ファイアーエムブレム ヒーローズ ~異聞の『炎の紋章』~   作:femania

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1章 8節 『フレリアとの合流』-2

「私たちは正義の執行のための旅の途中なのです。今回はたまたま森の様子を見るために帰ってきたからいいものの」

 

「もう分かった。だが事情もあったんだ仕方なかろう」

 

「事情?」

 

 ここで意外にもミルラが声をあげる。ネームレスだけでは言い合いの分が悪いと察したのだろう。正直に自分たちの行っていたことを話した。

 

「私が、あの森に関係しています。ネームレスさんは、私に気を遣ってくれました。だから私のわがままです。だからこれ以上悪く言わないでほしい……です」

 

「……そうね。失礼でした。あなたたちにも目的があるのですね」

 

 ラーチェルは少し考えこむ。その近くにいた従者の戦士が主の様子を見て提言した。

 

「ラーチェル様。カルチノ共和国に逃れていただくのはいかがか。あそこにはフレリアから逃れた残存兵が集まり反逆の機をうかがっているとか」

 

「ドズラ、そこまでの道のりはどうするのです。既にマギ・ヴァルは魔物が徘徊する地獄なのですよ」

 

「ラーチェル様。あなたは正義の現身のようなお方! この子らもおよそラーチェル様の御光を頼りに希望を見出しますぞ」

 

「私に彼らを送って行けと?」

 

「あなた様の正義を見れば、この3人も【緑髪の戦姫】の凄まじさに敬服し、尊敬のまなざしを向けること間違いなしですぞ!」

 

「それも、そうですわね……。素晴らしい案ですわ。でもあなたにも苦労を掛けることになりますが」

 

「ガハハハ! このドズラにおかれましてはご心配めされるな」

 

「それもそうですわね」

 

 傍からヨイショを聞いていたネームレスは若干呆れてはいたが、先ほどディヴァインの魔法と投げ斧の腕は確かであり、足手まといにはならないことは分かっている。

 

 ネームレスは多少性格に難儀な部分が合っても余りあるメリットを感じ、カルチノへの同行に賛成の案を出した。

 

「案内は私に任せなさい。これでも魔王復活の前から各地を行脚して旅には慣れておりますの」

 

「さすがラーチェル様。おぬしらも見習うのじゃぞ」

 

 はい! と返事をするルフィアの純粋さにネームレスは少し微笑んだ。

 

 

 

 

 

 闇の樹海を発ち数日。エクラたちがちょうどグラドに着き、グラドの一員として城下町で下働きをしている頃、ネームレスとラーチェル一行はようやくカルチノの領地に入った。

 

 しかし一行の顔は晴れやかではない。昨日立ち寄った村の在り様を見て、急ぐ必要があると気を張ったくらいだ。

 

 その村は竜人族を崇める伝統のある集落だった。しかし、そこは既に魔物によって滅ぼされていたのだ。

 

 夜を凌げる屋根のある家が辛うじて郊外に1つ残っていたため寝泊りに苦労はなかったが、既に村民は避難したが全滅したかで誰もいなかった。

 

 ミルラが泣きそうな顔をして『サレフ?』と寂しそうにつぶやいたのをルフィアとネームレスは聞き逃さなかった。

 

「ミルラさん、どうしたの?」

 

「ここは、ドラゴンが滅ぼしました。きっと、あのドラゴンです。あのドラゴンは、ここの村のことも、サレフのことも分からなかったのでしょうか」

 

「……あのドラゴンも魔物なんだよね。人間と知り合いなの?」

 

「魔物は怖いです。魔物になるのは怖いです。竜人はいずれ狂うと特務機関で誰かが言っていました。私も、いずれはこうなっちゃうのは、怖いです」

 

 しかし深呼吸した後すぐに、ミルラは決意を改める。

 

「私は、人のために戦います。お兄ちゃん……エフラムがそうしたように。私も、人に仇なす魔を滅ぼします」

 

 ルフィアは幼さからは想像もつかない意志の強さに感嘆の声をあげた。

 

 そんな一面が印象に残る夜だったのだ。

 

「師匠、あれが」

 

「ああ、遠くに見えるアレがカルチノ共和国の主都と議会だろう」

 

「あれ、でも……?」

 

 ルフィアは何かの違和感を抱いていた。

 

(目がいいんだな……)

 

 ネームレスが魔法で視覚強化を行い、その違和感を言葉にすることに成功する。

 

「襲撃されている……!」

 

「なんですって?」

 

「おそらくフレリアの連中が迎撃をしているようだが……5分5分といったところか」

 

「それなら私たちの加勢が功を奏すかもしれません。急ぎましょう!」

 

 ラーチェルが全員に指示をだしたものの、直後ドズラがそれを制止することに。

 

「お待ちを! 上をご覧ください!」

 

 ガーゴイルがこちらに気が付いたのかあるいは最初から上空を巡回していたのか、一師団程度の数の飛行魔物が襲い掛かってくる。

 

「く……! 厄介なものですわね」

 

 魔法の準備、迎撃の準備をするラーチェルとネームレス。しかし数が多い、ルフィアがある程度ここまで槍の心得を叩き込まれているが魔物と戦えるレベルでは到底ない。

 

「ルフィア、俺から離れるな。身を守ることを第一に考えろ。防衛の槍の技は教えたはずだな。ガーゴイルなら、何とかなるかもしれん」

 

「はい!」

 

 墜落といえるほどの速さで一気に高度を落とすその魔物たちが彼らに刃を向けることは叶わなかった。

 

 紫の炎、温度を感じない冷たい炎が魔物にまとわりつき、それを燃やし尽くす。

 

 それは闇魔法『ノスフェラート』。

 

 ネームレスは一応闇魔法も使えなくはないが彼が撃ったものではない。

 

「魔物を相手に闇魔法……?」

 

「あそこ!」

 

 ラーチェルが指さす先には、顔を仮面で隠し、体をローブで覆っているサイドテールの女性と護衛と思われる騎士が馬に乗っている。

 

「何者ですの?」

 

 仮面の女性は答える。

 

「私たちが何者かなど今は後に。我々は魔に対抗する者の味方です。故あって顔は隠さねばなりませんが、身の潔白はフレリアの防衛をお手伝いすることで示しましょう」

 

 どうする、とラーチェルはネームレスを見る。

 

「まあ、どのみちあれが敵でも敵を2人増やすだけだ。敵なら、周りに誰もいない状況ならさすがに殺した方がいいしな。信じてもいいんじゃないか。一応警戒しておこう」

 

「分かりましたわ。そこの貴方。あなたの闇魔法がどうして魔物にも効くのかは興味がありますが、とりあえずは手伝っていただけますこと?」

 

「質問には私の研究成果、とでも言っておきます。参りましょう、カルチノへ。そこでヒーニアス王子とターナが待っています」

 

(……?)

 

 ネームレスは一瞬首を傾げたものの、その謎の助っ人を視認し、ミルラとルフィアにも気を配りながらカルチノの防衛線が繰り広げられているところへ、急ぎ足を進める。

 




おばあちゃん……申し訳ねえ、N>Oが悪いんじゃないんだ。恨まないでくれ。

ちなみに好きな双聖器はどれ?(初見さんは調べるなり名前の響きなりで決めてOK)

  • 炎槍ジークムント
  • 雷剣ジークリンデ
  • 蛇弓ニーズヘッグ
  • 翼槍ヴィドフニル
  • 氷剣アウドムラ
  • 風刃エクスカリバー
  • 光輝イーヴァルディ
  • 聖杖ラトナ
  • 黒斧ガルム
  • 魔典グレイプニル

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