ファイアーエムブレム ヒーローズ ~異聞の『炎の紋章』~ 作:femania
このご時世なのに、なぜか忙しくこっちに時間が割けませんでした。
リオンは玉座に座り、先ほどの戦いで傷ついたフィヨルムとレーギャルンを見てはっきりと告げる。
「グラド帝国は、魔物の脅威の中で生き延びようとする人間すべてを拒まず迎え入れる。この地で住居は用意する。そこで事の終わりまで安静に暮らすがいい。ただし」
次の一言をリオンは強調する。
「ただし。僕の許可なくして今後帝国居住区を出ることは許さん。違反すれば、貴様らはグラドの敵になると心得よ」
つまり、この先、エクラたちは自由に行動ができなくなるということ。
さすがにそれは、はいそうですか、と受け入れることはできない。エクラを含めヴァイスブレイヴの目的はこの地にあるファイアーエムブレムを探しだすこと。
「リオン王! お話を聞いていただけませんか! 我々は」
エクラはすさまじい圧を醸し出すリオンに勇気を出して反論する。
「このマギ・ヴァルのどこかにある『鎖』を手に入れなければ」
「知っている。そのためにこの大陸各地で見聞し、いずれはたどり着こうという生ぬるいことを考えているのだろう」
「なんでそれを……」
「はっきり言っておこう。お前たちの今の実力で、その鎖、いわばこの世界の『ファイアーエムブレム』を目にすることは不可能だ。なぜなら、今、お前たちが探しているそれは、この世を滅ぼす悪となった魔王エフラムが持っているものだ」
「え……」
リオンから告げられた驚愕の事実。アンナ隊長を殺したあの禍々しい魔力を帯びるエフラムが持っているということ。
そうなるとそもそも戦闘無しに証を手に入れることは不可能だ。そもそも和解の道など存在しないのだから。
「目的の鎖を目にすることは今のお前たちでは叶わない。無駄に命を散らすことは決して許すことはできない。だからこそ、お前たちを非戦闘員である避難民として受け入れる。この決定を覆すつもりは今はない」
リオンが強い口調で、この玉座がある間で言うからにはこれは皇帝としての言であることは明らかだ。
「……では、この国のお手伝いをさせてほしいです。グラドは魔王エフラムと戦っている国であることは予想できます。そのお手伝いをする代わりに、『鎖』を」
ここでエクラはお願いではなく、交渉を始めたのは評価に値する動きだろう。
しかしリオンは。
「お前たちに特別な待遇は一切与えない。この世界は残酷だ。弱いものは魔物に殺されて死ぬしかない。お前たちも決して強いものとは言えないのだ。命を大切したいのなら、ことが終わるまでおとなしくせよ」
リオンはたたみかけるように次の一言を添える
「そもそも。魔物との戦い、そして魔王討伐はグラド帝国の誇りにかけて行う戦いだ。お前たちの手を借りなければならないほどグラドは落ちぶれていない。お前たちの手をどうしても借りたいとは思わない。僕がお前たちに要求するものは何もない!」
この一言から、もはやリオンとの交渉も不可能であることは明らかだった。
エクラもこれ以上の反論を出すことができず、言葉に詰まってしまう。
そしてフィヨルムもレーギャルンも、リオンとの戦いに負け、そして彼から感じる圧を受けて完全に引け腰になってしまっていた。
リオンは玉座からこの場における最後の指示を出す。
「デュッセル」
「は」
デュッセルは首を垂れて、皇帝の指示を受ける態勢となった。
「彼らは異邦からの旅人だ。この地のことはまだあまり理解できていないだろう。面倒を見てやれ。必要ならば他の三石と直下の部下にのみ交代を許可する。ああ、そうだ。もしも彼らに覚悟があるというのなら、処遇の変更はお前が責任を持てる範囲でしてもらっていい」
「なるほど……承りました」
「よし。では僕はこれから公務で留守にする。ヴァイスブレイヴのこの後の動きはお前に一任する」
リオンは必要な命令を下した後、
「ノール、『対魔神砲』の様子を見にいく。供をせよ」
この謁見の間を去った。
エクラはリオンがこの間を出て行った後に、すぐにフィヨルムとレーギャルンを、特効薬を使って回復させた。
言葉を放つのが少し楽になったのか、レーギャルンから先ほどの戦闘の感想が飛び出した。
「強いわね……でも、リオンが双聖器、しかも斧を使うなんて」
「はい、驚きましたね。でもそれ以上に、魔法の威力、精度も高かったですね」
フィヨルムも同意の意見を示し、エクラも同意する。
命令を受けたデュッセルはエクラたちに再び近づく。
「そなたらも自信を無くすな。リオン様はグラド最強の魔導士であり双聖器の使い手だ。リオン様を相手に、たった3人で斧を使わせることができたお前たちは、十分強い」
そして、皇帝の命令を遂行すべく新たな行動指針を提案した。
「だが一方で確かにおぬしらだけでは、この世界を戦い抜くには厳しかろう。3人ではとても生きられる厳しい世界だ。リオン様は儂に『面倒を見てやれ』を仰せになった。本当にどうでもいい相手であれば、このような命令は下さぬよ。どうだ。ここはひとつ、儂に面倒を見させてくれぬか? そなたらのためにもなるだろうし、きっと意味はあることだ」
断る理由はない。皇帝にあのように言われた以上、反抗したらそれこそ自分たちの立場が悪くなる一方だ。
自由に動けなくなるのは今後の探索に支障をきたすことになるだろうが、急がば回れということわざをエクラは知っている。
エンブラとの戦いでも、何もかもが順風満帆にうまくはいかなかった。ここはグラドに身柄を拘束されたと考えるのではなく、この国について知るタイミングだと明るく考えることにした。
「お願いします」
「よし。ではまず、拠点となる住処を探さねばな。生憎兵舎はいっぱいでな。城下街のなかから探すことになるだろう。ついてまいれ、ついでに城下の案内もしよう」
歩き出すデュッセルの後ろをついていくのはもう何度目になるか。
しかし、武骨な態度であるものの信用のおける善い人であることは、ここまでの行動でエクラは感じ取っている。信頼をおいて彼についていく。
グラド帝国三石〈黒曜石〉の将軍に。
1章 5節 『最後の国グラド』-3
エクラ「誰と(支援)会話をしようか?」
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フィヨルム
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レーギャルン
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ヨシュア
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デュッセル
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アメリア