新たな一歩   作:ぴんころ

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デバイスと魔導師と

 ユーリが受けるデバイスマイスターとしての資格試験も近くにあるので、その合否が発覚するまでの間は地球に留まることになっている五人。彼らがエルトリアを離れてから二日目、その日は地球で過ごすことになっていた。

 

「初めまして、高町なのはです」

 

「初めまして、ウェル・ハーベストです」

 

 がっしりと握手する二人。茶髪の少女なのはとウェルは「初めまして」なので、挨拶を最初に行うことになった。

 

「八神から聞いてるかわからないけど、俺と高町さんは同い年らしいし、敬語は別にいいよ」

 

「うん、ありがとう」

 

 朝はディアーチェ達から『昨晩は何かあったのか』と問い詰められて『何も起こさなかった』と返せば理不尽に怒られたことでウェルは少々疲れていたが、なのはの笑顔で癒されていた。その後ろでユーリは少し面白くなさそうな顔をしているが、好きではあっても想いを伝えたわけではなく、付き合っているわけでもないユーリに何か言うことなどできるはずもなく、ただ面白くなさそうな表情をするに止まるのだった。

 

(あれって、ユーリちゃん。多分ウェル君のこと好きなパターンだよね……)

 

 的確に状況を判断するなのはは、今どこまで二人の関係が進んでいるのかわからない上、特に恋愛経験があるわけでもないので何をすればいいのかわからない。

 

(それにしてもシュテルにそっくり……ああ、いや違うか。高町さん”が”そっくりなんじゃなくて、シュテルがそっくりなのか)

 

 そしてそんなことを考えているなど知らないウェルは、先のはやてと会った時にも感じていた、知り合いとそっくりなことへの驚きを今回も覚えていた。

 

「それで、今日はどうするの? 海鳴を案内してほしいって話だけど、どこか行ってみたいってところある?」

 

「うむ。我らは海鳴は初めてではないが、此奴だけは初めてだからな。まずはウェルの行きたいところ、と言うことで話がついておる」

 

「そうなの? なら、ウェル君の行きたいところにするけど……」

 

 リクエストは、と尋ねるなのはにウェルは一度頷いて行きたい場所を告げる。

 

「かつてここで起きた事件で、ユーリ達が関わった場所に行ってみたい」

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 ウェルの言葉から始まった海鳴巡りも、そこまで数が多くないと言うことに比例して、多くの時間を取られることなく順調に昼前には終わりを告げていた。

 

「もぐもぐ、あー、おいしー!」

 

「ほら、レヴィ。溢してますよ。……それにしても美味しいですね」

 

「うむ、あとでレシピを聞かせてもらいたいところだな」

 

 そのため、今は昼食をとるためになのはの実家、喫茶『翠屋』にやってきていた。

 

「本当に美味しいですね、ウェル」

 

「ああ、高町さんの家ってすごいんだな……」

 

 少々呆然とするウェルの視線が向けられているのは、なのはの兄と父親。戦闘を生業とするわけではないウェルだが、彼らの強さというか異常性は地味に感じていた。戦ったら五秒も保たないだろうと確信を持って言える程度には強いのだろうと思っていた。空から一方的に撃っていても倒しきれるとは思えていなかった。

 

「もう、ウェル。何考えてるのかわかりませんが、せっかくのご飯なんです。ちゃんと味わって食べましょう?」

 

 私、怒ってますと言うような表情のユーリにごめんごめんと謝り、ウェルも食事に集中する。その光景を見てなのははディアーチェ達(元三匹の猫)に小声で問いかけた。

 

「ねぇ、三人とも。あの二人って付き合ってるの?」

 

「いや、我らの知る限りではあの二人は付き合っておらんはずだ」

 

「ユーリはウェルのことが好きなようなので、その手伝いはしていますが」

 

「ウェルもユーリのこと好きだと思うんだけどなぁ……」

 

 だが、結局のところ外野でしかない四人には何もしようがない。せいぜい、告白する勇気をこっそりとあげる程度だが、そもそも告白しようとしていない二人では勇気があっても意味がない。

 

「ほら、ウェル。あーん」

 

「え、ちょ、ユーリ!?」

 

 二人とも顔を真っ赤にしながらも食べさせあいをしている光景を見て、本当に応援する必要があるのか疑問に思ったりしたが。

 

(ちょっと、誰か助けて!?)

 

 横目で見てきたことで大体の言いたいことを察したなのはがそこに割り込んでいったりもした。

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 そうして過ぎていく時間。

 

 日が進み試験当日、ユーリが試験を受けている間に何もしていないのは落ち着かないからとシュテルやレヴィがオリジナルとなる人物と対戦したり、ディアーチェがはやてと共に無限書庫に行っている間、ウェルは一人、貸し出されたデバイスと共に、魔法を使う感覚に慣れることと、魔法適性を確かめることの二つを同時に行っていた。

 

『次、魔力弾』

 

「シューター」

 

 その言葉に持っていた杖が反応し、シュテルが使っているものとは色も数も違うが、同じ形式の魔法が発動した。シュテルは一瞬で十二個展開していたが、ウェルは六個。適性があるのかないのか、微妙に判断に困るところであった。

 

『次、収束砲撃』

 

「バスター」

 

 スタッフの言葉に従い、現れた的に対して砲撃を放つ。ウェルの知る魔導師はシュテル、レヴィ、ディアーチェ、ユーリの四名だけ。つまり基準はその四人なのだ。だから、ウェルはそこまで自分の才能には期待していなかった。

 

『うん、そこまで。一旦戻ってきて』

 

「はい、わかりました」

 

 そうしてウェルが戻ると、おそらくは検査結果が書かれているらしき紙を持ったスタッフがそこにいた。

 

「貴方の適性は──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでそれで! どうだったの?」

 

「俺の適性? 俺にできるのは攻撃だけらしい。プロテクションとかバインドとか加速とか、そういうのには適性が全くないって言われたよ」

 

 レヴィが身を乗り出して聞いてきたのでウェルは答えたのだが、試験を終えて戻ってきてそれを聞いたユーリは、何か考え込むようにしていたのだった。

 

「攻撃しかできないなら、それ以外をデバイスの方でフォローして──」

 

「ユーリ?」

 

 しかし、その言葉に対する返事はなかった。

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

「あれが魔導師同士の戦いってやつかー」

 

 さらに翌日、前日の模擬戦はシュテルの敗北で終わったらしく、その再戦に燃えたシュテルによってなのはに仕事が入っていない翌日にも模擬戦が入ることになった。結果として、これまでは予定が合わなかったせいで一度たりとも見ることができなかったウェルが、ついに模擬戦を見ることができていた。

 

 モニターの先、模擬戦のフィールドではなのはの桃色のシューターとシュテルの緋色のシューターが駆け巡り、それらをひらりと躱し、時にはプロテクションで防ぎながら、二人は空を舞う。

 

 戦闘スタイルはシュテルがなのはを基にしていることもあり、二人はとても似通っている。だが、シュテルにはなのはにはない近接用の武装もついていて、そちらの習熟に割いた時間もある。その間もなのはは砲撃を極めていたことを考えれば、総合力で差があるとは考えづらい。

 

「さすがにあんなに派手な戦いはなかなかないですけどね。……今の所は、事件の時の戦いも含めて三戦中、なのはが二回勝ってるらしいですから、今日勝って勝率をイーブンに戻すつもりなんじゃないでしょうか?」

 

「……勝率がどうこうっていうよりも単純に負けたくないから勝つって感じがするけど」

 

 ウェルの横に座る髪の色以外はレヴィと瓜二つな少女、フェイトの言葉にそう返しながらも画面から視線は逸らさない。

 

 シュテルとなのはがブラストファイアーとディバインバスターをぶつけ合い、残留魔力が高まっていく。爆発により視界が遮られたタイミングでシュテルが接近しブラストクロウで殴打する。吹き飛んだなのはをルベライトで拘束し、その隙にシュテルは残留魔力を収束していく。

 

「疾れ、緋星。全てを焼き消す炎と変われ」

 

 シュテルのバインドの強固さはウェルも知っているが、なのははウェルよりも早くバインドを解除してシュテルと同じように魔力を収束していく。

 

「真・ルシフェリオン──」

 

「スターライト──」

 

 完成タイミングはわずかにシュテルの方が先。けれど発射がわずかに遅れた程度で、チャージ時間そのものには差はない。

 

「「ブレイカー!!」」

 

 二つのブレイカーによって、先ほどの砲撃のぶつかりあいをはるかに超える魔力が撒き散らされた。威力は互角。故にそれらが決め手となることはなく、けれどシュテルが少し早くチャージしていたことでぶつかり合った地点は、シュテルとなのはの間、わずかになのは側。煙に巻き込まれたなのははシュテルが動いたとしても位置を把握することは不可能で、シュテルはその隙にさらに魔力をチャージする。

 

「ディザスターヒート!」

 

 三連撃で打ち込まれるブラストファイアーは、数日前の模擬戦のものよりもはるかに大きい。煙の中のどこに隠れていようとも煙ごと吹き飛ばしてしまえば関係ないと言わんばかりに突き進む緋色の砲撃が終わった後には、気絶したなのはが落ちていった。

 

「勝ちました」

 

 ピースサインをカメラに向けて、無表情ながらもどこか満足したような表情のシュテルがそんな言葉を吐いた直後、模擬戦の終わりを告げる音が仮想戦闘空間に鳴り響いた。

 

 

 

 

「うー、悔しいなぁ。ねぇ、シュテル。明日も模擬戦しよう?」

 

「ええ、今度は私が勝ち越させてもらいます」

 

(この二人、実は戦闘狂なのでは……?)

 

 戻ってきた二人がそんな会話をしているのを聞き、ウェルはひとりごちる。しかし誰もそのことにはツッコミを入れないため、これが魔導師の普通かと勘違いしてそのまま話を進めることにした。

 

「それで、次はテスタロッサさんとレヴィだよな?」

 

「あ、うん。それじゃ行こっか、レヴィ」

 

「まけないぞー!」

 

「私だって!」

 

(高町さんもテスタロッサさんもそうだし、シュテル達もそうだけど、もしかして魔導師になると皆戦闘狂になるんだろうか?)

 

 戦意を昂らせながら戦闘用のシミュレーターに向かう二人を見送って、一人ウェルは考えるのだった。

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

「だいたいこんな感じでしょうか?」

 

 フェイトとレヴィの模擬戦がフェイトが一瞬の隙をついて勝利した日の夜。誰もが疲れから眠っている中、ユーリは一人部屋の中でホロウィンドウを展開して考え事をしていた。

 

 ホロウィンドウに映っているのはデバイスの設計図。ユーリが今から作る、たった一人の少年のためだけのデバイスが、そこには映っていた。

 

「まあ、まだ作ることはできないんですけどね」

 

 そう、未だにデバイスマイスターの試験の結果が出ていない以上は、ユーリには設計図を書くことや案を出すことはできても作ることはできない。少年の戦い方に合わせたデバイスを作るために彼の戦い方をよく知るユーリが最低限の構想だけを作り、設計などはベテランのデバイスマイスターに任せることもできないわけではなかったが、これだけは譲れないとユーリは頑として任せることはなかった。

 

「早く作りたいです」

 

 設計のチェックをしながらもつい漏れてしまったその言葉を聞く者はいなかった。





クッソどうでもいい初期設定にはウェル君の父親がマクスウェル所長という案もあった。あの所長が結婚してるイメージ湧かなかったので消えたけど。名前がウェルなのはその名残。(マクス)ウェルだからね。
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