えんぜるびっつ。   作:ぽらり

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 ここまでのあらすじ。

 

「行くぞ! ゆりっぺに男を見せる時だ!」

 

「あ、野田くん、待って! そっちは……!」

 

 \メメタァ/

 

「このド畜生がァーッ!」

 

「の、野田くーん! ちくしょう……! 君のこと、は忘れないよー!」

 

 

 

「行ってなっつん! あたしのことはいいから、お願い……なっつんは生きて!」

 

「い、嫌だ! 関根ちゃんを置いて行くなんて、俺にはできない、できないよ……!」

 

「……ふふっ、もうしょうがないな、なっつんは。でも、男の子でしょ? わがまま言わないの」

 

「関根ちゃん……」

 

「ありがと、なっつん。君の気持ち、誇りに思う。でもね……」

 

 \メメタァ/

 

「これが、世界の選択なの……」

 

「せ、関根ちゃーんっ!?」

 

 

 

「ナツメ、関根はもうダメだ。アタシと来い」

 

「君は、岩沢さん……?」

 

「ああ、そうだナツメ。あたしが、アンタと一緒にいてやる」

 

「でも……」

 

「言い方を変える。あたしが、アンタと一緒にいたいんだ。言わせないでくれ恥ずかしい……」

 

「……そんなこと言われたら、断れないね」

 

「断るつもりだったのか?」

 

「まさか」

 

「ん、時間だ。行こう」

 

「うん、そうだね。俺たちはようやく登り始めたばかりだもんね」

 

「ああ、この果てしなく遠い鬼ごっこ道を、な……!」

 

 次回作にご期待下さい!

 

 

 

 

「てな感じで今に至ります」

 

「なるほどわからん」

 

「ですよね」

 

 合流した音無くんにこれまでのことを聞かれたので端折りながら説明を試みたところ、ダメだった。だいぶ加筆修正はしておりますががが。

 

「野田と関根が捕まったのはわかったぜ」

 

 日向くんが言う。伝わってたみたい。ちょっと嬉しい。

 

「野田先輩がアホだってこともわかりました!」

 

 ユイにゃんそれ正解。

 

「そろそろいいかしら?」

 

 岩沢さんと話してた仲村さんがこちらに向き直って言った。誰も答えなかったけど、それを肯定と受け取ったのだろう。仲村さんが口を開く。

 

「さっきも言ったけど、ここから先、遊佐さんの指示はないわ」

 

 実は合流した時点で全員にお話済みです。

 

「各自、自分の力で乗り切ってちょうだい」

 

 皆が頷く。すごく真剣なムードなんだけども、もともと鬼ごっこってそういうもんだよね。

 

「良い顔ね。それでこそアナタ達よ」

 

 隣で岩沢さんが欠伸を噛み殺してますがそこには誰も触れない。優しさって素晴らしい。

 

「全員、手を出してくれるかしら」

 

 そう言って仲村さんが右手を前に出す。それに重ねる様に音無くん、日向くん、ユイにゃんと手が連なる。次に岩沢さんが手を重ねて、その上に俺の手を置いたら完成。

 

「絶対に生き残るわよ」

 

 仲村さんの声に音無くんがああ、と返し、日向くんが当然だ、と笑う。ユイにゃんはいつものテンションでおー! とお返事。岩沢さんは特に何か言うことはなかったけど、ちょっとだけ楽しそうでした。

 

「生きてまたここで会いましょう。解散!」

 

「ここ廊下だけどね」

 

 言うや否や皆は散り散りになった。とは言うものの、廊下のど真ん中でこのやり取りしてたから、行ける方向が二通りしかない訳です。結局、仲村さんと音無くんの二人が一方を、日向くんとユイにゃんの二人がもう一方を行っている状況。そして、俺と岩沢さんがその場に留まってます。

 

「岩沢さんどっち行く?」

 

「ん、ロックだよ。メタルはちょっと」

 

「話聞いてよ」

 

 音楽の方向性とか聞いてないんだけども。曲解とかそんなちゃちなレベルじゃないよ。

 

「ああ、勘違いしないで。別にメタルが嫌いってワケじゃないよ。ロックの方が性に合ってるんだ」

 

 勘違いしてるのはあなたです。

 

「寝て起きたら絶好調だね」

 

「それに、ひさ子達と話して決めたことだしな。大切にしていきたい」

 

「そうなんだ。あ、俺こっち行くからー」

 

 バイバーイと手を振るもついて来ました岩沢さん。手を振った俺バカみたい。

 

「……?」

 

「気にしないでくだしあ」

 

 虚空に手を振る俺を岩沢さんが怪訝な目で見てきた。アナタに振りました、とは言えなかった俺を誰が責められようか。

 

「どこ行く?」

 

「ん、音楽室」

 

「では行きませう」

 

 ギター弾きたい。だと思った。見つからなければいいんだろ? そだね。ん、音楽室。向かいませう。

 

 

 

「はい、到着。でも楽器あるの?」

 

「探せばあるんじゃないか?」

 

 音楽室を物色。はたしてギターはあるのだろうか。

 

「ん……?」

 

「どしたの岩沢さん」

 

 岩沢さんの手にはエレキギターが握られている。ギターはあったみたい。でも、あれ? どっかで見たことあるね。

 

「これ、あたしのギターだ」

 

「マジか」

 

 驚きです。先生に没収されたままだと思ってたけど、なんでこんなところにあるんだろうか。

 

「思わぬ収穫。関根ちゃんと入江ちゃんのは?」

 

「ん、ちょっと待って」

 

 そう言って当たりを見回す岩沢さん。程なくして関根ちゃんのものと思われるベースが見つかった。でも入江ちゃんが使ってたドラムセットがない。

 

「ないねー」

 

「ん……?」

 

 岩沢さんがまた何か見つけたらしい。扉だ。鍵はかかっていなかったようですんなり開いた。お邪魔します。

 

「あった」

 

「あ、ホントだ。あとで仲村さんに連絡して取りに来てもらおうか」

 

「ん、そうだな」

 

「嬉しそうだね」

 

「また皆で演奏できるからな」

 

「そっか。よかったね」

 

 岩沢さんがすごく嬉しそうです。なんでここにガルデモの楽器があったのかはわからないけども、思わぬ収穫。

 

「あ、じゃあガルデモ再始動に向けてユイにゃんが本格的に加入する感じ?」

 

「ん、そうなるな。その辺りの話は、まぁ、ひさ子にでも頼むさ」

 

 頑張れひさ子ちゃん。

 

「あたしは勝手に弾いてるけど、アンタはどうする?」

 

「ギター弾いてる岩沢さん見てる」

 

「面白くないと思うけど」

 

「でも他にすることも無いしね」

 

「それじゃあ……」

 

 コレ持って、とその辺にあったギター渡されました。

 

「弾いたことないんだけども」

 

「なんとかなるだろ」

 

「なるの?」

 

「あたしが教えるよ」

 

 急かされる様に座れと促されれば、従うしかない。

 

「よく見て。こう。これがCコード」

 

「こうですか? わかりません」

 

「違う。こっち」

 

「どっち?」

 

「ん、こっち」

 

「あ、そっちね」

 

「そう、そっち」

 

 鬼ごっこそっちのけで岩沢さんのギター講座がスタート。しかし、残念ながらできる気しないです。

 

 

 

犠牲者:野田、高松、藤巻、入江、TK、大山、関根、ひさ子、椎名

 

戦線チーム残り6人

 

 


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