当然のようにキャラを貶していくようなスタイルですがツンデレ的な属性だと思って許してください。
主人公の性格上、本当の意味での悪意や害意はなくてもどうしても言い方がキツめになってしまうのでアンチ・ヘイトのタグをつけています、苦手な方は本当にすみません。
冷水シャワーで凛が絶叫した夜も昨日のこと。
黒川家不在のため──まあそもそも凛が鍵を持たなかったのが悪いのだが──凛が泊まった翌朝。
俺の方が起きるのが遅いという理由で洗面台を占有され、朝食は若干手をつけられ、勝手に整髪料を使われる始末。最後に至っては許可も取っていなかった。
そりゃ誰でもキレるだろ…?
「というわけだクソが」
「ヴぉッ!?!?」
悠々と髪を整えるクソをガラ空きの脇腹への一撃で落とし、俺は身支度を済ませて家を出た。
整髪料なんてそんなに使わないけどな、所有者は一応俺なのだ。
ヘッドホンを装着していると落ち着く、と言ったらオタクだと返された中学の頃が懐かしいな、などと考えながら歩いていると、例によって凛が追いついてきたので不本意ではあるが本当に仕方なくヘッドホンを外す。
「…お前少しは遠慮とか常識とか身につけたらどうだ」
「いいじゃん、俺と結羽の仲だしさ」
「間違ってもお前が言う台詞じゃねえだろ…」
逆のことを俺がしたらギャーギャー騒ぐくせに何を言っている。飯を横取りしようものなら飯を必要以上に奪い返される上にうるさくなるからな…いや自分がやられて嫌なら他人にやるんじゃねえよアホが。
「ところで朝のニュース見た?」
「…ああ、また黒川凛昆虫説が提唱されていたな」
「そうそうそんな説が──ないからな!?またって言ったけど一度もないからな!!」
「朝からうるさいからなほんとにお前は」
冗談でも何でも朝からうるさいのは嫌だな、と心底思う。朝が苦手なのを知っているなら少しくらい考慮しろ。
「で?何のニュースがやってたって?」
「ああ、トビQのお化け屋敷がリニューアルするんだってさ。だからその前に一回行ってみたいと思って」
死ぬほどどうでもよかった。
トビQとは…国民的な遊園地の一つで、正式にはトビQアイランドという。
角度のおかしいトンデモコースターやら殺人級フリーフォールやら最恐且つ最凶のお化け屋敷やらが
「そうか。行ってこい」
「いや誘ってるんだよ」
「暗に断っているのが分からないのか?」
行きたいとは思えないから当然断る。
他に誘う奴なんていくらでもいるだろうに。
「そもそも俺じゃなくてもいいだろ。つーかその前に目の前の現実見ろ、赤点と追いかけっこしてるんだからな」
「それは言わないでほしかった…まあほら夏休みにでもさ。休暇終わったあたりで改装とか始まるっぽいし」
「そうだな」
適当に返事をしてさっさと歩く。
おしゃべりをして楽しそうに歩くなんていうのは俺には向いてないというのが正直な感想なのでここ数年凛とはこんな感じである。
大抵凛が話したことに適当な相槌を打ったりするようなもので、話が弾んだことはない。いや、私見では凛は弾んでいると思っていそうではあるのだが、それは思い込みに過ぎない。
「…ん」
ふとしたタイミングで制服のズボンのポケットに入っていたスマホが震える。変なメールの通知は来ないしメッセージアプリと電話くらいしかスマホが振動することはないはずだが…
「…忘れ物でもしたか?」
電話ではなくメッセージアプリ。俗に言うLlNE…ラインである。
いやまあ本当にメタ発言でアレなのだが、アルファベット表記はiをLの小文字で表すことにする。色々思うところがあるので許していただきたい。
「マジか…」
「どした?忘れ物?」
「いや」
凛と同じ思考回路だったのが本当に遺憾で仕方がないのだが、俺達は揃いも揃ってメッセージの送り主の予想を外す。
「はぁ…いっそ教員でも目指してみるか?」
送り主は、羽沢だった。
『おはようございます!朝からすみません。今日の放課後、Afterglowのみんなと勉強会があるんです。でも今日はモカちゃんがバイトで参加出来なくて…この前教えてもらった時、とても分かりやすかったので、今日も来ていただけませんか?』
「…よし断るか」
そもそも青葉の奴、テスト前にバイト入れるなよ…そりゃ優秀なのは知っているが。
というか羽沢、朝からすみません、だと…?凛よりもよく分かっているではないか。
「やれやれ、どこかの虫とは違うな」
「…あのさ、結羽。冗談で言ったかもしれないけどさ。教員とか目指してみてもいいんじゃない?そんな真剣に考えないであくまで進路の一つとして」
「…いやどう考えても向いてねえよ…しかも知り合いに勉強教えるのと学校で教鞭を執るのは月とすっぽんだろ」
「いや〜それはわからないでしょ。まあ結羽がいつも言ってるように俺は結羽じゃないから強くは言えないけど」
それでも一つの可能性ではあるから、と凛は締め括った…はずだった。
「結羽、今俺いいこと言ったよね!?褒めちぎってほら!!!」
「…それがなきゃ多少はマトモに見えるんだがな」
こういうところがバカなんだよな、と思いながら羽沢に返信を打つ。
将来のこととか何も考えていなかったが、そろそろ決めなきゃいけないこともあるんだろうな…そんなに真剣に考えるほど人間として出来てはいないが、クソニートじゃあ親に顔が立たないどころか勘当される可能性もある。親の脛
そうなれば自然と少しは将来を見据えた進路選択をしていかなければならない、となれば先の凛の言葉は心に留めておく意味があるのだろう。
「…まあ唸ってても仕方がないな」
ひとまず今はその可能性を覗きに行ってみることにする。俺に合わなければ縁がなかった可能性だというだけの話だ、と思えば幾分気が楽ではあるな。
『分かった、場所と時間の指定を頼む』
「…あのなぁ」
時は移り昼休み。
午前の授業を乗り切り、力を抜き矛盾しつつも全力で休みを謳歌する時間。授業がつまらないとは言わない、学生(この場合は就学者全員を含む)の大義には勉強、学習があるはずだろうし、理解している分最低限その大義は果たしてはいる。
まあつまり一応勉強したからその分休ませろと。
言っているのだが。
「木崎せんぱ〜い!!お昼ご飯食べましょ〜!!」
ドアでバカデカい声を出しているのは断じて俺の知り合いではない。普通に探せよ。それか近くの奴に在不在を聞け。そんな常識のない人間、俺の知り合いには…
『ユウく〜ん!あっはははおもしろ〜い!!』
『結羽〜!!俺と飯が食べたいか〜!?!?』
『ふふふ、結羽は今日も儚いね…』
「…思い当たる節がありすぎるな」
羽丘に入ってから格段に増えた俺の周りの変人達。
昔は黒川凛こと昆虫だけだったはずだが今や『るんっとくる女』『儚い演劇部』『昆虫』加えるなら『妖怪・口軽ギャル』など、様々ではあるものの常識が通じなかったり、ヤバい奴だったり、最早
正直キツい。
そんなところで現実に目を向けてみよう。
「あ!いた!失礼しま〜す、木崎せんぱ〜い!」
「あ、いた、じゃねえよ」
見るからに頭のおかしい女が一人。前にも会ったことある、まあそりゃそうだ、羽沢に引っ付いてたピンク色の奴だ。
「何だっけお前。ヒマワリだっけ名前」
「上原ひまりですよ〜もう!わざと間違えないでください!」
「いやわざとじゃないんだが?」
植物頭とか頭植物で覚えてたからか知らんが、ヒマリって周りが言ってるのが無意識にヒマワリに変換されていたのかもな。
クソくだらないなオイ。
「お前もっと大人しくしやがれ。マジで。俺が変な目で見られるの分かってんのか」
「大丈夫だよひまりちゃん!ユウくんはいつもそうだから!」
「あ、日菜先輩、そうなんですか?じゃあ大丈夫ですね!」
何も大丈夫じゃねえだろうがよ…
変な目で見られてはいない、主に凛のせいだしな。周りの奴は見るどころか眼中にねえって感じだろ。
「唐突に出てきて何言ってんだ氷川てめえは」
「あたしはユウくんの取扱説明書だから!何でも聞いてね!」
Vサインを上原に見せつける氷川にふざけんな、とチョップをかます。ユウくんがぶった〜、と氷川は今井の元へ向かった、どうやらそのまま昼食を共にするらしい。その食事風景はいつも教室で見られるので別に珍しくもないが。
「で?上原とやら、要件は何だ」
凛が腹痛でトイレに篭っている内に済ませていただきたいものであるが果たして…
「一緒にご飯食べませんか?」
「断る」
「なんでですか〜」
ブウブウとブタのように駄々を
めんどくせえ…
「今日勉強教えてくれるってつぐから聞いたんですよ!せっかくだしこの前のことも謝るついでに親睦を深めたいな〜なんて」
「いや反省してないだろさっきのお前見りゃ分かるが」
「それはごめんなさい!でもとにかく屋上に来てください!」
「うるせえよ…行けばいいんだろうが…」
もう何かアレだ、奴隷になった感じがする。
この空気に耐えられないし折れて成り行きに任せてしまおうかと思うくらい苦痛である。抵抗を試みても
「ところで先輩、結羽先輩って呼んでもいいですか?」
「…好きにしろ」
ふと上原が呼び方の話を振ってきた。
どうせ拒否権はない、それに拒否すればなんで?と突っ込んでくるに違いない、それが面倒過ぎるから全力でイエスマンをキメていくことにしたのだ。
「じゃあ私のことも名前で呼んでくださいね!ヒマワリじゃなくてひまりですから。覚えてくださいね、結羽先輩?」
「……ひまり。お前ほんとだるいな」
思えば女子を名前で呼ぶ時は口に出しても出さなくても、大抵苗字でしか呼ばないな。…いや、男子を含めたら凛以外とも言うか。
今井、氷川、瀬田、青葉、羽沢、美竹、筑紫、桜葉、小野、仁礼…女子に限ってもまだまだいるが、確かに名前で呼んだのは上原ひまりで久しぶりになるのか。
「先輩容赦ないですよね。私結構乙女ですからね?グサグサきてますよ」
「自称も大概にしとけ」
面倒臭そうな雰囲気(と性格)は乙女というより女子学生って感じがあるな。偏見ではない、一応経験に基づいているのでな。
そんなこんなで結局屋上の扉を開ける俺とひまりであった。
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〜2-A教室にて〜
「木崎くんってさ、去年に比べて丸くなったよね」
「そうだね〜、同じクラスだったからわかるけど去年の彼だったら意地でもついて行かないね。もっと言葉もキツいと思う」
「何かあったのかな?黒川くんとかさ」
「かもね。木崎くんのこと、最初怖い人だと思った」
「わかる〜!でもこうやって見てるとそんなことなさそうだし。杞憂だったかな、ユウだけに」
「…また冬に逆戻りかな、寒いね」
「ユウくんおもしろいよねりさちー」
「結羽ね〜、まあ悪い人じゃないだろうなとは思ってたよ。去年から凛と何だかんだいい感じだったじゃん?」
「それもそうだけどね〜、やっぱりツンデレ?みたいなところが変でおもしろくてさ〜!」
「あはは、アタシが言ったらヤバいことをヒナは言えるからすごいよね」
「思ったことは言うもんでしょ〜?りさちー変だよ」
「そうかもだけどね、言える人と言えない人がいるのも事実なんだよ。ヒナと違う人もきっといるんだよ」
「へー、そうなんだね〜。あ、聞いてよりさちー!さっきリンくんがね──」
「──へっくしゅん!!人がトイレにいる間に噂をされてるってやだなぁ…お腹痛い…」
ヒロイン変わった?そんなことないですよね?
ひまりちゃんのフレンドリーな感じを出したくて彼女のメンタルをぼこぼこにしてしまいましたが、名前呼びによって結局丸く収まったと思ってます、ひまりちゃん推しの方本当にごめんなさい(;_;)
次回は屋上からスタートします。飛び降りじゃないです。