ファイアーエムブレム ヒーローズ ~異聞の『炎の紋章』~ 作:femania
――グラド帝国軍と行動を共にするエクラは、皇帝リオンの命に従い水城レンバールへと進軍する。彼らが向かう水城レンバールは周囲を湖に囲まれた天然の要塞。城内に進むにはたった一つ渡された橋を駆け抜けるしかない。それがこの城が堅牢な戦の城として機能する所以だった。今、幻想的な湖の城は、魔物とルネス軍の巣窟となり、グラドに牙をむいている状態だという……――
水城レンバール。
エクラが最初にその城を見た時、まず、難しい戦いになるだろう、という予感がたった。
本当に湖の中央に立っているように見えるその城は一見、アスクやニフル、エンブラとは違った神秘的な印象を受けるが、見た目の美しさと戦いとしての機能性は別の話。
「見て分かるだろう。水城レンバールは守るに易く、攻めるに難い天然の要塞。慎重な進撃が必要になる。が……」
セライナの困惑も分かる。
よく見ると城の外を守っているのは魔物が大半を占め、城の正門の前のみルネス兵が守っている。
「エフラムが魔王であるが故なのか、魔物を使役しているようだ。そんなことが可能なのか」
エクラも魔物を獣と同じで本能のままに目の前の生物を殺す化けものという印象が強かったが、ここまで軍の一員かのように迎撃の構えを取られていると知性があるのかと疑わしくなる。
「今リオン様はデュッセル殿と共に後方で待機している。私たちは命令通りに魔物の殲滅と正門の敵を蹴散らし中への活路を見出だす」
「セライナさんはどのように攻めますか?」
「そうだな。私は魔法兵団と共にサンダーストームを使い、敵をできる限り減らしてから進軍する予定だ」
サンダーストームは遠距離魔法であり、命中力には若干不安が残るものの高威力の雷撃を落とすことができる。
「敵にはガーゴイルやピグルなどの飛行系の魔物が多い。基本的には空軍がそれに対応するがこちらにもいくつか流れてくるだろう。私たち陸路を行く者は、足場が少ないから機動戦では対応しにくい」
「基本的には受けから入るわけですね。でもガーゴイルはともかく、ピグルは魔法攻撃ですから、重装で攻めるという単純な答えでは被害が大きく出ます」
城塞落としは敵の兵力の3倍が必要だというのは有名な話だ。相手がどれほどの保有戦力があるかは知らないが、できる限り兵力は温存して城内に突撃したいところだ。
「ならここは少数精鋭で行きましょう。セライナさんの魔道兵団はサンダーストームで袁逢の敵にけん制を賭けつつ、敵のヘイトを買ってください。敵がセライナさんたちに向かい、手薄になったところを一気に突破します」
セライナが目を見開く。
「お前、私たちは囮か?」
「あ……」
普段英雄たちを指揮する身として、どれほどの身分の高い者でも従えてきたエクラは、身分を弁えるということをすっかり失念していた。セライナは帝国の重鎮。それを軽々しく囮に使うとは、通常は考えられない失言だ。
しかし、セライナは笑みを浮かべると、
「なるほど、ではお手並みを拝見するとしよう。リオン様の期待に応えるためだ。面倒事は受け持ってやるとも」
「ありがとうございます」
「いいや。タイミングはこちらで合図を送る。突撃はそれからだ。見事正門の制圧を成し遂げるんだぞ。聞く話によるとレンバールはオルソン以外にも、鬼神のごとき戦士がいるらしい」
「そうなんですか?」
「ガルシアというルネスでは少し名を馳せている凄腕だ。今はレンバールに在籍している。正門を守っているとしたら、その男の可能性も考えておいてくれ。では武運を」
基本的な戦いの方針が決まり、セライナ直属の魔道部隊によるサンダーストームの猛攻が、戦いが始まったことを告げる狼煙の代わりを行うことになった。
自分の部隊の待機所に戻り、レンバールを見据えながら今回の作戦の話をする。
「そんなものを請け負ってよかったの? 相手は魔物だらけなのよ?」
フィヨルムは普段エクラに賛成的なので、反対的な意見をしっかり出してくれるレーギャルンの存在はこんな時、エクラを冷静にしてくれる要素として、エクラは有難みを覚えている。
「全力戦闘ならもっといいアイデアがあったかもしれないけど、今回は可能な限り戦闘兵を温存したい。危険な最前線に挑む人数を限ることで、犠牲者を必然的に少なくできるよ」
「でも失敗したら意味がないわ。それこそ兵力を2倍必要とする事態になれば、元々1.5倍くらいに兵数を伸ばしておいたほうが犠牲は少ない」
「悩むね……それは」
そこにヨシュアが数人の女性を連れてきた。
「召喚師。協力を取り付けてきたぜ」
「協力……?」
「この軍の回復を担当してくれるシスターたちだ。グラドにいる時に、いろいろと縁があってな。今回の回復役として、頼み込んだら来てくれたんだよ」
「いいえ。そもそも、傷ついた者を癒すのも私たちの務めですから」
「そう言うなよ。ナターシャはこの中でも杖と光魔法の腕はいい司祭様だ。エクラ、お前の戦勘定に入れるには十分だと思うぜ」
エクラは一礼をするナターシャに、協力への感謝を述べて遠慮なく、頑張ってもらうことにした。
杖の回復役がいるのなら、継戦能力が上がるのは間違いない。
「預かっている重装兵の皆さんには頑張ってもらうことになるけど、前にやった訓練が活きる時だ。全員攻撃姿勢で行こう。きっと魔法による援護も、セライナ達はしっかりやってくれるはずだ」
「そう……。なら死なないのを第一優先で、次に攻撃姿勢ね。受け身にはならない。それでいいのね」
「レーギャルンにはいつもハラハラさせてしまうね。いつも申し訳ないと思う」
「いいのよ。それくらい、アスクをお父様から守った軍師様ならするでしょう。私自身はあなたは愚を犯さないと信用しているわ。だからこそ、こうしてともに戦うんだもの。さあ、行くわよ」
レーギャルンは自身の飛竜に騎乗する。
エクラはアイテムの効果を封入したオーブをセットして、戦いに挑む。
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水城レンバール攻城戦
勝利条件 敵将ガルシアの撃破
敗北条件 エクラ、フィヨルム、レーギャルンの死亡。
セライナの死亡
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1章 6節 『皇帝と魔王――激突』-3