ファイアーエムブレム ヒーローズ ~異聞の『炎の紋章』~   作:femania

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プロローグ2 召喚士エクラ

「召喚士さん! 召喚士さん!」

 

エクラは、聞きなれた声に呼び出されて目を覚ます。

 

「フェーどうしたの?」

 

「大変なんですぅ、大変なんですぅ!」

 

いつもの癒される声に耳を傾けて、エクラはフェーがいつもと違うことに気づく。

 

基本的に伝書フクロウとして穏やかな物言いのフェーが、今まで聞いたことのないほどの声量で自分を呼んでいたのだ。

 

「フェー。落ち着いて」

 

「ふぇー、ふぇー!」

 

「おちついて」

 

「ふぇ……ワタクシとしたことが、申し訳ありません」

 

「大丈夫、落ち着いて、ゆっくり、何を見たのか話をして」

 

「はい……」

 

エクラは寝間着から、いつもの出陣の時の服へと着替える。最初に異界から呼ばれた頃はなれなかったローブも今では簡単に着こなせる。

 

そのわずかの間、フェーが見た光景の報告に、真摯に耳を傾ける。

 

平静さは崩さなかったつもりだが、それでも一瞬着替えの手が、否、頭の中を含めて、生命維持に必要な生理現象以外のすべてが停止したような感覚に襲われる。

 

自分が召喚した英雄が人を襲っているということ。

 

否、それをエクラはすぐに否定する。

 

「そんなことないよ、フェー。確かに悪い人も中にはいたかもしれないけど、いい人だってたくさんいた。そんな英雄たちが、急に心変わりして、みんなでこの国を壊そうなんて思わないはずだ」

 

「召喚士さん……」

 

「とりあえず、アルフォンスなら、何か知っているはずだ。合流しよう」

 

「しかし……」

 

実はここに来るまで、アルフォンス、シャロン、アンナ、フィヨルムの部屋を順に尋ねたフェー。しかし。その部屋が、まるで爆破されたかのように、無残に壊されていたのだ。

 

「なんだって……?」

 

さすがのエクラもそれには衝撃が体を駆け抜ける。

 

まさか、死んだ――?

 

一瞬考え方が、それをすぐに否定した。

 

「大丈夫」

 

「召喚士さん。でもぉ……」

 

「不安になるのは分かる。けど、まだ死んだと決まったわけじゃない! みんな強いよ。だから、大丈夫だ」

 

何の確証もない、ただの気休めの言葉だった。しかし、それでも、フェーには効果があったようで、

 

「……召喚士さん。行きましょう!」

 

「ああ。まず一人、誰かと合流する!」

 

うるうるした目になりながらも立ち直った。エクラはフェーを肩に乗せ走り出した。

 

破壊された城。焼け焦げたカーペット。ところどころに転がるアスク兵の亡骸。

 

未だエクラは外には出ていない。それにも関わらず目に入る光景。すでに敵が城に潜入しているという事実を示している。

 

エクラは特務機関に来てから戦争を経験した。生き残るために武器の扱いは苦手なりに、観察眼を鍛えてきた。それ故に、現状、特務機関の本部があるこの城に何が起こっているのかを容易に想像させた。

 

「みなさん、みつかりませんねぇ」

 

心配そうにさえずる伝書フクロウにエクラは頷きを返す。

 

しかし、あえて言葉は変えさなかった。きっと見つかる。まだ生きてる。そう信じているからだ。

 

だからこそ、城の中を走る。もしもの時はブレイザブリクを使って、もしものためにため込んだオーブを動力に神器の力を発動し、英雄に助けてもらうしかないと、敵との遭遇も考えながら。

 

いつもは戦いの時には、アルフォンス達が近くにいた。それが急に一人になり、底知れぬ不安がエクラの動きを鈍らせようとする。

 

エクラは自分を鼓舞し、必死に足を動かした。

 

幸運なことに、ここまで敵には誰にも会わなかった。エクラが通ったところは既に戦闘が終わっていた様子で、アスク王国の兵士が無残な姿で倒れていた。

 

もうすぐで、あの場所に出る。誰かにはきっと会えるだろう。エクラはそう確信している。

 

エクラが目指しているのは、ヴァイスブレイヴの本拠地の中でも最も広い空間。掲示板や噴水、フェーの止まり木などが置いてあり、多くの英雄たちが集って談話や作戦会議を行う憩いの場。よくエクラはそこをホームと呼んでいる。

 

もうすぐ、というところで、とうとうエクラにも試練が訪れる。

 

「敵……!」

 

「ふぇー……」

 

血の匂い。今さっき起こった断末魔。振り返るその兵士は、エンブラの紋章を携える剣の兵と槍の兵。震えるフェーをなだめながら、エクラは召喚器をセットする。

 

「今、ここに他の英雄はいない。それがなぜかは知らないが、今はまず、ここを切り抜けないと」

 

エクラには相手のステータスを確認できる、特殊な観察スキルが付いている。それにより、敵のあらゆる能力を数値にして見ることができ、敵の強さを客観的な分析にかけることができる。このスキルもあり、エクラはアスクの軍師としての一面ももつ。

 

脳に伝えられた情報は衝撃的なものだった。

 

(115……120……? なんか……おかしくない?)

 

かつて出会ったことのある英雄の中に、最高にタフなアーダンという英雄がいた。最高記録をもつ彼でも99だった。他の多くの英雄も、3桁のHPを持った敵など存在しない。

 

あのエンブラ兵は間違いなくただの一般兵。それにも関わらず、そのHPの量と大英雄戦、危険度アビサルで出てくる護衛兵並みのステータスが観測された。

 

(あんなの、英雄でも1人、2人じゃ倒せない……!)

 

しかし、すでに相手のエンブラ兵はエクラの存在に気づく。

 

「アスク……兵」

 

「滅ぼせぇぇぇぇぇぇ!」

 

獣が肉を見つけたように牙を見せ、己の武器を持って突撃を開始する。

 

迷っている暇はなかった。エクラはブレイザブリクにオーブを装填し、神器を起動させる。

 

本来はこのような詠唱は必要ないものの、今はとにかく、この場を切り抜けるための奇蹟を信じるために唱えた。

 

そして神器のトリガーを引く。

 

「伝承の異界より来たれ! 栄光携えし英雄よ!」

 

撃ちだしたオーブのエネルギーによって異界の英雄は召喚される。あらかじめ色を決めておくことで召喚される英雄をある程度まで絞り込むが、そこから出る英雄は不明だ。

 

「……あれ?」

 

「ふぇー、召喚士さん?」

 

英雄が――召喚できなかった。

 




まだまだプロローグは続きます。

とりあえず特務機関の誰かが出るまでは続きます。
しばらくお付き合いいただければ幸いです。
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