ファイアーエムブレム ヒーローズ ~異聞の『炎の紋章』~ 作:femania
廃村。以前スルトの手によって焼かれたその村は、今は復興の途中になっている。アスク王国兵が中心となり、駐屯地を中心に破壊された家屋の復活を試みている。
そこで、多くの人民と共に、アルフォンスはフィヨルムたちと合流することができた。
「レーギャルン……王女」
フィヨルムがアルフォンスと合流したときに第1に発した言葉はそれだった。
「王女は要りません。これからは共に戦う仲間です。どうか私のことは普通に呼んで」
「え、ええ。わかりました。では私もそのように」
「……あえて嬉しいわ、フィヨルム」
別人であることはフィヨルムにも分かっている。しかし、それでも生きたレーギャルンとの再会は、話ができることは、フィヨルムにとっては嬉しい出来事だった。
廃村に2100名程度のアスク国民がこの地に集まった。
ここで1晩休息をとる必要が本来はあるだろう。
しかし、今はいつ終末世界の英雄が迫ってくるかが分からない。追いつかれたそれで終了だ。
アルフォンスは救助者に今後の方針を説明した後、今後の方針について戦える人間全員を集めて、軍議を開く。
この場に集まったのは、アルフォンス、レーギャルン、レーヴァテイン、フィヨルム、スリーズの5人。
駐屯地に用意されたテントの1つを貸し切り、現状報告と今後の方針を話し合う。
「彼らの様子は?」
「アスク王国の人たちは私たちのことをよく思っておられない様子ですね……」
「それでもついてきてもらうしかない。そもそも安全なところなんて世界のどこにもない。怪我人や精神疾患を患っている人は?」
「現状深刻な方はいません。何とかニフルまではもつかと」
不安に煽られて暴徒化する人々もいることを考えなくはなかったが、それは起こった場合今は対応できるだけの力がない。
「……では、城まではどうやって行こうか?」
これには2人から提案があった。あらかじめフリーズはこの件を話しあうように提言していて、自身の意見も残している。
「フリーズ皇子は非とも戦力も分散させずこのまま突破することを提案している」
それに対しレーギャルンはもう1つの案を出した。
「一極集中は、全滅のリスクが高くなる。だってそこを狙われたら終わりよ。少なくとも3つの隊に分けて向かうべきだと思うのだけど」
「しかし、当然戦力も分散させなければいけない。襲われたとき迎え撃てる人間が少なければ、その分その隊の全滅もあり得る。戦力は分散させず、一極集中の方が生存率が上がる可能性もある」
「相手が相手よ。私たちが対応できない敵が襲ってきたらどうするの。襲われる箇所が1つなら分散させれば、助かる命もあるのではなくて?」
「……そうか。未だ相手の戦力の限界が分からない。確かに生存数を増やすには、その方法をとることもできる」
アルフォンスは思う。こんな時にエクラがいればと。
確かにエクラは、軍師の英雄ほどの軍略を立てられるわけではないが、それでもこれまでアスクに迫った2度の危機をすくために戦った経験を持つ特務機関の軍師となった。彼の意見は十分参考にできる説得力を持つだろう。
ふとエクラとシャロンを心配する気持ちが大きくなった。
しかし、それを押し殺して、アルフォンスは2つの案を吟味しようと、他の人にも意見を求めた。
フィヨルムは、
「私はどちらの策もうまくいくような気がしますけど……一方で不安でもあります。皆さんの意見に従いますので……」
レーヴァテインは姉に従うと良い、スリーズはフリーズの言うことに理があると主張する。
時間はない中で、どちらの意見を採用するか、民たちへの説明の時間も考慮すると、長い時間はかけられない。
(こうしてみると、自分の無力さを思い知るな。どれだけ仲間に頼っていたか、今さら思い知るなんて)
しかし、悩んでいる時間がないのも事実。方針を決めようと口を開こうとした。
――その時。
「間に合いました! エクラさん!」
この軍議の場に現れたのは、戦士の女性、そしてアルフォンスがよく知る相棒の姿。
アルフォンスにとってはまさに救いの手だった。
「エクラ!」
歓迎の態度を見せアルフォンス。しかし、一方のエクラは表情がかなり曇っていた。
「アルフォンス……」
連れてきた少女は無事だと確認するアルフォンス。
「良かった、無事だったんだね。実はシャロンにも……」
しかし、アルフォンスはここに来た人間がこれしかいないことに気づく。
「エクラ、シャロンは?」
「……」
エクラは何も言い返すことができなかった。
次回 序章12節 選択の結末(3)