ファイアーエムブレム ヒーローズ ~異聞の『炎の紋章』~ 作:femania
信頼を得る。客将として戦うのはその後だ。
しかしながら信頼を得るのはとても難しいことだ。数日でそれを成し遂げることはなかなかない。
しばらくの間滞在しそうになりそうだと仲間に伝えたエクラは反対意見も覚悟していたが、フィヨルムは、
「いえ。エクラ様がそう決めたのなら。私は特務機関の一員としてついて行きます。私はエクラさんが必要だと思ったことは信じます」
レーギャルンは、
「まあ、『鎖』をあのエフラムが持っていて、グラドが魔物と戦う国なら、拠点としてこの場所を得られたことは、今後の行軍に必ずプラスになる。反対はないわ」
そしてヨシュアも、
「まあ、昔的だった国にいるってのは不思議な気分だが、俺は召喚された英雄だ。反対する理由がないなら召喚師に従うさ」
と言ってくれたので、エクラは安心した。
そして朝。日課の鍛錬を行うフィヨルムとレーギャルンは先に起床。訓練用の剣と槍をぶつけ合っているところに、アメリアが現れる。
仕事を持ってきたという彼女を家の中へと通し、エクラはいつもよりも数時間早い起床をすることになった。
眠さは最高潮。しかし、信頼を得るためにいろいろな仕事を手伝うと決めたのはエクラなのでそれを前言撤回するわけにはいかない。
ふらふらしながらも玄関へと向かうエクラは、アメリアに心配されたものの、自分に鞭を打って平気な顔を作ろう。それを見たアメリアは、この場にいるヨシュア以外の3人に仕事を言い渡した。ヨシュアは夜中に何かをやっていたらしく今は休みに入っている。
「フィヨルム様とレーギャルン様は本日は、魔導師や一般市民が使う軽装の作成を手伝ってもらいたいという依頼が来ています」
「その初心者でもできるでしょうか?」
「その点は問題ないかと。どちらかと言うと雑用に近いです。あ、街中での労働に鎧はご遠慮ください。こちらで服は見繕っておきました」
渡された軽装はアスクやエンブラでは見ないような生活感と身軽さが重視された赤を基調とする服。早速更衣室で着替えるため一度女性2名は上へと戻る。
「エクラさんは、託児所の手伝いを」
「ああ。はい」
託児所と言われれば、つまり子供の相手をしろということだ。嫌ではないが、手伝いと聞いてもっと肉体労働的なことを頼まれるかと思っていたので、拍子抜けした。
上からお着換えを終えた2名が戻ってくる。
いつもの煌めきのある鎧姿とはまた別に、やや薄く生地で通気性のよさそうな服。普段は腕も足も鎧で固めている分、2人のしなやかでしまったボディラインがはっきりとしている。
「おおお。綺麗」
「そう? フィヨルムは良いけど、私はそうでもないんじゃない」
「いやいや。それはもう素敵な」
言い方が胡散臭くなってしまったがこれは事実である。
制服に着替えたところで、それぞれの仕事場へと赴くことになった。
グラド帝国居住区の西、そこにはグラドの住民が着る服を作ったり、修繕したりする作業所が集結している。
国全体をあげて魔物の大軍と戦うという緊急事態において、リオンの施策により、区域ごとに行われる仕事を分け、城下街全体が整理されていた。
「すみませんね。わざわざ将として外から来てくださった方なのに、このような雑用を任せてしまって。お疲れでしょう?」
従業員の案内を受けながら、フィヨルムとレーギャルンは、荷物の運搬や、服の生産、修繕受付受注を手伝っている。
「いいえ。良い経験です。とても楽しいですよ」
「ええ。私も。武人として今まで生きてきましたから。このようなことをするのは初めてでした」
この場ではレーギャルンもいつもの口調ではなく、やや丁寧な話し方に変化している。
「そう言っていただけるとありがたいです。何かお礼ができればいいのだけれど」
従業員は何かを思いついたようで、2人に提案する。
「仕事が終わってから、織をやっていきませんか? 私がやり方を教えますよ?」
「え、でも仕事の後はすぐにお休みになられたほうが」
ここで働き、その重労働を実感しているフィヨルムは、さすがに迷惑だろうと遠慮しようとしたが、
「興味がありそうに見ていたでしょう? 私は問題ありませんから、ぜひ体験していってください」
見抜かれていたことに少し恥ずかしくなり、従業員の推しに負けたフィヨルムは、その提案を快諾することとなった。
「すみませーん」
受付にグラド兵数人が、訓練服を持ってくる。
「あれ、デュッセル様が言ってた……客将の?」
「え、ええ。まずはグラドの生活に慣れた方がいいというデュッセル将軍のアドバイスを受けて、許可を得て働かせてもらってます」
「やはり。私、見習いですが、グラド軍鎧騎隊所属、ボッチです。貴方がレーギャルン様ですか。将軍様から聞いております。お疲れ様です! では、この服の修繕をお願いいたします」
「承りました」
「リオン様やデュッセル様が一目おくというそのお力、今度、ぜひ訓練にて見せていただきたいです!」
「ええ。楽しみにしているわ、私も。では、お預かりしますね」
「えくらー」
一方、エクラは託児所で子供たちの面倒を見ることになった。
偶然にも、そこはミオとミナが預けられていて、約束を守ってくれたと2人の子供はエクラが約束を守りに来てくれたと大喜び。
その他の多くの子供が、親2人が軍属のため、ここに預けられている子どもだ。
今日は仲良くなるために彼らと鬼ごっこ。街の東側であれば走り回っても文句は言われないので、広大な街中でのかくれんぼになる可能性もある。
「えくらー、もうつかれたのー?」
「はぁ、はぁー、は」
太陽がまだ一番上に来ない頃から、すでに太陽がだいぶ下がってもうすぐ夕方になるんじゃないかという時間が経過している。
鬼として皆を探し回っているミナとエクラ。その元気具合には大きな差がある。
「いや……ミナちゃんはすごいなー」
「ちがうー、えくらがひんじゃくなのー!」
「ええ……」
自分も軍師としてだいぶ長距離移動を何度も経験してきて体力はついたと思っていたが、子供に地力で負けてしまうとは、情けない限りだ。
「えくらー!」
「頑張る、ガンバルカラ……」
何とか意地でダウンだけはしないように、バテた体に鞭をうつ。
「あ! 王様!」
「え……?」
それをまさかの人物が見ていたのだ。
休憩時間だったのか、街の様子を見回って歩いていたリオンと偶然遭遇する。
リオンは失笑する。
「ふ、エクラ。子供を前に情けない姿だな」
「ああ、……そのぉ」
「だが、グラドのために働いてくれているのか。感謝する」
エクラは何とか背筋を伸ばし、リオンと向かい合った。
「グラドのために、なんていうのは、新参者としては生意気ですけど。やっぱり弱くたってじっとはしていられませんから。何とか、一緒に戦えるように、下働きから」
「いい心がけだ。崇高な使命を持った部外者より、とても好ましく見える。このまま頑張れば、僕もお前達に戦力や物資を、『仲間』として支援させることもやぶさかじゃない。励めよ」
リオンはそれだけ言って、ミナの頭を撫でると、その場を去り王城の方へと歩き去っていく。
「えへへ、王様になでられたぁ」
嬉しそうに笑うミナ。
しかし、エクラは、ミナを撫でるリオンの顔が、謁見の間で見せた厳しい顔とは全く違う穏やかなものだったのを見逃さなかった。
やはりデュッセルの言う通りだったのだろう。
エクラは今後も下働きを何とか続けていこうと意気込んだ。
1章 5節 『最後の国グラド』-5
エクラ「誰と(支援)会話をしようか?」
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フィヨルム
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レーギャルン
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ヨシュア
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デュッセル
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アメリア