ファイアーエムブレム ヒーローズ ~異聞の『炎の紋章』~   作:femania

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意外と長くなってしまったので、6節の2は次回に回します。


支援会話 デュッセル&エクラ

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ある夜。

 

夜道を歩いているエクラは同じように歩いていたデュッセルと遭遇した。

 

「あ……」

 

「エクラ。こんな夜にどうした」

 

「あ、えーと」

 

 なんとなく、とも言えなかったため、それっぽい理由をでっちあげた。

 

「その、街を見て回りたくて」

 

 それは事実だ。規模が巨大な城塞都市とだけあって、仕事や訓練の合間で歩くだけでは、当然全てを見回ることはできない。

 

 ゆくゆくはこの街に戻ってこないことになるかもしれない。そう思うと初めて異界にこれほど滞在した思い出として、できる限り全てを思い出として焼き付けておきたかった。

 

「そうか。……お前たちは純粋な少年と少女のようだな」

 

「そうですか」

 

「軍務はさぞ厳しかろう。命の重みを知るからこそ、我々軍人はそれを守るために戦う。しかし、それは独りよがりな正義感にもなりうる。我々は命を重く見ず、勝利のため犠牲にしなければならないものもある。儂も、切り捨てられるようになったのは数年の後だった」

 

 デュッセルは意外にも深夜徘徊をしていたエクラを叱らずに、むしろ少し共に歩こうと提案、エクラはデュッセルと親睦を深める機会と好意的にこの機会を受け取り承諾した。

 

寝つけなかったから理由もなく歩いていただけだったので、話し相手がいるのはむしろ嬉しかった。

 

「お前達がこのグラドを大切に思ってくれていることは、よく伝わってくる。最近の働きぶり、陛下もお喜びだ」

 

「皆さんいい人ですから。この前は、おばあさんが借家に晩御飯をおすそ分けしに来てくれたんです。異邦からの乱入者が相手なのに、皆さんやさしくて」

 

「そうか。その話はきっと陛下もお喜びになるだろう。……時々、お前達が活き活きと働いているのを目にすることがある。その時、思ってしまうのだ。さっきも少し言ったが、お前達に戦いは厳しいものではないかと」

 

「そんなことないですよ?」

 

「すまんな。儂も年を取ったものだ。昔はこのような戯け事を口にすることはなかったのだが。侮辱に聞こえたなら非礼は詫びよう」

 

 デュッセルは懐から、何かを取り出す。

 

 見たところ、折れた槍の刃の一部分だった。

 

「それは?」

 

「新人兵士、もう何十年も前の頃だ。山賊を相手にしていた時死にかけたことがあってな。これは当時使っていた槍がその時に壊れたのだが、その破片だ」

 

「今の将軍からは想像できない……」

 

「勇ましさだけは誰にも負けぬと思っていたのだがな。命の危険を前にしてようやく自分の覚悟が浅かったことが分かった。人間だれしも、自分の命は可愛いものだ。戦いの中に華を見出す者もいるにはいるが、当時の儂はそうではないことが実感できたものだ」

 

「今は違うんですか?」

 

「今は、陛下の為なら死ねる。前皇帝が愛した幸せの象徴であるご子息をお守りできるのならば、それは儂の生きた意味なのだと、覚悟ができている」

 

 デュッセルは立ち止る。

 

「おぬしはどうだ。お前達の戦いは決して生きる目的ではあるまい。怖い、と思ったことはないのか。ここで死んで、生を授かった意味を見出せないまま死ぬかもしれない今の状況に」

 

 エクラは即座に首を振る。

 

「平気です。生きる意味なんて考えたことはないけれど、今、いや、前も辛いことばかりだったけど、その分、誰にも負けない経験と充実を感じてる」

 

「命の危険がない穏やかな暮らしよりも?」

 

「……少なくとも死ぬ覚悟なんてないですよ。必ずアスク王国を取り戻して、アルフォンスとシャロン、私の友達が楽しく暮らす故郷を取り戻してみせる」

 

「そうか。お前は本当に立派だな。……エフラムを思い出すな」

 

「エフラム?」

 

 そこまで聞いた時に、アスク王国にいた頃に正史世界エフラムから聞いた話を思い出す。デュッセルはエフラムの卓越した槍の技の礎になった師匠だと言っていた。

 

 終末世界でもその関係は変わらないらしい。

 

「当時の奴も威勢が取り柄だった。あやつと師弟とは今にして思えば不思議にも思える関係だったが、そうさな。王族であるエフラムとは、本来は交わることなどなかっただろう。だが槍を使い、これまで必死に戦ってきたからこその師匠となれば、きっとそれはこの人生において一番戦ってきた甲斐があったのかもしれないな」

 

 デュッセルは寂しそうに空を見上げる。

 

「いったい、どうしてあんなことになってしまったのか」

 

 エフラムは敵。それも互いの信念を賭けた戦争などではなく、魔王という絶対に倒さなければならない悪となってしまった。

 

「すまんな。こんな話をするために共に夜回りをしようと誘ったわけではなかったのだが」

 

 エクラは、いつもより少しだけ疲れを覗かせているデュッセルにきり返す。

 

「将軍。必ずエフラムにたどり着きましょう。軍師として戦って、必ず将軍を彼に会わせますから。その時は将軍自ら、その嘆きを彼に言ってあげてください」

 

「む……気を使わせてしまったか」

 

「いえ、そんなつもりは。僕らは、グラドの民ではない。でも将軍には大変お世話になりましたから、きっと恩返しをしたいとは思っていました」

 

「そうか……」

 

 デュッセルは首を振る。

 

「必要はない。この身で戦うは、陛下やこれからの未来を切り開いていく若者のため。軍人である以上、そうあるべきだ。だが、ああ、嬉しいものだな。お前にそのように言ってもらえるとは」

 

 その時のデュッセルは笑みを浮かべていた。それはエクラが初めて見たかもしれない老兵の笑顔だった。

 

「……お前には言っておこうか」

 

 デュッセルは再び歩き出して、語る。

 

「もしも、私が、普段とは違う特別な槍を使い始めたら、儂から離れておれ。それは死地だと判断したときか、誰かを守るために命を賭ける時にしか使わない呪いの業物だ」

 

「え……」

 

「魔物との戦いはより熾烈になっていくだろう。使わなければいけないとは必ず使うと決めている。我が一族に伝わる、人を狂わせ、代わりに限界を超えた戦いを指せる魔装だ。お前には知っていてほしい。他の仲間が儂を助けるという無謀にでないような」

 

「将軍……」

 

「お前は信用に値する。どうか、他の者には言うなよ」

 

 そして再び歩き出すその背中。

 

 言いたいことは分かる。魔物との戦いはより熾烈になり、さらにはルネスとの決戦ももうすぐやってこようとしている。

 

 しかし、エクラは首を振った。

 

 必ず死なせはしないと。そう心に誓って、再びデュッセルの隣を歩き出した。

 

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