ファイアーエムブレム ヒーローズ ~異聞の『炎の紋章』~   作:femania

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1章 10節 『魔導研究室での思い出』ー3

 城に到着したエクラたちはエクラを待っていたグラドの兵士に連れられて闇魔導師ノールのいる魔道実験室という名前の部屋へと向かった。

 

「これは……」

 

 部屋に入ってすぐにエクラは驚く。大砲のような巨大な装置が目に入ったからだ。

 

 ただし砲弾を詰める機能はない代わりに正八面体の紫の宝石がつけられていたり、先に向かって細くなっていたりと、ただの大砲というわけではないことが分かった。

 

「申し訳ありません。驚かせてしまいましたか」

 

 見るからに闇魔導師という感じの男が優しい口調で来訪者たるエクラたちに話しかけた。

 

「あなたがノール様ですよね。リオン様の補佐をされているとか」

 

「お話はしたことはなかったはずですが。よく観察していらっしゃいますね。私ごときを覚えていてくれたとは、嬉しい限りです」

 

 ノールはこの仰々しい機械の宝石に手をあてる。

 

「エクラ殿。さっそくで申し訳ありませんが、この石に触れてみていただけませんか。10秒ほど」

 

「10秒……?」

 

「それ以上は少し不都合ですので。フィヨルムさん、エクラ殿が倒れたら私を即処断していただいて結構です」

 

 突然の依頼にフィヨルムもどう言葉を返せばいいか分からない。

 

 エクラはおそらくこれが何か1つの魔道実験なのだろうと思った。そしてノールがそれほどまでに激しい言葉を言ったのは信用を得るため。

 

(だから、きっと罠じゃない)

 

 そう判断してエクラはその機会へと触れる。

 

 体から徐々に何かが失われていくような感覚を得た。手から何かが抜けていってこの大砲のような機械に流れ込んでいく。

 

「手を離して」

 

「ふぅ……」

 

「平気でしたか。ありがとうございます。これで完成ですね。後はこれを城壁と城の不空箇所に配置すればよいでしょう」

 

「あの、これは?」

 

「リオン様が考案為された対魔王用の兵器、『対魔神砲』です。我らグラド魔導研究員たちの研究の結晶。魔王へ攻撃を行うための対抗兵器です」

 

 エクラには、あのエフラムと戦うには少し大きすぎるように見えた。

 

「街の防衛のためのものなのですね」

 

「その通りです。いずれこの地に魔王はたどり着く。リオン様はそう私に仰せになりました。その時に何の準備もないのは良くないだろうと」

 

 ノールはこの兵器の説明を始める。

 

「この水晶は人に宿るあらゆるエネルギーを光魔法の魔力へと変換し放ちます。魔導の素質のない者がこれに触れれば生命エネルギーを利用することになる」

 

「それでさっきあまり長く触れないようにと」

 

 ノールは肯定を示すべく頷いた。

 

「場合に寄れば、住民たちにも協力してもらう必要がある。そのための仕組みを作るためには闇魔法だけでなく、理、光魔法にも精通している必要がありまして。レンバールから帰還後、ある方の協力で要約目途が立ちまして」

 

 そこに意外な人物が姿を現した。

 

「ノールさん。こちらも成功です。兵士は今日使い物にならなくなったので寝かせました」

 

「その方々は教会の休憩室でお休みになられています」

 

 協力者を見てエクラは納得した。この部屋を訪れたのはルーテとナターシャだった。

 

「ご苦労様でした」

 

「この程度造作もありません。私、優秀ですから。おや、貴方がたはあの男の知り合いだった」

 

 正史世界のルーテ同様、こちらのルーテも博学なのだとこのやり取りでエクラは理解する。付き合い方は大きく変える必要はなさそうだとも。

 

「ルーテさん。エクラです」

 

「不思議な服、よく分からない持ち物。感じるただならぬ気配。興味深いです。今の研究が終われば今度はあなたを研究することにしましょう」

 

「えぇ……」

 

 ノールはルーテのことは高く評価しているようで、

「友人の方の弔いを教会で終えた後、ナターシャさんに魔物を滅ぼす研究をしたいと詰め寄ったようで、私のところに相談しに来たのです。彼女は理魔法や他様々に精通していたので、私が研究室にスカウトしました。今は本当に助かってます」

 とご機嫌に語った。

 

「まさか私の話についていける方がいるとは思いませんでした。それはこの街に来ての収穫です。ここでの研究は悪くありません。ライバルよりも優秀であることを今に証明しなくては」

 

「我々は何度もライバルではないと……はぁ」

 

 やや同僚付き合いには苦労していることはエクラにも分かったが。

 

「ノール殿、リオン様の客将もお呼びになっていたのですね」

 

「ああ、そうでした。つい本題を後回しにしてしまった」

 

 本題。どうやら実験に付き合わされるだけではないようで、エクラも一安心した。先ほどの感覚はあまり好ましいものではなく、エクラはもう1回と言われないか内心冷や冷やしていたのだ。

 

「エクラ殿。私が聞きたいのは今のリオン様のことです。貴方からリオン様はどのように見えておられるのでしょうか」

 

「それは……偉大な王さまだと。強い、それは戦いだけでなく普段の振る舞いをみても」

 

「……リオン様よりあなた方ヴァイスブレイヴは異界から英雄を集める神の国からの旅人と聞きました。異界のリオン様をあなた方は見たことがあるのでは?」

 

 本来出向いた先でアスクの事情を言いふらすのはあまりいいことではない。アスク王国自体が非常にイレギュラーな世界だ。

 

 しかしノールの言いぶりからするに、既に十分な認識はされてしまっている。ここはあえて隠す必要はないだろうと判断し頷く。

 

「そこでのリオン様は、どのような性格だったのでしょうか……?」

 

 ノールの強い眼差しを受け、エクラは少し目を閉じて思いだした。

 

 優しい、故に気が弱く、たとえ魔法の才能は秀でていてもとても皇帝をやれるようには見えなかったと。

 

 その時のノールのなぜか安堵した顔はエクラには強く印象に残った。

 

「そうか。そうなのですね。やはりリオン様は、そのようなお方だ」

 

「でもこの世界のリオン様はあんな風に」

 

「……元々ああではなかった。今の話を聞くに、貴方がたのもつリオン様の印象は、我々小さなころから皇帝を見た者のリオン様の当時の印象と合致している」

 

 エクラは驚く。だとしたら凄まじい変わりようだ。

 

 いったい何をしたらあそこまで人は変われるのだろうかと。

 

 ナターシャも言った。

 

「司祭様はリオン様とお知り合いでしたが。確かに、何度か聞いた話では私もそのような印象を受けていたので。実際初めてお会いした時には驚きました……」

 

 ノールはエクラに己の心境を告白する。

 

「今の私には、陛下が無理をしているように見える。闇魔導を扱う者は闇と向き合わなければならない。心の疲弊は内側から人を狂わせる危険なものなのです。もしもそうならば、私は死を覚悟しても具申しなくては」

 

「その必要はない」

 

 部屋に新たな人間が訪れた。

 

 蛍石。セライナ魔導将だった。

 

「陛下は皇帝。その決断と勇姿を部下は称えなければいけない。この国をまとめ上げるために陛下は心を鬼にしておられる」

 

「セライナ殿。それで心を病み、闇に付け込まれればグラドは内側から崩壊する危険があるのです。リオン様の隊長を誰よりも親身になって心配しなければ」

 

「ふ……陛下の言った通りだな」

 

「何を」

 

「お前がそろそろそう言う頃だろうと、陛下は私に言っていた。お前がデュッセルにエクラを呼びに行かせたことを陛下は知っている。私に、何の話をするのか聞いて来いとな」

 

 国の運営に比べれば些細なことだと思うが、それをくまなく拾うリオンの情報把握力にエクラは驚かされる。

 

(王ってそんなことまでできるものなのか……?)

 

 アルフォンスの顔がちらついたが、エクラはすぐに否定した。

 

 リオンは1人で完璧な王を演じているだろうが、アルフォンスにはその必要はない。アルフォンスには頼るべき仲間がいる。いていいのだ。多くの英雄を束ね、協力という和を持って平和を掴み維持するのがアスク王国という場所なのだから。

 

 自分がそれに値するとは思っていないができる限り力になるつもりだ。だからこそこうしてアルフォンス不在でも戦いを続けているつもりなのだから。

 

「セライナ殿。貴方も陛下の若かりし頃を見ているはず。違和感はないのですか!」

 

 ノールが真剣に尋ねるのを受け止め、強情な態度でなく真摯に応えた。

 

「正直に言えば、ある。私も、お前の言う無理をしているように見えている。私は、別にあのままでもいいと思っていた。グラドには優秀な官がいる。軍がある。陛下をお支えし、大成するのは私が死んでからもいいと思っていたくらいだ」

 

 セライナは目を閉じ、過去の情景を思い浮かべる。

 

「先代皇帝は偉大なお方だった。しかしリオン様がああなってほしいとは、三石は誰も思っていない。受け継ぐべきは志でいい。子は個として親とは違うのだから、リオン様らしくこの国と向きあっていただければいい」

 

 一呼吸。大きなため息だった。

 

「ルネスの兄妹と一緒にいたとき、それが素であるのなら。あの方は本当は優しいお方だ。眼差しも温かく、勉学や研究を好み、威張や戦いを好まなかった。私たちは、あのように強くなる必要などなかった、と思う。あのように陛下を追い詰めたのは魔物に押される不甲斐ない我らのせいかもしれん」

 

 懐かしみを伴う目。見ているのは過去の皇帝か。

 

「だが、今は陛下を信じるとも。今も陛下は必死に戦っていらっしゃる。ならば、易々の疑うことなどできない。とても」

 

 ノールから反論はなかった。セライナが忠臣であることは知っている。彼女の意志を慮って軽々と反論は口にできなかったのだろう。

 

「エクラ」

 

「はい」

 

 唐突に名前を呼ばれ驚いたが何とか態度には出さなかった。

 

「フィヨルム殿も一緒に連れていい。リオン様の魔導研究室へと向かってくれないか。リオン様からお話があるそうだ。世間話に付き合ってほしいな」

 

 世間話としてふと思い出してみると、この世界のリオンとは普通に話したことがなかったということを思いだす。

 

 エクラはその誘いに乗ることにした。セライナはその迎えだったようで、彼女の後を追って魔導研究室へと向かう。




次回 1章 10節 『魔導研究室での思い出』ー4

ちなみに好きな双聖器はどれ?(初見さんは調べるなり名前の響きなりで決めてOK)

  • 炎槍ジークムント
  • 雷剣ジークリンデ
  • 蛇弓ニーズヘッグ
  • 翼槍ヴィドフニル
  • 氷剣アウドムラ
  • 風刃エクスカリバー
  • 光輝イーヴァルディ
  • 聖杖ラトナ
  • 黒斧ガルム
  • 魔典グレイプニル
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