笑顔にするアイドル、笑顔を取り戻すヒーロー 作:banjo-da
最終話にして、これ原作エグゼイドでタグをデレマスにすべきなんじゃないかと思い始めました。
───── おかしい…。
そんな違和感に気付いたのは、戦闘が始まって暫くしてからだった。
幾ら敵が多いからって、あまりにも数の減り方が遅過ぎる。ライダーが五人、しかも全員レベル50以上だぜ?
倒しても倒してもキリがない………というより、これは…!
『マッスル化!』
『キメワザ!パーフェクトノックアウト・クリティカルフィニッシュ!』
エナジーアイテムで自分の攻撃力を上げ、必殺技を叩き込む。ガシャコンパラブレイガンから撃ち出された光弾は、目の前のガゼルみたいなバグスターへ叩き込まれ、その場に大きな火柱と粉塵を巻き起こした。
「どうだ…!?」
言いながら、自分でも結果は予想出来ていた。煙が晴れ、その想像に違わず
「ガァァ…」
「クソ…!やっぱり耐えてるのかよ…!」
ガゼルはボロボロになりながらも、
そう、コイツら全然倒れないんだ!
戦って分かったが、コイツらは精々レベル一桁~多くてもレベル30程度の力しか無い。
───── だが、タフだった。
第一に素早い。ちょこまかとこっちの攻撃を避け、必殺技も紙一重で躱す。多分カイデンの太刀筋や、リボルの狙撃でも当てるのは難しいだろうな。
そしてそれ以上に、当てても中々倒れない。ラブリカみたいに攻撃が効かないワケじゃない。ゲンムみたいに死んでも蘇るってモンでもない。
致命傷を与えれば倒れるし、ダメージも蓄積されていずれは倒せる。ただ、そのハードルが半端無く高い!
鋼鉄化みたいな防御力アップ、あるいは残り体力が少なくても堪えるガッツ。こういう手合いの
ゲンムの話や、永夢が聞いたライオンの話から察するに、恐らくコイツらは『生き残る』事に特化したバグスターなんだろう。
自然界の生存競争で生き延びる為に身に付けた力。レースで相手を抜き去る為のモータスのスピードとも、正面から殴り合う為のガットンのタフネスとも、また別種の存在。
けど、ゲンムの言葉に嘘が無いのなら。コイツらの力は、何者かに改造されて手に入れたものだ。コイツら本来の能力じゃない。
「……白ける事すんなよ。」
ゲンムは気に食わないし、こういうのは不本意だが…少しだけ、アイツの気持ちが分かる気がする。
ゲームは、ルールの中でガチでやり合うからこそ楽しいんだ。
俺は静かに闘志を燃やし、拳に炎を纏わせる。
『高速化!』『高速化!』
『ウラワザ!ノックアウト・クリティカルスマッシュ!』
パーフェクトパズルの力でエナジーアイテムを纏めて取り込んだ俺は、目にも止まらぬ早さでガゼルの懐へ潜り込む。
そのまま苛立ちをぶつける様に、ガゼルへ拳を叩き込んだ!
『K.O !』
堪らず数メートル吹っ飛ばされたガゼルは、地面に叩き付けられ動かなくなった。
……やっと倒したか。けどやっぱコイツら、
このままじゃジリ貧だ…どうする?そんな不安が俺の思考に過ったその時。
──────けたたましいバイクのエンジン音が、辺りに響き渡った。
……待ってたぜ!
仮面の下で、そっと目を閉じれば。アイツの心が、想いが伝わってくる。…いや、態々感覚を共有しなくても。アイツが今何を思ってるかなんて、考え付く答えは一つしか無い。
俺はお前で、お前は俺なんだからな。
行く手を阻む雑魚達を蹴散らし、真っ直ぐにライオンへと向かって行く永夢を見送ると。
「心が踊るなぁ…さぁ、行くぜ!」
永夢の勝利を信じて、俺も再びバグスターの群れへと駆け出した。
◆
……正直、こんな悲惨な状況になってるとは思わなかった。改めてあの時、奴を取り逃がした自分を呪う。
けど、ウジウジするのもそこまでだ。加蓮ちゃんは、僕を信じてくれた。
どんなに苦しくても、あの子は諦め無かった。約束を守ってくれた。
今度は僕の番だ。
あの時の約束は、あの一回きりじゃない。僕は彼女の主治医として、何度だって加蓮ちゃんを救ってみせる。
「やっと来たか…待ちくたびれたぞ?あと数秒遅かったら、コイツらの息の根を止めていた。」
こちらを向き、今まで無表情だったその顔に、醜悪な笑みを浮かべるライオンバグスター。奴の直ぐ傍には、変身を解かれた貴利矢さんと黎斗さんが倒れていた。
「さて…エグゼイド。この光景を見て何を思う?最早今更何をしようが無意味。…ゲーム病を発症し、貴様が俺を一度取り逃がしたと知ってなお、我が宿主の精神が安定していたのには驚いたがな。おかげで、進化に時間が掛かってしまった…どうやら、余程貴様を信頼しているとみえる。」
「永夢…そいつは最早レベル4なんて雑魚では無い!非常に不愉快な話だが、そいつは
悔しそうに歯噛みする黎斗さんを一瞥すると、奴は一層楽しそうに口元を歪める。
「その通り…最早今の俺はレベル99すら越えた!あとは貴様を始末し、我が宿主の心を打ち砕けば!俺は完全な存在へと昇華するッ!!!」
意地の悪い下卑た声音で高笑いするライオンバグスター。自分の勝利を確信しているんだろう。だけど…。
「……随分、お喋りになったな。正直、最初に会った時のお前の方が怖かったよ。」
「………なに?」
僕の言葉に、奴はピクリと眉間に皺を寄せ、高笑いを止める。
明らかに気分を害した様子だけど、生憎そんな事には興味無い。
「一つだけ聞かせろ。お前を倒せばこの惨劇は…バグスターになった人々は、元に戻るのか?」
「……ああ、戻る。俺は檀黎斗により生み出されたバグスターではない。故に、その力も他のバグスター共とは根本から異なる。尤も、今の俺を貴様如きが───」
「そんな事までは聞いてない。…お前を倒せば、皆が助かる。それが分かれば充分だ。」
必要な事は聞けた。なら、
俺はマキシマムマイティXガシャットと、他のガシャットとは形状の異なる『黄金のガシャット』を取り出し、起動する。
「人々の…そして、加蓮の運命は…
─────── 俺が変える!!」
マキシマムをゲーマドライバーに挿入し、黄金のガシャットを天高く掲げる。
そしてその腕を振り下ろし、黄金のガシャット───── 『ハイパームテキガシャット』をマキシマムに連結させた!
『輝け!流星の如く!』
その輝きは、人々の未来を。希望を照らす光。
『黄金の最強ゲーマー!』
どんなに険しい運命も打ち砕く最強のヒーロー。
『ハイパームテキ!エグゼイド!』
仮面ライダーエグゼイド・ムテキゲーマー。
俺はこの力で、必ず加蓮を助ける!
「…面白い。いよいよ本気を出したか。
ならば俺も、全力で貴様を叩き潰すとしよう!!」
奴は全身に禍々しいオーラを纏わせ、構えを取る。間違い無く、奴の最強の一撃が来るだろう。
…だけど。
「終わりだエグゼイド!貴様は─────」
奴の言葉が続く事も、必殺の一撃が放たれる事も無かった。
ガシャコンキースラッシャーで一閃。その時、俺は既に残心を取りながら、奴の背後に居た。
「な……に…?」
「これでフィニッシュだ。お前を切除する!」
ムテキガシャットを操作し、奴の頭上へと飛び上がると。
『キメワザ!ハイパー・クリティカルスパーキング!』
俺は奴目掛けて急降下し、その身体へライダーキックを叩き込んだ。
『Hit!』
「ぐ…」
『Hit!』『Hit!』『Grate!』
「ぐおぉ…!バカ…な!」
『Hit!』『Hit!』『Hit!』『Grate!』『Hit!』『Grate!』『Hit!』『Hit!』
『Perfect!』
「この…俺がぁ!ぐあぁ…ッ!!!」
自らの敗北を信じられぬまま、奴は吠える様な絶叫と共に爆発し、消滅した。
「……ゲーム…クリアだ。」
奴の言葉通り、感染した人々が一斉に元の姿に戻っていく。
その様子を眺めながら、僕は変身を解いた。
◆
「やれやれ…やられちまったかぁ。アイツには、これでもかって程にムテキ対策を注ぎ込んだのに…まさか瞬殺とはなぁ?まぁーーーーったく!檀黎斗め!ファンキーな物を作ってくれたなぁ!!」
とある場所、薄暗い部屋。
一人の男がモニターを眺めている。
映し出されているのは、エグゼイドとライオンバグスターの戦闘記録。
結果は圧勝、という言葉ですら生温い、エグゼイドの一方的な勝利。
本来あのバグスターには、厄介なハイパームテキ対策を幾つも施していた。
通常のバグスターと異なる、レベルの上昇能力と増殖能力。レベルアップに必要な経験値は、本体たるライオンだけではなく、奴が感染させ生み出した他のバグスター達からも吸い上げる。増やせば増やす程、ねずみ算式に奴が強くなる。あの短時間でレベル4から99以上の力を手に入れたのもその為だ。
そしてレベル差無視攻撃は、奴自身が強くなればなる程強化される。理論上、最後にエグゼイドと戦った状態の奴ならば、ムテキの装甲にダメージを与える事すら可能だった筈だ。…尤も、エグゼイドに触れる事すら出来ずに奴が消滅した今、本当にムテキを倒せるのか確める術は無い。
他にも『リプログラミング無効』『エナジーアイテムによる妨害無効』『遠距離からの飛び道具によるダメージの軽減』…数え切れぬ程の対策を施した。
─────── にも関わらず、この結果だ。
「全く…仮面ライダーって連中は、本当に忌々しい奴等だ!」
矢張り、馬鹿正直に正面から対策するよりも。
仮に力を取り戻されても、自分の計画が成就した後なら敵では無い。
「…ネビュラバグスターの増産を急ぐかぁ。
♪ファンキー、ファンキー、鬼ファンキー…っとな。」
薄暗い空間に、男の笑い声が響き渡った。
◆
「先生、ありがとう。おかげですっかり元通りだよ!」
「それが僕の、ドクターの務めですから。元気になって本当に良かった!」
あの戦いから一夜明けて。精密検査の結果、異常無しと判断された加蓮ちゃんは無事退院した。
「宝生先生…本当に有難うございました。担当プロデューサーとして…そして親御さんから大事な娘さんを任された大人として、本当に感謝しています。」
加蓮ちゃんとプロデューサーさんが、揃って笑顔を向けてくれる。
加蓮ちゃんの御両親が退院の手続きをしている間、僕達は別れの挨拶を交わしていた。
(ちなみに凛ちゃんと奈緒ちゃんは、ポッピーとドレミファビートに興じていた。流石はアイドル…って事かな?二人ともかなりの腕前で驚いた。)
「……北条さんから、以前の出来事をお聞きしました。…先生には、感謝してもしきれません。」
「いえ、そんな…。」
プロデューサーさんに頭を下げられ、僕は戸惑う。
「…『パワーオブスマイル』。私は、笑顔の持つ力というものを信じています。彼女達の笑顔は、人々に力を与えてくれる…今を、そして明日を生きる為の、元気の源となる。貴方は、そんな彼女の笑顔を取り戻してくれた。」
ゆっくりと顔を上げ、微笑むプロデューサーさん。
強面で不器用だけど、凄く優しくて暖かい笑顔だ。
「…約束したんです。僕は、彼女の笑顔を取り戻す。そうしたら今度は彼女が、僕達では手の届かない大勢の人々を笑顔にする…って。だから、お礼を言うなら僕の方こそです。」
有難うプロデューサーさん。彼女を、キラキラ輝く場所へと連れて行ってくれて。
有難う加蓮ちゃん。沢山の人を笑顔にしてくれて。
「も、もう!先生もプロデューサーも、なんか照れくさいじゃん!二人とも、聞いてるこっちが恥ずかしくなる様な事、大真面目に言うんだから!」
赤面した様子で僕達の間に割って入る加蓮ちゃん。
アイドルといっても、まだまだ年頃の少女なんだな…彼女の様子に、思わず僕もプロデューサーさんも、クスリと笑ってしまった。
「それじゃ先生、またね!今度のライブ観に来てよ!それに、何時かデート行こうよ!この前食べ損ねたポテト、一緒に食べに行こう!」
すっかり元通り…いや、それ以上に生き生きとした笑顔を浮かべる加蓮ちゃん。デート、って単語にぎょっとする奈緒ちゃん。礼儀正しく御辞儀する凛ちゃん。そして彼女達を暖かく見守る、プロデューサーさんと加蓮ちゃんの御両親。
彼女らを笑顔で見送ると──── 僕の胸元のゲームスコープが鳴った。緊急通報だ。
「はい、こちら電脳救命センター!」
今日もノーコンティニューで、患者を救ってみせる。
その想いを胸に、僕は現場へ向かって駆け出すのだった。
【the game end】
完結です。たった4話なのに、最初に投稿してから半年以上経っていました。見守って下さった方々に感謝を。
時間が掛かったといえば、エグゼイド1話のマイティアクションX発表会。あれホントに黎斗の神の才能を持ってして5年も製作に費やしたの?と思った今日この頃。
次何書くかは検討中です。活動報告で候補は上げてますので、興味の有る方は是非。
御意見、御感想や批評、評価等お待ちしております。