えんぜるびっつ。   作:ぽらり

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「困ったわね」

 

 戦線本部。仲村さんが呟いた。

 

「どしたの?」

 

「食券が足らなくなるかもしれないわ」

 

「あー、この間のトルネードダメだったしねー」

 

 あれからさらに数日経ちました。落ち着いたもんです。

 

「多少は回収できてるのだけど、所詮は雀の涙ね」

 

「実際に雀って泣くのかな?」

 

「泣かぬなら 縛って吊るして 銃の的」

 

「やめてくださいしんでしまいます」

 

「銃の的」

 

 やめたげてよぉ!

 

「遺憾ながら現状ではトルネードはできないし、まずはガルデモの楽器を取り返すのが先決かしらね」

 

「そうしてあげてくだしあ」

 

 関根ちゃんと入江ちゃんが暇を持て余し過ぎてむーむー唸ってたし。

 

「でも、一回潜入しているから警戒されてるのよ。それに潜入するメンバーも新しく編成し直さなきゃいけないし。すぐにすぐとはいかないわ」

 

「でもグズグズしてると食券足んなくなっちゃうね。困ったね」

 

「最悪の場合、今まで貯蓄してた分を放出するわ」

 

「そんなのあったんだ。知らなかった」

 

「備えあれば憂いなし。こんな時のためにね」

 

「ウリバタケさん風でよろ」

 

「こんなこともあろうかと! ところでナデシコと言えばクルーが人の話を聞かないことで有名よね。岩沢さん乗れるんじゃないかしら」

 

 ワロタ。

 

「冗談はさて置き、楽器の奪還は近いうちにこっちでなんとかするわ。だからナツメくんは……」

 

「俺は?」

 

「いつも通り留守番よろしく。ちょっとひなた、じゃなくて雀を泣かせてくるから」

 

「縛って吊るすんですね、わかります」

 

 日向くん逃げてー。超逃げてー。

 

 

 

 

 仲村さんがランバダを踊りながら本部を後にして暫く。特に来客の様子がないのでお茶をすする。いつもの如く、ランバダに意味はない。

 

「お茶請けにせんべいがほしい年頃」

 

 そんな時に扉がドーンと開かれる。

 

「そんなこともあろうかとー!」

 

 関根ちゃんいらっしゃい。珍しく一人です。

 

「こんちは、関根ちゃん。どしたの? ここに来るなんて珍しいね。お茶飲む?」

 

「オッケーオッケー! オールオッケー! あ、でもあんまり渋くないのがいいなー」

 

「紅茶にしとく? お茶請けは、あれ、それせんべい? 持って来てくれたの?」

 

「これはひさ子先輩から。あと、手間だしなっつんと同じでいいよー」

 

「ん、ありがとです。でもなんでひさ子ちゃん?」

 

「愛ゆえ、かな。言わせないでよ恥ずかしい」

 

「フラグだ。困る。超困る」

 

「だがしかしそんなことはこのあたしが許さないのでコレはあたしが一人で食べます!」

 

「ダメ。ひさ子ちゃんの愛は渡さない」

 

「よろしい、ならば戦争だ」

 

「ぬかしおる」

 

 ところで本音は? 麻雀でいっぱい巻き上げたから適当に配り歩けって。返してあげればいいのに。ねー。

 

 閑話休題。向かい合って着席します。れっつとーきんぐなう。おーいぇー。

 

「入江ちゃんがいないのもなんか新鮮だね」

 

「みゆきちは岩沢先輩にあげてきた。なんか意見聞きたいって言ってたし」

 

「なるほど。生贄か」

 

「そだね」

 

 認めやがった。ドンマイ入江ちゃん。強く生きてくだしあ。骨は拾ってあげよう。関根ちゃんと一緒に。

 

「でも、あれ。もしかしてなっつんと二人きりって初めてだっけ?」

 

「んー、そうかも。大体入江ちゃんいるしね」

 

「そ、そっか。あたしたち、今、二人っきり、なんだね……」

 

「え、あ、うん……」

 

 二人の間に漂う微妙な空気。

 

「て言う展開を今度みゆきちにやらせようと思うんだけど相手は誰がいいと思う?」

 

「大山くんあたりが無難。でもやめたげてね」

 

 微妙な空気なんてなかった。いつも通り。平常運転です。

 

「でもしっかり意見する辺りさすがなっつん!」

 

「つい反射的に。これからはアクセラさんとお呼び」

 

「ロリコン!」

 

「それ違う」

 

「うぃ」

 

 閑話休題。

 

「ガルデモ活動休止中だけど、みんなどんな感じ?」

 

「岩沢先輩はいつも通りだよ。ひさ子先輩は、あー、でもなんだかんだ皆でまったりしてるかも」

 

 ガルデモはちょっと音楽から離れてるみたい。まぁ、楽器がないからしょうがないけども。

 

「まったり楽しそう」

 

「ずっと話してるね。今度おいでよ。お菓子持ってきてくれると嬉しい。主にあたしが」

 

「行く。超行く。岩沢さんと一緒にひさ子ちゃんを餌付けする」

 

「甘いものがオススメ。あれで結構乙女なとこあるから」

 

「関根ちゃんもご一緒にどうですか? 餌付けませんか?」

 

「あたしにはみゆきちがいるから。浮気すると怒られちゃうのよ。あの子嫉妬深くて」

 

「モテる女は辛いですな」

 

「ホントよねー。なっつん、惚れちゃダメよ?」

 

「いや、そのりくつはおかしい」

 

「あーん、ナツえもんが冷たーい」

 

 せき太くん、きみもじつにあほだな。

 

「でもこれだけ男女がいて恋バナの一つもないのもねー。学校生活と言ったら恋バナでしょ恋バナ。なっつん好きな人とかいないの?」

 

「みんな愛してる(キリッ」

 

「だってお」

 

 笑いながら机をバンバン叩く関根ちゃん。お茶こぼれるがなー。

 

「そう言う関根ちゃんは? 好きな人いないの?」

 

「あたし? うーん、あんまりピンとくる人がなー。基本的にアホばっかりだし」

 

「否定できない悲しい実情。でもイケメンは多いかと」

 

「でもアホだよね」

 

 アホですね。

 

「関根ちゃんは内面重視派だったのか。じゃあ戦線のメンバーとは相性最悪だね。壊滅的だね。絶望的だね。オワコンです」

 

「そこまで言うか。でも確かに人には許容範囲と言うものがうんぬん」

 

「否定しないのね」

 

「うぃ」

 

 素直でよろしい。

 

「あ、そだ。なっつん、ここって紙とペンある?」

 

「ん、あるよ。ちょっと待ってて」

 

 どこだっけ、と適当に漁ったら出てきました。割となんでもあるのよねこの部屋。

 

「ほいパース」

 

「ナイスパース! なっつんもこっち座って! ハリーハリー!」

 

 テンション上がってきたみたいだね。お隣失礼します。

 

「何すんの?」

 

「カップリング!」

 

「またこの子は……」

 

 突然何をするかと思えば。

 

「いいからなっつんも考えんの! カップル! カップラー! カップレストー! はいまずはゆりっぺ先輩!」

 

「語呂悪いね。野田くん」

 

「お、即答とは乗り気だねー! しかも野田先輩! でもそれでこそなっつんだぜ!」

 

「しまった。つい反射的に」

 

「ロリコン!」

 

「違うから」

 

「うぃ」

 

 その後もワイワイ騒ぎながら作ったカップリング表は今度のガールズトークのネタにするそうな。怒られる気しかしません。

 

 


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