ファイアーエムブレム ヒーローズ ~異聞の『炎の紋章』~ 作:femania
「そんな……」
この世界を救う方法はない。その事実がアルフォンスとエクラの精神状態にさらなる悪影響を与えるのは確かである。
しかし、ナーガはそれにつけ足すように言った。
「ただし、今回は例外です。私がこの世界に降り立つことができたのは、この世界の異変が人為的に起こされたものだからです」
人為的と言うことは、この原因を引き起こした犯人がいるということ。
「この世界の時間軸からの逸脱は何者かによって引き起こされたものということだと?」
アルフォンスの確認。ナーガはそれに反論はしなかった。
「犯人は終末世界の存在を知っていながら、わざとそうなるように世界を動かしていました。世界の脱線はあくまで自然な人の選択で行われるべきものです。意図的に終末世界へと世界を動かすことは許されません」
「だからあなたが助けを差し伸べるために?」
「不正は許されるべきではありません。故に私は手を出せる状況になりました」
「では、この世界は助かるのですね?」
「……それは、まだわかりません」
話はこの世界の異常を解決する方法へ自然と動いていく。
「この世界はただ脱線しただけでない。逸脱した他の終末世界と鎖で連結させ、この世界を元の正史世界の時間軸に戻さないように仕向けられている。我々がこの世界を元の時間軸に戻すには、その鎖を外す必要があります」
これでもナーガは難しい話をできる限り簡単にしてくれているのだろうとエクラは思う。本来視界に入れることすら敵わない、平行世界の話。ナーガほどの力がなければ視ることすら不可能だろうその概念には、自分たちが考えも及ばないことがいろいろとあるはずである。
それを自分達にも分かるように、本来もっと複雑な内容をシンプルにして話をしている。聞いているエクラたちは、その鎖をどうにかすれば事態が好転すると分かる。
この手の方法は、物の本質を見抜きづらくなることがデメリットだが、それはおいおい少しずつ自力で解き明かしていくものだ。その手間をエクラも惜しまないつもりだった。
「そして、その鎖を切断するためには、アスクの神器に宿った、この世界の神格を持つ神秘が必要になる。だからこそ、あなたたちが必要なのです」
「……そうですか」
アルフォンスも特に混乱することはなく、ナーガの話を最後までおとなしく聞いていた。
そして話が一段落したところで口を開く。
「……つまり、僕らが行動を起こす必要があるということですね」
「その通り。そうしなければこの世界は滅ぶ以外の道を選べない。だから私は、あなたたちに非情な選択を選ばせます。どれほどの地獄を見ようと、屈辱を抱こうと、あなたたちにはこの世界に生きる人々の希望として、戦っていただきます」
ナーガの発言は非情な宣告に聞こえるものの、その意味を正しく理解できない者はいなかった。戦うしかない。それしか自分たちが助かる道がないのだ。
「この飛空城も関係が?」
「はい、この世界にあったものを、私の権能の力を使ってアスクの門と同じ力を持つように改装しました。鎖は実際に終末世界に行ってその世界における鎖を固定しているものをどうにかしなければならないのです。その……どうするかは、何が鎖かが不明のため大きさによると思いますが」
「アスクの門とおなじということは、僕らは異界に赴く必要があるということですか?」
「その通り」
それも今までの正史世界ではなく、謎に包まれた終末世界。
エクラはこれまで出会った、知っているようで知らない英雄たちを思い出す。その英雄たちが、生きている世界。
数多くの世界を旅してきたエクラでも全く予想はできない世界。
「エクラ」
アルフォンスがエクラを見る。
言葉にしなくてもエクラには分かる。これは相談したげな顔だと。内容も察しはつく、この話を信じていいかと。
「いいと思う」
「……すまない。信じていないわけじゃないけど、理由を聞かせてほしい」
「ああ、そうだね」
理由は至極明快だった。
まず自分たちどうするか分からない以上は、事情を知っていそうなナーガを名乗る存在について行き、事の真相を探る必要がある。
そして、自分の知っている英雄たちが、ナーガに迷いなく従っているところを見ると、騙されているわけではないと思える。
そんな結局根拠にも何にもなっていない話で、行こうと決めてしまうのはどうかと思うものの、エクラからすればそもそもすべての戦いがいつ死ぬか分からない綱渡りだった。一寸先は闇かもしれないなど慣れている。
今は進むべきだ、そう判断した。
一方王族であるアルフォンスはエクラのこの話を聞き、悩む。
アルフォンスとしては慎重に物事を判断するタイプである。さらに、今はシャロンもアンナも自身の不甲斐なさが故に失ったと思っている。
もう2度と同じ失敗はしたくない。それ故にいつもはエクラの相談に納得をすれば肯定的に受け取るものの、今は、まだ意を決することはできなかった。
「アルフォンス、どうか、私を信じてほしいのです」
……あまりに話が大きすぎて、やはり……」
アルフォンスは、未だその話を飲み、行動を起こせないでいる。
――その時。
あまりに唐突に、その男は少し離れた場所に現れた。
「ナーガ。人に希望だけを見せるのはよくない。たとえ救う方法があっても、彼らは絶対にこの世界の終わりを回避できないことを、絶望を教えてあげるべきだ」
ナーガの表情が急に険しくなる。
現れたその男にナーガが向けるのは、敵意。慈悲に満ちた顔をしていたはずのその顔は怒りで歪む。
「……人間を人間ではなくす。その悪行を平気でやってのけたあなたには言われたくありませんね。獅子王」
エクラとアルフォンスはその存在を見る。
第1印象は圧倒的な力のオーラ。相対するだけで鳥肌が立ち、本能がこの男と戦ってはいけないと叫ぶほど。
そしてナーガの使者たる異界のフリーズ、スリーズ、レーヴァテインはすぐに武器に手をかける。
それは、彼らが獅子王と呼ばれた彼を、敵であるとみなしているからだった
「……エリウッド……いや、少し違う。でも、すごく似ている」
エクラの独り言に、獅子王と呼ばれた男は反応を返した。
「ああ。父を知っているんだね。なら僕の名前を知っているはずだよ。僕はロイだ。父、エリウッドの息子。……君たちが知るロイよりは少し年を取ってしまったけれど、本物だよ」
ロイを自称する青年は、もう懐かしいような、さわやかな笑顔を見せた。
ロイの2つ名は若き獅子であるみたいです。若き獅子が15歳くらいのロイなら、成長したら普通の獅子ですね。ちなみに、なぜ王が付いているかは、まだ秘密です。by トザキ
FGOの影響受けまくってるって紹介文に書いてあるけど……特にここでは顕著にでていますね。 ストーリーはちゃんとFE要素を入れて考えてますのでご安心ください。 by femania
次回 19節 選択の結末(9)