えんぜるびっつ。   作:ぽらり

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 一人寂しく食堂で素うどんを食べる。勿論、ラー油は入れない。

 

「うまうま」

 

 今日の戦線の皆さんは何やらお忙しい様子だった。朝、ルームメイトの枕元にフラワーロックを3体程セットした後、本部へ行ってみるもそこはもぬけの殻だったし、校舎内ですれ違った数人の男子メンバーは話をする間もなく何やら慌ただしく外へ駆けて行ってしまった。何かオペレーションでもあるのだろうか? なんて思いもしたが特にこれといった指示は受けていないので動きようもない。というより動きたくない。これが本音。

 

「そして今に至る訳ですね、わかります。ずるずる」

 

 素うどんうめぇ。

 

「相席、失礼します」

 

「あれま。遊佐ちゃんだ」

 

「どうも、遊佐です」

 

 目の前にオムライスを持った遊佐ちゃんが座った。不思議と食堂ではあんまり見かけないからなんだか新鮮。

 

「そしてそしてー! 一家に一人は御用達! ユイにゃんさんじょー!」

 

「遊佐ちゃんだけ残して大人しく帰りなさい」

 

 実は珍しい組合せだけどユイにゃんめんどい。

 

「なーんーでー! 一緒に素うどんしましょうよー!」

 

 食事中の首ガックンガックンは本当にやめてほしい。あと素うどんはするものではなくすするものです。俺、今うまいこと行った。

 

「わかったから放して。そして座って。でないと素うどんにラー油投下の刑に処す」

 

「ぶっちゃけ大したことないですね!」

 

「うどんは鼻から食う以外不可」

 

「隣失礼します!」

 

 素直でよろしい。

 

「そして遊佐ちゃんがケチャップで絵を描いてる件」

 

「かわいいですね!」

 

 はげど。遊佐ちゃんきゃわわ。

 

「オムライスはこうするものだとゆりっぺさんに教わった遊佐です」

 

「何書いてるの?」

 

「冨嶽三十六景 凱風快晴」

 

「無茶しやがって……」

 

「無茶しやがりますね……」

 

 ユイにゃんと二人して綺麗な敬礼をした。座りながらで失礼。

 

 

 

 

「ところで遊佐ちゃん」

 

「何でしょうか? 遊佐です」

 

「もしかして今日は何かオペレーションとかやってたりする? なんか皆いないんだけども」

 

「先輩! ユイにゃんがここにいますよ! ここに! こーこーにっ!」

 

「THIS WAY」

 

 素うどんにラー油を投下しますた。

 

「で、どうなの遊佐ちゃん」

 

 涙目で微妙……と呟きながらうどんをすするユイにゃんを尻目に会話を続行。自業自得ってやつだわさ。でもお残しは許しません。

 

「本日は極めて緊急性の高いオペレーションが一件、先程まで行われていました。今はゆりっぺさんを含めた実動部隊の皆さんが事後処理に回っている頃かと」

 

「俺呼ばれてない」

 

「必要無いと判断されました」

 

 ちょ、デジャヴ。

 

「いえ、今回は緊急だったこともあり、陽動部隊をはじめ、大半のメンバーへの招集は行っていません」

 

「そうなんだ。遊佐ちゃんは?」

 

「私はオペレーターとして参加していました。しかしながら、すでに私のできる事は終わってしまったので休憩がてら食事を摂りに来たと言った次第です」

 

「なるほど、ナツメです」

 

「遊佐です」

 

「ユイにゃんです!」

 

 三人してちょっと満足。それぞれ料理に口をつける。うまうま。

 

「オペレーションの内容が気になるところなのですががが」

 

「ユイにゃんも気になります!」

 

「違う。そこは『わたし、気になります!』と言うのが正解」

 

「えるたそ乙。オペレーションの内容は生徒の救出、もしくは奪還です」

 

「――ジャスト一分だ。悪夢は、見れたかよ?」

 

「邪眼乙。けして奪還を生業にしている訳ではありません。遊佐です」

 

「が……離れて……死にたくなかったら早くユイにゃんから離れて!!」

 

「節子、それ邪眼やない、邪気眼や。遊佐です」

 

 そんなくだらないやり取りをちょいちょい挟みながら話を聞けば、なんでもこの世界に新しい人が来たらしいとかなんとか。しかし、どうやら天使さんの方が先に接触してしまったらしいのでどうにかしてこちらに引き込もうというオペレーションだったそうな。お疲れ様ですね。

 

「奪還は成功しています」

 

 だそうです。事後処理に新しく来た人への説得、この世界についての説明も含まれているそうなのでせっかくだし食事が終わり次第三人で本部へ向かってみる事に。もしかしたらその新しく来た人に会えるかもだしねー。しかし俺の時とのこの待遇の違いはなんなのだろうか。まぁ、別にいいけども。

 

「ぺろりんちょ。ごちそうさまでした」

 

 てな訳でつつがなくお食事も終わり、移動開始。

 

「どんな人なんですかね! ユイにゃん気になります!」

 

「なんかちょっとそのフレーズ気に入ってない? 同意だけども」

 

 ユイにゃんと二人して遊佐ちゃんに視線を送ってみた。わくわく。

 

「真面目そうな男子生徒、としか。実は遠目からしか確認していない遊佐です」

 

「おー、男子ですか! どうせアホなんでしょうね!」

 

「可能性は高いかと」

 

 この二人の女子の中では男子=アホの図式が確立しているらしかった。なんとも酷い話でとても反論したかったが、戦線メンバーの男子のことを思うと、とてもじゃないが反論できそうになかった。ごめんよ皆。まぁ、ぶっちゃけ男子も女子もアホばかりのアホ戦線な訳だけども。

 

 そうしてアホ達のアホ達によるアホ達のための不毛な話し合いが佳境に入ったとき、絶妙なタイミングで本部の方から衝撃音が聞こえた。なんだなんだと三人して野次馬根性丸出しで見に行くと、本部入口に設置されたトラップの発動の跡と床に転がるハルバートを確認した。

 

「野田くんか」

 

「野田さんですね」

 

「つまりアホですね!」

 

 ユイにゃん正解。

 

 ハルバートさんはさておき、とりあえず合言葉を唱えてから扉を開いて入室。中にいたのはいつも通りの位置に腰を落ち着けている我らがリーダー仲村さんと、その仲村さんの視界の端に映るくらの位置にいる日向くん。今日も青いね。そして仲村さんの正面に立つ見慣れない赤い髪の男子生徒の三人だった。それぞれ目が合い、最後に赤い髪の男子生徒が視界に入った時点でそれを留める。

 

「こんちは。ナツメです。アナタのお名前なーに?」

 

「え、音無、だけど……」

 

「ん? 小鳥遊?」

 

「ちっちゃくないよ!」

 

 いや、ユイにゃんちっこいよ。

 

「音無だ。お・と・な・し」

 

「かたなし?」

 

「ちっちゃくない遊佐です」

 

「ナツメです」

 

 新人さんセーイ。

 

「……音無です」

 

「ん、よろしくー」

 

 まぁ、何はともあれ、よろしくどーぞです。

 

 

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