ファイアーエムブレム ヒーローズ ~異聞の『炎の紋章』~   作:femania

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1章 10節 『魔導研究室での思い出』ー5

 リオンもせっかく街へと繰り出したので少し街の様子を見て公務へと戻るという。この場で分かれることになった。

 

 エクラとフィヨルムも、子供たちに別れを告げてまた自分達の拠点へと戻る。途中、

「コレ食べてよ。英気を養ってくれ。客将さん」

「この前褐色の人に助けてもらってね。そのお礼。漬物なんだけど」

 などなどいっぱい差し入れをもらってしまい申し訳なく思う一方で、自分達もこの街に馴染めてきている証拠を見ることができてうれしい限りではあった。

 

「守りたいです。魔王と倒してこの街を、必ず」

 

 フィヨルムの決意に自然と頷きを返していた。

 

 拠点に戻ると見知らぬ2人。

 

「あ、あの、その、うう」

 

 1人は紫のピンクの間の色の髪をしていて、弱気な性格が表情にまで出ている。

 

「お前な、それじゃ通じねえだろ。あんた、ここに武器をたくさん使う男いるだろ。そいつに用があるんだけど」

 

 もう1人は服装から見るからに盗みが得意そうな、隣の彼女の同年代の目つきの悪い少年だった。

 

「そいんな言い方ダメだよ……怒られちゃうよ……」

 

 それくらいで怒ったりはしない、と内心ツッコミを入れなながらも1人思い当たる男を思い出し、その男がいるだろう部屋へとエクラは突撃する。

 

 

 

 

 

 名前はネイミーとコーマというらしい2人。

 

 ネームレスが助けた少年と少女だという。エクラはどこかで誰かが言っていたような……、と首を傾げていたが少なくともアスクに召喚されたことのない英雄である事は確かだった。

 

「あの、この前のお礼をと思って……これ、示しの品です」

 

「はぁ……」

 

 差し入れを見るとおいしそうなおかずがいくつか。

 

「別に俺は任務であの城にいただけだ。礼は必要ない」

 

「そう言うなよ。ネイミーがどうしてもっていうから。俺はいいと思ったんだけどな。こうしないと気が済まないんだよ」

 

「だって、当然だよ。命を助けてもらったんだよ……。本当はもっといいものをお礼に差し出すべきですけど。もう何も持っていないので、私が、作れる範囲で」

 

「そういうことなら有難くもらっておこう。だがお礼はそいつに送ってやれ。俺の雇い主んなんだが、お人よしじゃなければ俺も助けていなかった」

 

 応対が面倒になったのかエクラに話題を投げるネームレス。

 

「あの、ありがとうございます……」

 

 自分が助けたわけでもないので、どういたしまして、というのもおかしなことだと思うネームレスを見る。

 

 しかし彼は中身を見て、たまにつまみ食いをしている。

 

「美味いな。変な味でもなく、毒もなさそうだ」

 

(なんて呑気に……!)

 

 話題に困ったエクラは、わざわざ訪ねてくれた彼らに、お礼をもらってじゃあさようならというのも礼節に欠けると思い、少し彼らとのコミュニケーションを図ってみることに。

 

 まずは彼らに単純な疑問をぶつけることにした。

 

「これから、どうするの?」

 

「この街でお手伝いをしようと。教会の人が雑務ができる人を探しているそうなので……」

 

「何言ってんだ。おまえには弓の腕があるんだから、義勇兵志望でいいんじゃないか?」

 

「そんな、私のは狩りの技。役になんて立てるわけないよ……」

 

「そうやって、すぐ弱気になるからあんな男に捕まるんだろ。度胸を磨けよ」

 

「意地悪……コーマが守ってよぉ……うううう」

 

「おい、泣くな……ったく」

 

 まさかエクラは疑問一つで泣かせることになるとは思わず開いた口がふさがらない。ネームレスは失笑。エクラが睨むと、すまんついな、と一言入れ助け船をだす。

 

「すぐに決める必要はないだろう。まずは生き残ることを考えればいい。この街にも仕事は多くある。手伝いをすれば衣食住は手助けしてくれるだろう」

 

「でも、正直、俺ら来たばかりだからさ。慣れるのに時間もかかるし」

 

「俺もフレリア王代理から報酬をもらってはいるが、は正直使う予定が無くてな。どちらかというとちょうど子守りの人手が欲しいと思っていたところだ。雇われる気があるなら、金ぐらいは払ってやるとも」

 

「それって、まさか」

 

「それで多少の猶予は生まれるだろう。その間にこの街に慣れるといい」

 

 子守りというのはルフィアのことだろう。

 

 ネームレスから密かに聞いていたが、さすがにルネスでの決戦に彼女を連れていくつもりはないという。その意見にはエクラたちも賛成しているところで、彼女1人残すことに少し後ろめたく思っていた。

 

「見たところ、ガキ、お前も多少の剣の腕はあるらしいな。お前は弓か。子守りの間はそれの指南を少ししてくれればいい。どうだ、そちらの割はいいと思うが?」

 

 保護されたとは言え見知らぬ土地に来てばかりの彼らにとっては、ありがたいことだったのだろう。

 

「私……やります」

 

「そうだな、ネイミーがやるなら俺もやるよ」

 

 2人返事で受け入れた彼らの表情が来た時より少し明るくなっていた。

 

 

 

 

 

 

 最近は行軍ばかりだったので拠点で夕食をとるのは久しぶりだ。

 

「お待たせしました」

 

 ルフィアが今日は進んで準備をしてくれたので、エクラたちはいつもよりは楽に拠点でゆっくりしたご飯にありつける。

 

(こうしてゆっくりした空間でご飯を食べるのは久しぶりだなぁ……)

 

 今までは戦いに赴いていたので、軍議を行いながら、あるいは極度の緊張状態等での食事ばかりだった。食べられるのも保存がきくものばかりで栄養に偏りが出る。

 

 色彩豊かな夕食が目の前にあるだけで感動を覚えるというものだ。

 

「レーギャルン、ごめんなさい。今日は途中で抜け出してしまって」

 

「大したことはないわ。それより……いいことあったみたいね」

 

 レーギャルンにとっては見覚えのない飾りをフィヨルムは身に着けている。

 

「買ってもらったんだ」

 

「皆様の分も届きます。願いを、必ず、生きて勝とうって」

 

「そう……案外粋なこともするのね」

 

 にこやかにエクラを見るレーギャルンに見られている本人が勘づき、その笑みの意味を測りかねる。

 

 エクラは手を合わせていただきますのポーズをとり、用意してもらった食事に手を伸ばした。

 

「ルフィア、ありがとうね」

 

「いえ、レーギャルンさんには結構手伝っていただきましたし」

 

「いい腕よあなた。妹と合流したらまた作ってくださる? きっと喜ぶから」

 

「それは、もちろん。私にできることがあれば何でも言ってください」

 

 少しずつではあるがルフィアもこの場に馴染めてきている。ミルラがいろいろ気をつかってくれているからだと、エクラは彼女に感謝。

 

『私も、むかしはそうでしたから』

 

 ただそれだけで彼女に親身に接してくれているところを見て少し微笑ましかった。

 

 そこにヨシュアが帰ってくる。

 

「ヨシュア、どこ行ってたの?」

 

「今来ている連れと遊んでたんだよ」

 

 するともう1人、意外な人物が家に入ってきた。

 

「失礼。彼を借りていた」

 

 グラド三石の1人。日長石のグレンが姿を現したのだ。

 

「かしこまらないでくれ。今日はデュッセル将軍とセライナの代わりにお礼をしようと思って邪魔させてもらった。陛下が機嫌がよかったのでね。部下として嬉しい限りだったものだから」

 

「いや、そんな」

 

「いい酒を持ってきた。まだ決戦までには時間がある。今宵くらい羽を伸ばしていいだろう。ぜひ飲んでくれ」

 

 エクラはお酒が飲めないので気持ちだけありがたくうけとることに。

 

「グレンさんもどうです?」

 

「……いや、俺はこの後見届けなければいかんことがあるのでね。だが気持ちは嬉しい。またの機会にはぜひ語らいの機会を設けよう」

 

 そう言うとレーギャルンの方を見る。

 

「なにかしら?」

 

「ヴァルターがお前を呼んでいる。出てこないのならここに武器を持って突撃するつもりだと脅しも欠けてきた。あの男の良くない趣味に付き合ってもらえるだろうか」

 

「私にのメリットがないのだけれど」

 

「では情報でどうだ。先日偵察部隊が、この世界の者ではない一団が戦っているのを見たという。お前の、特徴を聞いた限り、親類にあたるのではないかと思ってね。受けてくれたら場所を伝える」

 

「……レーヴァテイン」

 

「奴の暴走はなだめるよりは満足させる方がいい。命の取り合いにはしないことを俺が保証する。頼みたい」

 

「分かったわ。仕方ないわね……心当たりもあるし」

 

 レーギャルンが立ち上がると、外へと出ていってしまった。

 

 おそらく彼女だけ呼んだのには理由があるのだろうと思い、命の取り合いではないという言葉を信じて、食事の続きを楽しむことに。

 

 フィヨルムは少し心配そうだったが、エクラが彼女に心配ないと声を駆け、貴重な機会であるちゃんとした食事に向き合うことになった。

 

 意外にもレーギャルンは少し疲れは見えたがすぐに帰ってきて、夜は穏やかに過ぎていくことになる。

 

 

 

 

 

 ――はずだったのだが、突如㋞再び、グラドの軍人の来訪があった。

 

「おい、今いいか?」

 

 入り口近くにいたのはレーギャルンとエクラだけ。突如訪れたクーガーに驚きは隠せない。

 

「どうかなさって?」

 

 すると、グレンが藍色の髪の長身の女性を背負って、そしてアメリアが低身長の褐色肌の女の子を背負って家の中に押し掛ける。

 

「ちょっと……レヴァ!」

 

 それは別行動をしていたはずの、ルキナとレーヴァテインだった。

 

 顔を見る限り具合が悪そうだ。怪我は幸い処置されたあとで大したことはなさそうであったものの、

「死にそうな顔で先ほどグラドの門にたどり着いたと報告を受けた。軍の医務室よりはここで休ませて置く方がいいと思ってな」

 という提案には同意しかない状況だった。

 

 空いた窓から猛スピードで突っ込んでくる白い生物をエクラはキャッチする。

 

「ふぇええええええ!」

 

「フェー、どうしたの?」

 

「ううう、これを……」

 

 フェーが持っていたのは見たことない魔導書だった。

 

「おいおい……」

 

 騒ぎを聞いて部屋から表に出てきたヨシュアが珍しく驚きの表情を見せる。

 

「これは、『風刃』だ。双聖器だぞ……! どこから」

 

「うう、ルキナさんとレーヴァテインさんが必死に守って逃げてきてくれたんですぅ……それに、うう」

 

 残念そうな顔をするフェー。

 

 そういえば、1人足りない。

 

「マリカは!」

 

「う、うう。殿に……」

 

 エクラはすぐに召喚器を準備する。まだ呼び戻しが間に合うかもしれないと願って。

 

 いったい何があったのか。ヨシュアは焦るエクラの代わりに尋ねる。

 

「私は後から合流したので、それまでの話は聞いた話になりますが――」

 

 フェーは、ルキナ組と合流した後の報告を始める。それは尋ねたのがヨシュアであるということが運命かのような、ジャハナ王国での話だった。




次回 1章 11節 『野望抱く男と魔騎士の戦』ー1

その前に支援会話1つと幕間を挟むかも。
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