ファイアーエムブレム ヒーローズ ~異聞の『炎の紋章』~ 作:femania
ちょっと忙しくて……こっちに時間が割けない……
玉座のある場より少しこちらへと近づいてくるリオン。
その最中、魔法書を持ち何かの術を詠唱する。
現れたのは魔法によって造られた幻影兵たち。意志を持たず、主の敵を屠るために持つ武器を振るう人形たち。
「エクラ……どうするの?」
レーギャルンの問いにエクラは少し悩む。リオンはこの世界では皇帝と呼ばれている者だ。それに刃を向ければ、どう考えてもその後ただでは済まない。
しかし、幻影兵は判断の時間すら許さなかった。
「エクラ様! 来ます」
フィヨルムの警告通り幻影兵は容赦なく襲い掛かってくる。このまま手をこまねいていてはやられるだけだ。
「やろう」
レーギャルンに一言。それで、彼女も頷き戦闘態勢に入る。
基本的な動きは、ヨシュアはエクラのガード。攻めはフィヨルムとレーギャルンで行う形になった。
リオンは幻影兵を生み出した場所から動かず、新たな魔法の詠唱を始めている。やはり先ほどの『構えろ』というのは冗談ではなかったのだ。
エクラは幻影兵のステータスを見る。
幻影兵
HP1 攻58 速31 守0 魔0
ステータスがさすがに極端すぎる。このような相手は初めてだ。しかし、攻撃力58はかなり警戒しないといけない。
攻めに言っている2人のHP管理は、杖を使える味方がいない今自分が回復役をつとめなければならない。
幻影兵は15体ほど召喚された。そして彼らを援護するようにリオンの魔道光弾が飛んでくる。紫や黒を基調とする色から闇魔法と思われるが、実際は定かではない。
エクラは、リオンのステータスを見ておくべきかと考えたが、今は幻影兵の処理を優先する。
魔道光弾を器用に躱しながら2人は幻影兵を処理していく。しかし、リオンによって随時召喚される兵は徐々にその数を増し、攻撃は熾烈になり始めていた。
「フィヨルム! 後ろ」
「レーギャルンも!」
互いの死角をもう片方がカバーする連携は見事の一言。しかし、
「貴様らが手をこまねいているのならここで圧し潰す。その程度なのか、特務機関! 疾く僕に剣を向けて見せろ」
幻影兵の召喚と、援護の魔法光弾を放ち続けるリオンの火力に負けるのも時間の問題だ。
魔法光弾は1発ずつではない。リオンの頭上に数々描かれた魔法人から、常時5発以上の光弾がレーギャルンのフィヨルムに襲い掛かる。
「このままだとヤバいぞ」
「分かってる」
ヨシュアの警告を受けて、エクラは迷わず支援を始める。使うのは〈落雷の呪符〉。敵に固定で20ダメージを与える攻撃支援アイテムだ。
その効果は広い範囲にわたる。見方を器用に避けた落雷は幻影兵を一気に焼き払った。
「ほう……」
リオンが感心した声をあげる。
敵はいなくなり、リオンまでの道が拓かれた。レーギャルンは最初にリオンへの攻撃を仕掛ける。デュッセルは迷いない彼女の攻撃の意志を見て動こうとするが、
「手を出すな!」
リオンの怒声に阻まれ動くことができなかった。
魔法陣の数が増える。その数は15以上。全てから魔法光弾が放たれ、レーギャルンを追い詰めようとするが、それでやられるほど甘くはない。レーギャルンは自らの神器で光弾をはじきながらリオンに接近する。
そしてその距離はニーウの刃が確実に届くまでなくなった。
リオンはそれでもその場を動こうとしない。相手が刃を向けているのにひたすら光弾をフィヨルムに向け放っているだけ。
それはまるで。
こちらに来いと誘っているかのように。
「レーギャルン!」
警告は数歩分遅かった。炎の刃を持って皇帝に挑みかかるレーギャルンはおそらく勝利を確信していただろう。
魔導師は近接戦を不得手とする。それは戦いの基本だ。故に近接武器を使う者は、いかに近づくかさえ気を付けていればいい。それでことは済む。
レーギャルンは剣を寸前で止める気でいたがそれまでは本気で振り抜くつもりだった。それで死ぬようではその程度の人間だと断ずるつもりだったし、魔法による抵抗も考えていた。
しかし、それすらもリオンはしなかった。
その理由はすぐに明らかとなる。
リオンは何魔導書を持たないもう片方の手を上にあげる。その手の形や挙動はまるで何かを持っているかのようだった。
そしてそれは魔法によって姿を隠されていた大斧だった。
エクラは慌ててリオンのステータスを見る。
リオン
HP78 攻75 速35 守40 魔55
武器 双聖の黒斧ガルム
攻撃+5
相手の守備、もしくは魔防のどちらか低い方でダメージ計算。
魔物特攻。魔防が相手よりも高いとき、自身の攻撃力を25%アップする。
あれは、魔導師などではない。完全な重装系のアタッカーだ。
そしてそれをリオンは片手で近づいていたレーギャルンに向けて振り下ろした。
「な……!」
正史世界のリオンが斧を使っていたという記録はないし、実際に召喚されていたリオンも武器を振るえるような才能はないようだった。
だが、あのリオンはどうだ。あのガルムを片手で振り、レーギャルンを大きく弾いたのだ。
神器同士の激突。しかし、短剣に近い刃と大斧ではどう考えても斧に分がある。レーギャルンは吹っ飛ばされ、玉座の間の壁に激突。その場で伏してしまう。
リオンに慈悲はなかった。
再び魔法書を開く。リオンの頭上に30の魔法陣が描かれ、それらすべてからレーギャルンにとどめを刺す紫の魔法弾が放たれた。
「させない!」
エクラが特効薬でレーギャルンを回復させる一方、フィヨルムはその魔法を防ぐべく氷の壁を展開する。フィヨルムの奥義〈氷の聖鏡〉、大きな氷の盾で防御し、氷の盾が受けた衝撃や魔力を自身の攻撃力に転換する。
しかし万能と言うわけではない。魔力や衝撃をフィードバックする関係でフィヨルムにもその負担が来る。盾で防いでも完全にノーダメージとはいかない。
圧倒的な数の魔導弾を目に、それでも怯まなかったフィヨルムは氷の盾を展開する。
凄まじい魔法の連撃を迎えるフィヨルムは1秒で表情が曇る。それだけその攻撃が圧倒的攻撃力を秘めているということだ。
「あ……ぐぁ……」
リオンはなおも魔法陣を展開し続け、フィヨルムの盾を壊そうと魔法を放ち続けている。まるで雨のように降りかかる、群れた狼のように相手を引き裂き食らおうとする獰猛な攻撃に、もはや、フィヨルムは耐えられない。
エクラが特効薬を使って体に受けるダメージを回復させているが、それが3秒ももたない。
そしてその瞬間は来た。氷の盾は割れ、フィヨルムもその場で倒れこむ。防ぎきれなかった魔法弾が襲い掛かるが、それはなんとか立ち上がったレーギャルンがすべて弾いた。
突如、魔法弾の嵐は止んだ。
「ここまでだな」
リオンは魔導書を閉じると、余裕の表情で玉座へと戻る。
そしてゆらゆらと何とか立ち上がる。フィヨルムを見てリオンは言い放つ。
「予言の通り、たどり着いたんだね、ヴァイスブレイヴ」
少し笑い、そう言った後すぐ厳しい顔に戻り、声高らかに宣言する。
「――ヴァイス・ブレイヴ。どれほどのものかと期待したけれど。この程度か。君たちはこの世界で死ぬ。弱者に情けをかけるほど、この国は甘くない。その余裕もないのだから。死にたくなければ君たちの旅はここで終えるべきだ。グラドは君たちを『避難民』として心から歓迎しよう」
1章 5節 『最後の国グラド』-2
エクラ「誰と(支援)会話をしようか?」
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フィヨルム
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レーギャルン
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ヨシュア
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デュッセル
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アメリア