ファイアーエムブレム ヒーローズ ~異聞の『炎の紋章』~   作:femania

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序章 23節 アスク王国の軍師

マルテの魔力によって生み出された氷の塔の最奥には、すでに息絶えたフリーズが肉体をそのままに封印されている。

 

ナーガはそれを一瞥して、祈りをささげた。

 

ロイは後ろからナーガに話かける。

 

「心変わりはいつでも受け入れる。僕たち『理想郷』の人間は来るものを拒みはしない。竜と共に生き、平和を愛することのできる善良な民を、人を何人でも受け入れよう」

 

それはすなわち、投降せよという暗喩だった。

 

「私は、私のために死んだ彼のために、必ずあなたたちを滅ぼします。炎の紋章に誓って」

 

ナーガはロイを睨み返した。

 

「そうか。君はまあ、そうだろう。けど、彼らはどうかな」

 

普段は慈悲に満ちた穏やかなナーガをもってして、

 

「この愚か者。彼らの家族を人質に取るとは」

 

心より憎しみに満ちた声を出させる者はそうはいないだろう。

 

「僕は自分の領地を守るためなら、どんな悪をも成す。それで民たちに断罪されるのならそれも受け入れる覚悟はある。全ては僕らが勝ち取った理想が正しいことを証明する。与えられたものを全て使って、必ず勝利する」

 

「この国の民たち、そしてアルフォンスやエクラ、フィヨルムは私が守ります」

 

そう睨み返そうとする次の瞬間には、ロイも、そして新たなマルテの使い手となったシャロンも、その姿を消していた。

 

 

 

これは終末世界が如何に自分たちの想像を超えた相手であるか、アルフォンスやエクラがその身でわからされた瞬間だったと言える。

 

 

 

飛空上の1階から5階は避難民の居住スペースとして開放された。

 

飛空城には縮小的に再現したスペースもあり、食物もある程度保管されていたためしばらくは、暮らすことについては困らないだけの設備が存在する。

 

そして、6階以上が、今後のアルフォンス達の本拠地となる。一般の民は親友不可能、飛空城の機密事項、軍事物資、その他さまざまな叩くための設備が整っている。

 

「……1人にしてほしい。しばらくは誰も来ないでくれ」

 

自室に案内されると、アルフォンスは部屋に入ってしまい音沙汰がなくなってしまった。

 

すべて自分がアルフォンスをしっかり支えられなかったからだと、エクラは自分を責める。

 

何も守れなかった。何もできなかった。挙句の果てにアルフォンスをここまで追いつめて、シャロンを連れ去られた。

 

自分の無力に今にも泣きだしたかった。何もかも投げ出したかった。

 

「ふぇ……」

 

しかし、先に避難し、住民の避難誘導を手伝っていたフェーが、自分たちのもとに戻り、心配そうに見つめてくる姿を見て、エクラは、自虐は後だ、と自身を奮い立たせる。

 

止めっている時間はない。迷っている時間ももったいない。アルフォンスがダウンしている今、動くべきなのは自分だ。そう、自分に言い聞かせた。

 

エクラはフィヨルムに無理をいい、体を休める前に今後の方針を一緒に決めてほしいと打診する。

 

フィヨルムは、

 

「エクラさんは……お強いですね」

 

「ごめん、その、異界のお兄さんが」

 

「いえ、皮肉ではないです。それは誓って。エクラさんは今、アルフォンスさんの代わりをしようと今自分を懸命に鼓舞していらっしゃいます。私も見習わなければ。そう思ったのです。どうか、ご一緒させてください」

 

と、前向きな返答をした。それだけは、エクラにとっての救いだった。

 

7階の操舵室に連結する大広間。そこには大きな椅子が1つ用意されているものの、それ以外は何の違和感も覚えない。新しいところにきた感覚がないのは、恐らく、この場所がアスク王城のホームを再現しているものだからだと、エクラは思う。

 

「アルフォンスは?」

 

いつの間にか城に戻っていたナーガは、エクラに問う。エクラは答えることはできなかった。

 

「そうですか。無理もありませんね」

 

アルフォンスは心の整理がつくまでは、無理をさせてはいけない。それはこの場に集う、アスクの生き残り、そしてナーガの戦士たちの総意となっていた。

 

「ふん。無様な。弱い王族だよ」

 

ネームレスがアルフォンスを侮辱する。エクラはそれが許せなかったが、

 

「ネームレス!」

 

とナーガが忠告ととれる名呼びをし、

 

「失礼。失言のつもりはないが、もう少し場をわきまえるべきだったかな」

 

ネームレスが皮肉っぽく笑ってその場は収まる。しかし、エクラは、その男と友達にはなれそうにないと確信する。ルキナとなぜ仲がいいのかも納得できない。

 

ナーガはエクラに問う。

 

「ここまでよく頑張りました。しかし、体を休めないということは、すぐにでも行動を開始したいということですね?」

 

「はい」

 

返答するエクラに迷いはない。本当は今聞かなければならないことは他にもある、終末世界についてもっと詳しく聞きたいところだし、あのシャロンの変貌には何があったのかも知りたい。

 

しかし、いつものアルフォンスならそうはしない。自分たちがやるべきことを第一に考える。だからエクラもそうすることにした。

 

「自分の失態はできる限りのことをして取り戻します」

 

「良い心がけです。では、これからの方針を伝えましょう」

 




次回 終節 絶望に挑む希望の旅路へ
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