えんぜるびっつ。   作:ぽらり

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「うははははははー!」

 

 仲村さんが笑いながら廊下を爆走。テンションたけぇ。そしてこの人も足はえぇ。

 

「生徒会に足りないものは、それは! 情熱思想理念頭脳気品優雅さ勤勉さ! そして、なによりも!」

 

 

 速 さ が 足 り な い ! !

 

 

 なんという兄貴。

 

「この世の理はすなわち速さだと思わない? 物事を速く成し遂げればそのぶん時間が有効に使えるのよ! 遅いことなら誰でも出来る! 20年かければアホでも傑作小説が書ける! 有能なのは月刊漫画家より週刊漫画家、週刊よりも日刊! つまり速さこそ有能なのが文化の基本法則! そして私の持論よ!」

 

「いいえ、兄貴のです」

 

「今なら大いに共感できるわ!」

 

 世界を縮めるつもりなのだろうか。

 

「ナツメくん! 私はこのまま椎名さんと合流するわ! アナタは」

 

 高松さんロストです。

 

「なっ!?」

 

 遊佐ちゃんの思わぬ報告に驚き足を止める仲村さん。野田くんと違って予想外だったのだろうか。野田くんの扱いが垣間見えた瞬間です。

 

「高松くんは捕まるって意味じゃ速さが足りてたみたいだね」

 

 結果的には足りなかったみたいだけども。

 

「うっさいわね。でもまさに衝撃ね。壊滅よ。瞬殺だわ」

 

「でも、世の中ってそういうものかと」

 

「なんでちょっと達観してるのよ」

 

「シェリスかわいいれす」

 

「わかり辛いわ」

 

「ですよね」

 

 

 

 で、さっき途中になっちゃったけど仲村さんは椎名さんと合流するそうなんで適当な位置でお別れ。遊佐ちゃんが三階に向かえだってさ。大人しく指示に従います。

 

「はい到着」

 

 しかしながら廊下を見渡すもちらほら見かけるのはNPCばかり。どうやら合流できそうな人がいないようです。

 

「遊佐ちゃんが謀った。しかし俺とて戦線の男。無駄死にはしない!」

 

「ガルマ乙。ナツメさんこちらです」

 

 ひょこっと教室から遊佐ちゃんが顔を出して言った。距離的にはちょっと離れてるけど声だけは耳にダイレクトアタック。さすがインカム。

 

「戦線に栄光あれ。どうも、ナツメです」

 

「また心にもないことを。遊佐です」

 

 そそそそそんなことないんだからねっ。坊やですね。遊佐ちゃん百式乗れそう。機体色ですか。機体色ですね。遊佐です。

 

「竹山くんもやっほー」

 

「僕のことはクライ」

 

「遊佐ちゃんずっとここにいたの?」

 

「肯定です。開始後二時間はこの教室に潜伏し、参加者への指示に専念せよとの指令が出ています」

 

 へぇ、なるほど。でもあれ?

 

「あとの一時間は?」

 

 確か鬼ごっこは三時間だったはす。もしやサボりでしょうか? 

 

「主に機材の撤収を」

 

「あれ、お仕事終わる感じだね」

 

「はい。終了までの残り一時間は全力で勝負に挑むとゆりっぺさんがおっしゃってましたので指揮系統は凍結させるとのお達しが。遊佐です」

 

「さすがにチートすぎるもんね。ナツメです」

 

「藤巻さんロストです」

 

「マジか」

 

「現時点で三人の犠牲者が出ている状況です。足元をすくわれないように充分注意して下さい。私も細心の注意を払いながら指示を出しますので」

 

「しのびねぇな」

 

「かまわんよ。遊佐です」

 

「ナツメです」

 

 遊佐ちゃんと一緒に竹山君を見る。

 

「クライストです」

 

「アイタタタ」

 

「入江さんロストです」

 

「ちょ」

 

 マジか。ペースはえぇ。

 

「これは……」

 

 遊佐ちゃんが深刻そうな顔つきで呟く。この展開は予想外だったのだろう。生徒会の人たちも本気かもしれない。と、そんな時、スパーンと小気味の良い音をたてて教室のドアが開かれた。ひさ子ちゃんでした。岩沢さんも後ろに控えています。やっぱりそのペアで逃げてたのね。

 

「おい、遊佐。どうなってんだ? さっきから指示が何もねーぞ」

 

 ひさ子ちゃんが言う。みんなで遊佐ちゃんを見る。

 

「……こんな時、どんな顔をしたらいいかわかりません」

 

「わらえばいいとおもうお」

 

「……てへぺろ」

 

 遊佐ちゃんきゃわわ。でもひさ子ちゃんからゲンコツいただきました。なんで俺だけ。

 

「状況見て理解した。どうせお前が遊佐の邪魔をしてたんだろ」

 

 なんて言いがかり。

 

「しかし、現に私がナツメさんと話しだしてから瞬く間に三人が犠牲に」

 

 まさかの裏切り。手痛い裏切りだよぉっ!

 

「コイツはあたし達が連れて行くから、しっかり頼むぜ」

 

 そしてそのままひさ子ちゃんと岩沢さんに連行される。自分で走れるってばー。

 

 

 

「岩沢さんってこういうの参加するんだね。ちょっと意外でした」

 

「たまにはね。ライブもできないし」

 

「走ってる岩沢さん見るのなんか新鮮」

 

「そっくりそのまま返すよ」

 

 どっちもどっちだわーとひさ子ちゃんが笑う。否定できないのがまたなんとも。

 

「そう言えばひさ子ちゃんは運動得意って日向くんに聞いたことある」

 

「ん、そうだな。ひさ子はすごい。運動神経抜群。あとすごい揺れる」

 

「揺れるんだ」

 

「Fカップだしな」

 

「Fカップだもんね」

 

 ひさ子ちゃんから振り向き様にボディーブローがドーン。普通に痛かったです。

 

「……正直、すまんかった」

 

「おう」

 

 なんて男らしいのだろうか。

 

「セクハラだな」

 

「岩沢さんうっさい」

 

 なんで他人事なのさ。話ふったくせに。

 

 

 それからは遊佐ちゃんからの指示も特になく、適当に校舎内を三人でふらついていると関根ちゃんと遭遇。合流しました。あれ、お一人様?

 

「みゆきちが捕まっちゃいました……」

 

 しょんぼりと言った関根ちゃんをひさ子ちゃんが慰めてます。最近姐御になりつつあるひさ子ちゃんです。

 

「入江ちゃんはあんまり運動できない子?」

 

 隣にいる岩沢さんに聞く。

 

「どうだろ? 文学少女的な感じはするけど」

 

「今日は……風が騒がしいな……」

 

「そう? 別にいつも通りだと思うけど」

 

「違う。そこは『でもこの風、少し泣いています』と答えるのが正解」

 

「……?」

 

「あ、わかんないなら大丈夫です。今日はちゃんとお話聞いてくれてるからそれで充分です」

 

「いつも聞いてると思うんだけど」

 

「それは勘違いです」

 

 この後、岩沢さんから肩パンもらった。痛いです。んで、それからすぐに関根ちゃんが立ち直って元気になったのでペア組んで二手に分かれました。お互い頑張りまっしょい。

 

「そう言う訳でよろです。関根ちゃん」

 

「よろしくなっつん。みゆきちの分まであたし達は生きようね!」

 

 関根ちゃんの中で入江ちゃんはすでに故人のようです。アーメン。

 

 

 TKさんロストです。

 

 

 マジか。

 

 

 

犠牲:野田、高松、藤巻、入江、TK

 

戦線チーム残り10人

 

 


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