ファイアーエムブレム ヒーローズ ~異聞の『炎の紋章』~   作:femania

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ヤバイ。1か月たってしまった。このままでは終わらないぞ。
少しでも投稿頻度を上げなければ……

時間が欲しいよ。時間が。


1章 5節 『最後の国グラド』-6

「嘘ですよね……?」

 

「いや、嘘じゃないよ」

 

アメリアが驚くのも無理はない。それは定石からは離れすぎている戦術だった。

 

重装兵や騎馬兵が多いこちらに対し、向こうの魔法兵を主体とする敵軍を相手にするのは不利なことこの上ない。

 

故に正面からぶつかればこちらの隊に甚大な損害が出る。

 

今回の勝利条件は一定時間の経過だ。故にそもそも勝利する必要がない。

 

「向こうも物理防御力は低い。数の削り合いになるのは仕方のないことでも、どう削るかでかかる時間は大きく変わる」

 

 

 

 セライナは自身の隊の先発が見える位置で戦況を確認している。本来は敵からも矢の射線が通ることを意味するのであまり行わない行為だが、そこは訓練。自分の隊の善し悪しを判断するために実際に目にすることも大切なのだ。

 

「敵は、重装で固めているようだが……」

 

 自分の隊の行く道を重装兵が阻んでいるのが確認できる。

 

 射程では自分が有利ではある。ただし向こうが手槍などを持っていない場合に限るが。

 

 先制攻撃で重装隊の数をできる限り削り、手槍や手斧を持つ兵をできる限り減らして、反撃の数を少なくすることを優先する。重装兵は足が遅い分、攻撃力が高い傾向にある。故に反撃をするための手槍や手斧を持たせているよりは、攻撃力の高い近接武器を手にしている場合が多い。

 

 先発隊の攻撃。

 

 どれほどの重装兵を撤退に追い込めるかがカギになる。

 

 騎馬魔道兵の一団によるファイアーの爆発により戦場に大きな煙が発生。

 

 視界が曇る中で、手斧を中心とする反撃で損害は出るが、それは仕方のないことだ。

 

「多いな」

 

 セライナが気づく。反撃として飛んできた手斧が多すぎると。先発隊の魔法によって負傷を負った者は離脱するのが今回の訓練の決まりだ。今の攻撃ならばある程度の数は減らせたはずだとセライナは見込んでいた。

 

 しかし煙が晴れて気が付く。

 

「囮……!」

 

 そこには壊れた重装があるだけで、先ほど攻撃を前に構えていたと見せかけていた重装兵は皆、中身がない偽者だった。

 

そこを爆心地とした攻撃だったため、そこから後方は被害を抑えられている状況だった。

 

 故に反撃の手数が減っていない。

 

「それにしても、負傷による撤退が一人もいないのか……。反撃部隊は少なくとも攻撃を受けたはず。重装もなしにどうやって攻撃を耐えたのだ……?」

 

 

 

 遠距離警戒。

 

 エクラ視点で言えば遠距離攻撃を受ける味方の耐性を上げるスキルということになるが、それをフィヨルムとレーギャルンに指示して、さらにこの世界で初めて見たマジックシールドという杖の効果でさらに魔防をアップ。

 

 元々魔防の低い重装兵の耐久力を上げ、反撃部隊は向かってくる魔道兵からの攻撃を耐えて、一人も欠けずに反撃へと転じることができた。

 

「むちゃくちゃです……」

 

アメリアの言う通り戦場で防具を脱がせることは言語道断だ。エクラ自身もこれが思いっきり邪道であることはよく理解できている。

 

 それでもエクラがこの策をとったのには理由があった。

 

「訓練だからね。戦い方の幅を広げるためにやるべきだ。これは殺し合いじゃない。だからこそ突飛な作戦を試して、粗を探して洗練していかないと」

 

 付き合わされる方の身にもなってほしいところだが、長くエクラと共に戦っていたフィヨルムは、慣れてしまっているようで、エクラに反論はしなかった。

 

 訓練全体としては見事に噛み合い、必要な時間稼ぎをエクラは最小限の撤退数で成し遂げることに成功した。

 

 

 

 昼食の時間。

 

 午後からの訓練は軍師側と戦士側で訓練が分かれるので、その前に先ほどの反省点を踏まえレーギャルンとフィヨルムと共にエクラは昼食をとっていた。

 

「あなたね。さっきの訳の分からない作戦で信用を失ったら」

 

「そこは計算外でした……」

 

「私たちなら構わないけど、グラドの人達を巻き込むときは少し慎重に」

 

「ごめんなさい」

 

 そんなとりとめのない話をしているところに、数人が参加を申し出る。

 

「先ほどは見事だった軍師殿。一緒に食事をして構わないだろうか?」

 

そう言って、やってきた数人。

 

帝国三石のうち2人を含めた4人となれば、ただの数人ではなくビッグゲストだった。

 

 断る理由もないため、エクラはそれを了承。セライナが隣に、その横にもう1人の三石である、グレンが座り、レーギャルンの隣には、そのグレンと目元が似ている男と、その隣長髪の男が座った。

 

(ヴァルター……)

 

長髪の男は、アスクでも危険因子だと判断されている男だった。

 

「すまんね。軍師殿」

 

 しかし意外なことに会話の口火をきったのはその男だった。

 

「セライナ殿が、お前に興味があると言ってたもんで」

 

「いえ……」

 

「まあ、許してくれ。お互いこれからは敵をなぶり……失礼」

 

 隣の男がため息をつく。

 

「ヴァルター……」

 

「そう怒るなよクーガー。なあに、隣のみず……麗しきお嬢さんたちに手は出さんさ」

 

「言動でも誇り高きグラドの兵士としての素養が見られる。あれほど注意しろと」

 

「はははは。まあ許せ。軍師殿、そしてお嬢さん。俺は狂戦士でね。一度武器を持てば相手を殺すのが大好きな男だ。だが怖がらないでくれ。敵と味方くらいの区別はつける。口が悪いのは、俺と言う男の特徴だ。悪く思わんでくれよ。俺はヴァルター。グラド空軍の一隊長だ」

 

 エクラは頭がおかしくなりそうだった。

 

 アスクにいた頃とは雰囲気も、言葉遣いも、そして見た目の野蛮さは控えめで、とにかく本当に別人にしか見えなかった。

 

「よろしく……」

 

「おおっと。悪いばセライナ殿。あんたがこの会食を誘ったんだ。一番の名乗りを奪ってしまった」

 

「構わん」

 

 そしてこの流れで、3人の紹介がセライナからなされた。

 

「私はセライナ。蛍石の称号を陛下から賜っている、帝国魔道兵団の総長を務めている。先ほどの戦術は驚いた。私もこの後は軍師側で訓練を行う。ぜひあなたと意見を交わしたい」

 

「ど、どうも……」

 

「そして、そこの髪色が同じ2人は兄弟だ。兄は私の隣にいる、日長石のグレン。グラド空軍のまとめを行っている。そして向かいにいるのがクーガーだ」

 

「お前が陛下がおっしゃられた援軍か。助かる。ともにグラドに平和をもたらそう」

 

 グレンが握手の提案。エクラはそれに応えた。

 

 クーガーが口を開く。

 

「……見た目では、それほど強そうには見えん」

 

 挑発ともとれるその一言に、レーギャルンが笑みを浮かべて反論する。

 

「あら、私も騎竜兵よ。この後、個人的に力を見せてあげてもよくてよ」

 

「……その機会があれば頼みたいところだ。俺は、自分で見極めないと納得はできない」

 

「この後の楽しみが増えたわね」

 

 レーギャルンは王女であり、同時に戦士。侮りは冗談半分でも流すことはできないのだろう。隣でさっそくバチバチし始めたのを見て、フィヨルムは少し焦りだす。

 

 カバーを入れたのは、喧嘩を売った方の兄だった。

 

「すまんな。フィヨルム殿。いつもは血気盛んな奴じゃないんだ。だが、俺達は騎竜部隊。どうしても腕のいい奴がいると興味が出てしまう。殺しはしないだろうから安心してくれ」

 

「そうですか……」

 

 セライナは満足げに頷いて、エクラに言う。

 

「まあ、少しおかしな者もいるが、私たちはお前達を歓迎する。よろしく。ともに魔王エフラムを倒そう」

 

 飲み物が入ったグラスを乾杯の形で差し出すセライナ。エクラは、

 

「こちらこそ、よろしくお願いします」

 

 笑顔でその乾杯に応えた一方で、彼女から出た一言に引っかかっていた。

 

(魔王エフラム……。魔王か)

 

 あんな隊長を殺したその男は、マギ・ヴァルの地において最も力をもつ存在である魔王だという。

 

 エクラの中に嫌な予感が少しずつ湧き上がっていた。

 

 




次回 1章 6節 『皇帝と魔王―激突』-1

エクラ「誰と(支援)会話をしようか?」

  • フィヨルム
  • レーギャルン
  • ヨシュア
  • デュッセル
  • アメリア
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