ダンガンロンパAS   作:依典

5 / 5
松田くんや神代くんは登場させないとして、2のキャラは出すべきですかね……。出せば楽しいでしょうけど、今後の展開に大きく影響しそうで真剣に悩んでたりするのですが……。


Chapter5【絶望的焦燥】

 放課後の教室にはクラスメイト全員が輪になるように集まり、学園祭の去就について話し合っていた。

 朝日奈葵と大神さくらはドーナツの出店を、〈超高校級の暴走族〉大和田紋土と石丸清多夏は、宣言通り〈ワタヤキソバ〉という名の汚物もとい新料理の出店を出すことが決定したが、現段階ではそれ以外に具体的なことは決まっていないのだ。

 

 「やっぱり、重要なのはステージイベントだよね。ボクは無難にコンサートとかが良いと思うんだ」

 

 と、苗木誠は切り出す。その意見に、その場にいた全員が頷き顔を見合わせる。彼の言うとおり、ステージイベントは学園祭最大のイベントといっても過言ではない。コンサート案は妥当だろう。

 本来であれば学徒のコンサートなど期待に乏しいイベントなのだが、この希望ヶ峰学園に限ってはそうではない。誰もが考えている答の口火を切ったのは〈超高校級の御曹司〉、十神白夜だった。

 

 「そんなもの、任せられるのは一人しかいないだろう」

 

 もっともな十神の言葉に、全員の視線が〈超高校級のアイドル〉、舞園さやかへと集まる。全国を熱狂させる彼女ならば、華々しいステージイベントを飾れるだろう、と。そんな期待のこもった眼差しが彼女に集中する。プレッシャーには慣れているのだろう、舞園さやかは笑顔で答えるのだった。

 

 「私で良いのなら喜んで協力しますよ!」

 

 「決まりだな。安心しろ、機材なら十神財閥が最高のものを提供してやる」

 

 そう、謳うように軽々しく放つこの一言こそが、十神白夜そのものを体現していた。事実、彼一人の存在によって、今年の学園祭の規模は段違いに拡大した。小国をも上回る影響力と資産を誇る十神財閥の、精選された一人の御曹司こそが彼なのだ。財政面という唯一の不安要素の排除に、その場の全員が安堵の息を零す。

 少しの沈黙を挟んで、皆の浮かれた調子を引き締めるかの如く〈超高校級の探偵〉である霧切響子が話をまとめる。

 

 「ステージイベントはそれで決定ね。他にやりたいことが決まっている人は?」

 

 「もちろん俺は占いの館だべ! 学園祭当日に限り、一回八万円の特別価格で占ってやる!」

 

 早速手を挙げた〈超高校級の占い師〉、葉隠康比呂の提案には誰も反対が無かった。正しく言うならば、自分から隔離されに行く不安要素を、誰にも引き止める理由が無かった。そもそも的中率三割の占いに八万円を払う人間が、一体どこにいようか。誰もが抱く疑念とは裏腹に、彼の双瞳は眩いばかりの自信に満ち溢れている。

 

 「俺はバンドで演奏するぞ! この際舞園ちゃんの前座でも何でもいい!」

 

 「はいはい、どうせメンバーすら集まってないんでしょ。却下だからね」

 

  続いて名乗りを上げたのは〈超高校級の野球選手〉である桑田怜恩だったが、彼のバンド演奏という提案は余りにも容易に崩れ去った。朝日奈の指摘したように、彼の計画は未熟すぎた。演奏曲どころか、そもそもメンバーすら決定していなかったのだ。肩を落とす桑田の隣では、〈超高校級の同人作家〉山田一二三が鼻息を荒げている。

 

 「もちろん拙者は同人誌即売会を開きますぞ! 今はカップルの組み合わせを検討中で……フ、フヒヒ」

 

 突如として奇怪な薄笑いを浮かべる山田に、蔑みの視線が集中する。そんな光景を更に蔑む江ノ島盾子は、その細く白い手を高く挙げるのだった。

 

 「あー、あたしは内緒ね。サプライズなんて素敵じゃない?」

 

 結果から言えば、彼女の意見は辛うじて受け入れられた。少なからず反対する意見もあった。しかし、級友達は〈超高校級のギャル〉、江ノ島盾子の押しに負けた。彼女のサプライズイベントを認可したのだ。後に自身の首を締めることになるとは知らずに。

 

 「私は教室にお店を開いて、本格的な紅茶を提供致しますわ」

 

 「あら、奇遇ね。私も拘りのコーヒーで勝負しようと思ってたのよ」

 

 続いて、〈超高校級のギャンブラー〉、セレスティア・ルーデンベルクは紅茶の、霧切響子はコーヒーの販売を提案した。瞬間、私は場の空気が自明に変わるのを察知した。先ほどまでとは明らかな懸隔……空間の密度が急激な上昇を私は感じたのだった。

 瞬時に訪れる沈黙の只中に、二人による激しい睨み合いが展開される。こんな時に、決まって私は江ノ島盾子の顔を視界に入れてしまう。予想した通り、彼女の口角は不自然な程に吊り上がっていた。突然の緊迫感に一同が狼狽する中、江ノ島盾子は笑っていたのだ。

 

 なぜだろう。彼女の笑顔は私にとっての悦びとなっていた。絶望や希望になど、私は何の感興も抱いていないのだ。それでも、彼女が笑うならば、私は絶望へと身を堕とすことを躊躇わない。彼女の笑顔の為ならば、私は喜んでその命を捧げるだろう。

 

 緊張感の中、〈超高校級のプログラマー〉不二咲千尋は提案する。

 

 「だったら二人で喫茶店とか、良いんじゃないかな」

 

 「なるほど……それは良い案ですわね。できれば、不二咲さんにも協力して頂きたいのですが」

 

 そう言って不二咲へ訊ね返す彼女は、すでに普段のセレスティア・ルーデンベルクだった。その表情はまさに無。先ほどの刺々しく尖った眼光の面影は跡形も無く消えている。

 

 「えっ、と……ボクでよければ、お手伝いしたいなぁ。えへへ」

 

 不二咲は嬉々として提案を受け入れる。無駄に争うよりは協力する方が遥かに効率的ね、と霧切響子もそれに同意したことで、売上がかなり期待されるカフェ計画が始動したのだった。

 

 こうして学園祭の計画は着々と進行しつつあった。朝に抱いた不安はどこへやら、気付けば楽しげなイベントも出揃っていた。他方私はといえば、またもや会話に馴染めずにいた。何も提案しようとしない私に、江ノ島盾子からの蔑みの視線が容赦なく突き刺さる。しかし、本当に問題なのはそこではない。愉しげなクラスの雰囲気とは対照的に、私は焦燥感に駆られていた。私自身、学園祭に対して何も計画していなかったのだ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。