ファイアーエムブレム ヒーローズ ~異聞の『炎の紋章』~ 作:femania
・連載小説初心者です。至らない部分はご容赦ください。
・話によって、一人称だったり、三人称だったりと変わります。
・クロスオーバー作品です。元と性格や行動が違うことがあります。
・この作品はシリーズのキャラに優劣をつけるものではありません。勝敗についてはストーリーの構成上、容認していただけると幸いです。
・この話はフィクションです。
・この作品オリジナルキャラも人物描写はスキップしている場合があります。言動を参考に想像しながらお楽しみください。
・作品はほぼオリジナル展開であり、オリジナル設定も盛り込んでいます。
・原作のキャラやストーリーに愛がある方は、もしかすると受け入れ難い内容になっているかもしれないので閲覧注意です
これでOKという人はお楽しみください!
次元跳躍中、外に出てはいけないという話を受け、少女は広い飛空城内を歩いていた。
飛空城、その構造はいったいどうなっているのか、子どもの頭で考えてもなかなか分からない。
飛空城の中には小さいながらも町がある。さすがにアスクの城下街には遠く及ばないものの、避難してきた人間が暮らすのには十分な大きさだった。
最初は困惑していた避難民も、数日も経てば、用意された町を活用しながら新たな生活を手探りで始めている。
「……あった」
少女はまだ子供だ。しかしそれほど子供ではない。だから、人にひどいことを言ってしまった後に後悔し、次に会った時、どうしようかと反省することができるほどには大人だ。
少女が来たのは武器屋だった。
自分ではどうにもできないかもしれない。それでも、ただ一人、大切な英雄を自分の手で殺してしまった償いをしたかった。たとえ、今からしようとしていることが無駄なかもしれなくても。
「ルフィアちゃん。どうしたの」
武器屋のおじさんとは、親を通じての知り合いだった。
彼女は、槍術を習いたいので、何か必要なものがあれば用意したいという旨を伝える。
15歳である彼女は、肉体的には十分に成長している。無理な運動も多少は許容するだろう。体を酷使する可能性のある行為を始めるには、今しかない。
槍術にしようとしたのは、シャロンに影響されたからだというのは、自覚していなかったが。
「ルフィアちゃん。危ないからやめなさい。それは男の学ぶものだ。君のような若い女の子はもっと、おしとやかな趣味を持つといい」
「そんなことない。シャロン様は、槍を持って立派に戦ってました! そんな風にとは言えないけれど、私だって、大事なものを守れるよう、学べることは学びたい!」
「ルフィアちゃん。槍術はそう甘くはない。きっと君では挫折する。いや、君だからではない、多くの人間が挫折する、厳しい世界だ。そんなものに輝かしい若い時代を奪われるのは、天国のお母さんだって望んでいないはずだ」
父はアスクの襲撃の際に死亡していて、母は病で二年前に他界した。幸い母の代わりに来た叔母は母と同じくらいにルフィアたちに愛を注いでくれる熱心な人で、叔母が来ても、困ったことはなかった。
しかし、アスクの襲撃の際に、叔母と妹とは離れ離れになってしまった。飛空城に来た時にも再会はできなかった。
まだ生きていると信じるほど、希望を持ってはいられない。アスクで起こったあの光景はただの虐殺だった。あの中で逃げ切れたなどと思っていない。
しかし、ルフィアはこうして救われた。まだ生きている。
いままで、神様に祈っても医者に祈っても母は助からず、アスクの兵隊を、他の世界の英雄を信じても裏切られた。だから、今は独りぼっちなのだ。
でも、あの人は違ったと、彼女は思っている。
アスク王国は信頼していない。故郷を守れなかった国をもう信じない。しかし、その中の王族、シャロンと、わざわざ助けに来てくれたエクラ。この二人は、信じていいと思った。
子供一人、見捨てていれば生きられたかもしれないのに、わざわざ助けに来たあの二人。アスク王国に生きる人々を助けるという意思が、シャロンからしっかりと伝わってきた。
彼女にとって、あの時のシャロンは間違いなく英雄だった。弱きものを守るために戦うヒーローだった。
そんな、英雄を自らの手で殺してしまったのだ。
あの時、我が儘を言って、逃げなければシャロンが追ってくることも、そこで死ぬこともなかった。
もはや家族はいない、帰るべきところもない。ならば、せめて、自分が引き起こしてしまった犠牲への償いをしなければならない。
故に、彼女はすぐにではなくても、いつか、シャロンを取り戻す手伝いをしたいと決めた。アスク王国のために戦うのなんてお断りだったが、シャロンのためになら協力したいと思った。
そのために、まずは行動を起こそうと考えたのだ。いつか、シャロンを取り戻すために、飛空城の主が戦うときが来たら、必ず役に立てるように。
しかし、武器屋のおじさんは頑なに譲らない。
「ダメだ。女の子は武器を持つべきじゃない!」
「何もすぐに戦いたいって言ってるわけじゃない! いつか役に立つかもしれないから勉強したいだけなのに!」
「君は守られる側だ! 兵士の真似事なんてする必要はない! できるわけないだろう!」
「おじさんの馬鹿! わからずや! 何もそんな言い方しなくてもいいじゃない!」
喧嘩はどんどんと苛烈になっていく。
その時、店に一人男が入ってきた。
「親父、鋼の剣を10くれ。……ん? 取り込み中だったか?」
「おお、ネームレスさん。いらっしゃい」
来たのは、アスクの王族を助けた謎の男であるネームレス。下には来ないものだと思っていたから、彼女はその来店に驚いた。
「聞いてくれよ、ネームレスさん。そこのお嬢ちゃんが、槍術を習いたいって。兄ちゃんからもなんか言ってくれよ」
「ん、彼女がか?」
何度かこの男が戦うところを、彼女は見たことがある。多彩な武器を使って敵を倒しつくしている姿は、間違いなくこの男が実力者だと言うことを示していた。
しかし、見た目の印象では、かなり性格が悪い人だという感想をぬぐえない。現に今も彼女を見つめるネームレスの目つきはあまり優しいものではない。
「いいんじゃないか?」
「え? 何を」
意外な言葉が返ってきた。
「若いときに無茶をさせると将来化けるやつもいる。最初から可能性を否定することが絶対の正義なら、俺という存在はここにいない。俺も昔は周りに比べてただのポンコツだった。剣の天才の王子、魔法の天才のすごい奴、そんな奴と隣で過ごしてきたからな。自分の才能のなさは痛感していた」
ネームレスは武器屋を見渡すと、青銅の槍を手に取り、店主に宣言をした。
「元々、今回の襲撃に嫌気がさして、自衛手段を学びたいと言い始めた若者も何人かいる。俺も次の世界についたら仕事だが、それまでは暇でな。若者にいろいろと教えてやろうと思っていたところだ。その中で面倒を見よう」
「だが、彼女は女の子だ。できるわけが……」
ネームレスは急に不機嫌そうな顔になる。
「例えば今の俺の同僚であるルキナは女性だ。彼女が弱いとでも? それとも彼女が男に見えたかな? 俺を馬鹿にするのは構わない。雑魚だからな。だが、あの高潔な王女の侮辱をしようと言うのなら、表に出てもらうことになる」
「な、なんだよ急に……」
「女性だから戦えないなどとくだらん。アスク王国はそんな差別をするクソみたいな国なのか? 誰であっても、戦う術は身につけられる。戦い方が違うだけだ。結局、相手を殺せた方が勝ちなんだから」
ネームレスは青銅の槍を彼女に投げた。彼女は慌てて、その槍を掴む。
「お前、なんのために槍を学びたい」
ネームレスは彼女に問う。
急な質問に言葉が詰まったものの、彼女の心は既に決まっていた。それを不器用に、しかしありのままに言う。
「私、戦いたいです。シャロン様が死んだの、私のせいだから。その、すぐには役に立てないかもしれないけど。何かして、償いたいんです」
「彼女が死んだのは君のせいではない。話を聞く限りでは、あの王女が選んだ道だった」
「でも」
「だが、君がそう思うのなら。俺はその願いを聞いてやろう。名は?」
「ルフィアです」
「ルフィア。俺が教えられるすべてを教える。だが、長く辛い道になるぞ。何度も体が悲鳴を上げて死にたくなるかもしれない。それでもいいなら、俺がお前を鍛えてやる」
彼女はもう一度ネームレスを見る。
どこか嬉しそうな顔をしていた。その理由は彼女には分からなかったが、
「よろしくお願いします!」
目の前に来た救いの手に、縋ることに変わりはない。
ルフィアは迷わずその提案になるぐらいには本気だったのだ。
「よし、親父、その槍も追加だ」
ネームレスの今の顔は、戦いの時の厳しい目ではなく、どこか、父親のような、兄のような頼もしい表情に見えたのは、彼女の、ルフィアの気のせいだったのかもしれない。
次回 幕間 英雄召喚