ファイアーエムブレム ヒーローズ ~異聞の『炎の紋章』~   作:femania

25 / 84




序章 19節 選択の結末(9)

「絶対に救うことができない……?」

 

アルフォンスの耳に入ってきたのは、ロイを自称する青年が言う非情な宣告だけ。すでに心が折れかかっていて後ろ向きな思考に囚われようとしている証拠だ。

 

「そうだ」

 

アルフォンスのつぶやきを肯定するロイ。

 

「なりません。私は必ず、このアスクの世界を救います」

 

ナーガがそれに反論した。ロイは、不快であることを示す表情でナーガと向かい合う。2人の距離ははるか遠いものの、一触即発の状況だ。

 

「ナーガ。僕はそれを許さない」

 

「何故です。私はこの世界を救うのみ。あなたの世界には手を出さない」

 

「それは無理だ。この世界と鎖でつながっている世界の1つに僕の世界がある」

 

「鎖を外すだけです。それ以上の事はしない。あなた方とは相対することはない」

 

「違うね。君は分かっているはずだ。鎖を外すと言うことは、その世界、終末世界と変貌したその世界を終わらせることと同じことだ」

 

「それは仕方のないことです。あなた方の世界は終わる世界。それが生き残る世界の足かせになることは許されない」

 

エクラは言葉を失う。世界を終わらせるというその言葉に。

 

なぜなら、自分たちは、自分たちの世界を救いたいだけだ。他の世界を滅ぼすつもりはない。そのような、大量虐殺になるかもしれないことと同義の事をするつもりはなかった。

 

ロイはそれを聞き激昂する。

 

「それが間違っているというんだ!」

 

「間違いはあなたです。ロイ。あなたが間違えたから、あなたの世界は滅ぶ」

 

「僕の世界は、多くの人間を幸福へと導くものだと信じている!」

 

「あなたの独善的なその正義があなたの世界を滅ぶべき悪として定めてしまった。なぜ分からないのですか?」

 

「滅ぶべき悪だと……!」

 

殺気。そしてあふれ出る尋常ではない魔力。嵐のように荒れ狂っているように感じるのは間違いなく怒りを表現しているのだろう。

 

それを攻撃の前兆だと感じたナーガは、手に持つ杖を構え、何かを唱え始める。

 

「ならばナーガ! 仮に僕らの世界を終焉に追い込んでしまったと認めよう! では、僕の世界で、涙を流して平和を願った理想郷の人々の願いを踏みにじることが正しいというのか! あの悲鳴を無視し、ファが泣いているのも黙殺し、竜はすべて殺しつくすべきだったと!」

 

「……そうは言いません。しかし、何かの間違いで、あの世界の多くの人々が竜を恐れてしまい、理想郷を滅ぼそうとしたとしても。決して、貴方が人の敵になってはならないと。それでは、ベルン王ゼフィールとやることは変わらない。あなたが悪になってしまうと」

 

「それでもかまわない。僕は悪でも構わなかった! これ以上の戦いがなくすためには、人を変えるしかない。それ以外に道はなかった!」

 

「はい。あなたがそれを選択してしまったことであの世界は最後の変化を起こし、変化がもうなくなった。あらゆる生命のそれ以上繁栄を見込めなくなった。永き安寧。確信のない永世王国」

 

「世界は平和になった!」

 

「そう、貴方は平和を勝ち取った。故に、あの世界の物語は終わるのです。人は、竜になっては、私と同じになってはいけなかった」

 

決して分かり合えない2人。

 

「だからあなたは嫌いだ。ナーガ。なぜ僕の世界が悪として断罪されなければならない。それが僕には納得できない」

 

「そうでしょうね」

 

ロイはそれだけ言いこの話を終わらせた。

 

しかし、すぐに戦いとはならなかった。

 

「ナーガ、先ほどの続きだ。なぜ、彼らに不可能であることを教えない」

 

「アルフォンスも無事、エクラも無事です。神器は後にすべて取り戻せば構わないでしょう。まだ希望はある」

 

「ナーガ。たとえ君自身が戦ったとしても、僕らの世界が勝つ。八神将、僕らは竜を殺した英雄たちそのままの力を受け継いだのだから」

 

そう言うと、ナーガはフリーズに目を合わせる。

 

「フリーズ兄様……?」

 

心配そうに見つめる妹のフィヨルムの頭をなで、

 

「大丈夫だ」

 

とにこりと微笑んで安心させる。そして、ナーガの近くによると、神器のギョッルを抜く。

 

ナーガは何かを唱える。それと同時に、フリーズに膨大な魔力が流れ始める。

 

「ナーガ様?」

 

「フリーズ、もしもの時にお願いします」

 

「分かりました」

 

ナーガの元で戦う戦士として、フリーズは迷いなく頷く。ロイはそれも気に入らないようで、

 

「お気に入りの戦士なみたいだね。趣味の悪い。世界を救うという大義名分で、人をさらっては自分の兵士として使うなんて」

 

「等価交換です。あなたにとやかく言われたくはありませんね。異界への干渉もただではないのです」

 

「……いけないな。感情的になってしまうのは領主としてよくないと、父上から何度もお叱りを受けたのに、まだ治らない悪癖だ」

 

皮肉っぽく笑ったロイは再び顔を真剣なものに戻すと。

 

「ナーガ、君たちがこの世界を元に戻そうとする限り、僕らは、『理想郷』のすべての人々が君たちの敵だ」

 

アルフォンスやエクラの敵になると宣言する。

 




GW期間は投稿ラッシュです。こまめにのぞいてみてください。

次回 20節 選択の結末(10)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。