ファイアーエムブレム ヒーローズ ~異聞の『炎の紋章』~ 作:femania
外に出たエクラとアルフォンス。
廃村ではすでに多くの民が出発の準備をしている。フィヨルムはその誘導を行っていた。
「エクラさん。アルフォンスさん。もういいのですか?」
二人を心配するフィヨルム。アルフォンスの声は既にもとに戻っていた。
「それどころではないだろう。敵襲だって」
「はい。今は兄が食い止めてくれています」
「敵は?」
「見た目で判断する限りでは、白夜王国のリョウマ王子かと」
二人の額に冷や汗が伝う。すでに2人はアスクの地でその存在と戦っている。そしてその強さを目に焼き付けている。
「まずい、加勢しよう」
アルフォンスがエクラに提案し、走り出そうとするyが、それをフィヨルムが制止する。
「アルフォンス様。どうか、ここは民の避難の準備を。兄が敵を食い止めているうちに、全員出発しましょう」
「でも、フリーズ皇子が!」
これ以上の死者を出したくない。アルフォンスのその思いが強く表れている。
「大丈夫です」
「大丈夫なはずがないだろう!」
すぐに声を荒らげてしまうアルフォンスの方をエクラが軽くたたく。怒声に驚いて次の声が出なくなったフィヨルムに、
「ごめん。でもなぜ大丈夫かを話してくれないと、こっちも納得できないから、話してくれると嬉しい」
アルフォンスが本来言うべき言葉を代弁する。
「はい……、兄は、恐らく大丈夫なんです。リョウマさんと戦えています。念のたレーヴァテインと姉が様子を見ていますが、加勢してはいません」
「馬鹿な……」
エクラは驚く。終末世界の英雄はとんでもない強さを誇っていて、1人で戦えるような相手ではない。いかにフリーズ王子が強いと言っても、たった1人でなんとかなっていることには、フリーズ王子の本気が、あまりにも想像以上であった。
「私も驚きました。なにせ、知らなかったので。でも、兄は大丈夫です。今は住民の出発の準備を手伝いましょう」
「……任せる」
しかし、アルフォンスは走り出す。それは、まさしく今フリーズが戦っている街の外の方角。
「ちょっと……アルフォンス!」
冷静なふりをして、実のところ全く冷静には程遠い。かつてスルトに追い詰められた時もここまで取り乱してはいなかったはずなのに。
「アルフォンス様……!」
「フィヨルム、君は引き続き、アルフォンスの代わりを頼む」
「エクラ様は」
「追いかける。あれじゃあ、無茶なことをしかねない。ここでアルフォンスまで殺させるわけにはいかないさ」
「……わかりました」
本来アスクの王族の責務である行為を快く請け負ってくれたフィヨルムに、今できる最大限のお礼をして、エクラはアルフォンスと追いかける。
村の外のサバンナ地帯に到着したアルフォンス。
フィヨルムの報告通りに、そこでは戦いが繰り広げられていた。しかし、敵はリョウマらしき影だけではない。総勢五百のエンブラ兵も村の襲撃の訪れていたのだ。
エンブラ兵を食い止めていたのは、藍色の女剣士と、その隣で多彩な武器を使う男。なんとたった2人で500人のエンブラ兵を食い止め、フリーズに危害が及ばないようにしている。
一方その中でフリーズはリョウマと一騎打ちをしていた。
アルフォンスはすぐに加勢をするため走り出したが、その足はすぐに止まった。
その2人の戦いは、自分が付いていけるものではなかった。
一呼吸の間に突き出されるリョウマの3回の斬撃を躱し、後ろへと後退する。それを予知し瞬きの間に後ろに回りこむ。
再び迫る斬撃。リョウマの動きは速く、フリーズはその動きをとらえきれない。
テュールの斬撃は間違いなく当たる。
「……っ?」
その斬撃は防がれた。フリーズの体を守るように、自動で氷の障壁が発生する。剣戟は弾かれ纏っていた紫の電光が弾ける。
「ふっ!」
斬撃を弾かれることで一瞬体勢を崩したリョウマに、フリーズは反撃に転じる。
ギョッルと呼ばれる神器の剣。レイプトと同じく氷の力を宿すそれは、斬った痕の傷痕を凍らせる。氷の世界に伝わる神器はみなこのような力を持っている。
氷は自身の魔力から生成されるため、その魔力をうまく操作できるようになれば、特殊な事象を発生させることも不可能ではない。
ギョッルによる剣の横薙ぎ、そしてもう1度の突きを軽く躱したリョウマは、3回目の攻撃を刀でいなし、再び攻めに転じる。
磨きあげられた剣技は終末世界の英雄でも変わらない。アンナが使ったこともある奥義『流星』の動きを見ても、アンナのものよりも流麗で速い。目で捉えることは至難の業である。
フリーズにとっても同じで、すべての攻撃を捉えられているわけではない。先ほどから発生している氷の障壁がフリーズの剣の代わりに、防御を担っている。
「はぁ!」
防御に負担があまりかからないフリーズは、リョウマの猛攻を凌ぎながら反撃に転じることを可能にしている。
フリーズはギョッルから放たれる氷の魔力を高めた攻撃を放った。
「……っ!」
剣に紫の雷を宿し、渾身の一撃と思わせるフリーズの剣と衝突させる。
激突のした剣戟、そして雷と氷の魔力が激しくせめぎ合い、魔力の衝突による爆発が発生した。
「ぐ……!」
神器同士の戦いに勝利したのはフリーズだった。テュールは押し負けた。
フリーズはそのまま攻撃に踏み込んだ。
2回の斬撃。これは躱された。しかし、その後に繰り出す蹴りの一撃は躱しきる事はできず直撃する。
「ぐ……!」
まともに言葉を発することなく攻撃を仕掛け続ける機会のように戦っていた男が、初めて苦しそうな表情を浮かべる。
肉体に走った衝撃は想像以上だったのか、足の踏ん張りが足りず、奥へと飛ばされるリョウマ。
その一瞬の隙を逃すことなく、ギョッルを上に掲げる。その構えは何回か共闘した覚えのあるアルフォンスにも覚えのない動きだった。
「あれは……?」
アルフォンスの疑問に、レーヴァテインが答える。
「あれ、神器解放の合図」
「神器解放……?」
聞いたことのない言葉が、アルフォンスの頭を混乱させる。
投稿遅れて申し訳ありません。
第2部のPVの時に、フィヨルムがすごいことしてるんです。覚えていますでしょうか?
ヒーローズの神器は、レーザーを撃ったり、巨大な氷の柱を操ったりすることもできるらしいので、ただ武器を振り回すだけでなく、特殊な力を使った戦闘もどんどん書いていきたいと思います。
次の投稿は、一度他の2作品の投稿を挟むので、木曜日か金曜日の20:00の予定です。
次回 14節 選択の結末(4)