ファイアーエムブレム ヒーローズ ~異聞の『炎の紋章』~ 作:femania
・連載小説初心者です。至らない部分はご容赦ください。
・話によって、一人称だったり、三人称だったりと変わります。
・クロスオーバー作品です。元と性格や行動が違うことがあります。
・この作品はシリーズのキャラに優劣をつけるものではありません。勝敗についてはストーリーの構成上、容認していただけると幸いです。
・この話はフィクションです。
・この作品オリジナルキャラも人物描写はスキップしている場合があります。言動を参考に想像しながらお楽しみください。
・作品はほぼオリジナル展開であり、オリジナル設定も盛り込んでいます。
・原作のキャラやストーリーに愛がある方は、もしかすると受け入れ難い内容になっているかもしれないので閲覧注意です
これでOKという人はお楽しみください!
飛空城。その存在はアンナが少し前に話題に挙げていたことをアルフォンスは覚えている。アスクの僻地に存在するそれは伝説では空を飛ぶという眉唾物のように聞こえた。
しかし、目の前にそびえ立つそれは明らかに前に来た時は存在しなかったし、そもそもこの地帯に城などの大きな建物を建てられるほどの堅い土壌はない。
『不可能を消去して、最後に残ったものが如何に奇妙なことであっても、それが真実となる』。今の状況がまさにそれに近い。
城は明らかに何らかの方法でこの場に現れたとしか言えないのだ。
そしてその城の主は堂々と、アスクの避難民を待ち構えたかのように堂々と、城の前に立っていた。
「ようこそ、飛空城へ。歓迎いたします。アスク王国の皆様」
尖った耳がチャームポイントの麗人。杖を持っているものの、最初に見た感覚では、ノノやファなどのマムクートに近い印象をアルフォンスは受ける。
その女性を怪しむ国民達、とうとう王族に騙されたかなどと、ここにきて飽きずに王族批判の火をつけようとする国民。
そんな彼らに、その女性は名乗った。
「私の名前はナーガ。今はこの城を管理しているものです。長い大陸横断、さぞお疲れでしょう。どうか城の中に。5階より下は皆様に用意してあります。ルキナ、隣の彼と一緒にご案内お願いします」
「承りました」
アスク王国の住民は未だ疑い晴れぬものの、このままここにおいて枯れてもエンブラの兵士に殺されることを理解していない者はいないので、ルキナの後に従い、飛空上の中へと入っていく。
「アルフォンス、エクラ。そしてヴァイスブレイヴの皆さん。私の近くへ。話があります」
そしてアスク王国の最後の希望である2人はナーガの呼び声に従い彼女の元へ。
飛空城にはまだ入らず、ナーガは辺りの土地を見渡す。
エクラはナーガを近くに見て、かつて英雄たちに聞いたことのあるナーガの話を思い出す。特にクロムやルキナからは詳しい話を聞いたことがあった。
ナーガというものは、決して単一の存在を示すものではないらしく。魂のみの存在になり世界に縛り付けられなくなった神龍族が世界を監視する者としての責務についた時、その名前を名乗るようになるという説が一般的だ。
真実は定かではない。違う説も数多く存在する。
それでも目の前にいる存在は、そのナーガを自称するだけあり、雰囲気が一般的なマムクートのものより、高次的存在であるような印象を受ける。
「アルフォンスとエクラですね?」
ナーガの問いに頷く2人。
「この世界に迫っている危機。そこからアスクを、いえ、多くの異界を救うためにあなたたちの力を貸していただきたいのです」
アルフォンスはナーガに物申す。
「あなたがナーガであることはひとまず認めるとして、あまりに話が唐突すぎる。少なくとも、貴方がなぜこの地に降りたのか、今回の事変となんの関係があるのか。そしてなぜ僕らが必要なのか、これらを話してもらわないと、僕らとしても進んで協力はできない」
神様的存在を相手によく言えるなぁ、とエクラは感心する。
「……そうですね。確かに、今の貴方の懸念も分かります。しかし、ここで多くを語るのは危険でしょう。我々は今すぐにでも飛び立たなければなりません」
ナーガの言い分も十分筋は通る。今はエンブラに狙われる身。アルフォンスもエクラも、1か所にとどまり続けるのは危険極まりない。
ただし、これが罠であれば一巻の終わりである。もはやアスク王国のために戦える者が少ない今、容易に誘いのるわけにもいかないのだ。
アルフォンスが警戒するのをナーガが見て、
「では、1つだけ。この地に何が起こったかを、お話ししましょう」
アルフォンスは剣に柄に手をかける。人の話を聞くにはあまりに失礼な行為に当たり普段のアルフォンスでは絶対にしない行為だ。フィヨルムはさすがにこの行為を止めようとしたが、スリーズがそれを制止する。無理もないことです、と。
もしも急に乱心し、斬りかかろうとしたら自分が止めなければと、エクラはその意味で身構えた。
ナーガはそれを見たものの、さして気にも留めず話始める。
「一言で言ってしまえば、このアスクの地に起こったのは、時間軸からの逸脱です」
「どういうことですか?」
「ではまず、時間軸の話を少し。アルフォンス、貴方は異界という存在は知っていますね?」
「はい、それはヴァイスブレイブに務める者として当然のことです」
「よろしい。多くの異界は、原則互いに干渉することなくまるで平行するかのように時を刻みます。この至天の世界は、他の世界に干渉するという点では特異なものの、しかし、並行して時間という道を進む一つの世界として成り立っている」
所謂、平行世界論に近いものだとエクラは認識する。
今自分のいる世界は、過去の選択により運命が決めつけられた世界であり、他の選択をした世界とは交わることなく続いていく。選択によって枝分かれした運命が、多種の世界の様相を創ることになる。
「しかし常に世界が正しい道を選び進んでいる事はない。どこかで選択を間違えた世界は、正しい道、正しい時間軸から脱線する。……エクラ、例えばの話です。綱渡りの綱があるとしましょう。もし踏み外したら」
「死ぬ……特に下が奈落だったりすると」
ナーガの話の真相を理解する。アルフォンスもフィヨルムも頭の回転は速く、想像上のそれはエクラが説明したものに近しくなっていた。
「今、この至天の世界に起こっているのは、滑落と同じだと考えてください。綱は世界を存続させるための道だと」
正しい時間軸からの逸脱。その意味を少し理解し、
「まさか、このままではこの世界が……?」
「その通りです」
「そのような話、信じられるとでも……?」
「今は信じていただく必要はありません。いずれはそう認めざるを得なくなりますから」
事実かもわからない与太話。そうともとれるが、現に今至天の世界には明らかに異常が起こり続けている。事実と言う証拠はなくとも、そう信じてしまいたくなる。
「エクラ、貴方の持つブレイザブリクは、正しい時間軸の異界から英雄を呼ぶ神器。エクラ、貴方が英雄を呼べなくなったのは世界が正しい時間軸から離れてしまったことにある。正史を辿るだろう異界と離れてしまったが故に、神器との接続が弱まり、呼び出しにくくなってしまったのです」
「じゃあ、神器の故障じゃなかった」
「はい。そこは安心してください。でも、先ほども言った通り、時間軸からの脱線は世界の破壊を意味する。このままではこの世界は滅びの運命にあります」
「……終末世界っていうのはまさか」
「その単語を聞いていたのですね……、はい。終末世界とは、正しい時間軸から外れた異界。いずれは滅びの運命を辿ることになる、異界のことなのです」
エクラは今自分がおかれている状況が大きすぎて、膝が笑い始めた。
アルフォンスは尋ねる。
「僕らの世界を守る方法は?」
ナーガはその問いに、こう答えた。
「通常、存在しません。あなた方の世界は脱線してしまった時点で、終末が決定づけられています」
それは非情な、最後宣言だった。
次回 選択の結末(8)