつもなく重く、受け止めようとしたアルフォンスも、その攻撃によって体勢を崩されそうになる。

 

「ぐ……おおお」

 

踏ん張り体に流れる衝撃をすべて受け止め、そして耐えきった。そしてフォルクヴァングの反撃を試みる。

 

「はあああ!」

 

テュールを弾き、アルフォンスはリョウマをぶっ飛ばすことも厭わないくらいの重い一撃を放った。

 

「……笑止」

 

初めて言葉を発するリョウマはその攻撃を軽く躱して見せると、さらに3回の斬撃を重ねる。それを再びアルフォンスは受けようとするが、先ほどの体勢を崩しかけた攻撃が3回。当然耐えられるはずもない。

 

そしてそれで身をもって理解する。徐々にリョウマは己の力を上げてきていると。先ほどまでの攻撃はすべて手を抜いていたのだと。

 

アルフォンスの剣は弾き飛ばされた。リョウマは剣が飛ぶ方向すらも計算に入れていたらしく、フォルクヴァングはすぐには取りに行けないほど遠くまで飛ばされた。

 

「しま……」

 

「死ね」

 

口を開いた瞬間、アルフォンスを殺すと宣言したリョウマ。

 

アルフォンスに振り下ろされるテュールの刃。すでにアルフォンスにはその刃を受けるための武器はない。

 

「兄さま!」

 

特効薬を受け再び動けるようになったシャロンは兄を助けるために走り出す。

 

――間に合わない。

 

(まずい……な)

 




次回 終末世界の英雄(4)

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