ファイアーエムブレム ヒーローズ ~異聞の『炎の紋章』~   作:femania

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序章 2節 合流

アイテムを数個使い、アルフォンスを強化することによって,アスクの城から無様に逃げた。後ろを振り返ることなく、ただ必死に。

 

「アルフォンス、平気?」

 

「心配ない。それよりもエクラ、けがはない?」

 

「大丈夫、結局戦ってるのはアルフォンスでしょ。こっちが弱音言ってられないって」

 

エクラも正直に言えば援軍が欲しかった。せめてブレイザブリクが正常に機能すれば、とないものねだりをしてしまう。

 

さらにここで、もし自分が戦えればという想像がすぐに出てこなかったことに罪悪感を覚え、情けなく涙が出そうになる。

 

城門を抜け、昨日まで平和たったはずの城下街にたどり着く。

 

先ほど上空に見えたはずのフェーは既に見えなくなっている。しかし伝書フクロウとして何度も死線をくぐったそうなので、まだ死んではいないとエクラもアルフォンスも信じている。

 

これも実際にはそうあってほしいというだけの願いだ。すでに風魔法や弓で相当狙われていた。しかし、エクラもアルフォンスも、すでにアンナの犠牲を見ている中で、これ以上の犠牲を見たくない、というのが本音だった。

 

「……なんてことを……」

 

アルフォンスの声が聞こえてくる。

 

それはこの城下街を見れば当然の反応だろう。

 

美しい街だった。この国の王族の在り方の写し鏡、ある場所は厳しく、ある場所は楽しく、ある場所は厳格で、ある場所は楽天的、そして街は一言でいえば清廉、という印象を受けるはずだ。

 

しかし今はどうか。破壊、破壊、破壊、破壊、破壊、殺人、殺人、殺戮、蹂躙、蹂躙。善い在り方をしていたこの街は、すでに死が充満する国へと変貌を遂げた。

 

建物は多くが白色であるが故に変貌したあとの変わりようはひどかった。赤く染めあげられている箇所が散見されるといえば、もはや後は語る必要はない。

 

アルフォンスが抱えている恐怖、悲しみは、想像を軽く超えるものだ。エクラもそれは重々承知している。本来はこのように気丈を振る舞えるような状態ではないことを。

 

「アルフォンス、敵だよ」

 

今エクラができることは、アルフォンスを前へ進めること。そしてアルフォンスを支えること。

 

今アルフォンスの心がくじけたら、そこでアンナの意志はそこで潰えることになってしまう。そしてアスクの再興も水泡に帰す。

 

自分の役割は、もはや召喚者ではないからこそ、今はアスク残された欠片ほどの希望を失わないために、どんな恨み言を言っても絶対にアルフォンスの心を保ち続けるのだ。

 

そのためには、多少冷酷と感じられようと、エクラはいつもの通りに、ただ軍師としての職も果たす姿を見せる。いつも通りに。

 

「任せてくれ。すぐに倒す」

 

「槍だよ」

 

「……相性は悪いが、そこは何とかする。受けから入ろう」

 

「アイテムオーブで援護するよ」

 

アルフォンスが剣を構えて、敵に突撃していく。エクラには、その背中はいつも通りに頼もしく見えた。

 

街を襲うエンブラの兵士たちは、強敵ではあったが、修練の塔の最上階に出てくる幻影並み、どうやら全員が全員、最初に会った、馬鹿げた強さの敵ではないことが分かった。

 

エクラとアルフォンスはそれに安心しつつ、城下街を少しづつ進んでいく。

 

3人以上、同時に相手はできない。その上アルフォンスには相当な負担がかかっているものの、それは特効薬のアイテムにより何とか体力と傷を治しながら凌ぐ。

 

もうすぐ街の中心。

 

本来は綺麗な噴水がトレードマークとして置かれている広場が見えてくるはずだ。

 

「アルフォンス! 見て!」

 

街の中心では、街の人間数人と、見慣れた一人の女性がいた。こちらには背中を向けているが、呼びかければ反応が返ってくる距離まで、2人はたどり着く。

 

「シャロン!」

 

アルフォンスはいち早く走る速度を上げ、シャロンの名前を呼ぶ。

 

「兄さま!」

 

シャロンはその呼びかけに笑って答えた。

 

――エクラは異変を感じる。

 

喜びによるものにしては、どうも顔色が悪い。その笑顔はまるで救世主を見るかのような顔だ。

 

「シャロン!」

 

アスクの王女は膝をつく。地面に水ではない水滴が滴り落ちた。

 

そこでアルフォンスはようやく、シャロンが何をしていたのかを知る。

 

震える城下街の住人。その中には子供が4人もいる。大人は震え、子供は既に泣いていた。

 

それは恐怖によるもの。

 

エクラは見た。シャロンを痛めつけていたその相手を。

 

「白夜王子リョウマ……!」

 

紫の雷、おぼろげな輪郭を持った、自分たちの知る英雄とは似ても似つかぬ男が立っていたのだ。

 




次回 第3節 終末世界の英雄(1)

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