ファイアーエムブレム ヒーローズ ~異聞の『炎の紋章』~   作:femania

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1章 6節 『皇帝と魔王――激突』-3

 戦場に雷撃が次々に降り注ぐ。

 

 サンダーストームの魔法により、敵の陣地にいる魔物たちは次々絶命していく。

 

「いこう!」

 

 味方の攻撃が始まると同時に、エクラの精鋭軍が一気に攻め立てる。

 

「任せてください!」

 

 今回もアメリアはエクラと共に戦ってくれている。重装兵団の1人として、ガーゴイルの攻撃を止め、反撃を加えている。

 

 傷は今回から参加してくれているナターシャとシスターの皆さんによる杖の回復によりある程度抑えられている。

 

 フィヨルムとレーギャルンはヨシュアに任せている剣士隊と共に、重装兵が捉えられなかった敵を討伐するべく腕を振るっていた。

 

 エクラも落雷の呪符を使い、敵に痛手を与えながらサポートしている。

 

「魔法来ます!」

 

 アメリアの号令。重装兵は一度下がり、フィヨルムがエクラの近くにやってくる。エクラは奥義の刃を使用して、フィヨルムの神器に魔力を装填した。

 

「頼む!」

 

「はい!」

 

 氷の聖鏡。フィヨルムが扱える奥義による巨大な氷の盾で、相手の魔法攻撃を受け止め、そして受けた痛手を攻撃魔力に変換して、レイプトの槍から冷気と共に放たれる。

 

「加勢する!」

 

 後続の敵を迎え撃とうと自分の隊に指示を出すべく振り返ったとき、上空から声が聞こえた。

 

「グレンさん!」

 

 今回空軍を指揮するグレンが、エクラに向けて叫ぶ。

 

「飛んでくるガーゴイルは、我々に任せてくれ。セライナから策は聞いている。お前達の役割は突撃だろう。前へ進め!」

 

「はい!」

 

 全員の士気がまだ保たれているのを確認して、魔物の軍勢へと突撃を指示。

 

「重装兵は前へ! 第2弓兵団、第4魔法兵団はその後ろから攻撃を開始!」

 

 エクラの指示に従い、槍と斧を中心に持っている重装兵は前に出る。そして再び迫ってくる魔物を前に、重装兵の後ろから遠距離攻撃が可能な者たちが、攻撃を加えていく。

 

 さらにセライナ率いる魔法兵団のサンダーストームが加勢して、敵を見つけては真っすぐ殺しに来ることしか考えられなくなる魔物尽くその猛攻に数を減らしていく。

 

 しかし、それで全てを削りきることはできない。そうなれば正面衝突もやむなしだが、和葉減っている分、優勢に進められることに違いはない。

 

「魔道兵団、前進します! セライナ様は、魔道兵団の半数をこちらに移動させ一気に攻めるようです」

 

「勝負をかけるとき、と判断したんだろう」

 

 今、戦争による犠牲者はある程度少なく抑えられている。しかしサンダーストームの射程から正門付近は外れているため、どうしても魔道兵団が前に出なければならない。

 

 そしてこの魔法、遠距離を一方的に攻撃できる反面、近くの敵に当てることはできないというデメリットがある。故に、前衛に魔道兵団を置く場合は、サンダーストームを使用するのではなく、通常の魔法を使用せざるを得ない。そうなれば射程は弓矢と同じだ。

 

「正面衝突になっても、方針は変わらない。相手がとる手段は突撃が多い。まずは的確に対処して、数が薄くなったところを、騎馬兵を使って一気に貫き正門への道を拓きます」

 

 エクラはアスク王国で戦った経験を活かし、確実に正門に徐々に差し迫っていた。

 

 

 

正門。

 

 大斧を持ったガルシアがルネス兵を率いて仁王立ちをしている。

 

 戦士ガルシアはルネス王国の戦士として、数々の武功を挙げた戦士。一度は退役をしたものの、エフラムの脅迫により、妻を人質に取られて今は戦場に戻ってきている。

 

「父ちゃん……」

 

「すまないな。おまえも駆り出されるとは」

 

 戦士を志していた。息子と共に。

 

「なに、気にすんな。俺はルネスの戦士ガルシアの息子だ。日々鍛えてきたのも父ちゃんみたいになるためだ」

 

「お前に戦場は早すぎる……そう、思っていたのだが」

 

「俺が支えるから」

 

 そしてガルシアを慕うルネスの戦士たちもガルシアに力強くうなずく。

 

「勝つぞ。そして生き延びる。わしらの死地は、たとえ王が命じたとしてもここではない!」

 

 部下に檄を入れて、息子には言葉をかけた。

 

「お前はもう一人前の男だ。だが、お前はわしの宝。いいか、情けをかけられたら必ず生き延びろ。決して命を粗末にするな」

 

「何言ってるんだよ。父ちゃんが負けるはずないだろ。ルネス最強の戦士だぜ? 騎士様にも負けない斧の達人だ」

 

 親子の会話はもう少し続くと思われた。

 

 その時。

 

 凄まじい風の魔法が吹きすさび、正門を守る戦士の皆が吹き飛ばされる。

 

「ガルシア殿! 来ました。グラド軍――!」

 

 突如、全員に痛手を与える落雷が降り注ぐ。それは敵の前衛で指示をしている白い法衣を来た軍師が放ったものだった。

 

「ぬ……ロス! 来たぞ、気を張れ!」

 

「おう!」

 

 戦士団は斧と剣の使い手が多い。恐れられるのは、鎧をも叩き切る重い一撃。錬成された鋼の武器が可能にする、防御の価値失わせるような、暴力と評すべき一撃だ。

 

 しかし、そんな屈強な男たちでも、苦手とするものがある。

 

 それは――魔法だ。

 

 戦場に1人、圧倒的な精度で魔法を放ち、敵を殲滅する美しき騎乗魔道兵がいた。

 

「あれか……!」

 

 ガルシアは駆け出す。

 

 魔法が戦場で飛ぶことなどいつものことだ。並みの戦士であれば対処しようのない魔法であっても、ガルシアは突破して敵に迫る。

 

 その女性は、迫ったその男を見て、慌てて旨辛飛び降りた。直後、そこにトマホークが投げられる。

 

「あれほどの斧を寸分狂いなく投擲するとは、さすがだな」

 

「……ただものではないな。わしはルネスの戦士ガルシア。貴殿の名は」

 

「グラド帝国三騎。蛍石のセライナ。名前は聞いたことがあるだろう」

 

「馬鹿な、お前ほどの重鎮がどうして前衛に出てきている……!」

 

「レンバールはルネスと戦うために必要な要塞。この攻城戦は重要な役割を持っている。ならば、幹部である私の責任をもって行われるのは当然のことだ」

 

 すでに正門では、ルネスの戦士たちと、エクラが率いてきた一団、そしてセライナが率いて生きた一団との交戦が始まっていた。

 

 突撃してきたグラド軍の中は、兵1人1人のレベルが高く、さらにその中に、本来は将軍の任されるほどの実力者が何人も紛れ込んでいる。

 

 ガルシアはそれを目撃して、敵が本気でレンバールを落としにかかっているのを察した。

 

「ぬ……はああ!」

 

 ガルシアが襲い掛かる。セライナは隙が少ない下級魔法で迎撃するが、それを躱し、そして斧で防ぎ、斬りかかる。

 

(さすが……一筋縄でいかないか)

 

 基本的に魔法兵は近づかれると弱い。鎧を身に着けない分身軽であり、防御力も低い。一度攻撃を許してしまったら、基本的にできることは逃げの一手だ。これは魔道将であるセライナも変わらない。

 

 もちろん諦めるという意味ではなく、反撃の一手を差し込む隙を見極めるわけだが。

 

 そこに。

 

 ガルシアの息子である、戦士の中で一番若い新米が、セライナに突撃する。

 

「うおお!」

 

 勢いよく駆け、気合の籠った声を上げながら、セライナへと向かって行く。

 

「だめだ。やめろ!」

 

 ガルシアの制止も虚しく、一度駆け出したら止まらない。きっとその息子にとっては敵将を討つ好機だと見えたのだろう。

 

 その突撃を、氷の刃を持つ剣士が軽々と止める。

 

「元気だな。……お前はこの世界でも」

 

「どけ! 誰だお前」

 

「そこで寝とけ。未熟なガキを斬るのは趣味じゃないんでね」

 

 足をひっかけて、転ばせ、ヨシュアがその息子の体を抑える。

 

「ロス!」

 

「う……ああ!」

 

 苦しそうな声を上げる息子を見て、ガルシアは迷ってしまった。息子の命乞いをするべきか。

 

 その一手は、歴戦を超えてきたルネスの戦士としては失態だった。大きな隙ができるサンダーストームを放つに十分な時間を与えてしまった。

 

 上空から雷が降り注ぐ。

 

「がああああああ!」

 

 セライナの一撃がガルシアに直撃した。

 

「ぬ……!」

 

 それでも、地獄に落ちる直前で踏みとどまり、セライナに向けて走りだすガルシア。

 

 しかし、戦いは非情だ。感情を込めることで運命が変えられるわけではない。

 

 炎の刃を纏ったレーギャルンが、ガルシアの隙となっている後方から確実に止めを刺した。

 

「が!――」

 

 歴戦の戦士はその場で、あまりにもあっけない最後を迎える。

 

「すまない。手間をかけたな」

 

 セライナの感謝の言葉に、レーギャルンは、

 

「敵将を討つ絶好の機会に確実に止めを刺したまで。気になさらないで。それともこの世界では、一騎打ちを始めたら邪魔してはいけないルールがあって?」

 

「いいや。これは戦争だ。お前の言う通り、向かってくる敵は討つべきだ」

 

 決着は敵将の撃破によってついた。

 

 ロスは目の前で父の死を見届けることになる。しかも、それは誉れ高い死ではなく、あまりにも無惨な最期。

 

「くそ……!」

 

 ロスは命一杯の力を振り絞り、油断していたヨシュアの拘束を無理やり振りほどいた。

 

「許さん!」

 

 そしてセライナに突撃をする。

 

 しかし、セライナの凄まじい殺気は、ロスの体を恐怖により強制的に止めた。

 

「少年。お前は捕虜になるか、ここで死ぬかの2択を選ぶことができる。我々はルネスの民でも人間であれば迎える。それが陛下のお心だ」

 

「く……!」

 

「亡き父の敵討ちをするならかかって来い。だが、時を待つ聡明な頭があるのなら、今は屈辱に耐えろ。御父上も、命を賭してまで息子に仇討ちは頼まないだろう」

 

 セライナの言葉通り、ガルシアは命乞いをするよう息子に言っていた。

 

 しかし、父すらも知らなかっただろう。息子にとって、父の背中がどれほど憧れだったか、そしてその自分の憧れを軽々しく潰された瞬間、どれほど悔しかったか。

 

 いつかは父と肩を並べる戦士となり、褒めてもらいたかった。そして背中を預け合って武功を上げたかった。名声が欲しかったわけではなく、その事実だけが欲しかった。

 

 生きる意味を奪われた少年が、冷静でいられるはずがなかった。

 

「う……ああああああ!」

 

 斧を振り上げ、セライナに突撃する。

 

「よい意気だ。だが、それはすなわち、お前は最後まで戦士であることを選んだということ」

 

 対処に動こうとしたレーギャルンを止め、セライナは魔法を放つ。

 

「ならば屈辱を与える失礼はしない。戦士らしく、戦場で散らせるのが情けだろう」

 

 その息子が、蛍石の魔法に耐えられたかは、語るまでもないだろう。

 

 一部始終を後方で目撃していたエクラは、生史世界のエイリークから聞いた、ガルシアとその息子との話を思い出していた。

 

 そして思う。戦争は――常に非情なものだと。

 




言い訳①

あの、私ガルシアとロスが嫌いというわけではないんですよ?
むしろストーリー攻略で使ってたし。
ただ、そのぉ、ルネスが敵である以上は仕方ない……少なくとも、当時味方として使っていたキャラが敵になるのは当然の流れというか……。犠牲は出ますよ。(悪びれないすまし顔)

さて、言い訳は置いておいて、恨むなら作者を恨んでほしい。
しかし、今後もたぶん味方だった人間が敵として殺さなければならないという事態は避けられないと思います。だってFEでやっていることは戦争ですから。

次回 1章 6節 『皇帝と魔王――激突』-4
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