ファイアーエムブレム ヒーローズ ~異聞の『炎の紋章』~ 作:femania
そう思いながら、アルフォンスは目の前で己を殺そうとしているリョウマに違和感を覚えていた。
今街を襲っている英雄はやはり自分たちが呼びだした英雄とは何かが違う。と。
そんな直感も今となっては無意味なのだ。振り下ろされる刃を止めることはもはやできない。
(ここまでか……)
妖しい電光を纏った刀が振り下ろされる。
アルフォンスは目を閉じた。己の死を覚悟して。
しかし、その刃はアルフォンスに届くことはなかった。
代わりにアルフォンスの目に飛び込んできたのはリョウマの剣戟を受け止める褐色の肌をした女性の姿だった。
「君は……!」
なんとアルフォンスですら力負けしたリョウマの渾身の一振りを力押しで弾いたのだ。
「姉上!」
「任せて!」
そして上空からもう一人の援軍らしき戦士が飛来する。態勢を崩したリョウマを背後から斬りつけた。
リョウマは初めて苦悶の表情を浮かべ、自らを攻撃したその戦士へ反撃に転じる。
しかし、その戦士は既にそこには存在せず、意味ありげに旋回していた上空の飛竜は、破壊力が圧縮された炎の球を放ち始めた。
リョウマはそれを斬りながら、徐々に後退していくその竜を追い始める。テュールに宿った雷を放ち、竜はそれを躱すとリョウマは本格的にその場を離れていった。
おかしい。エクラはあのリョウマの行動が解せなかった。普段のリョウマであれば、いくら不意打ちをされたと言っても、目の前の敵に背を向けるような真似はしないはずである。
先ほど見たエフラム、そして今のリョウマ、そもそも今現界している英雄は、自分たちのしる英雄とは、人格から異なっているらしい。
やはり自分たちを助けてくれた誇り高い英雄がこのような外道行為をしているわけではないと知り、一安心するアルフォンスは自分を助けてくれた剣士にお礼を言おうとした。
すぐに驚きで声が出なくなる。
なぜなら彼女がアルフォンスを助ける理由などないはずだからだ。
「レーヴァテイン……?」
彼女とはつい最近まで敵同士の関係であり、今も決して和解したとは言えない関係である。
「お前、平気?」
しかし、殺気を一切持たない彼女の目がアルフォンスの方に向いている。
「レーヴァテイン王女、なぜ?」
「姉上、助けると言った。だから、助けた」
「姉上……?」
その姿はシャロンとエクラが見ていた。物陰からゆっくりと姿を現したのは、以前の戦いで命を落としたはずのレーギャルンであった。
「レーヴァテイン、お疲れ様」
「姉上、うまくいった?」
「ええ。もちろん」
シャロンが開いた口をふさげなくなってしまったのも無理はない。エクラもまた目を見開いて彼女を見る。
「ヴァイス・ブレイヴ、今はそこの住民の避難が先ではなくて?」
エクラの後ろには震える住民が十数人。戦う力を持たない彼らの命を保障するのは確かにアルフォンス達の仕事だ。
しかし、味方になるはずのない2人が現れたことに、アルフォンスは疑念を隠し切れない。
「君たちは……」
特に死んだはずのレーギャルンがここにいる意味がつかめない。すぐさま思い浮かんだのは、この地を襲っている英雄同様、終末世界という異界から現れた自分たちの敵である可能性。
「アルフォンス王子。フィヨルムは無事よ。今は街の外に向け、兄君と一緒に外へと向かっているわ」
「君が、彼女の心配をするのか?」
「今はどうか、妹と共に信じて」
「……」
次回 王女が憧れる英雄(1)