「ちょっと心許ないわねー」
「ん? ああ、そう言えばね」
食堂にて。仲村さんとの食事中の会話。
「そろそろやりましょうか」
「そうだねー。やっといた方がいいかもね。うまうま」
素うどん最強です。カレー最強説? 知りません素うどんが無敵です。
「ナツメくん、あの子たちに連絡をお願いできる? 手筈はいつも通りだから」
「どの子たち?」
「あの子たちよ。他に誰がいるの?」
「ああ、あの子たちか。りょーかいですお」
「本当にわかってるのかしら……」
なんというジト目。不本意である。
「仲村さんが俺をバカにする。これは訴えざるを得ない」
「きみはじつにばかだな」
ユリえもーん。
「ちなみに誰に連絡するつもりだったのか言ってみなさい」
「遊佐ちゃん」
ため息吐かれた。
「せめて二人以上は名前をあげてほしかったわ」
「と、ユイにゃん」
「遊佐さんはともかく、その子はダメね。20点」
一体何の点数だろうか。
「ナツメくんはガルデモの四人に連絡しておいて」
「ああ、逆にね。そっちだったか」
「逆もクソも無いわよ。一体何をやるつもりだったのかしら」
「こまけぇこたぁいいんだよ!!」
「黙りなさい」
「おこなの? 仲村さんおこごめんなさい」
テーブルの上にベレッタさんが置かれたらそりゃ謝るさ。ゴトッて。重量感ありすぎです。一般ぴーぽーな俺が見たらガクブルもいいとこです。
「やるわよ、オペレーション・トルネード。決行は三日後」
「ああ、逆にね」
「それ、流行らせたいの?」
「うん、逆にね」
「あ、めんどくさい。すごくめんどくさいわナツメくん」
「なあに、かえって免疫力がつく」
「そこは『え、逆に?』とかでしょう。ちゃんと統一しなさいよ」
「ちょっと何言ってるかごめんなさい」
だからベレッタさんしまって下さい。お願いします。
「アナタと話してるとどうしていつも脱線するのかしら」
「――敷かれたレールの上を歩いていて楽しいのかい?」
「うるさいわよ。ドヤ顔すんな」
どやぁ。臨戦態勢。本当にごめんなさい。
「さて、それじゃあ、ミッション・スタート!」
「ちょ、それどっちかって言うと俺のセリフ」
「こまけぇこたぁいいんだよ!!」
「ですよね」
てな訳でガルデモさんの元へレッツラドン。到着。
「オペレーション警報発令! 総員直ちに準備せよ! 繰り返」
「うるさい」
ヴォルヴィック岩沢がヴォルヴィック投げてきた。鼻に当たってとても痛いヴィック。
「あたしらんとこ来たってことはトルネードか。タイミング的にはそろそろだと思ってたよ。決行はいつ?」
ヴォルヴィックな岩沢さんと違いやる気なのがひさ子ちゃん。女の子なのにニヒルな笑顔が似合うとか俺より男らしいよね。本人に言ったら蹴られるかグーパン飛んでくるかで恐いから言わないけども。誰だって痛いのは嫌です。
「三日後とだけ。追って連絡はあると思うのでよろしくです」
「まっかせとけー!」
ベーシストな関根ちゃんは今日も元気です。そんな彼女はきっとガルデモのムードメーカーさん。
「入江ちゃんもよろしくです」
「が、頑張る」
すでに何回かライブは経験済みなのにいまだ緊張しまくりの入江ちゃん。でもステージ立っちゃえばなんてことはないとは関根ちゃん談。本番に強いタイプなのかもね。
「よし、再開するよ」
ヴォルヴィックさん、もとい岩沢さんはいつも通り。何事にも動じないお人です。さすが陽動部隊のリーダー。忘れられているような肩書だけども、この人も実は戦線では結構偉い立場だったりする。まぁ、あんまり立場とか気にするような組織じゃないけども。
「ヴォル沢さんヴォルさ」
またヴォルヴィックが顔に! 投げすぎぃ!
「コレは飲むものであって、けして投げるものでは」
「え? 何? 聞こえない」
「すいませんでした」
「ん。見学なら邪魔にならないところで。いいよね?」
最後のはメンバーへの確認だろう。関根ちゃんが渋い顔して私は一向に構わんとか言ってるし。烈海王乙。
で、俺が邪魔にならない位置に移動したら演奏開始。
今思うと四人そろってやる演奏聞いたのほとんど初めてだったりして。おお、岩沢さん歌もギターもうめぇ。あ、関根ちゃんは元気そう。ひさ子ちゃんの指先がなんかもうもはや分離して別の生き物になっててすげぇけどこえぇ。うん、関根ちゃんは元気だ。おー、入江ちゃんは普段の様子からは想像できない程の激しいストローク。それにとっても楽しそう。あと、関根ちゃんは元気。
「ちょ、異議ありー! あたしの華麗なベースさばきも見てよー!」
「ハハッワロス」
追い出されました。
で、行くとこないから本部へ足を運ぶ。仲村さんがいつもの席にいつものように座ってました。暇なのだろか。
「連絡はちゃんとしてくれた?」
「三日後にオペレーションやるよーとだけ」
「そう。ありがと」
「コーヒー淹れる?」
「んー、紅茶がいいわ」
「ただし茶葉は尻から出る」
「出してみなさいよ」
「えっ」
「出してみなさいって。ほら、どうしたの。早く出しなさいよ」
「さすがの俺もそれは引くわ」
「なんで私が悪いみたいになってるのよ」
「とかなんとか言ってる間に」
「ん、ありがと」
お茶請けは冷蔵庫にあったミニシューです。
「腕を上げたわね」
「仲村さんのおかげです」
「ナツメくんはわたしが育てた」
「ぬかしおる」
ハッハッハッ。お互いに笑って閑話休題。
「ライブ中は俺何すればいいの? 前回と一緒でNPCの誘導?」
「いいえ、ナツメくんには現場指揮をやる遊佐さんのサポートに回ってもらうわ」
新しいお仕事もらった。前回やった時は外で立ちっ放しでライブ見れないし疲れたしでちょっと嬉しいけどいきなり荷が重すぎやしませんかね。
「仲村さんは? サボタージュいくない」
「常に授業サボってる人のセリフじゃないわね。私と男子の何人かは別のオペレーションに当たるわ」
「同時進行ですか」
「そうね。ああ、今のうちにこれをアナタにも渡しておくわね」
「インカムだ。くれるの?」
「必要だと判断したわ。常に耳に付けておいて。使い方は」
「あ、もしもし遊佐ちゃん聞こえるー? やっはろー! インカムもらった! 必要だって判断された! これでアンジェロできるよ! オーバー」
はいはいわろすわろすオーバー、とのお返事が。さすが遊佐ちゃん。
「で、なんか言った? 仲村さん」
「インカムはオペレーションが終了次第返却しなさい」
ああん、そんな殺生な。
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