ファイアーエムブレム ヒーローズ ~異聞の『炎の紋章』~ 作:femania
――魔王の真体復活まで残り10日。エフラムからもたらされた衝撃の事実。今の状態では魔王は愚か、力が抑えられた状態だというエフラムを倒すことすら叶わない。故にこそ、今回のレンバール攻城戦はより重要な意味を持つ。フレリアにいる双聖器の使い手と合流し、魔王を倒すための道筋を開くため、疲弊した状態の中で、エクラたちとグラド軍は戦いを挑む――
先ほどのエフラムの襲撃により受けた被害は甚大だった。
アメリアやその周りにいたグラド兵たちは幸運にも、戦闘の余波を受けるにとどまり、大きなけがはなかったが、結果的にはエクラはデュッセルから借り受けた部隊の半数を失う結果となった。
しかし半数ならばまだ良いほうで、セライナが率いていた部隊はその9割が死亡。
「この戦いが終わったら弔ってやる……」
同胞がいた場所にて、悲しそうな顔で俯く彼女の姿は、エクラには印象的だった。
仲間の殉職はいつだって悲劇に他ならないが、リオンは進撃すると言った以上は、今は死者を悼む時間は許されない。
エフラムは言った。あと10日で魔王は復活すると。
それが事実ならば、今立ち止まっているわけにはいかない。エクラたちが求める炎の紋章はエフラムが持っている。ならば、相容れない存在である以上は戦って勝ち取るしかない。
水城レンバールの攻略はそのための第一歩だとリオンは言った。その第一歩で時間をかけている余裕はないということだ。
エクラも、皆も、それを理解しているからこそ、疲れもけがもある程度は無視してデュッセル軍は行っているレンバールへ突撃する。
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「レンバール攻城戦」
勝利条件 敵将オルソンの撃破
敗北条件 エクラ、リオン、フィヨルム
レーギャルン、セライナ、グレンの死亡
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レンバールへの突撃の際に、さすがに減りすぎた軍を再編する必要がある。
空中の魔物をある程度撃退したグラド空軍をリオンは呼び寄せ、簡易的な軍議が行われた。
「グレン、お前とお前の隊は我々に合流。少数精鋭で敵将を討つ」
「陛下も出撃なさるのですか?」
「ああ。そもそも僕がこの城に入ったのは城の中を調査するため。デュッセルと敵軍主力が戦っている道とは別に、地下の牢獄から、上に穴を開けて上昇すればすぐそこが、総大将が座すだろう、指揮部へはすぐだ」
「偵察とはなんと危険なことを」
グレンがうなだれる一方、ヴァルターは『さすが』と陛下の好戦的な一面を褒めたたえる。
「地下はおそらく、城の防衛部と違い、魔物が巡回を行っている。なんとも面妖なことこの上ないが、敵であることに変わりはない」
このタイミングで、ヴァイスブレイヴ側の3人も多少回復したため、軍議に参加した。
「敵の種類は?」
レーギャルンの質問にリオンが答える。
「上級の魔物が多いな。だが、お前達であれば問題なく対処できるだろう。逆に並みの兵士は援護に回す。精鋭を前衛に、一気に突破するぞ」
「城の地下というと牢獄か?」
「そうだな。中に捕らえられている者もいた。誰か、までは把握できていなかったが」
「人質にされた場合は?」
セライナの問いにリオンは答える。
「各自の判断に任せる。僕から必ず救えという命令は出さない」
それはつまり邪魔であれば命乞いをしている人間ごと魔物を殺し、効率を最優先にしても良いということだ。
いや、むしろ邪魔になるようであれば、助けを求めていても意に介する必要はないと暗に告げているのだ。
フィヨルムの顔が少し曇った。
彼女は優しい。それをエクラは知っている。
きっと非情な判断は下せないだろうと思う
だからこそ、もしも、そのような状況になってしまった場合を考えて、エクラはあらかじめ宣言した。
「ヴァイスブレイヴは、人命の救助を優先します」
「……そうか。実に君たちらしいな」
リオンは怒らなかった。むしろ、満足げに頷き、
「お前たちはそれでいい。己の正義がそうなら、それを貫けばいい。軍人らしい判断は、全て我々が責任を負う。だから、迷うことだけはするな。いいな?」
誰よりも先にフィヨルムは真剣に頷いた。
そして、小声でエクラに、
「あの、ありがとうございます……」
と、ささやいた。
「では、他に、行軍に質問は?」
突入のための軍議は続く。
1章 7節 『レンバール攻城戦』-2