ファイアーエムブレム ヒーローズ ~異聞の『炎の紋章』~   作:femania

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お待たせしました。

ここのところ忙しい日々が続き時間が取れませんでしたが、何とか落ち着きそうなのでまたちょくちょく続き書きます。

聖魔の光石を未プレイの人のために、リオンとエフラム、エイリークの過去を断片的に。


幕間

 それは懐かしい夢。

 

 夢の中。思い出は花火のように、激しく光を放ち、消えていく。

 

 

 

 

 

 1

 

 

 出会いはガーデン。

 

 緑に囲まれながらも文明の証である詰み石もある風情触れる場所。

 

「あ……きみたちは?」

 

 2人の蒼い髪の兄妹と初めて出会った時は、まだ今ほどに強気な性格ではなかった。

 

「ぼ、僕はリオン」

 

「君が……」

 

「うん、一応グラド帝国の皇子……かな」

 

 やや怖がりのグラドの皇子に、優王女は心配そうに彼を見て、勇王子は勇気をもってこちらへとより一歩近づく。

 

「ルネス王国のエフラム王子、エイリーク王女……だよね?」

 

「俺達を待っていてくれたのか」

 

「うん、2人が今日来るって聞いてここで待ってたんだ。僕、同じ年頃の友達、ずっと欲しかったから……」

 

「そうか」

 

 優王女もそう皇子が言ったことが嬉しかったのか、少しずつこちらへと近づいてくる。

 

 少なくとも歩み寄ってくれた。その事実がとても嬉しくて、一段大きな声で親交の誓いを述べた。

 

「ねえ、エフラム王子、エイリーク王女。これからよろしくね!」

 

 皇子にとって、輝かしい、親友2人と過ごす日々が始まった。

 

 

 

 2

 

 

 王族とは、学を修め、武芸に秀で、仁義を理解してなお秩序を貴ぶ。

 

 必要な教養と技術を身に着けるため、たとえ国際交流の場においても、大成の為の修練を欠かすことはない。

 

 グラドの司祭の1人がその博学さから彼ら3人に教え与え、さらに深い思想訓練のために課題を与える。

 

 後に魔導研究室となるリオンの私室で、共に課題に頭を悩ませるエフラムとリオンがいた。

 

「……ぐぅ」

 

「エフラム。今は課題に集中しないとだめだよ」

 

 共に学び、共に鍛え、3人の仲は自然と深まっていくもの。名前を気軽に呼び合うのに躊躇いがあるはずもない。

 

「やはり机に向かい、難しいことを考えるのは苦手だ」

 

「そう言えば、いつもデュッセル将軍とは何をしているの?」

 

「ああ、せっかく槍使いで高名な将軍のいる国に来たんだ。俺はあの人に師事している」

 

「え、ええ!」

 

「何も驚くことはないだろう」

 

 リオンが驚愕するのも無理はない。王族が軍人に師事など歴史を振り返ってもあり得ない出来事だ。

 

「どうして」

 

「俺は槍をさらに使えるようになりたい。そしてまずは武で己を磨くんだ」

 

「すごい向上心だね……」

 

「ああ。父上は偉大だ。俺は、あの人のようにはなれない。きっと。それでも王を継ぐのなら、やはり強くならないとな。だから、教えを頂いている」

 

「僕も見習わないとね。その姿勢を」

 

「そうか? お前は素晴らしい魔法の才能もあるし物知りだ。少なくとも、俺より、素晴らしい王になりそうだぞ」

 

 皇子は首を振る。

 

「僕の父上を見ただろう? 僕にはあんな風になるのは無理だ。ずっと、ずっとそう思ってしまう。だから今はまだ怖いんだ。国を継ぐのが」

 

「意外だ。お前もそんな悩みを」

 

「だから、こうして一緒に頑張っている友達がいてくれるのは、なんだか心強い」

 

「そうか。俺が……お前の力になれるのなら、嬉しいことだ」

 

 

 

 

 3

 

 

 

 同じ部屋で。

 

 リオンは闇魔導の研究の為、本を読んでいた。

 

 闇魔導に心を惹かれたのはいつだったか。きっかけは何だったか。もうそれは思い出せない。

 

 唯一、己の心が弱っていた時にたまたま読んだその魔法の深奥を肌で感じ憑りつかれた、という感覚。

 

 闇魔法の道は、神や善性への疑いから始まり、負のイメージを具現化して世界に影響を与える、魔導の禁忌に最も近い魔法と言える。

 

 術者が腐らず、他者に食い潰されない己を持たないと、その魂は汚されやがて悪なる存在へ人を変化させるという。

 

 しかし強力な魔法でもある。リオンはその『強さ』に魅了され、その道を究め続けている。

 

「ん……?」

 

 闇魔法術師団にとっては低級な本で、普段はリオンしか読まないだろうその本にしおりがついていた。

 

「あ、リオン、それは」

 

「エイリーク? 君のものなのかい?」

 

「その……」

 

「ダメじゃないか! この本は危険なものだ」

 

 ごめんなさい。私、リオンのことをもっと知りたくて……つい、読んでしまったんです。

 

 闇魔法は一般的な感性から言えば嫌われる傾向にある。

 

 しかしエイリークは言った。

 

「面白いですね。その本は。私、すっかり夢中になってしまって」

 

 この本に惹かれる。それは闇魔法に適性があるという証だった。

 

 本当は止めなければならなかった。しかし、性別の違う彼女との貴重な共通の趣味があることは、リオンにとっては嬉しく。

 

 彼女を、そちらへの道へと引きずり込んだ。

 

 

 

 

 共に魔法書を読み漁り、その知識と発見を、その中で得た喜びと驚きを共有する時間は皇子にとっては至福であり、その幸せに酔う。

 

「予知? そんなこともできるのですね……」

 

「闇魔法は、人の範疇を越える現象を起こす。だけど、僕はこれをいいことに使える王様になりたい。それは父上にもなかった……」

 

「リオンはいつも、自分を卑下してばかりですね」

 

「え?」

 

 エイリークはリオンに微笑みかけ、

「リオンは自分らしくいればいいと思います。私は、こうして頑張るリオンが大好きです。だから、その様子をいろいろな人に見せてください。グラドの次期皇帝はこんなにも頑張り屋さんだって。私だったら、そんな皇帝について行きたいです」

 と言い切る。

 

 彼女が味方であることが皇子にとってはとても嬉しい。

 

「こうして……一緒に学ぶのは楽しいです。リオン」

 

「そうか。それは、とても嬉しいな!」

 

 

 

 

 

 4

 

 

 王家の者が継承すべき伝説に触れるため神殿へと赴く3人。

 

「遅い。神殿に行くだけの容易に何故そんなに時間がかかるんだ?」

 

「エフラム。そんな言い方しなくても。女性に対する敬意と慎みも必要だって、マクレガー司祭は言ってたよ」

 

「ありがとう。リオンは兄上と違って優しいですね」

 

 褒められ、それが嬉しく、つい微笑んでしまう皇子。

 

「神殿で聖火にどんな願い事をするか考えていたんです」

 

「願い事?」

 

 リオンは首を傾げるエフラムに教えることに。

 

「昔世界を救った時に灯されたものだから。人の願い事をかなえてくれるって言われてるんだ」

 

「へえ、知らなかったな」

 

「兄上……またマクレガー司祭に不勉強だと叱られますよ?」

 

 それについてエフラムが大きくため息をつく。

 

「俺は叱られっぱなしだ。聖なる石を敬う気持ちがないとは、王としての自覚が足りないとな」

 

 実際この訪問も元々の予定が会ったわけではなく、エフラムが伝説についてあまりに不勉強だったため、司祭が怒ってしまったことが原因だ。

 

 エフラムは、代わりに別の話題へと変える。

 

「お前は何を願うんだ?」

 

「秘密です!」

 

「なんだ、つまらないやつだな」

 

 兄妹らしいやりとりを繰り広げる2人。リオンは気になったことがあった。

 

「エフラムは何を願いたいの?」

 

「俺か……?」

 

 少し考えるエフラム。

 

「もっと強くなって、理想の王になりたい、だな」

 

「理想の王?」

 

 エイリークは不思議そうに兄を見るが、リオンにはよくわかる。

 

「将来。もし父に代わって王となったら、俺のせいで民が不幸になってはいけない。俺はもっともっと、あらゆる面で強くなって、ルネスを導ける、父のような素晴らしい男になりたい」

 

 エイリークは嬉しそうに笑った。

 

「素敵です、兄上らしい、決意に満ちた願いです」

 

「……まだ遥か遠くだ。俺は、あまりにも無力だ」

 

「ふふ、でもリオンと同じですね。兄上は」

 

 エフラムがリオンを見る。

 

「お前、エイリークにも弱音をこぼしていたのか?」

 

「え、あははは……」

 

「まったく。甘えん坊か?」

 

「それは、反論できないな。でも僕の願いも同じだ。みんなが幸せになれる。そんな父上のように強い王様になりたい」

 

「みんなが幸せに、それが一番最初にくる辺りが、リオンらしいな」

 

「それ、褒めてる?」

 

「もちろん褒めてるぞ」

 

 エイリークは素晴らしい願いを持つ2人の意志に満足気に笑みを見せていた。

 

「だがエイリーク。お前、男装して王になってもいいんじゃないか? 俺は将軍とかをやってる方が正直性にあう。その色気のない体つきならバレないと思うし、それでも俺は」

 

 エイリークの笑顔が消え、

「あにうぇええええ!」

 口をへの字に曲げ兄を睨む。

 

「悪かった。冗談だ。俺は先に行く……」

 

「待ちなさーい!」

 

 走り去ってしまう子供っぽい2人をリオンを追っていく。

 

 

 

 

 

「ああ、この頃は本当に楽しかったな」

 

 夢から目覚め、皇帝リオンは昔を懐かしむ。

 

「できることなら、あの頃のように戻りたいものだ。エフラム」

 

 豹変してしまった友を真正面から見たレンバールでの戦い。

 

 何よりもリオンに絶望を与えたのは、もう、元には戻れないという時間だった。

 

「エイリーク」

 

 つい名前を呼んだ、愛しい人の名前。

 

「君は、今生きているのだろうか。どこかで人を殺しているのだろうか。君はそんなことは望まないだろう。それとも、君も変わってしまったのかな」

 

 エフラムはもう戻れない。あれは、王として殺さなければならない相手だ。

 

 その覚悟がようやくできたところなのに、ふと最悪な光景を思い浮かべたとき。

 

 リオンは叫びだしたくなったのを我慢する。

 

「僕は王だ。……僕は王だ。泣くな、叫ぶな、『この程度』の些事で発狂するような弱い王に価値はない」

 

 自分に刷り込んでいく。

 

「覚悟したはずだ。彼がなれなかった人々の希望となる理想の王。必ず、エフラムに見せてやるんだ。僕がたとえどうなろうとも。それがグラドを支える希望でもある」

 

 再び目を閉じる。

 

 眠りにつく前にただ一言。

 

「だが、エイリーク。もしも君が魔に堕ちているのなら殺せる。だけど、まだ優しい君だったら、君を殺しても、まともでいられるだろうか。それだけは不安だ」

 

 愚かだな僕は、とだけ呟いた頃には、再びリオンは激務の疲れを癒す眠りについていた。




次回 支援会話 レーギャルン×ヴァルター C
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