えんぜるびっつ。   作:ぽらり

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「日向、それ」

 

 音無くんが静かに告げた。

 

「ふっ、音無。お前の言いたいことはわかる。だがな、よく考えるんだ。お前は良いのか? 本当にそれで良いのか? その選択肢は間違ってないのか? 後悔、しないか……?」

 

 日向くんが不敵な笑みで答える。

 

「大丈夫だ、問題無い」

 

 即答。揺るぎない。そして、譲れない想いがあるのだろう。

 

「……そうか。お前の意思は変わらない、か。ハハッ、そうだよな。お前はそういうヤツだ。今も昔も変わらない。本当に困ったヤツだよ。少しは付き合うこっちの身にもなれってんだ。……だがな、音無。今回ばかりは俺も譲らない。いや、譲れないんだよ。ここでお前の選択を受け入れちまったら、俺はお先真っ暗だ。もう、ゴールが見えなくなっちまうんだよ」

 

「日向」

 

「ああ、みなまで言うな。俺とお前は親友だ。他の誰でもない。俺がそう決めた。決定事項ってヤツだ。なぁ、親友?」

 

 今度は悪戯な笑みだ。そして、一拍置いて。

 

「だから、親友。お前の意思が固いことはわかる。わかってる。だが、頼む。考え直してくれ。この通りだ」

 

 頭を垂れる日向くんを、音無くんは無機質な眼差しで見下し、静かに告げた。

 

「日向、ダウト」

 

 日向くんの目の前にトランプの山が差し出された。終盤でのこの仕打ちは手痛すぎる。最下位が暫定的に決まった瞬間ですた。

 

 空は快晴。おでかけにはバッチこいの陽気だけども、本日は戦線本部にてトランプ大会。メンバーは音無くんと日向くんと仲村さん。それに遊佐ちゃんと岩沢さんと俺とでお送りいたしまする。

 

「ハハッ、終わった……」

 

 崩れ落ちる日向くん。ドンマイです。

 

「茶番乙。そしてあがりです。どうも、一番の遊佐です」

 

 遊佐ちゃんラッキーすぐる。そして音無くんが戦犯です。

 

「音無くん。ここは日向くんじゃなくて遊佐ちゃんの時にダウトを言うべきだった」

 

「ああ、それはわかってたんだけど、遊佐の上りが濃厚っぽかったしな。順当な順位であがれそうなとこで仕切り直したかったんだ」

 

 確かに音無くん手札多かったもんね。あ、基本的には通常ルールに乗っ取りまして、手札を先に無くした人の勝ちになってます。後は手札の少ない人の順に順位が決まるのです。

 

「なんと言うリセット精神。まぁ、それも作戦だね」

 

「良い迷惑だちくしょう!」

 

 日向くんドンマイ。

 

「敗者には罰ゲーム!」

 

 ドン☆と効果音が付きそうな程の悪い笑顔で言い放った仲村さん。なんというエジプトの王様。一体コレはいつから闇のゲームになったのだろうか。

 

「聞いてねーよ!」

 

 日向くんから抗議の声があがった。そりゃそうだ。ここにいる誰も聞いてないし。

 

「今決めたわ」

 

 ですよね。

 

「横暴だ! 断固抗議させてもらう!」

 

 無理だと思うお。早いうちに諦めなさい日向くん。諦めが肝心です。

 

「所詮この世は弱肉強食。弱者の戯言に耳を傾ける人なんて誰もいやしないのよ。ねぇ、岩沢さん」

 

「ん、そうだな。ビートルズは定番だな」

 

「ほら見なさい。全く聞いてないわ」

 

 人選に悪意が見え隠れ、いや、隠れてないね。丸見えだった。

 

 日向くんが岩沢は反則だろとか言いながら机に突っ伏した。ドンマイだけど、罰ゲーム確定。

 

「罰ゲーム!」

 

 仲村さんがとても良い笑顔です。活き活きしてます。

 

「……わかったよ。やればいいんだろ。やれば。で、俺は何すればいいんだよ」

 

「そうね。とりあえず手っ取り早くそこから飛び降りてもらえるかしら?」

 

 右手の親指で窓に向かってゴーサインを出す仲村さん。鬼です。

 

「もらえませんから!」

 

 ですよね。

 

「わがままね、じゃあこっちでいいわ。ロシアンルーレット」

 

 ゴトリとリボルバーがテーブルの上に置かれた。遅れて弾も一つ。鬼畜です。

 

「よくありませんから! なんでそんな攻撃的な罰ゲームばっかなんだよ! 遊びってレベルじゃありませんから!」

 

「なんで敬語なのかしら、気持ち悪いわ」

 

 日向くんのクセだそうです。

 

「平和的に行こう。無暗やたらに血は流すもんじゃないぜ、ゆりっぺ」

 

「てめえの血はなに色だーっ!!」

 

「青じゃね? ほら、日向くん髪も青いし。あれ、ということは俺らと混ぜると紫だね。ナメック星人になれるんじゃね?」

 

「赤ですから! 好き勝手言ってんじゃねぇぞナツメ!」 

 

「なんでナツメくんにまで敬語なのかしら。気持ち悪いわ」

 

「それはもういいですから! お気になさらずにー!」

 

 ギャーギャーわめく日向くん。それにしても、陥れた張本人のはずの音無くんが我関せずのスタンスを貫いていてこの人も中々鬼だと思った。

 

「中々決まらなそうだからこっちはこっちでババ抜きしましょう。そうしましょう」

 

 音無くんと遊佐ちゃんと岩沢さんにカードを配って、四人でゲームスタート。

 

「最初は岩沢さん、俺から引いてね」

 

「ん」

 

「音無くんカードプリーズ」

 

「ほら」

 

 で、音無くんが遊佐ちゃんから引いて、遊佐ちゃんが岩沢さんから引くと。で、それを続けながら適当にお喋り。

 

「そう言えば今日は松下五段に会ってない気がする」

 

「アイツなら昨日から山籠りしてるぞ」

 

「マジか」

 

「ああ、自分を鍛え直すとか言ってたな」

 

「急だね。どしたんだろ」

 

「俺は知らないけど、藤巻とTKが知ってるみたいだぞ。何か言ってた気がする」

 

「ああ、把握しますた」

 

 ひさ子ちゃんか。多分麻雀でカモりまくったのだろう。それはもう慈悲も無く。

 

「松下五段いなくてオペレーションの時とか大丈夫?」

 

 その辺どうでせうか。おせーて遊佐ちゃんさん。

 

「さんは付けなくていいんだよデコ助野郎。スケジュールにオペレーションの予定はありませんし、特に問題はないかと」

 

「そうなんだ。あ、岩沢さんジョーカー引いたね」

 

「ん、問題無い」

 

 さすが動じない女、岩沢。

 

「今思ったけど」

 

 なんでしょうか音無くん。

 

「皆ポーカーフェイスだな。勝てる気がしない」

 

「ババ抜きは運ゲーですお」

 

 まぁ、最初の手札の枚数は調整させていただきましたがががが。

 

「あがりです」

 

 遊佐ちゃんさっきからつえぇ。でも

 

「ん、俺もあがり。二番いただき」

 

 頑張れ二人とも。罰ゲームはないから安心してくださいな。

 

「罰ゲームと言えば日向くん達は、っていないし。いつの間に」

 

 どこ行った?

 

「ついさっき出」

 

 \アッー!/

 

 音無くんがそこまで言ったあたりで何やら日向くんのものと思わしき悲鳴が。この世界は今日も平和です。

 

 

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