ファイアーエムブレム ヒーローズ ~異聞の『炎の紋章』~   作:femania

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1章 11節 『野望抱く男と魔騎士の戦』ー3

 

 ケセルダが連れてきた軍によって劣勢が一気に覆る。

 

 イシュメアはその男の目のギラつきを見て、一瞬でその男が悪人だと悟った。しかし助けられたのは事実であり、この場を切り抜けるには自分は足手まといで、彼らに頼るしかなかったのは事実だ。

 

「1つ確認をしてもよいか?」

 

「なんだ?」

 

「私を捧げれば、助けてくれるのか。この魔導書は使えるものに返さねばならん」

 

「……いいぜ、俺がジャハナを取り戻したら、俺をお前の夫に迎えろ。そうすれば、それより俺にとって価値の低いお宝の行方は見逃すさ」

 

「わかった。その条件をのむ」

 

 野獣のように歯を見せて口を開く。

 

「どうだユアン。俺の言ったとおりだろ。いい男だろう?」

 

「あとはむさくるしくなければなぁ」

 

「男は強くてなんぼなんだよ。魔導書を使うひよっことはわけがちげえ」

 

「師匠は強かったもん!」

 

「は、どうだかな。まて、俺に魔法を向けるのは後だ、気合入れろ。ここは戦場だ。俺の妻を逃がすまで気張れよお前ら!」

 

 連れ来た部下に活を入れる叫び。それに応える雄叫びとともに部下たちの士気が大いに上がる。

 

「マジかよ。これは予想外だ」

 

 フォルデもカイルも予想外の援軍に顔色を悪くする。懸念材料がなくなったルキナ・レーヴァテイン・マリカ3人の逆襲が始まる。

 

 ヴァイスブレイヴに呼ばれた英雄という称号に恥じない戦いで黒騎士たる2人を徐々押し込み始める。

 

「こりゃ旗色悪いな。カイル」

 

「ああ、撤退だ。エフラム様にはここで死力を尽くす必要はないと言われている」

 

 黒騎士の2人は闇魔法による転移を発動する。ルキナは弓矢でその前に打ち抜き阻止するつもりだったが、そこまでは間に合わなかった。

 

「カーライル殿は……」

 

 魔物の波に飲まれた忠義の騎士の姿を探したものの、彼の姿は確認できなかった。

 

「……無事なはず。きっと」

 

 きょろきょろ探すルキナのところに、乱入者たる男が近づいてくる。

 

 マリカがその男に危うく剣を向けそうになったところをルキナが阻止して対応することになった。

 

「怖えもんだ。マリカ、だっけか。聞いたとおりお前もいい女じゃないか。まさかこうして会えるとはな」

 

「何?」

 

「何しろ後ろを監視とか言ってついてきてるガキが泣きついてきたのは、お前ら傭兵団の2人が殿になって死んだって言ってたからだからな」

 

「何?」

 

「お前らの傭兵団の最後はジャハナ王宮でだと聞いた。そこで戦ったが旗色が悪くなったところを見て、一緒に行動していたユアンと姉を逃がした」

 

 マリカが首をかしげる。

 

 無理もないことだ、その話はおそらくこの世界のマリカのたどった最後ということだろう。

 

「それにしてもこのご時世女3人でのんきの旅とは欲生き残ったもんだ。だがもう安心しろ? お前らも今から俺たちのもんだ。異論は認めねえ」

 

 ケセルダの宣言通りに、3人はすでに彼の仲間たちに囲まれている。

 

「申し訳ありませんが、私たちには使命があります。あなた達の道具にされるつもりはない」

 

「やる気か?」

 

「あなた方がその気なら。私たちにはこれを撃退する覚悟があります」

 

 ルキナの鋭い眼光。生意気だと思ったのか、ケセルダの近くにいた男が襲い掛かろうとしたものの、それを止める。

 

「まあ落ち着けよ。お前らもそれなりに力になるのなら一度力を貸せよ。報酬は、この宝でどうだ」

 

「貴様、イシュメアさんの大切な宝を」

 

「これを自由にすると言ったのはジャハナ王宮を奪えたらだ。女王が大切そうに持っていたそれはおそらくジャハナの神器」

 

「それがどうしたと」

 

「女王が個人的な思い出の品を持っていたのなら可愛げがあるが、そうでないならこれは神将器の魔導書に違いない。こんな世の中で高尚な使命を持っているのならどうせ魔物をどうこうしたいってことだろう」

 

 女王が持っている魔導書を強奪して見せびらかす。

 

「貴様……!」

 

「おおっと? いいのか? ここでこいつを引き裂いてもいいんだ? それが嫌なら少しはおとなしく俺に従え。まあ悪いようにはしない」

 

「何が目的です?」

 

「互いに見極めようじゃないか? そのチャンスは強引につかむのも器のデカい人間には必要さ。もちろん気に入らなければ、この魔導書を持っていってかまわねえぜ?」

 

「それはイシュメアさんのものだ。貴様が何かを言う権利は」

 

「そういう約束で助けたからな。……こんな戦場で話をするのは花がねえな。まあ、砦も屍ばかりだろうが、まともな部屋もまだあるだろ。まずはこい」

 

 イシュメアを連れて堂々と歩いていくその男。

 

「ルキナ、どうする?」

 

 3人に彼についていく理由は突き詰めれば存在しない。この世界の脅威に迫るのが究極の目的だ。

 

 しかし、

「少し、付き合ってほしい。この世界の団長のことを聞きたい」

 マリカの言葉と、神将器の存在、そして一度は助けたイシュメアを放っておけないという善性によって、ルキナはここは彼に従うことにした。

 

 

 

 

 破壊の限りを尽くされた砦だったが、地下やいくつかの部屋は雨風をしのぐのに十分な部屋がある。

 

 ケセルダの命令によって男の部下たちは死体の掃除をやらされた。

 

「そもそも俺は傭兵だ。魔物だらけになって1人で生きてくには厳しい世の中になったときに、いち早くはぐれ者の同胞を集めた。俺がどこかの国の王になってお前らを食わせてやるからついてこいってな」

 

「つまりあなたは山賊というわけではないのですね」

 

「ああ、俺も傭兵だ。まあ、人並みじゃねえ野望を持ってるって意味だと特別だって、傭兵仲間には言われてたがな」

 

 それなりに綺麗なまま残った部屋を『ここを今日の俺の寝床にするか』と話し、座り心地がよさそうな椅子に腰かけると、近くにイシュメアを侍らせる。

 

 野蛮な男が気軽に腰に手を据えるせいで少し気持ち悪そうにはしていたものの、イシュメアは何も言わなかった。

 

「俺の目的は1つだ。俺は王になる。ちょうどこの女も手に入ったしな。あとはジャハナ王宮を取り戻せば、俺が王として君臨できる」

 

 ルキナは目の前の男の正気を疑った。

 

「こんな世の中で、そのような願望を持つなど愚かな。皆で手を取り魔王の脅威に立ち向かうのがあるべき姿ではないのですか」

 

 地面に腰を落としケセルダを不満そうに見るユアンの頭をなでているもう1人の女性が冷ややかな笑みでこの男を評した。

 

「無駄よ。この男は止まらない。そういう男だもの」

 

「そういう男に救われて、俺の妾になるから妹ともども助けてってすがったんだろう? なら、ご主人様のことは悪く言うもんじゃねえ」

 

「はいはい」

 

「ったく可愛げがねえな。妹ともども態度なおしとけ。俺が王になった後の楽しみなんだからな。お前らを食って自分のものだと見せびらかすのは」

 

 マリカが不機嫌だ。ルキナも同じ表情をしている。一方でレーヴァテインは向けられている感情が良いモノでないことは判断がつかない。

 

「王宮はルネスの連中に掌握されてるだろう。俺が確実に玉座に至るにはできるかぎり力はあった方がいい。お前らにも付き合ってほしい」

 

「その代わり、彼女とその魔導書は」

 

「イシュメアは渡せないな。俺の妻だ。だがこの魔導書は好きにしろ。これがあればいい方向に動くだろう。どうせここにはこのレベルの魔法をうまく使える奴がいない」

 

「使えるかもしれないよ。挑戦したい」

 

「ユアン。お前には無理だ。さすがの俺にもわかるぞ。お前の師匠とやらがいれば話は別だったかもしれんがな」

 

 魔導書を見せびらかすケセルダにマリカが尋ねる。

 

「気に入らない。お前が約束を守る男とは思えない」

 

 ズバッと一言。機嫌を損ねるかと思いきや、

「宝ならともかく武器は使える奴がもってこそだ。今みたいな暴力の時代はそれでこそ価値がある。俺もこんなくそったれな魔物さっさと消えてくれた方がいいからな。そのために必要な我慢ならするさ。心配無用といっておくぜ?」

 と冷静に返答する。

 

「まあ夜までに結論を出しておけ。焦るまでもなくこの後にやることは変わらないからな。だがこの砦から勝手に外に出たら今度は全力でお前らをこそしに行くぞ」

 

 テティスにルキナ達の世話を命じ、イシュメアを連れて部屋を後にしてしまった。

 

「ご愁傷様、というべきかしら。お互いあの男に付き合わされる者同士、少し話をしない」

 

 テティスの誘いにこの後どうするか等まったく見えていなかったルキナ達は付き合うことになった。

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