ファイアーエムブレム ヒーローズ ~異聞の『炎の紋章』~ 作:femania
堅牢を誇る要塞に、まるで紙の裁きでも降り注いだかのような破壊が執行された。
およそ人間が起こしたとは思えない攻撃を前に、要塞の中にいた兵士たちは大慌て。対しフレリアの精鋭の行動は機敏で計算的だった。
穴が開いたところに兵が集中すれば意味はない。要塞の各地に散らばって持ち場を守っている兵が穴に集中する前に無理矢理開けた入り口から突入し、兵数差を圧倒的にする。
気分に動ける剣士部隊と騎馬隊が最初の突撃を担い、見事その奇襲は成功。フレリアは少ない損害で多くが要塞の中へと侵入することに成功した。
ヒーニアスが声を張る。
「上の階を先に制圧する! 重装部隊が来るまで第3部隊まではこの戦線を保て、他は私と共に進軍する!」
兵士たちは大きな声でそれに応え、決死の要塞戦へと足を突撃していった。
ネームレスはその重装部隊と同時に要塞へと侵入。
その中で、1人、火事場泥棒を発見した。年若く、やんちゃがまだ抜けきってない生意気な目をした少年が重装兵の目を盗んで要塞へと侵入したのだ。
「誰だ……?」
「いかがなされました。ネームレス殿」
「1人要塞の兵とは思えないガキが入ったかもしれん。ヒーニアスの方は任せて大丈夫だな?」
「兵数の差が埋まれば、戦略、練度ともにフレリアが上回っております。貴方はどうか不安要素かも知れぬ肩を追ってください」
「よく言った。後は任せる」
ネームレスはフレリアの勇敢な兵を信じ、謎の盗賊もどきを追い始めた。
ゲブ様! と命令を求める声がするが、軍属とは思えないだらしなく肉が付いた顔と体を起こし述べたのは一言。
「無能どもは分かっているなぁ? 将軍のために死ねぇ」
「どうかご命令を!」
「命令がないと動けん無能かぁ? 今からわしは蒐集部屋へ向かうんだぁ。それまでネズミ1匹も通すなぁ。そこの防備を重点的にかためろぉ」
それだけ言って兵士の前から去った。
要は、お前らで何とかしろ、という極めて理不尽な命令だったが、要塞で働く者たちは皆、ゲブの教育を受けて1人前になった兵士たちだ。
ゲブとその手下は元々グラドの兵だったものの、グラド兵らしからぬ品位のない振る舞いをしたということで、軍を追放されている。ただしゲブは死なばもろともといって、部下を丸ごと道連れにした。
そこを邪悪な目をしたエフラムに認められ、部下もろともルネスの先兵となりこの要塞を任されて今に至る。
理不尽は今に始まったことではない。故に自分達が何をすべきかも分かっている。ゲブの命令を受けられなかった兵は自分で考え、自分の同胞たちに戦いの方針を伝えた。
ゲブがコレクションルームと言ったのは牢屋のことだ。
この部屋だけは衛生環境が限りなく整えられている。そしてゲブ以外にこの部屋に入る者はいない。
では何をコレクションしているか? その答えは見れば明らかになる。
「ふふふふふ、ルーテぇ? いよいよ観念する時が来たぞぉ。お前を殺す軍が来てるぅ」
返事はない。俯いたまま動かない。
「魔騎士ゼトに半殺しにされてからここに囚われてどれくらいたったかぁ? 一緒にいたの神官を目の前で殺して、次はとうとうお前だなぁ? そこでだ。わしがいい話を持ってきたぁ。共に逃げるぞぉ。相手はフレリア兵。謎の攻撃も受けて陥落寸前だぁ。時間がないぞ?」
返事はない。ただ呼吸の音だけ。
「ぶふふふふ。おまえは見た目だけはわしにふさわしいイイ女ぁだ。もう、何度も体を――」
「私、優秀ですから。このような状況を示す書物を読んだことがなくとも分かります。たとえ拷問を受けようと、その道を選ぶことが愚かだということを」
「ぶふふふふ。まこと、強かな女だぁ」
ゲブは持っている大斧で牢の鉄格子をぐちゃぐちゃに破壊した後、手錠を後ろに繋がれているルーテを投げ飛ばす。
「ぐぁ……」
「ひ……いや……!」
隣の牢屋に囚われている小娘、ネイミーが今にも泣きだしそうな顔で凶行に怯えていた。
「おおおぅ……、グラドを追い出されてからクソみたいなことばかり続いて、ようやくイイ女が2人も手に入ったってのにこの仕打ちぃ。ふざけたものだぁ。わしのような有能にあっていい仕打ちではないよなぁ?」
暴力も時には使うが必要な時以外に使わないのは、趣味をするときに、傷ついた体では興が削がれるからだ。趣味に対しては怒りをある程度で抑えられるところだけは、無能ではなかった。
女を2人も食い物にしている醜い肉塊に、小鳥の着地ほどの足音で背後から迫る1人の影。
少年は恨みをたっぷりと込めた剣の一撃を叩きつけようとする。
しかし。その直前。ゲブは動いた。
まるで分かっていたとでも言わんばかりに、後ろから迫った盗賊風情殴り、地面にたたきつけたのだ。
「くそ……!」
奇しくも幼馴染が捕らえられている牢の前で情けない姿をさらすことに。
「コーマ……来て……あ、やだ……」
「泣くな! お前を助けに来たってのに」
ネイミーは斧を振りかぶっているゲブに命乞いをする。
「お願い……コーマは……殺さないでぇ……」
涙があふれていた。次々と大きな粒が下に落ち、地面を濡らす。
しかし、命乞いは、
「ぶふふふふ、ここでお前を殺せばぁ。心も折れるよなぁ?」
下衆な笑みを浮かべて殺す気満々で、キラーアクスを振り下ろす。
コーマは立ち上がろうとしたが、先ほどの殴打の衝撃が残っていて、体がふらつきもはや回避が間に合わない。
「コーマぁぁぁぁ!」
少年は情けない自分に後悔した。あと、もう少し強ければ、要塞に無理矢理突っ込んででも助けようと思うくらいには大事な友を助けられたのに、と。
風が吹く。それは室内にしてはあまりに強すぎる風だ。
「ぬぉおおおお?」
ゲブが吹っ飛んでいた。まるで台風で吹っ飛ばされたかのように。
「誰だぁ」
これまでにないほどの殺気で、この場に新たに現れたその男をゲブは見る。
「ふん。どの世界にも下衆はいるものだな。血に濡れたこの手で正義を語るつもりはない。お前は見ていて不快だ。私怨にて殺してやろう」
ルーテはその瞬間に気が付く。自分の手錠が外されていることに。そして今まではなかったはずの近くに、炎の魔導書が置いておることに。
ネームレスは言う。
「私よりも殺したいというのであれば譲るが? いかに体力を消耗しているといっても、一発くらいならできるだろう。あの程度の相手だ。膳立てもしてやれるが?」
「手助けは不要です。私、優秀ですから」
「ほう?」
「貴方はそこの彼女を助けてください。彼女は、良く泣いていましたが、人間らしい振る舞いで、私に元気をくれた恩人ですので」
(……正史世界よりは少し感情豊かに見えるな。)
受諾の頷きを返し、近くのまだふらつくコーマを支え、ネイミーが閉じ込められている牢を破壊する。
「誰か知らねえけど、感謝するぜ……」
「まずは彼女を安心させてやるといいだろう」
コーマに抱き着くネイミー。やや敗れて体が露出している服のままで、思春期である彼は。この後の対応にしばらく困ることになった。
「お……お……」
一方で天才の名は驕りではなく。ゲブは近づく前に多くの火傷を食らい既に膝をついていた。
見事な腕だ。敵の物の投擲を炎で迎え撃ち破壊、そのまま連続で炎の弾を食らわせる。たった10秒で勝負はつこうとしていた。
「お前ぇ、いいのかぁ、俺の素晴らしい寵愛をもう――」
「ここに来て多くを理解できました。アスレイを殺された時、私は人が死んだとき周りが悲しむ理由を知りました。そしてある書で論者が遺した、人間の悪性を理解しました。非常に得るものが多かった点は、貴方に感謝すべきなのでしょうか」
「おおお……」
「もう1つを体験し理解することにします。恨めしい相手を殺した時に体に駆け巡る快楽はどのような感覚か。闇魔導医学応用論二集の八十八項には、開放感を得て、拍動がやや早くなるという記述がありました。実践のときです」
「くそぉおおおおお」
それは怒り故か好奇心故か。ルーテだからこそその魔法に何を込めていたかを理解するのは難しいが、エルファイヤーと見違えるほどの大きな炎となり、恨むべき肉塊を焼き尽くした。
灰すら残らない消滅。それを見てルーテは、自分の囚われていた牢の隣、骸骨が積まれている部屋見て、
「なるほど。悪くないですね」
とつぶやいた。
遅れた理由は忙しかったのもありますが、他にもいろいろ理由があって。
実は3回くらいこの話は書き直してます。
1回目書いた後、ゲブ様がややキャラ崩壊を起こしてた(めっちゃ有能な上司にみえなくもなかった)のでNG。
2回目は、聖魔を見直して、ようやくそれっぽいキャラで書いたものの、今度はR18ラインでステップを踏んでそうだったので念のためNGに。
ゲブ様いらなくない? とも思ったのですが終末世界が最悪な世界であることを強調するために、彼はいい敵役になりと思い、縁のあるここで出したかったのです。
3回目でようやく出せる程度にまとまったと思い、ようやく皆様にお見せ出来ました。
あと、また流れで味方キャラ殺してるじゃんと言われそうですが、これはアスレイが嫌いというわけではなく、ゲームの正史世界と違って、戦争の残酷さと絶望を強調していくため、どんどん死人は出てきます。
それにあくまで終末世界での話なので、アスクで召喚されて登場と活躍の機会に恵まれる可能性もあります。そっちの可能性を期待していただければと思います。
ちなみに好きな双聖器はどれ?(初見さんは調べるなり名前の響きなりで決めてOK)
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炎槍ジークムント
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雷剣ジークリンデ
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蛇弓ニーズヘッグ
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翼槍ヴィドフニル
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氷剣アウドムラ
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風刃エクスカリバー
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光輝イーヴァルディ
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聖杖ラトナ
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黒斧ガルム
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魔典グレイプニル