ファイアーエムブレム ヒーローズ ~異聞の『炎の紋章』~ 作:femania
無断の援軍を素直に受け入れるはずもなく、戦いが終わってすぐギリアムは突如参入した異邦の者を、同胞と共に囲む。
無駄な抵抗はしない。相手の出頭要請に素直に従い、ネームレス一行は連れていかれるがまま、この場の統率者たるヒーニアスの元へ。
カルチノの議会場に入ったとき、妹と口論しているヒーニアスをネームレスたちは目撃することとなった。
「今は皆武器を持って戦っている! 私だけ後ろに下がるなんてできないでしょう」
「だとしても、お前は王女だ。皆の肝を冷やしたくないのなら、せめて突撃は――ギリアム、どうした」
「援軍として参加してくださった者たちを連れてまいりました。容姿が怪しきものもおりますが、態度からして明らかな敵ではないとは思いますが、判断を仰ぐべきかと」
「ふむ……ターナ。私の言うべきことは伝えた。以後は気を付けてくれ」
「むぅ」
不服そうな王女を差し置いて、ヒーニアスはまず正体を隠している闇魔法使いを一瞥する。
「怪しむな、というつもりはないな?」
「はい。しかし、我々はあなたの味方となる者です」
「それは分かる。お前はともかく、ロストンの王女が連れているのなら、少なくとも魔に連なる者ではないだろう」
ロストン聖姫はしっかりと頷き、
「お久しぶりですわね。ヒーニアス王子。しかし、妹様とは初対面ですね」
知り合いであることをアピールする。
ギリアムはそれを知らなかったのか、少し驚いた顔をしていた。
「ふむ、ここにいるのだと、ヴァネッサとシレーネが護衛だったが、それしか知らんか。1年前の話だ。グラドの王子に誘われルネスで、次代の王となる我々が顔合わせをしようという話になった」
「お兄様、そんなの聞いてない」
「遊びに行くわけではないからな。おまえには言わなかった。ロストンの王女とは、そこで知った仲だ」
ターナは非常に不服な表情。
(すごい表情豊かなお姫様だな……。シャロン様みたい)
ルフィアがそう思うくらいに、彼女はこの世界でも活発な性格だった。
「貴様らがどういう存在かを聞かないことにはな。そこの黒いローブの者は話が長くなりそうだから後にする」
この場において必要なのは信用。
ネームレスは、さすがに自分が異界からやってきたナーガの使者などという眉唾な話はできないが、嘘は言わないように心がける。
「俺は旅の傭兵だ。今はこの子らと奇妙な縁でともに行動していた。弓と武具と魔法にはそれなりに心得があるつもりだ」
ヒーニアスはギリアムを見る。
「偽りではありません。腕が立つ男です。弓を最初に持っていたかと思えば、次は剣、次は槍、その次には魔導と、我々からすると信じられない戦いぶりでした」
ヒーニアスはそれだけ聞くとそれ以上は何も尋ねなかった。
「いいのか?」
「騎士団の面接ではない。傭兵の身元を探る意味はない。私にとって重要なのは、なぜ我々を助けたかだ」
「さすがにこの子らを連れて旅というのも危険でね。せっかくだからどこかに匿ってもらおうかと思った」
「ただではない。翼を持つ少女、恐らくはあの竜と関係する者だろうが、彼女とそこの市民をただで庇ってやるほどこちらには余裕がない」
「ではどうしろと?」
「当然。貴様が養ってやるべきだろう。お前は傭兵だといった。彼女らを預かるのならば、お前はその代価として、この軍を離れるまで雇われろ、ということだ」
「ほう? 王族が流れの傭兵を信用していいのか?」
「彼女らは人質にもするがな。今は1人でも戦力を増やしておきたい。ギリアムが太鼓判を押すのなら腕はあるだろう。どのみち多少のリスクを抱えようが、現状では誤差だ。勝利の可能性を少しでも上げることを優先する」
「相手は?」
「魔物と、ルネスだ」
ネームレスにとってこれはそれなりに良い条件がそろったといえる。自分はもとより世界の脅威と戦う兵士。ルフィアの安全が確保できるのなら自分の命は度外視でいい。
そして狙いがこの世界を変質しているルネスと魔王らしきエフラムだというのなら、目標を違えることもない。
「1つ確認を。お前たちがルネスと敵対する第3勢力がいたら、協力するか?」
「そのために、我々は行動を起こす。組むに値する力を持つのは、グラドか、ジャハナ崩壊後に湧き出た賊あがりの軍だが、蛮族と組むつもりはない。基本的にはグラドとの合流と交渉を目指すことになるだろう」
(ルネスが敵である以上、グラドは今回は味方に近い位置づけかもしれんな。ならば召喚師がそこに行き着く可能性は十分ある。情報交換はできるとはいえ、この大陸は想像以上の危機的状況。合流も視野に入れられるならその方がいい)
ネームレスは、ヒーニアスが突如してきた提案を快諾することに。
「よし。歩兵ならば遊撃隊か前衛に合流だな。ギリアム、案内をしろ」
「はっ」
そして、ミルラとルフィアには緑髪のしなやかな挑発をたなびかせる白色の甲冑を来た女性が接触する。
「お2人は私が案内いたしましょう。天馬騎士隊長シレーネです。よろしくお願いいたします」
「は、はい!」
ルフィアは緊張気味に返事を返した。
ヒーニアスの興味はいよいよローブで身を隠した者へと移る。
「お前たちは」
ヒーニアスが聞く前に闇魔法使いが1つの伝書を懐から差し出した。
「……ルネス王家の印だと?」
伝書の内容を一通り見て、興味があると目で訴えているターナに渡す。
「……え、エイリークの……!」
伝書の中身はエイリーク王女が直筆で書いたと思われる言伝。その中には、グラドと協力し兄を止めてほしいという旨と、自分は暴虐を尽くす兄を内から止める、密に使者を出して魔王討伐への協力を呼び掛けていることが書かれていた。
そして同封されていたのは、自分が知る限りの、ルネス城の現状とルネス軍の今後の動向について。
最後に『人々を裏切り、世界を破滅させようとした罪は重い。自分はルネスの王女ならば、国とと共に罰を受け死ぬ覚悟がある。今までありがとう』とも。
「そんな……!」
へたりこむターナ。ヒーニアスは表情を変えずに闇魔法の使い手と従者に尋ねた。
「お前たちは使者なのか」
「はい。ルネスの王女は魔物と戦う覚悟がある。しかし、内でできることをするため公に味方はできない。我々もまた、スパイのようなものです。故に、怪しまれないよう、すぐに発たなければなりません。皆様も明日にはここを」
「それについては心配ない。反撃は叶った。お前達に行き先は教えんが、『安全』な道を通って戻る予定だ」
ここでラーチェルも言葉を挟む。
「申し訳ないのですけど、私たちも合流するわけにはいきませんの。ロストンに戻り、その足でジャハナへ向かいますわ」
「危険だ。今、ロストンの双聖器は君が持っているのだろう。ここではぐれ、行く先で襲撃に合い奪われれば、それこそ我らに勝ち目がなくなる」
「魔王と戦うには、双聖器が要る。その行方を捜しますわ。貴方に止められても、これが私の指名です。無理矢理にでも行きます」
「本気か」
「魔王は強大です。双聖器を集わせることは、絶対に必要なのです。それを無視して集まっても、魔王に勝てなければ意味がないでしょう?」
堅い意志を感じ取ったのかヒーニアスは、ルネスの使者とロストンの王女を解放する決を下した。
「よいので?」
「賭けになるのは不愉快だが。勝つために最善を尽くす。この世界で生き残るには、既にリスクを恐れる段階ではない」
出発する闇魔法使いとラーチェルを見送ることに。
ルフィアは助けてくれたことについてかさねてお礼を述べる。
「ありがとうございました。どうかお気をつけて」
闇魔法使いは然りと頷き、顔が見えないながら返事をしっかりした。そしてラーチェルもまた、
「勇敢な少女ですこと。どうか生きて、今度はグラドで会いましょう。その時は、すこし余裕もあることでしょう。私の武勇伝、聞かせて差し上げますわ」
「ガハハハ、ということだ、気をつけろよ、少女よ。そして貴様もな。多武器使い」
途中までは同じ道を行くようで、闇魔法使いとお付きの従者とロストン組はともにものすごいスピードで消えていった。
「見送りは済んだか」
ヒーニアスも最後まで彼らの監視をするために、遠くでその様子を見守っていた。
「ああ」
「ならば準備をしろ。少しの休憩の後、出発する」
「ああ、さっき言っていたな。フレリアを奪還するのか」
「あんなものは嘘だ。この軍でフレリアに凱旋しても決死の戦いになり後に続かない。決死は、もう少し後に取っておく」
「なに?」
「グラドとの合流を目指すと言ったはずだ。ここから軍を一気に動かし、リグバルド要塞を目指す!」
次回 9節 『生死を賭けた要塞攻略』-1
ちなみに好きな双聖器はどれ?(初見さんは調べるなり名前の響きなりで決めてOK)
-
炎槍ジークムント
-
雷剣ジークリンデ
-
蛇弓ニーズヘッグ
-
翼槍ヴィドフニル
-
氷剣アウドムラ
-
風刃エクスカリバー
-
光輝イーヴァルディ
-
聖杖ラトナ
-
黒斧ガルム
-
魔典グレイプニル