笑顔にするアイドル、笑顔を取り戻すヒーロー   作:banjo-da

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Q 回想シーン、なんでソルティのゲーム病なんですか?

A ???「ポテトにしょっぱさは付き物だろう?」


huntingを開始せよ

始まりは最悪だった。

 

…あ、永夢先生は何も悪く無いよ?ただ、あの頃の私は、ちょっと荒んでたというか…。

凛や奈緒とユニットを組む前。漸く長い入院生活から解放されて少しした頃、私はアイドルとしてスカウトされた。憧れのアイドルになれるって期待は有るものの、『こんな私じゃ』って想いも抜けきれなくて…その時はプロデューサーに返事を待ってもらってた。

 

そんな時に永夢先生と出会ったんだ。

 

 

 

 

 

 

「はい、それじゃ薬を出しておきますね。朝と夜、ご飯の後に服用して下さい。」

 

「ありがとうございました。」

 

その日私は、掛かり付けの何時もの病院じゃなくて、少し離れた聖都大学附属病院に居た。偶々何時もの病院がお休みだったからね。

その日は朝からちょっと体調が優れなくて、念の為に診てもらおうと思ったの。退院直後って事もあって嫌な予感がしたんだ。

不安だったけど、結果は大した事無くて安心した。

 

─────でも、直ぐにその嫌な予感は的中する事になる。

 

 

「それじゃ… ────ッ!?」

 

急に苦しくなる私の身体。さっきまでの不調なんて可愛く感じる程の苦痛に、思わず胸を抑えてその場に倒れ込む。

 

「北条さん!?どうしたんですか!?」

 

慌てて私の傍へと駆け寄る永夢先生。

私が自分の手が少し透けているのを目にしたのと、そんな私を見て先生が息を飲むのは同じタイミングだった。

 

───── その直後。自分の身体から『何か』が大量に飛び出すのを目にしながら、私は意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゲーム病…?最近、ニュースでやってたアレの事…?」

 

「はい。北条さんは今、ソルティのバグスターウィルスに感染しています。」

 

その後私は、先程の病室とは違う、何処か秘密基地めいた病室で目を覚ました。(後で知ったけど、そこがCRだった。)

私は毎日欠かさずニュースを見てる様な真面目な子じゃないけど、最近話題のその病の事は知っていた。

衛生省って所が発表したその病気は、バグスターウィルスってウィルスに感染すると、最後は消滅する危険も有る…そんな怖い病気。

ソルティってのが何なのかは全然分からなかったけど、そんな事どうでも良い。そんな思いで胸が一杯で、先生の話も全然頭に入って来なかった。

 

「……また入院かぁ…。そうだよね、私はやっぱりそうなんだ…。」

 

諦め、不貞腐れた様に独り言を呟けば、自嘲気味に笑いながら永夢先生に背を向ける。

 

「北条さん…?」

 

「もうほっといて。…良いよ、どうなったって。結局私は、何処まで行ってもそうなんだから。」

 

「…!?な、何言ってるんです…ダメだよ、そんな投げやりになっちゃ!大丈夫、僕が必ず君を治すから!」

 

慌てた様子の永夢先生。その口調や声音からは、自分の損得一切抜きに私の事を心配してくれてるのが伝わって来る───── でも、その時の私は、それが却って煩わしくて、苛立ってしまった。

 

「………何が大丈夫なの?先生、私の事何も知らないクセに。」

 

そこからの私は、今思い出しても恥ずかしくなる程に酷かったなぁ…。誰が悪いワケでも無い、そんなやるせない苛立ちに身を任せて、一気に不満を永夢先生にぶつけちゃった。

 

幼い頃から身体が弱く、入院や通院を繰り返して生きてきた事。

そのせいで自分の人生に何の希望も持てなくなっていた事。

けれど、やっと人並みまでには近付けた事。

そして、ずっと憧れていた存在(アイドル)に成れるチャンスが巡ってきて、人生に希望が持てそうだった事。

───── その矢先、今度は消滅すら有り得る難病に掛かってしまった事。

ゲーム病の苦痛すら無視して、全てを吐き出した。

 

「…やっぱりね。もうどうでも良い。結局私はこういう運命の元に生まれたんだよ。私はアイドルなんて、お姫様みたいにキラキラした存在にはなれないし、それ以前に普通に生きるのだって難しい。…なんて、少し茶化してみたけど、正直本当に嫌になるよ…だから何も期待しない。先生、私の事はほっといて。」

 

一気に全てを吐き出した後、私は先生から顔を逸らし拒絶の意を示す。

普通なら、ここで困惑するか、耳障りの良い言葉を言うか、『頑張れ』って無責任に励ますと思う。

けど永夢先生は違った。

 

 

「………嘘、ですよね?どうでも良い、なんて本当は思ってないんでしょう?生きたいし、夢だって叶えたい。違いますか?」

 

「──── ッ!知った様な事…」

 

「だって、北条さん……泣いてるじゃないですか。」

 

永夢先生の言葉で、漸く私は自分の頬を伝う涙に気付く。

 

「…僕は今まで、本当に『どうでも良い』って絶望した人も見てきました。けど、北条さんは違う。その涙は…未練、後悔…絶望しそうな程に傷付いてなお、眩い希望を求めてる証です。

──────── どんなに苦しくても、それを失わなければ…君は前に進める。」

 

「勝手な事言わないでよ…私、ずっと人生ドン詰まりだったんだよ…?」

 

声を震わせながら、弱々しく永夢先生に言い返す。……ううん。今思えば、先生に言い返したってより。

病気を理由に、自信の無さから逃げてた自分への言い訳だったのかも。

 

「でも、それでもアイドルに─────皆に希望を与える、キラキラした存在に憧れた。どんなにドン詰まりな人生でも、夢を捨てられなかった。…違いますか?」

 

けれど、先生の声は優しかった。自然と涙が溢れて、止まらなくなった。

 

「………先生。やっぱり…私、死にたくない。こんな事なら、自信が無くても、ちゃんと夢への一歩を踏み出せば良かった。…私、生きたい。アイドルになりたい…。」

 

先生は、私の正面へ回り込むと、ゆっくり腰を屈めて視線を合わせてくれる。

こんなにも暖かい笑顔の人がいるんだな、って、ちょっと驚いた。

 

「分かった。それじゃ、約束しよう?」

 

 

 

 

 

 

「未来に希望が有れば、人は笑顔になれる。…僕はそう信じてる。

僕は君をアイドルにする事は出来ません。だけど、ゲーム病に奪われた君の希望を…笑顔を取り戻す。

…そしたら、今度は北条さんの番です。夢を叶えて、沢山の人達を笑顔にしてあげて下さい。」

 

─────── 僕達ドクターは、理不尽に奪われた笑顔を取り戻す事は出来ても…笑顔を与えてあげる事は出来ませんから。

 

そう語る先生を見て、私は……この人を信じてみよう。心からそう思ったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これは…!どうなってやがる…!?」

 

「おいおい…流石に悪乗りが過ぎるぜ。神、これもお前の才能か?」

 

「そんなワケ有るかァ!!!!!!バグバイザーも無しに、自力で増殖(・・・・・)だと!?」

 

「アイツ、随分好き勝手してるみたいだな?心が滾る…!」

 

「矢張この件には、裏で手引きしている黒幕が居るという事か。……だが、今は後回しだ。人々を守りながら、少しでも早くアイツを切除する!」

 

緊急通報に寄せられたバグスターの目撃情報を元に、俺達は現場へ急行した。パラドは俺達と同行したが、患者の様子を確認中の小児科医は、後から合流する手筈だ。

……だが、辿り着いた俺達の眼前に広がっていたのは…想像以上の地獄絵図だった。

例のライオンバグスターが人々を襲う…そこまではまだ分かる。

だが。襲われた人々がウィルスに感染し、バグスターへと変貌(・・・・・・・・・)して、他の人々へと襲い掛かっているなど、誰が想像出来ようか。

シマウマ、ガゼル、サル、カバにハイエナ…様々な動物を模したバグスターへと姿を変えた人々が、更なる犠牲者を生み出し、そして犠牲者がまた新たな怪物へと姿を変える。

その光景は、さながらゾンビ映画…ねずみ算式にバグスターが増え続ける。このままでは、ゲムデウスウィルスの集団感染に匹敵するパンデミックが起こりかねない!

 

「来たか…エグゼイドは居ないようだが。さぁ、俺を楽しませろ!この俺が完全な力を手に入れる前に、俺を攻略して見せるが良い!…尤も、それより先に、全ての人類が我が同胞と成るかもしれんがな?」

 

「ほざけ!アイツを待つまでもねぇ…テメェをぶっ潰す!」

 

事態は一刻を争う。奴と問答している暇は無い。

俺達はゲーマドライバーとガシャットを取り出し、一斉に戦闘体勢に入る。

 

「第伍十戦術!」

 

「ゼロ速!」

 

「グレードX-0…」

 

「MAX大…」

 

パンデミックなど起こさせてなるものか。…もう二度と、あんな悲劇はノーサンキューだ!

小児科医の言葉を借りるなら…人類の運命は、俺達が変える!

 

「術式レベル50…」

 

 

 

「「「「「変身!!!!!」」」」」

 

 

 

『バンバンシミュレーション!』

『爆走バイク!』

『デンジャラスゾンビ!』

『パーフェクトノックアウト!』

『タドルファンタジー!』

 

変身を終えた俺達は、一斉にライオンバグスター目掛けて突撃する。

 

当初の予定は、俺達全員で奴を相手取る作戦だった。小児科医の話では、レベル99のマキシマム相手に奴は苦戦していたという。如何にレベルを無視出来る攻撃だろうが、それすらさせぬ間に数とレベル差で叩く。卑怯だろうが何だろうが、人命が掛かっている以上そんな事はどうでも良い。

 

だが、此処へ来てその目論見は見事に崩れ去った。

戦った感じでは、どうやらコイツら自体はそれ程強くはない…だが、数の優位は完全に逆転し、それどころかコイツらが邪魔でライオンまで辿り着く事すら困難だ。

 

「ならば!」

 

俺はマントをはためかせ、身に纏うファンタジーゲーマの能力を発動。

俺の周りに、無数のバグスター(・・・・・)が召喚される。

俺の号令を待つ時間も惜しいとばかりに、バグスターの軍団は一斉に動き出す。ある者は、未だ無事な人々の救助に。ある者は、雑魚達を相手取りに。

檀黎斗は、どうせ真っ先に敵の首領を狙うだろう。それが最短の攻略で有る事に間違いは無いが、これ以上の感染者を増やさない事も重要だ。

周りを見れば、同じ事を思っているのか、パラドクスとスナイプも人々の避難を優先させている。

 

───── 絶対に助ける。

その思いを胸に、俺もメス…もといガシャコンソードを構え、迫り来るシマウマ型バグスターを斬り伏せた。

 

 

 

 

 

 

『混乱!』『発光!』

 

「暫くピヨってろ!ほら、今の内にお前は行け!」

 

「サンキュー、パラド!その人任せた!」

 

バグスターに襲われそうになっていた人をパラドに任せ、自分は奥へ待ち構えて居たライオンの元へ疾走する。

そこでは既に、神がガシャコンブレイカー片手に奴と斬り合っていた。ったく、分かっちゃいたがノリノリだな!

 

『ガシャコンスパロー!』

 

「おらよっと!」

 

レーザーターボの身軽さを活かして跳躍。神もライオンも纏めて飛び越し、奴等の背後へ着地。そのまま一気に背後からライオンを切り裂く!……なーんて、流石にそう簡単にはいかないらしい。ライオンはこちらを一瞥すらせず、背後からの急襲を難無く躱して見せる。

レベル無視のカウンターを警戒して身構える自分。だが、その隙を神に突かれる事を警戒してか、奴は直ぐ様自分達から距離を取った。めんどくせぇ…爪だけじゃなくて、頭も切れるってワケね?

 

「来たか。思ったより早かったな?」

 

「そりゃ、こんだけドクターが居たらな。ま、あと一人二人来る迄には、お前を倒しとくつもりだけどな?」

 

「面白い…やってみろ。」

 

さて…軽口を叩いたものの、状況は良くねぇ…。ちら、と背後を振り返って見れば、大先生達が未だ人々の救助と雑魚退治に奔走してる。バグスターを抑制するレベル0が二人に、殲滅戦に優れたライダーが三人。

大先生に至っては、敢えて戦闘能力の高いタドルレガシーより、魔法やバグスター軍団で制圧性能が高いタドルファンタジーを選んでる。これだけ揃ってても、未だ敵は多い…。

 

こりゃ、マジで増援期待するより自分達で片付けるプランの方が良さそうだな。

 

「来い、レーザー。ゲンム。お前達の力で、俺を越えて見せるが良い!」

 

「たかだかバグスター如きが、神に刃向かうかァ!」

 

勢い任せにガシャコンブレイカーを振り下ろす神と、いとも容易く避けるライオン。あー、駄目だこりゃ。アイツ完全に頭に血が昇ってやがる…。

そんな大振りの隙を見逃す敵ではなく、目にも止まらぬスピードで神の元へ詰め寄るライオン。だが、咄嗟に自分が間に割って入り、その巨体を蹴り飛ばした。

 

あっぶねぇ…。神のライフは残り1。もうコンティニューは出来ない。

癪だが、ここでアイツを失うワケにはいかねぇからな。

 

「…俺は貴様に生み出されたバグスターではない。故に、俺は俺の好きに動く。貴様の考えなど知った事か。」

 

「そうか。────── ならお前は、私の才能を利用した不正な存在というわけか!削除するゥッ!!!」

 

「気に食わなければ消しに掛かるか!まるで幼子だな!」

 

最早どっちが悪役か分からない程に、真っ当な正論で返される神。ガシャコンブレイカー片手に怒り狂った様子で奴の元へと駆け出し…って、またかよ!?乗せられ過ぎだろ黎斗神!

 

時間が無い…頼むぜ永夢。

暴走する神に頭痛を覚えながら、自分も敵サン目掛けて駆け出した。

 

 

 

 

【to be continued…】




長い目であったかく見守って下さる皆様に、心からの感謝を。
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