えんぜるびっつ。   作:ぽらり

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 あらすじぃ!

 

 食堂の裏メニューの調査に乗り出した俺たちは苦悩の末に裏メニューと思われるものを発見した! しかしそれだけでは終わらないのがこの世界である! あらすじ終わりぃ!

 

 

 

「アナタたち、随分と早いのね。授業はちゃんと出ないとダメよ」

 

 日向くんがカレーうどんを持って席に着いた直後、まさかの天使さん降臨です。気が付いたら放課後でした。ちょっと早いけど、夕飯時だね。

 

「そ、そんなことないんじゃないか? むしろ丁度良いくらいだよ。なぁ?」

 

「ソウデスネ―」

 

 音無くんに同意を求められたら頷くしかない。だから音無くんから向けられているジトっとした視線なんてなんのそのなんだぜ。

 

「授業の方もそれくらい積極的に出てくれると助かるのだけど」

 

「あー、まぁ、考えとくわ」

 

 僅かに呆れたような視線と言葉におざなりな返事を日向くんがして、会話は終了。それ以上は何も言わずに立ち去る天使さんの背中はちょっとだけ寂しそうでした。

 

「――なぁ!」

 

 音無くんが声をあげて天使さんを呼び止めた。

 

「お前もこれから飯食うんだよな? せっかくだし、一緒にどうだ?」

 

「音無っ!」

 

 日向くんが肩を掴んだ。俺もびっくりです。

 

「ありがとう。でも、遠慮しておくわ」

 

 少しだけ振り返って返事した天使さんはまた踵を返して行ってしまった。

 

「音無、お前……」

 

「あー、深い意味はないさ。俺はただ、アイツが……」

 

「いや、いい。何も言うな」

 

 そう言って日向くんは音無くんへカレーうどんを差し出した。

 

「……なんだよコレ」

 

「え、これから天使と一緒に飯食うつもりだったんだろ? いや、頼んだまではよかったんだけどさすがに腹一杯でさー。残す訳にもいかねーし、困ってたんだわ。助かるぜ!」

 

「冗談、だよな……?」

 

 とても良い笑顔の日向くんでした。

 

「ナツメ。助けてくれ」

 

「うん、いきなりご飯誘うのはどうなんだろうね」

 

「いや、何の話……」

 

「そうだね。まずはちょこちょこ顔見せて好感度上げないとだね」

 

 あと、頑張って食べてくだしあ。

 

 

 結局、カレーうどんは音無くんと日向くんの二人で分けて完食。俺は先に報告してくると言ってその場を後に。逃げた訳じゃないお。残してきた二人にはあとで何か言われそうだけども。で、なんか微妙な報告になりそうだなーなんて考えながら帰路に着くと偶然にもまた天使さんに出会いました。

 

「お、こんちは。天使さん」

 

「こんにちは、ナツメ。でも天使じゃないわ」

 

 なんかこのやり取りも懐かしい。

 

「さっきは申し訳ないことをしたわ。あの赤い髪の……誰だったかしら?」

 

「ん、日向くんだよ。青い方が音無くん」

 

 あ、逆だった。まぁ、いいや。

 

「そう。あとで改めて謝罪しておくわ」

 

 気にしすぎかと。それにしても、天使さんって絶対悪い人じゃないと思うのは俺だけなのでしょうか。あとで音無くん辺りに話してみようかな。

 

「それにしてもまだ食べる人がいたのね、カレーうどん」

 

 お?

 

「知ってたの?」

 

「ええ。前は券売機にもちゃんとあったわ」

 

 なんですと?

 

「私が廃止したの。染みが落ちないって苦情があまりにも多かったから」

 

「なんて所帯じみた苦情」

 

 死ねない世界でもカレーの染みは対処できないらしい。カレー最強説が浮上した瞬間である。

 

「でも、アナタたちもちゃんと説明書きは読んでくれているのね。嬉しいわ」

 

「説明書き?」

 

「券売機の近くに貼ってあるわ。カレーうどんは読まないと頼めないはずなのだけど。読んでいないの?」

 

「アレは裏メニュー調査してたら偶然見つけますた」

 

「裏メニュー? むしろカレーうどんは正規のメニューの一つよ。いえ、正確には正規メニュー落ちかしらね。オサレに言えばプリバロン・メニューよ」

 

「なぜオサレに言ったのか小一時間程問い詰めたい」

 

 オサレは嫌い? なんだかんだ好きです。よかった、私も好きよ。

 

「各種メニューの組み合わせは券売機の近くに貼ってある紙を見てもらえればわかるはずだから、機会があれば見ておくのがいいと思う」

 

「マジか」

 

 気が付かなかった。

 

「残念だけど、この学園に裏メニューはないわ」

 

「マジかー」

 

 これはどう報告するべきなのだろうか。

 

「ん?」

 

 いつの間にか天使さんがなんか考え込むようにしてブツブツ言ってる。なんでしょうか。耳を傾けてみると、定義がどうとか何とか聞こえます。何のことだろうね。

 

「ナツメ」

 

「ここにおります」

 

 何のご用でしょうか天使さん。天使じゃないわ。ですよね。

 

「前言を撤回するわ。裏メニューはある、かも」

 

「マジすか」

 

「ええ、恐らく、なのだけど」

 

「してそのメニューとは?」

 

「 麻 婆 豆 腐 よ 」

 

「じゃあ、お疲れー」

 

 こんなに聞いて損したと思ったのは初めてかもしれない。恐るべし麻婆天使。

 

「待ちなさい。アナタは知らないの。麻婆豆腐の真の力を」

 

「知りたくない。ハイパー知りたくない」

 

「いい? この学園の麻婆豆腐は」

 

 聞いてないし。

 

「――ワイルドなの」

 

「もういいってー。個人の主観じゃんそれー。ワイルドでもマイルドでもどっちでもいいってー」

 

「そういう意味じゃないわ。確かに味もワイルドだけど。そうね、ワイルドカードと言えばいいかしら?」

 

「ワイルドカード? トランプとかの?」

 

「概ねその理解で構わないわ。ただ言える事は、組み合わせが自由と言うことよ」

 

 組み合わせが自由? つまり。

 

「どの食券とも、併用できる……だと……?」

 

「ご飯(小・中・大盛り)以外なら、可能よ……!」

 

 なんて恐ろしいカードなんだ……!

 

「麻婆丼はすでにメニューにあるから除外するとしても、麻婆チャーハン、麻婆オムライス。麻婆ラーメンに麻婆うどん、麻婆そばや麻婆スパに加え」

 

 俺の中で麻婆がゲシュタルト崩壊。考えただけですでに無理です。

 

「サラダだろうとデザートだろうと関係なく組み合わせる事が可能なの」

 

「もはや悪ふざけの領域ですね」

 

 食べ物で遊んじゃいけません。

 

「他の生徒も皆知っているけど、麻婆豆腐自体があまり注文されないから、見ることはまずないわ。どうかしら? これはある意味裏メニューだと思うのだけど」

 

 なるほど。だからNPCは裏メニューなんて知らないと言う訳だ。正規落ち、つまりプリバロン・メニューな訳だし。でも。

 

「裏メニューというか、表に出しちゃいけないメニューです」

 

 これにて、裏メニュー調査終わり。本当にどう報告しようかなコレ。

 

 


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