ファイアーエムブレム ヒーローズ ~異聞の『炎の紋章』~ 作:femania
・連載小説初心者です。至らない部分はご容赦ください。
・話によって、一人称だったり、三人称だったりと変わります。
・クロスオーバー作品です。元と性格や行動が違うことがあります。
・この作品はシリーズのキャラに優劣をつけるものではありません。勝敗についてはストーリーの構成上、容認していただけると幸いです。
・この話はフィクションです。
・この作品オリジナルキャラも人物描写はスキップしている場合があります。言動を参考に想像しながらお楽しみください。
・作品はほぼオリジナル展開であり、オリジナル設定も盛り込んでいます。
・原作のキャラやストーリーに愛がある方は、もしかすると受け入れ難い内容になっているかもしれないので閲覧注意です
これでOKという人はお楽しみください!
序章 1節 撤退
「落ち着いた?」
「……すまない」
自分の国が奪われた。その責任はたとえアルフォンスにはないとしても、間違いなく彼に襲い掛かる。それは王族という立場が背負わなければならない責。
エクラはそのような立場とは無縁の場所で育った人間だ。しかし、そんな彼でも実際は想像の範囲で考えた重責を軽く超える何かがアルフォンスにはあるのだろうと察する。
エクラはアルフォンスに死んでほしくないという気持ちは負けていないつもりだった。だからこそ、彼の拒絶を、たとえ嫌われてでも一蹴し、連れて来るしかなかったのだ。
アスクの場内は抜けたものの、城の敷地は広く門はまだはるか先。そこらにエンブラの戦士が徘徊している。しかし、城攻めではない、巡回の兵士だからかエクラの観察眼ではその兵士はさほど強い者には見えなかった。
エンブラ兵 HP54 攻50 速32 守28 魔28
と言ってもアルフォンスがそのまま一人で戦うには厳しい相手だ。
本人には言っていないが、アルフォンスはフォルクヴァングを未だきちんと扱えているかと問われれば、エクラはNOと答える。
恐らくあの剣は見た目こそ片手剣なものの、密度が高いらしくアルフォンスには未だ重いように見受けられる。そのためエクラから見てアルフォンスの速さのステータスは25ととても高いとは言えない。
速さとは動きの速さ。達人は例外として、通常は自分が一撃入れる間に、相手に二撃をもらっていては勝負にならない。
城門までは残り500メートル。しかし、その間は身を隠すところもなく、敵は見張りを任されているのか、そこから動こうとしない。
「突破するしかない」
「アルフォンスだけだと、1番早いのは不意打ちだ。相手が身構える前に、1撃で勝負を決めるしかない」
「ああ。行こうエクラ。シャロンやフィヨルムが心配だ。個々は一気に駆け抜けるよ」
エクラはそれに頷くと、持ってきていた入れ物からアイテムを出した。
本来は縛鎖の闘技場で使用するもので、体力的にハンデが出てしまうチームに軍師がアイテムで、回復やサポートを許されることで、そのハンデを埋めるためのものだ。
しかし、今はそのような高尚な理由はない。使うのはただ一つ。生き残るためだ。
アイテムは効果の累積はなく、私用したアイテムの中で最大の効果を発揮したものが、効力が続くまで適用されるが、アイテムの重ね掛けは3つ同時にまではできる。
「アルフォンス」
しかし大量に溜まったアイテムをさすがにそのまま持ってくることはできない。
エクラはこのような事態までは想定していなかっものの、召喚以外でも自分に役に立てることはないか考えた結果、ブレイザブリクの研究をしていた。
この神器は本来、英雄の召喚のために使われるものだ。それが機能の大部分を占めるのは事実である。
しかし、エクラの故郷で銃と呼ばれる武器に近い形をしているブレイザブリク。その形状には意味があると思っていた。英雄の召喚だけの物なら別に銃のかたちをとる必要はないからだ。
エクラは研究の末、ブレイザブリクの機能を拡張させることに成功する。
ブレイザブリクはエネルギーとしてオーブを装填されることで、英雄召喚の力場を発生させる。
エクラはオーブに、常々使っているアイテムの力を封入し撃ちだすことはできないか考えた。アイテムそのものは大きさも重さもあり、1人で持つには十種類それぞれ1個ずつが限界だ。
しかしオーブの形にすれば、オーブは重さもほとんどないため、ポーチ1つで最大999個まで運べる。召喚のためのオーブは現在294個。スルトとの戦いが終わり一時は枯渇しかけたものの、何とか持ち直した数である。
ポーチにはまだまだオーブを入れられるので、そこにアイテムの力を封入したアイテムオーブを各種30個ずつ、合計300個入れている。
「アルフォンス。今からアイテムで援護する」
「アイテムオーブ、完成したのか。すごいな」
「ほめるのは後で。アルフォンスは『竜穿』を放つを準備して。奥義の刃と鼓舞の角笛、ブーツで移動補助もする」
同時に仕えるアイテム3つ、その効力を封入したオーブを1つずつ神器に装填し、撃ち放つ。
アルフォンスに赤い光の為で放たれた弾丸は、アルフォンスをつつむオーラとなり、その力を上昇させる。
アルフォンスは走り出す。
先ほども言った通り、遮るものは何もない。城門までの真っすぐ道。アスクの王子は、すでに血にまみれながらもかろうじて国の象徴たる、白と黄金の道を走り抜けた。
相手のエンブラ兵は迫る足音に気が付いた。しかし遅い。ブーツによる移動速度の上昇の恩恵は確かに存在し、相手が武器を構えるよりも早くアルフォンスの攻撃が入る。
「はああ!」
フォルクヴァングの振り上げによる1撃。エクラのアイテムの力で体の調子が最高潮のアルフォンスはすぐに奥義を放った。竜を穿つの奥義は、一撃の攻撃力が高い彼にこそ似合う技だとエクラは信じている。
そして神器の一閃はすさまじい風圧とともに相手の兵士を打ち上げる。
「ぐあああ!」
悲鳴を上げながら地面に打ち付けられたエンブラ兵。しかし生きている。
HPの減りようは攻撃の当たり具合にもよる。かすっただけではダメージ期待値の1割、当たっていても通常は3割から良くて7割、相手も攻撃を防ぐために動くので当然だ。
しかし今の一撃はクリティカルヒット。これはダメージ期待値100%セントも考えられる。
(アルフォンスの今の攻撃力は、間違いなく70を超えてた。相手のHPは……残り9)
残ってしまったが、それでも十分な痛手だ。
問題は相手の反撃だが、それも相手の傷の受けようでは、追撃は来ないだろう。攻撃を受けたら必ず反撃ができるわけではない。さすがに痛いものは痛いし、それで動けないこと相手の戦士にも、こちらにもある。
このような状況に持っていくには、原則相手のHPの8割程度を削ると可能だ。
「エクラ!」
「ああ」
無力化した。そう考えエクラも走り出す。幸いやられたふりなどではなく、その兵士は虫の息で横たわったままだった。
「基本はこの調子で行こう。アルフォンス」
「ああ。……エクラ上をみて」
見たことのあるフクロウが空を飛んでいる。
しかしただ飛んでいるのではなく旋回をして、まるで誰かに位置を教えるかのように目立っている。
「フェー!」
「フェー、もしかして、誰か見つけたのか?」
しかし抗う力のないフクロウに向けて風の魔法や、矢が続けざまに飛び始める。
たった一瞬。気づかなければフェーの合図に気が付かなかった。
「あそこに行ってみよう」
「場所は城下街だ。エクラ。敵も多い。警戒は怠ってはいけないよ」
「分かっている!」
エクラと、アルフォンスは走り出す。
次回 序章 2節 破壊された街