ファイアーエムブレム ヒーローズ ~異聞の『炎の紋章』~ 作:femania
ヘルボーン
HP50 攻 57 速 32 守 21 魔 23
グラド兵と大量のヘルボーン部隊との交戦は続く。
魔物の倒れる音と一緒に、グラド兵の断末魔も断続的に聞こえてくる。それが、魔物が侮ってはいけない存在であることを示していた。
その中を突っ切っていくエクラとヴァイスブレイヴ一行。魔物戦経験者のヨシュアが、
「柄じゃねえな、本当に」
と小言を言いながらも、積極的に前に出て切り開いてくれるおかげで、敵将のポジションにいるマグダイルへと近づくことができる。
「エクラさん伏せて!」
フィヨルムとレーギャルンが有利に戦えるように勇敢に戦場に突撃し、2人のサポートをしていたエクラに矢が飛んでくる。その矢も、やはりヘルボーンの攻撃の一種だった。
彼らは人間と同じように、集団で戦うだけでなく、連携をして敵を追い詰めようとしているのが、後方で観察を続けていたエクラにはよくわかる。
故に、前衛の間を縫って、しれっとエクラを狙う矢があっても、エクラはそれほど驚かなかった。
フィヨルム言う通りに伏せることで矢を躱し、起き上がってすぐに〈奥義の刃〉を近くの味方に全員に見つけ、瞬間的な爆発力で、ヘルボーンを撃退する。
結構なダメージ、それはエクラが特効薬で回復させるが、フィヨルムたちに徐々に疲労が見え始める。魔物が相手でも、もはや普通の敵と相手している時とそれほど負担は変わらない。
むしろ慣れない相手、そして慣れない動きに対処しなければいけないので、負担は大きいのに違いはない。
「見えた……!」
フィヨルムの宣言通り、何とかヘルボーンの軍団を切り開いた先に、マグダイルと思われるガイコツ兵とは違う敵が現れる。
エクラはすぐにその敵を見てその敵の強さを判別する。
マグダイル
HP50 攻 65 速 38 守 40 魔 10
(ええ……)
魔法を使える人間が現状前衛には存在しない。守備40という高さに苦労しそうな相手。
敵は上は人型、下は4足歩行の獅子の姿をした半人半獣の姿をして大きな斧を持っている。
マグダイルもこちらの姿を見かけた瞬間、敵意をあらわにし、向かってきた。
斧の薙ぎ払いを躱す。
レーギャルンが一撃。
「く……」
上の人型の部分を狙ったものの、その部分も堅いようだ。
マグダイルもただでやられるはずもなく、持っている斧を軽々と振り回し、暴れ始める。
ヘルボーンの連携も取れる細やかな動きに対して、マグダイルは自身の能力を存分に発揮する暴れを見せる。
一度躱しても、得物を殺すまで絶対に逃がさないという勢いで、斧を振り回し攻撃を避けるフィヨルムやレーギャルンに追撃をしてくる。
隙は無いわけではないが、目の前の敵がより速く動けるかどうかがまだ分からない状態なので慎重になり、無理に攻撃を通そうとはできない。故に、暴れているマグダイルを相手に攻めあぐねていた。
「フィヨルム、神器に魔力を集中させて。これは、普通に武器を使って攻撃だけだと時間がかかりすぎるわ」
「はい。分かりました」
エンブラの炎の力を宿した神器、ニーウ、ニフルの氷の力を宿した神器、レイプト。それぞれが、神器の力を解放するだけで魔力を伴った高い攻撃力を伴う攻撃へと変化できる。
しかしいつでも使えるわけではない。神器の攻撃力を上げるこの攻撃をするには準備が必要だ。
そしてそれはエクラの戦略眼のみが知ることだが、神器の魔力攻撃を使うには奥義を使う必要がある。
本人たちは神器の魔力の装填時間だと認識しているが、それはエクラから見れば奥義のカウントと同じだ。
ゆえに〈奥義の刃〉でサポートすることにより、神器の真価を発揮する攻撃をすぐに使うことができる。
「いいサポートね!」
レーギャルンとフィヨルムの奥義が発動する。自分から攻撃するために普段使う攻撃とは違う奥義を使っている。
「合わせて!」
「はい!」
マグダイルの渾身の斧の振り下ろしに炎を纏った神器の攻撃をぶつける。使う奥義は〈竜穿〉。自身の攻撃力が高ければ高いほど、その攻撃の威力を倍増する。
マグダイルの渾身の一撃はスキルの〈鬼神の一撃3〉の力で盛られ、攻撃力は70近くになっていたが、レーギャルンの攻撃力の方が最終的に勝り、斧は大きく弾かれる。
そして声を掛けるまでもなく、フィヨルムも奥義、〈氷華〉を使用する。
氷の槍による刺突の威力があがり、マグダイルに渾身の一撃が見舞われた。
しっかりと痛手になったようで、マグダイルは怯む。
「続けていくわ」
「はい!」
止めを刺すべく2人は一気に攻撃を仕掛けようとするが、そこに待ったが。
「前方の特務機関、下がれ!」
デュッセル将軍が声を張った。
何事かは説明されていない。しかし少なくとも悪いことにはならないだろうと判断し、1人でマグダイルを相手どっていたヨシュアも共にマグダイルから距離をとる。
グラド軍に同行していた司祭が戦場に出てきていた。
「なにを……」
司祭は本来戦場で傷ついた者を癒すのが仕事。前衛に出てくる必要はないというのが定説だ。
しかし、ヨシュアが言う。
「まあ、見てろって」
司祭が光魔法を放つ。
本来はそれほどの威力がなく、司祭が自衛のために持つ程度の威力なのだが、魔物相手ではわけが違った。
光魔法を受けた魔物たちは、全員が凄まじい攻撃を受けたかのように苦しみ、断末魔の声を上げ始める。
「あれは……」
「エクラは初めて見るよな。そりゃ向こうにはこの連中はいなかったから知らねえのも無理はない。司祭は魔物に良く効く攻撃を繰り出せるのさ」
司祭の戦線参加により、マグダイルが1匹を残して殲滅。ヘルボーン部隊も一気に崩れた。
魔物たちはなおも特攻をグラド軍に仕掛けるが、形勢逆転した軍の勢いに勝てるはずもなく、この襲撃戦はグラド軍の勝利がほぼ確実となる。
「最後の1匹だ。仕留めるぞ、召喚師」
「うん」
マグダイルにとどめを刺すべく、特務機関の3人は再び攻勢にでた。
次回 1章 4節『皇帝リオン』-4